20190903_Tue 情報教育担当者連絡会議の傍聴

この時期は毎年,全国の都道府県・政令指定都市の情報教育担当者が文部科学省に集まる「情報教育担当者連絡会議」というものがある。

来年度の国家予算について,各省庁が大まかな要求をする「概算要求」の内容が,お盆前後に上がってくるので,それに基づいて上意下達するための場がその連絡会議というわけだ。

連絡会議は,行政事務に関わることであり,しかも未確定事項を多く含んだ情報がやり取りされることもあって,一般に公表されているものではない。

しかし,次年度における情報教育等の方針が全国に伝達される重要な機会であるし,教育の情報化に関わる私たちは直接的・間接的にもこの連絡会議の内容に関わるわけで,そういう意味では,無視できない存在でもあった。

今年度,文部科学省のお仕事をする関係もあって「令和元年度情報教育担当者連絡会議」を傍聴する機会をいただいた。

会議直前の連絡で,予定調整をどうしようか悩んだものの,来年度以降に傍聴機会を得られる確証もなかったので,今回の機会を掴まえることにした。貧乏研究者だから,夜行バスで往復のゼロ泊出張である。

連絡会議は,10時から17時まで,教育の情報化の動向を始めとした話題について,現状認識や今後の方針など予算に関わる情報が伝達され,他にも関連する事項に関して様々な情報提供・事例紹介が行なわれた。

おおむね,一般にも公表されている概算要求の内容に沿った内容だが,文部科学省の担当課による細かな表現ニュアンスによって,各都道他県・政令指定都市担当者が理解を調整するといった感じで進んでいった。

国の概算要求がある程度決まってから,都道府県・政令指定都市レベルに対して伝達する順番とならざるを得ないとはいえ,タイミング的には都道府県・政令都市も自らの予算の枠組みは固まりつつあるわけで,今から新たな予算説得を始めるのは至難の業である。

その上,連絡会議に集まっているのは都道府県・政令都市の担当者であって,小学校・中学校の設置者となる基礎自治体(市町村)の担当者への伝達は,各都道府県の担当者が行なわなければならない。この伝言ゲームによって,国と基礎自治体との間に温度差が発生するのは否めない。

こうした考えれば思いつきそうな障壁課題に対し,連絡会議ではどのような工夫がなされているのかがずっと気になっていた。

しかし,特に連絡会議の場で基礎自治体への配慮がなされているわけではなく,それは(当たり前のことであるが)各都道府県の仕事として捉えられているだけで,せいぜい「早急にしっかり伝達していただきたい」といった言及に留まっていた。

いや,その前に,出席している担当者たちにすら,熱が伝わっていないのではないか。そんな心配すら感じられたのは,私の老婆心に過ぎないのだろうか。

連絡会議を初めて傍聴したのだから,もちろん私の受け留めは素人感想のようなもの。

出席していた担当者たちは,行政の第一線で仕事をしている人たちであって,連絡会議で伝達されたものについて,粛々と処理をして予算の確保なり,基礎自治体への伝達なりを執行していくだけなのだろう。

そんな流れの中で生まれる「これは何のためになるのか?」という問いへの答えに彩りを添えるお手伝いをするのが私たち関係者ということになろうか。

なんかもうちょっと遣りようがあった気がしないでもないが,それはゼロ泊出張で私の頭がふらふらだったからということにしよう。

何を想い,諮問し答申するのか

学習指導要領改訂は,諮問と審議と答申の過程を経ることが定式化しています。

何かを問い何かを答えるにあたっては,どんな現状認識にあって,どんな未来を想定しているのかも重要になってきます。

そういえば,過去の諮問や答申は,何を想っていたのでしょう。少し巻き戻しを…。

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 【平成29(2017)年】

[平成29年改訂 諮問]20141120 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)

「生産年齢人口の減少,グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により,社会構造や雇用環境は大きく変化し,子供たちが就くことになる職業の在り方についても,現在とは様変わりすることになるだろう」

「成熟社会を迎えた我が国が,個人と社会の豊かさを追求していくためには,一人一人の多様性を原動力とし,新たな価値を生み出していくことが必要」

[平成29年改訂 答申]20161221 幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(中教審第197号)

「近年顕著となってきているのは、知識・情報・技術をめぐる変化の早さが加速度的となり、情報化やグローバル化といった社会的変化が、人間の予測を超えて進展するようになってきていること」

「第4次産業革命ともいわれる、進化した人工知能が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測がなされている」 

 【平成20(2008)年】

[平成20年改訂 諮問]20050215 中央教育審議会(第47回)議事録

「主要先進国では、各国とも国の命運をかけて教育改革に取り組んでおります。時代や社会の変化の中で、我が国が様々な課題を乗り越えて真に豊かで教養のある国家として更に発展していくためには、切磋琢磨しながら新しい時代を切り拓く、心豊かでたくましい日本人の育成を目指し、国家戦略として、教育のあらゆる分野において人間力向上のための教育改革を一層推進していかなければなりません」

[平成20年改訂 答申]20080117 幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)

「21世紀は、新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す、いわゆる「知識基盤社会」(knowledge-basedsociety)の時代であると言われている。
 「知識基盤社会」の特質としては、例えば、①知識には国境がなく、グローバル化が一層進む、②知識は日進月歩であり、競争と技術革新が絶え間なく生まれる、③知識の進展は旧来のパラダイムの転換を伴うことが多く、幅広い知識と柔軟な思考力に基づく判断が一層重要になる、④性別や年齢を問わず参画することが促進される、などを挙げることができる。」 

「このような知識基盤社会化やグローバル化は、アイディアなどの知識そのものや人材をめぐる国際競争を加速させるとともに、異なる文化・文明との共存や国際協力の必要性を増大させている。
 「競争」の観点からは、事前規制社会から事後チェック社会への転換が行われており、金融の自由化、労働法制の弾力化など社会経済の各分野での規制緩和や司法制度改革などの制度改革が進んでいる。このような社会において、自己責任を果たし、他者と切磋琢磨しつつ一定の役割を果たすためには、基礎的・基本的な知識・技能の習得やそれらを活用して課題を見いだし、解決するための思考力・判断力・表現力等が必要である。しかも、知識・技能は、陳腐化しないよう常に更新する必要がある。生涯にわたって学ぶことが求められており、学校教育はそのための重要な基盤である。」

【平成15(2003)年】

[平成15年改訂 諮問]20030515 今後の初等中等教育改革の推進方策について

「我が国の社会が現在直面している様々な課題を乗り越え、今後さらなる発展を遂げ、国際的にも貢献していくためには、教育の普遍的な使命と新しい時代の大きな変化を踏まえ、21世紀を切り拓(ひら)く心豊かでたくましい日本人の育成が重要であります。」

「新しい時代の学校にあっては、より一層、子どもたちに豊かな心をはぐくむとともに確かな学力を身に付けさせ、保護者や国民の信頼に十分こたえることができるよう、一人一人の個性に応じ、その能力を最大限に伸ばす創意工夫に富んだ教育活動が行われることが重要であります。」

[平成15年改訂 答申]20031007 初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について(答申)

「いまだかつてなかったような急速かつ激しい変化が進行する社会を一人一人の人間が主体的・創造的に生き抜いていくために,教育に求められているのは,子どもたちに,基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力,自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性,たくましく生きるための健康や体力などの[生きる力]をはぐくむことである。」

「今後の社会においては,少子高齢化社会の進行と家族・地域の変容,高度情報化・グローバル化の進展,科学技術の進歩と地球環境問題の深刻化,国民意識の変容といった歴史的変動の潮流の中で既存の枠組みの再構築が急速に進むものと考えられる。こうした状況にあって学校教育の果たすべき役割を考えたとき,学校・家庭・地域社会の連携の下,新学習指導要領の基本的なねらいである,基礎・基本を徹底し,自ら学び自ら考える力などを育成することにより,[確かな学力]をはぐくみ,豊かな人間性やたくましく生きるための健康や体力なども含め,どのように社会が変化しても必要なものとなる[生きる力]の育成を進めることがますます重要となってきている。」 

【平成10(1998)年】

[平成10年改訂 諮問]19960827 諮問文「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」 (教育課程審議会)

「幼児児童生徒の人間として調和のとれた成長を目指し、国家及び社会の形成者として心身ともに健全で、21世紀を主体的に生きることができる国民を育成するため、社会の変化や幼児児童生徒の実態、教育課程実施の経験などを考慮するとともに、中央教育審議会の答申を踏まえ、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校を通じて教育上の諸課題を検討し、教育課程の基準の改善を図る必要がある。」 

[平成10年改訂 答申]19980729 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について(答申) (平成10年7月29日 教育課程審議会)

「今日、我が国は、国際化、情報化、科学技術の進展、環境問題への関心の高まり、高齢化・少子化など社会の様々な面での変化が急速に進んでおり、今後一層の激しい変化が予想されている。これらの社会の変化は、子どもたちの教育環境や意識に大きな影響をもたらし、教育上の様々な課題を生じさせるものと思われる。
 このような激しい変化が予想される社会において、主体的、創造的に生きていくためには、中央教育審議会第一次答申においても指摘されているとおり、自ら考え、判断し行動できる資質や能力の育成を重視していくことが特に重要なこととなってくる。」 

【平成元(1989)年】

[平成元年改訂 諮問]

[平成元年改訂 答申]19871229 教育課程の基準の改善について(教育課程審議会 最終答申)

平成29年告示 学習指導要領(幼稚園・小学校・中学校)

 平成29年3月31日付で新しい「学習指導要領」が告示されました。

 幼稚園教育要領,小学校学習指導要領,中学校学習指導要領の3つです。パブリックコメントを経たということになります。

学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続き(パブリックコメント)の結果について 
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000878&Mode=2

 要領自体は,国立印刷局Webサイトにて,官報(号外第70号)に掲載されたものが閲覧可能です。

官報(号外第70号)目次 
http://www.npb.go.jp/ja/today_kanpou/20170331/20170331g00070/20170331g000700001f.html

 文部科学省Webサイトもパブリックコメントの結果として掲載されています。

学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案,小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリック・コメント)の結果について 
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1383995.htm

 

(参考) 松野文部科学大臣会見(平成29年3月31日)はこちら

 

官報号外70号 学習指導要領関係部分だけ一括したPDF 
http://www.con3.com/files/kanpo_gogai70go.pdf 

 

文部科学広報 2017年3月号 
http://www.con3.com/files/monkakoho201703.pdf 

平成27年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果

 平成27年度「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」の最終集計結果が出たようです。毎年,速報値が流れて,しばらくしてから確定値が公表されます。何かしら結果集計の最終確認をしているようで,たまに数値が変わります。それに泣かされたこともあります ^_^; 。

 今回の調査結果公表について,例年と違うことが行なわれたとして話題になっています。一つは,速報値公表段階で市町村別の結果を公表したこと。もう一つは,確定値公表の概要資料に市町村別版のものを加えたことです。

 「市区町村別 学校における主なICT環境の整備状況(全校種)」という資料は,市区町村をずらっと順位付けしたもので,文部科学省の資料としては大胆な試みかも知れません。

 ただ,速報値段階での市区町村結果の前倒し公表や,確定値における順位づけリスト公表にしても,文部科学省的にはインパクトのある出来事かも知れませんが,受け手にしてみれば,大した変化を感じません。これまでも確定値で市区町村レベルの調査結果は確認できましたし,それをもとに日経BP社は毎年「全国市区町村 公立学校情報化ランキン」を特集していました。

 唯一,今回の取り組みで役立ちそうなのは,新たに加えられた「平成27年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(市区町村別)」[(1)北海道〜愛知県(2)三重県〜沖縄県]が都道府県別に作成されていて,地方自治体で参照する資料として使いやすいという点でしょう。市区町村の多い都道府県はグラフの字が小さくて大変ですが…。

 見える化したことで,表だけでは掴みづらかった整備状況の格差がわかりやすくなったという意味で,見る人によっては衝撃なのかも知れません。

 りん研究室では「教育情報化実態調査結果_経年データ(コンピュータ・周辺機器整備編)」を以前から公表していますが,これは全都道府県の合算値であり,都道府県レベルの経年データを作成するに至っていません。

 統計局のサイトは,データ登録の仕方次第で経年比較等ができる機能(データベース機能)を持っているはずですが,残念ながら「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」は,独自作成したエクセルファイルを保管する仕方で登録されているため,経年データ作成は手作業にならざるを得ません。

 文部科学省には,(人手が足りないのは承知ではあるけれども)過去の調査結果も含めて,統計局のデータベースに登録するよう期待したいと思います。また,調査結果だけでなく,質問紙内容(エクセルファイル)と生データも合わせて公表して欲しいところです。

 ただ,実態調査については,そもそも調査デザイン自体が実態を把握するにふさわしいのかどうか疑問が提示されています。整備状況値は,ICT活用状況値ではないことからも,実態調査そのものの見直しが必要になっていることは確かです。

 今回の市区町村レベルの数値公表の姿勢変化が,実態調査に対する見直しの手始めであることを期待したいところです。

20160108 滋賀県近江八幡市ICT整備検討会議

 文部科学省「ICT活用教育アドバイザー派遣事業」の派遣業務の一環で滋賀県の近江八幡市を担当しています。2回目の検討会議がありましたので出席しました。

 前回は教育の情報化に関する動向全般や学校にICT整備をするにあたって考えなければならないことなどを雑多にお話したようなところがありました。どうしても機器導入が目立ってしまうことと,導入成果について学力向上(特に試験成績)の結果を求められるため,そうした論点が気にされがちです。そのようなことももちろん,もう少し「何を目指したいか」というところでイメージを具体化することの重要性をアドバイスしたところでした。

 今回は,同じ調子で時間を消費しないように,実際の機材をいろいろ持って行って,持ち込んだもので環境を構築する一部始終を見ていただきながら話を進めてみようと考えました。目指すイメージの具体化がある一方で,そうはいっても機器の一つ一つを整備する時の細かな配慮も欠かせないわけです。機器や部品などその配置や配線など意識していただき,実際のアプリやWebサイトなどを見ていく中で検討しようというもくろみでした。

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 実際に機材を運ぶのは大変でしたし,その場で構築するというのは結構難しい部分もありました。あらかじめ完成形を想定して持ち込んだものの,改めて持ち込んだ端末全部に無線LANルーターの接続設定をするのはその場ではできませんでしたし,新しく購入した機器でドライバが無いと動かなかったものもあったりで,要するにスムーズにいくまでが大変という事態を「そのまま」見ていただくことはできたように思います。

 それでも,こうした液晶プロジェクタを設置できましたし,インターネットに接続してサイトを見たり,動画を見ることができました。この日は教育委員の皆さんも出席していただきましたが,話だけではなかったところで,理解していただけた部分も少しはあったかなと思います。

 その日は,現地宿泊して翌日は自分一人で市内を散策していました。派遣は次回が最後となりますが,また違って議論ができるといいなと思います。