Apple School Managerの日本提供は未定

 所属学科で導入したiPadをセッティングしています。

 OS X Serverのプロファイルマネージャという機能を利用してiPadを遠隔管理してみようと試みて,デバイス登録や機能制限といったiPad制御のためのプロファイルをインストールすることには成功しました。

 ここからアプリのインストールも遠隔で行なえるようにしたいわけですが,そのためには「Apple Deployment Program」というものに含まれている「Volume Purchase Program」(VPP)というものに登録をしなければなりません。VPPとは,複数のデバイス用のアプリを一括購入して配布できるようにする方法です。

 プログラムへの登録自体はWebサイトから可能ですが,基本的に法人向けサービス。組織単位での申し込みとなり,学部・学科単位といった大学組織の一部署単位で申し込むことには対応していないというのが今回のハードルとなります。

 Appleのデバイスは個人利用のイメージが強いので,もう少し小規模グループの管理に向いたプログラムやソリューションがないものだろうかと思うのですが,いろいろ先行事例や説明を探して聞いてみても,一気に法人(教育機関)利用というレベルに飛び越えてしまいます。公立学校だと教育委員会単位という話になったりもします。

 現実は,先ほど書いたように大学の中でも,学部や学科単位で管理したいニーズはありますし,研究室やゼミナール(講座)単位で扱いたいこともあります。公立学校も教育委員会単位では動きが鈍いので,小回りの利く学校単位で管理したいこともあるでしょう。しかし残念ながら,VPPはそういう単位で申し込みことが難しいのです。

 実は,iOS9.3とともにEducation Preview(教育向けプレビュー)という名のもと,教育向け機能が試験的に実装されました。アップル社の教育ページも新しいサービスについてアピールするようにリニューアルされています。

 学校で管理や運用がしやすいように,新しく「Apple School Manager」というWebサービスや「クラスルーム」というアプリの提供も謳われています。そして学校独自に作成付与できる「管理対象Apple ID」というアカウント機能も用意されました。

 日本語の紹介ページやヘルプも公開されて,日本の教育関係者からも大きな注目を集めています。さて,この新しいサービスは私の中途半端な規模のニーズを受け止めてくれるでしょうか。いろいろ読んでみて期待は膨らむものの,いまいち理解がすっきりしないので,アップル社に電話をかけて聞いてみることにしました。

 夕方の時間帯に電話をかけたので,待たされることは覚悟の上で,そして案の定待たされて,なんとか法人・教育機関向けサービスの担当者に繋いでもらいました。

 結論から書けば,Apple School Managerを始めとした教育向けプレビューのサービスや機能は,日本提供が始まっておらず,その予定も未定状態。サイトやヘルプに明記されている「参考: 国や地域によっては、Apple School Manager が利用できない場合があります。」という文言は日本のことだというわけです。

 アップル社の様々な決定は,米国本社が決めるため,日本の担当者の方が「決まっていない」という以上,食い下がっても予定はわからないだろうと思います。来月から突然開始しているかも知れないし,WWDCで発表されるであろうiOS10の正式リリースと同時に開始されるのかも知れませんし,日本ではいつまでたっても提供されない可能性もあります。それがグローバル企業というものなので,その辺はあっさり聞くのを諦めました。

 あと,「Volume Purchase Program」(VPP)について改めて教えてもらったところ,やはり法人組織単位で登録してもらうことが前提だとのこと。先ほどの学部・学科や研究室・講座単位で登録や利用が可能な解決策はないのかと聞いてみましたが,現時点で提供しているソリューションでは対応してないようです。

 日本未提供のApple School Managerは,そのような小規模単位での利用は可能なのかどうかも聞いてみましたが,結局はVPPを組み合わせることが前提なので,その登録の時点で法人組織単位となってしまうようです。

 というわけで当初,自前で構築したOS X Severとプロファイルマネージャを使えば,遠隔でのデバイス管理ができるのではないかと期待していたのですが,私のような小規模単位ではアプリ管理までは無理となりました。

 こうなるとApple Configurator2と小規模単位用につくったApple IDで管理するということになりますが,この方法はサポート対象外の方法です。また,1つのApple IDに登録できるデバイスの台数は限られますので,20台以上となれば,複数のApple IDをどう組み合わせて管理するのかという問題にぶち当たります。

 アップルにしてみれば,学校法人や教育委員会が対応すればよいと考えているのでしょうけれど,日本では,その単位だと小回りが利かなくて対応できない,転じて対応しない,ということが当たり前になっていて,それゆえ,教育の情報化も上手くいってないことが多いのです。Windowsは対応するけどMacやiPadは未対応とか,そういうのがまだ平気な世界です。

 本当は,小規模でもっといろいろやりたい人たちは多いはずなので,そういう人たちに向けたソリューションもアップル社には考えて欲しいなと思います。

iPad Proの導入と管理

 今日は新たに導入したiPad Pro 6台をようやく開封してセッティング作業をしました。

 Appleからは教育機関で使用するための導入プログラム(機器の登録やら管理のための一連のサービスやシステムのこと)が提供されており、それだとデバイス情報をあらかじめ登録してくれるなど特別です。本来ならばそういうものに則った導入計画を進めたいところですが、実際には一度に大量導入するのではなく少数台の追加を繰り返しながら揃えていくというのが現実で、この6台も一般市販品に相当するものです。
 それでも教育機関としてはデバイス管理を一括した形で扱いたいもので、最初の設定はともかく、通常管理の際は個別のiPadを一つひとつ操作するのは避けたいのが本音です。

 一般的にiPadの管理はApple Configurator2とよばれるMacアプリで、MacにUSBケーブルで接続したiPadをセッティングするというのが知られています。

 この組み合わせによる作業は最初必ず必要なのですが、この方法を通常管理でも続けるとなると、何か設定を変えたいときはいつもiPadを集めてUSBで接続して作業することになり、煩わしいことになります。

 そこでこうした設定作業をネットワーク越しに操作してできるようにするのがMDM(モバイルデバイスマネジメント)ソリューションです。外部のネットサービスだったり、自分の組織に置くサーバーに用意するシステムだったり、実現方法はいろいろです。

 しかし外部のMDMサービスを使うとなると有料であるのがほとんどで、小規模のスタートから試しながら使うには敷居が高かったというのが正直なところです。

 そもそもApple自身はMDMソリューションとやらを提供してないのでしょうか?

 実はApple自身はMacをサーバー利用するためのアプリ「Server」を2400円で販売していて、この中に「プロファイルマネージャ」と呼ぶMDMシステムを含めて以前から提供してきました。

 しかし、プロファイルマネージャは数年前までは大変非力な内容で、純正MDMでありながら設定できる項目が少なかったため、あまり見向きもされていませんでした。

 ところが、ここ最近はiOS自体の教育機関向け機能が強化されてきたこととも関連して、プロファイルマネージャも設定項目が充実してきており、共有iPad機能やクラスルーム機能などはOS X Serverアプリの導入が前提となりつつあります。

 というわけで、そろそろOS X Serverのプロファイルマネージャによるデバイス管理も手軽に始めたい時期に来ています。Apple Configurator2を使って数十台のiPadをUSB接続で一気に設定するのもいいんですが、やはりここは遠隔操作でスマートに管理したいものです。

 とはいえ、プロファイルマネージャによるデバイス管理は、そもそもサーバーとして常時運用できるMacを1台確保しておく必要があり、サーバーのセッティングも含めて事前の準備が大変なのが弱点。それにiPadを管理レベルの高い「監視対象デバイス」として登録するには、Apple Configurator2によって個別に復元からセッティングし直さなければなりません。

 そう考えると世間で紹介されている事例がApple Configurator2のものになるのは、作業時に1台のMacを用意してConfiguratorアプリだけで済むという手軽さ故かも知れません。

 とりあえず職場の6台はプロファイルマネージャで管理できるようになりました。あとはアプリの導入などでVolume Purchase Programというサービスを利用することができるように調べてみようと思います。これも教育機関を代表した登録が必要であるというのが、小規模導入には不似合いなので、うまくいかないと思います。それでも何か方法を探して遠隔でアプリを配信できるようにしようと思います。

 サーバーやMDMを利用したデバイスの管理についての詳細な手順は別にまとめようと思います。