LiquidText (リキッドテキスト) – iPad Proに相応しいアプリ選

追記20200816
LiquidTextは,その後も順調にアップデートを繰り返し,昨今ではWindows版とmacOS版がリリースされるに至ってインターフェイスも統一されました。
(これを書いている時点で期間限定で20%OFFセールをしています。)

アノテーション機能が柔軟になったり,マルチドキュメントの管理ができるようになったり,今後はサブスクリプションでクラウドサービスを立ち上げるようです。アプリからサービスへの転換でシンプルさがなくなるのは残念ですが,複数の端末からクラウドで連携できるようになるのは重要です。

現在でも情報整理を伴うPDFビューア兼アノテーションアプリとしての独自性は陰り無く,定番アプリとして対価を払う価値はあると思います。

PDF文書を読みながら情報や要点の整理の作業をしたいことがあります。書類に下線やメモなどの書き込みをするだけでなく,必要な部分を抜き出して整理するということです。

書込み(アノテーション)をする作業であれば多くのPDF閲覧アプリがその機能を持っていますが,部分を抜き出して整理する作業ができるアプリとなると限られます。

それを非常にエレガントに実現してくれているアプリが「LiquidText」(リキッドテキスト)です。まずはプロモーション動画を見てください。

PDF文書にハイライト線を引くだけでなく,その部分を右側のワークプレイスと呼ばれる領域に抜き出して情報整理できるのです。

その上で,自由に書込みが出きる機能もあります。最新バージョンのプロモーション動画も見てみましょう。

私たちがタブレット端末でやりたかったことの一つは,こういう直感的な情報整理作業ではなかったでしょうか。こうした情報整理をもとに,さらに新たな報告書をまとめたり,整理した結果を発表するための資料を作成したりということだと思うのです。

私自身は国の行政機関や様々な団体から公表されている文書(PDF文書)を読む際に,このリキッドテキスト・アプリを使用しています。たとえば新たな学習指導要領のために審議された結果をまとめた答申は,大変長いPDF文書で,これを印刷して読み解いたとしても情報整理が大変です。

そこでこのリキッドテキスト・アプリに読込ませて,気になる部分をワークプレイスに抜き出し,抜き出した情報の繋がりをつけながら読み進めると,そこまでの要点を可視化したものと合わせて,全体を見通しやすくなります。これは時間を置いて再度文書を読むときにも,自分で作成したワークプレイスのおかげで,再理解の時間も短縮されるメリットがあります。

liquidtext_toushin

「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」のPDF文書を読込んで情報を抜き出したところ。

リキッドテキスト・アプリ自体は無料で配布されています。PDF文書を抜き出し読みするだけであれば,それで十分です。そして,追加機能を使いたい場合には,有料で追加購入することになります。

たとえば文部科学省のPDF文書はいろんな事情から一つの文書を複数のファイルに分割して配布していることが多いのですが,これをバラバラに扱っていると大変です。そこで,リキッドテキストには複数の文書をまとめて閲覧作業できるMulti-Document(マルチドキュメント)という追加機能がアプリ内課金で購入できるようになっています。これは便利です。

一方,リキッドテキストは自由な書込み(アノテーション)機能は有料です。他の無料ノートアプリでできるアノテーション機能が有料というのはちょっと理不尽な気になるかも知れませんが,リキッドテキストの一番の特徴が抜き出した情報の整理であることを考えると,この辺が逆になっているのは仕方ないかなと思います。

上記の2つの機能は1200円で購入することになり,それでリキッドテキスト・プロにアップグレードしたということになります。(マルチドキュメント機能だけは600円でバラ売りしています。)

リキッドテキストは,開発者であるCraig Tashmanさんが,ジョージア工科大学で研究開発されていた成果を実際のアプリとして販売したものです。

LiquidTextのYouTubeチャンネルには,2010年頃に研究開発していたこのアプリの原型ソフトのデモンストレーション動画が公開されています。

リキッドテキストの「リキッド」とは「液状の」という意味。

つまり,Craig Tashmanさんは抜き出した文字のカタマリを液状に見立てて,くっつけ合えるようにすることで,抜き出した情報同士を簡単にグルーピングできるようにしたのです。 私たちがポストイットでやっている作業をもう一歩進化させるためのアイデアということになります。

さらに,PDF文書をピンチ操作すると部分的に縮んでつぶれるように表示するというアイデアを使って,遠く離れたページ同士を同時表示することを可能にしました。それをキーワード検索機能に絡めたところは,現実の紙ではできないことです。

「こんな作業をするなら確かにパソコンじゃなくてタブレット端末だよね」と言えるアプリは数少ないですし,リキッドテキストはまさにそんなアプリの一つだと思います。

ただ,アプリに対しては好き嫌いがあり得ますので,こういうPDF文書の読み方はしないので私には合わないという人もいると思います。それでも,使わずして食わず嫌いなだけであれば,それは大変もったいない話です。PDF文書をもとに情報整理作業をする必要のある人には要チェックなアプリです。