第5講 データベースとデジタル資源

経済史とデジタル資源

経済史のデジタル資源はハードよりもソフトを考える。
電子化された史資料、統計、文書、データベースなどが対象となる。デジタル技術や情報技術を利用することで他の電子資源と共通した特徴を備えている。デジタル資源を経済史で利用する際の固有問題を点検する。

 ペーパー文献資料はこれまでの最重要な記録保存手段である。しかしそのままではコンピュータに保存することができない。これはデジタル化により実現する。近年、既存の紙の文書やアーカイブのデジタル化が急速に進展している。まったく新しいものとして構築されるデジタル情報資源も急増している。デジタル化データベースの利用は一般的になりつつある。経済史の学習と検討に際してもコンピュータとネットワークの利用およびデジタル情報資源の取り扱いが普及し始めている。

 経済史の情報資源は多様な形態をとる。従来の記録方式以外にデジタル資源が利用できるようになったのは最近のことである。新旧資料や文書記録のデジタル化が注目されるようになった。コンピュータの利用でデジタル化作業は容易になり、民間情報も公的機関団体情報もデータベース化が急速に進展している。主要国の政府は例外なく電子政府の実現に向けて努力しているが、民間においても個人レベルの利用やビジネスのために巨額の投資が投入されてきたことで、情報関連の無形財産がデジタル資源の形で形成されている。

 日本及び諸外国の主要図書館には大量の情報機器が導入されている。検索カードがデーターベース化され、検索が便利になったばかりでなく、情報内容そのものを端末装置で閲覧できる。すでに従来の記録媒体がデジタル情報資源に置き換えられ、インタラクティブな形でサーバーから直接データを引き出せる仕組みはが作り出されている。

 デジタル化された資料やアーカイブはオンラインによる伝送が容易である。 Eメールの例で見るように情報の伝送と交換が可能であることは画期的である。デジタル資源をウェブ上に公開する例はインターネットの普及により多く見られる。経済史を考えるのに役立つインターネット上のサイトが増えている。このことは経済史のデジタル資源が累積されていることを意味する。

 経済史のイー・ラーニング(e-learning)を理解しよう。経済史は電子情報を利用することで楽しく学習することができる。

 経済史のイー・ラーニングは、遠近ネットワーク環境を利用する。経済生活の歴史+コンピュータ+ネットワークで成り立つ。インターネットの普及により、これを経済史の学習に利用することが実現するようになった。バーチャル世界において物理的な時間と空間をこえて仮想現実を作り出すことができ、時代を問わず現時点の経済史として構築することも可能である。

 インターネットは電子学習の便利な環境を提供してくれる。何人もウェブ上で随時世界的なスケールで経済の歴史に思いを馳せることができる。世界各地に分散所蔵されているアーカイブ・データベースの検索は楽しい。電子立国の一環として世界各国が電子図書館の構築に力を入れている熱気も伝わってくるから面白い。

電子情報と伝達方式
 情報資源はパッケージおよびオンライン形式で伝達される。
 デジタル情報のの記憶媒体にはハードデスク、メモリカード、フロッピー、CD/DVDなどが重要である。このごろの書籍や雑誌などは付録としてCDやDVDをつけて販売する例が多くなっている。


経済史の電子文書

経済史の電子文書としてデジタル化されたテキスト、統計、ニュース、データ-ベースを考えよう。これらを自ら準備する場合、text、htmlやpdfのフォーマットで簡単に作成できる。そのための市販ソフトやオンラインソフトも多数出回っている。他人の作品及びデータは諸種の記憶媒体を利用するなり、ウェブを利用することで目的の達成が可能である。場合によってはインターネットからデータ-ベースにアクセスする形で貴重な電子文書を入手することもできる。

 歴史の叙述は、多種多様な証拠をもって裏づけることが望ましいが、すべての史料を利用することは物理的に不可能である。これは利用者側の問題ばかりでなく、資料のあり方や利用可能性の制約という問題もある。ここに来てデジタル形式の史料が登場した意義は大である。これまで経済史の利用する史資料はデジタル化されたものが存在しなかった。デジタル技術は人類に新しい記録の方法を提供することとなった。情報技術の進歩で数値のほか、文字、画像、音声なども簡単な操作で電子信号に置き換えられるようになった。経済史の史料として電子文書が利用できるようになったのである。

 人間の創造による既存の知的資源やアーカイブなどはデジタル化するのに難易度の差があるが、しだいに電子データベースに置き換えられる傾向にある。新しく創出される情報資源やアーカイブはデジタル技術による加工が不可欠な状況となりつつある。電子文書は人間の生活や創造活動(研究教育、社会経済、生活、医療、余暇など)に重要であると位置付けられるようになったのである。

 ネットワークシステムとくにインターネットは史料のあり方や利用可能性を変えつつある。電子図書館や文書資料館において直接閲覧のほか、ウェブを通じて電子文書の入手が可能であることは良く知られている。これがもっと便利に自由にアクセスできるようになれば他の知的領域とともに画期的な変化をもたらすことは疑う余地がない。

 電子文書( electronic documents )または電子テキスト( electronic texts )はいくつかのフォーマット形式がある。テキスト形式はワープロで広く親しまれているが、ネット上ではハイパーテキスト・マークアップ・ランゲージ(html)およびピー・デー・エフ(pdf)が良く使われる。前者はウェブ閲覧に長所があり、後者は書式の保持に優れている。両者は制作・利用にそれぞれ違うアプリケーションを利用する。いずれの電子文書も上述した記憶媒体に保存できる。

 インターネットの利用で入手できる電子文書の質量が向上している。過去の出来事を調べることや自らの経済史像を形成する上でネットワークは便利な装置となっている。 インターネット上の電子文書は電子出版(electronic publishing)および版権保護の目的でも公開されるが、これら電子文書の著作権や所有権を保護する法律も整備されつつある。インターネット情報の多くは、基本的に自由閲覧が可能であるといっても、利用上これらの事情を忘れてはならないのである。

電子文書のフォーマット
html(hypertext markup luangage); pdf(portable document format);text(doc,txt...)


日本の電子文書
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