マストドンの投稿公開範囲を調べる

マストドンのインスタンスを開設した目的の一つは,投稿(トゥート)がどのように閲覧されるのか,投稿の到達範囲や閲覧可否の制御ができるのかどうかを確かめることでした。

すでに「Mastodonの投稿範囲「公開」「未収載」「非公開」「ダイレクト」とは」(gori.me)という記事がこの疑問に答えてくれようとしているのですが,外部向けプロフィール画面の投稿一覧(プロフィールTLと書きます)のことや,ローカルタイムラインの特性については触れていないので,まとめて整理しておきたいと思います。

まずは一覧表(ブログシステムの関係上,罫線表示がなくてすみません)。

プロフィールTL
非フォロワー
プロフィールTL
フォロワー
ホーム  ローカルTL  連合TL  フォロワー
ホーム
Public
(公開)
Unlisted
(未収載)
× ×
Followers-only
(非公開)
× × ×
非公開
アカウント
ダイレクト × ○(相手)
×(相手以外)
× × ○(相手には通知)
×(相手以外)

マストドンに登録すると,「ホーム」「通知」「ローカルTL」「連合TL」という投稿の流れを追う画面を操作していくことになります。なお,マストドンではローカルTLと連合TLのことを合わせて「公開TL」と称することがあります。投稿側からすると2つは同じ扱いです。

必要に応じて,他人のプロフィールを表示しますが,マストドン通常画面の右端列に表示されるプロフィール表示以外にも,外部向けに独立したプロフィール画面があります。どちらのプロフィールでもフォロー/フォロワー一覧や投稿一覧が表示できますが,ここでは外部向けに公開する画面の投稿一覧のことを「プロフィールTL」と名付けます。

ユーザー設定画面には,投稿の公開範囲を設定する箇所があり,デフォルト時の投稿公開範囲を決められます。選択肢には「公開」「未収載」「非公開」が用意されています。ただし,投稿を書き込む時に個別的な切り替えが可能で,その際は「ダイレクト」という項目が加わります。

プロフィール設定画面には,「非公開アカウントにする」という設定箇所があります。これを設定するとフォローは承認制になり,デフォルトの投稿公開範囲が「非公開」になります。ただし,プロフィール画面や過去の投稿は表示されたままなので,Twitterの非公開とは違うことに注意する必要があります。

ちなみにマストドンAPIでトゥートする場合,ユーザー設定(デフォルト)とは異なる公開範囲設定になる可能性があります。APIを使うサービス側の設計次第です。

まず重要なことは,マストドンは公開を基本としたオープンなシステムだということです。

他者に知られては困る情報をやりとりするための暗号化機能は備わっていませんし,インスタンス内のやりとりを非公開にする仕組みはほとんどありません。グループ内で秘匿的に使用するには,システム改変するか,存在を知られない運用の工夫が必要になります。

どれほどオープンなのでしょうか。

たとえば,インスタンス内の公開TLに投稿されたものは,インスタンス登録者以外(外部から)でもツールを利用することで閲覧が可能です。「Mastodon Timeline Peeping Tool Made by YUKIMOCHI」は,指定したインスタンスから公開TLの内容を取り出すツールの一つです。

また,プロフィール画面は外部に対して非公開にはできず,公開していた過去の投稿を遡って非公開にする機能はありません。プロフィール画面を閲覧するにはURLを指定する必要があるため,URLを知られなければよいとも言えますが,URL自体は「https://インスタンスURL/@ユーザ名」というシンプルなルールで構成されているため,推察して閲覧することは難しくありません。

一方,興味深いのは,投稿時に使う「CW」(Contents Warning)ボタンと画像に対して使う「NSFW」(Not Safe For Work)ボタンという投稿内容の目隠し機能が用意されていることです。オープンであるからこそ,配慮の必要な内容等は目隠ししておけるようにしてあるのはマストドン独特の機能です。

いずれにしても,クローズドなグループ利用(登録者以外には閲覧されたくない)というニーズにはピッタリと応えられないのがマストドンの現状です。Facebookグループのように登録者のみの閲覧で投稿を囲う使い方はできません。

オープンを前提としてグループで利用するとしても,現状のマストドンの仕様はインスタンス内の出会いや交流について十分な配慮が盛り込まれていません。

そもそも関心を一にしてインスタンスに集った登録者同士が,インスタンス内で出会うには,ローカルTLに投稿しなければなりません。マストドンには登録者一覧やリストはありません。Twitterと同じといえばそうですが,インスタンスという単位に集ったのに,誰が登録しているのか一覧で知れないのは少々不便も感じます。

ローカルTLがそれなりに賑やかであれば,そこから気になる人をフォローするということになるのでしょう。しかし,お互い様子見していたり,投稿控えめなグループであることも考えられます。そうなると,なかなか出会いや発見も難しくなります。

ならば,登録者にどんどん投稿してもらってローカルTLを賑やかにして欲しいところ。

ただし,投稿が控えめになる要因がいくつか考えられます。

一つの要因は,ローカルTLへの投稿がプロフィールTLに記録されて,外部に公開されてしまうこと。

インスタンス内での交流を目的に投稿をすると必然的に外部に投稿が公開されてしまうのです。これを防ぐには投稿公開範囲を「非公開」にすることですが,ところが上の表にあるように非公開にすればローカルTLへの投稿が行なわれず,フォロワーだけにしか届かないのです。

「新規のフォロワーと出会いたくてローカルTLに投稿したいけれど,外部に投稿が表示されるのは恥ずかしいので非公開にしようとしたら,ローカルTLに投稿されず新規のフォロワーと出会いようがなくなる。」

現在のマストドンの仕様では,この問題を解決する術はありません。

もう一つの要因は,ローカルTLへの投稿が連合TLにも必然的に流れて公開されてしまうこと。

すでに説明したように投稿者側からするとローカルTLと連合TLには投稿先としての区別がなく,公開される投稿は公開TLに投げ出されるという考え方になります。

逆に言えば,インスタンス外部に投稿を出したくなければ「非公開」で投稿する以外にありません。

ところが,そうするとフォロワー以外に投稿は届かなくなり,ローカルTL,つまりインスタンス内の非フォロワーには投稿が読まれないということになります。

「同じ関心を持っているインスタンス登録者全員に投稿を届けたいけれど,外部に投稿が表示されるのは恥ずかしいし関心が違うだろうから非公開にしようとしたら,ローカルTLに投稿されず他のインスタンス登録者に届けられなくなる。」

現在のマストドンの仕様では,この問題を解決する術はありません。

マストドンが,分散型システムによるソーシャルネットワークであり,独自にインスタンスを立ち上げられることやグループ単位で利用する点に注目が集まっているにもかかわらず,一方で一過性の技術的ブームでしかないと見なされてしまうのは,利用するためのデザインに不足があるからだと思います。

現在のマストドンは,他のSNSがあって始めて利用開始が成り立っている状態です。

そしてインスタンスを立ち上げて,登録を促してみても,上記のような矛盾にぶつかり,マストドン単体で解決できない以上は,まだ一般の人々を巻き込んで利用を拡大してもらうことは難しいと思います。

マストドンはオープンです。

そのことは揺るぎないし,何よりも優先すべきことではあります。

しかし,だからこそ,関心の異なる人たちが分散し,偏在できるためのオープンな間仕切りの仕組みも必要だと思います。

マストドンは開発進行中のプロジェクトでもあります。

上記の課題に対する解決策やアイデアを実際に提案したり実装することが可能な取り組みです。そのようなことができるようになる能力としてコンピュテーショナル・シンキングやプログラミング・スキルようなものが必要なのでしょう。

たとえ一利用者だとしても,要望を伝えて共有することから物事が変わり始めると思います。

おそらくマストドンは,もう数年したときには,より成熟したソーシャルネットワークプラットフォームとしての姿を見せるのではないかと思います。あるいはそう時間はかからないかも知れません。

ただし,いまはまだ進化の途上といったところです。 

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マストドン4月までの動き

ソーシャルネットワークを実現するためのオープンな技術仕様がいくつか設計され,開発・実装が試みられてきました。しかし,TwitterやFacebookほどの普及には至っていないというのが現実です。

昨年(2016年)から開発が始まり,2017年2月6日付けでGitHubというソフトウェア公開共有サイトにてバージョン1.0がリリースされた「Mastodon」(マストドン)は,4月初め頃からネットメディアでの露出が増え,注目度が急上昇しました。

Mastodonとは、Twitter風のソーシャルネットワーキングシステムのソフトウェアです。TwitterやFacebookのような中央集中システムに繋げていくのではなく,分散したシステム同士を繋ぐ設計となっているフリーなオープンソースソフトウェアであることが特徴です。

つまり,自前のMastodonシステム(インスタンスと呼びます)を構築できて,それが他のMastodonインスタンスと繋がり合えるという案配です。

日本でも4月10日のASCII.jp配信記事をきっかけに個人インスタンス(mstdn.jp)が立ち上ってからというもの,新しもの好きネットユーザーを巻き込んだ導入と技術チャレンジが始まり,企業運営インスタンスがいくつも運営を開始する状況にまで至っています。

教育関係では,国内外の大学が独自インスタンスを構築し,登録時のメールアドレス認証で大学ドメインメールのみ受け付ける方式をとって, イントラ的に利用しようとする事例が登場しています。しかしまだ少数です。(@koshix 先生の参考トゥート)

[mastodon no_iframe=”1″]https://mstdn.jp/@koshix/6255748[/mastodon]

教育学習ICT関連に関心のある人達向けの elict-mastodon も開設から10日ほど経過していますが,認知度が低いのもありますし,教育関係において「新し過ぎるものに手を出すのはおのぼりさんのやること」的な空気もあってか,あまり話題になっておらず,静観されている感じです。メジャー化しそうになれば大御所がガバッとさらっていく感じになると思います。

現在のmastodonは,仕様的にオープン基調なため,学校向けのイントラシステムとして使いつつ,適宜必要に応じて外部にリモートフォローをいれて選択的に繋がって広げていくという使い方にはまだ不都合な箇所も多いです。

たとえば,児童生徒のトゥート(投稿)をローカルタイムラインには公開してインスタンス登録者間で共有したいが,自分の公開アカウントページ(フォロー,フォロワー,投稿が一覧できてリモートフォローしてもらうために外部に公開されているページ)には投稿を掲載したくない…という使い方はできません。
その逆(ローカルに投稿せず外部に見せる)ならばユーザー設定で「未収載」モードに設定することで可能であるという点がMastodonの外向性を象徴しているのかも知れません。

上記のことを理解するためには,Mastodonのタイムライン表示に「ホーム」「ローカル」「連合」という3種類あること,さらに外部に見られてしまう「公開アカウントページ」で表示される自分の投稿一覧と,(Twitterと同じように使う)タグによって表示される投稿の並び等について,整理して理解する必要がありますが,正直なところ,もともとのMastodon仕様設計がうまく整理されているとは言いがたいのも事実です。

いずれにしてもMastodonは分散型のソーシャルネットワーキングシステムをオープンに構築できるという特質と,Twitter風のインターフェイスゆえに取っ付きやすいことから,多くの人々が可能性を探り始めていますし,その過程で新しい可能性を提案する余地がまだあるシステムです。

現時点では教育学習の分野に対して可能性という程度にしか影響しませんが,それぞれの学校が緩やかに他の学校や社会と繋がっていくという「社会に開かれた」学校教育を目指していく流れに,Mastodonというシステムは親和性が高いのではないかと思います。

今後の動向もウォッチしていきたいと思います。

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[2016]
2/21 Mastodon GitHub Initial commit by Gargron (Eugen Rochko)
3/16 Mastodon 0.10 GitHub公開
10/5 mastodon.social(独) 開始
10/6 Show HN: A new decentralized microblogging platform (github.com)」(HackerNews)
11/23 Mastodon is an open source, decentralized version of Twitter」(TheDailyDot)
11/28 Are You on Mastodon Yet? Social Network of Our Own」(The Chronicle of Higher Education)
[2017]
1/6 What would Twitter be if it adopted Wikipedia’s politics?」(openDemocracy)
2/6 Mastodon 1.0 GitHub公開
3/17 アプリ「Amaroq for Mastodon」1.0.0 公開
4/1 Welcome to Mastodon」@Hacker Noon(Eugen Rochko)
4/4 mastodon.cloud(仏) 開始
4/4 Mastodon.club(加) 開始
4/5 niu.moe(仏) 開始
4/5 Mastodon Is Like Twitter Without Nazis, So Why Are We Not Using It?」(MOTHERBOARD)
4/6 Twitter Lite 提供開始
4/6 What Is Mastodon and Will It Kill Twitter?」(PC Magazine Australia)
4/7 A beginner’s guide to Mastodon, the hot new open-source Twitter clone」(The Verge)記事配信
4/7 ika.moe(仏) 開始
4/10 Twitterのライバル? 実は、新しい「マストドン」(Mastodon)とは!」(ASCII.jp)記事配信
4/11 mastodon.nil.nu 稼働
4/12 mstdn.jp 開始
4/13 kirakiratter.com(米) 開始
4/13 アプリ「Tusky」1.1.2 公開
4/13 ポストTwitter? 急速に流行中「マストドン」とは」(ITmedia)記事配信
4/14 Mastodon Wiki 開設
4/14 pawoo.net 開始
4/15朝 mstdn.jp さくらインターネットへ移行完了
4/15 pawoo.net が一部海外インスタンスから遮断される
4/18夜 mastodon.cloud DDoS攻撃受ける
4/19 friends.nico 開始(niconicoアカウント連携)
4/20 tuner.1242.com 開始
4/20 AbemaTVニュース番組AbemaPrime でマストドンが取り上げられる
4/21 Chrome拡張「Tooter」0.26 公開
4/21 mstdn.jp管理人(@nullkal)ドワンゴ入社を発表
4/21 Pawooとpixivのアカウント連携開始
4/21 アプリ「Pictdon for Mastodon」1.1 公開
4/22 elict.net 開始
4/22 iomstdn.tokyo 開始
4/24 アプリ「Pawoo」(Android版)公開
4/24 アプリ「Mastodon-iOS」1.0 公開
4/24 MathJaxにより数式表示するブックマークレット公開(by @EzoeRyou #math)
4/24 世界最大の「mstdn.jp」を立ち上げた大学院生“ぬるかるさん”は一体何者か」(ITmedia)
4/25 pixiv Night #4 (by pixiv)
4/25 アプリ「Tootter for Mastodon」1.0 公開
4/26 アプリ「friends.nico」1.0.0 公開
4/27 アプリ「Pawoo」(iOS版)1.0 公開
4/27 アプリ「Oyakodon」1.0 公開
4/27 mstdn.itmedia.co.jp 開始
4/27 pawoo.net 10万ユーザー突破
4/27 Mastodon Tech Night#1 (by TechFeed #dontech
4/28 マストドン会議 (by 角川アスキー総研)
4/28 Webクライアント「Naumanni」(by @shi3z@UEI)発表
4/29 アプリ「Ore2」Mastodon対応
4/29 mstdn.jp 10万ユーザー突破
4/29-30 ニコニコ超会議
5/17 マストドン会議2(by 角川アスキー総研)

マストドンWiki
https://ja.mstdn.wiki/メインページ

Mastodon (Wikipedia)
https://en.wikipedia.org/wiki/Mastodon_(software)

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ちなみにちょうど東京滞在している期間なので,マストドン会議2に参加予定です。

平成29年告示 学習指導要領(幼稚園・小学校・中学校)

 平成29年3月31日付で新しい「学習指導要領」が告示されました。

 幼稚園教育要領,小学校学習指導要領,中学校学習指導要領の3つです。パブリックコメントを経たということになります。

学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続き(パブリックコメント)の結果について 
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000878&Mode=2

 要領自体は,国立印刷局Webサイトにて,官報(号外第70号)に掲載されたものが閲覧可能です。

官報(号外第70号)目次 
http://www.npb.go.jp/ja/today_kanpou/20170331/20170331g00070/20170331g000700001f.html

 文部科学省Webサイトもパブリックコメントの結果として掲載されています。

学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案,小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリック・コメント)の結果について 
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1383995.htm

 

(参考) 松野文部科学大臣会見(平成29年3月31日)はこちら

 

官報号外70号 学習指導要領関係部分だけ一括したPDF 
http://www.con3.com/files/kanpo_gogai70go.pdf 

 

文部科学広報 2017年3月号 
http://www.con3.com/files/monkakoho201703.pdf 

日本のプログラミング教育言説の採取 -1

日本の識者がプログラミング教育や教育の情報化について,どのように述べているのか採取していきます。(※必要部分のみを採取しただけなので前後の省略に関しては元資料を参照のこと)

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堀田龍也(2016)「プログラミング教育が目指すもの」,総合教育技術10月号,小学館(「教職ネットマガジン」に再掲)

(人工知能がこれから発展することによって…できるようになるはずです。)「こうしたことが社会の常識となった時代に、それがいったいどんな仕組みでどうやって行われているのかということを、私たちは分からないままでいいのでしょうか。」(堀田龍也2016)

「特に子どもたちには、少なくとも次のようなことを知っておいてもらう必要があります。
・コンピュータはプログラムで動いているということ
・プログラムは誰か人が作っているということ
・コンピュータには、得意なところと、なかなかできないところがあるということ」(堀田龍也2016)

「今回導入される、プログラミング教育は、プログラマー育成をするわけではありませんから。そこで文科省は、この教育を通じて身につける思考を「プログラミング的思考」と名付けました。つまりプログラムを学ぶのではなく、コンピュータを動かす体験を通じて思考方法を学ぶということです。」 (堀田龍也2016)

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山西潤一(2017)「年頭所感  未来の創り手を育てる教育工学研究 (2017年2月)」(日本教育工学会Webサイトに掲載)

「30年前、情報化が進むことで、私達の身の回りには便利なブラックボックスが増え、誰もがボタンを押せば、全て自動でしてくれる便利な道具が増えることを喜んだ。しかし、ブラックボックスでいいのか、そこに新たな問題が生じる。」(山西潤一2017) 

「発達段階に応じて、ブラックボックス化したシステムの中身を考え、どのような仕組みで動いているのか分かることが重要だ。望ましい情報化は一部の専門家のみに任せるのではない。中身がある程度理解できれば、その便利さや危うさも理解できる。そのためには自らシステムを作ってみるのが一番。」(山西潤一2017) 

「プログラミングの経験のない先生方にとっては、コンピュータ言語を覚える、その仕組まで・・という不安がある。しかし全く問題ない。より分かりやすいコンピュータ言語もあるし、日本語で手順が説明できればいいのだ。私の経験から言えば、小学生が1,2時間で理解できる内容だ。」(山西潤一2017) 

(エストニアの教育事情を視察した。)「プログラミングを学ぶための学習ではなく、道具としてコンピュータやロボットを活用しながら、表現力や創造性、論理的思考力を育んでいた。そこには教師主導の伝達主義的教育ではなく、まさしく児童生徒中心の構成的教授法に基づく授業が展開されていた。日本のプログラミング教育もそうありたいものだ。」(山西潤一2017

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美馬のゆり(2016)「プログラミング教育って何? 本当に子どもに必要なの?」(インタビュー記事)

「プログラミング教育とは、プログラムができるようになるということではなく、プログラミングというものの考え方を学び、思考のための道具を身につけることだと考えています。」(美馬のゆり2016)

「コンピュータができたことで生まれたものの考え方に「計算論的思考」というものがあります。ひとことでいうと、あえて自分がコンピュータになったかのようにものごとを考えていくと、いろいろな問題がうまく解ける、という考え方です。」「プログラミング教育というのは、プログラミングを学びながらこのような計算論的思考を身につけるためにあるのだとわたしは考えています。」(美馬のゆり2016)

「世界が急速に変化しているなかで、世の中で起こっている問題の解決の糸口を見つけていかなければならないとき、いろいろな考え方、ものの見方ができることがとても役に立つからです。」(美馬のゆり2016)

美馬のゆり(2016)「料理はプログラミングだ!」(インタビュー記事)

「創造性をどう伸ばしていくか、というところにこそプログラミング教育は注力してほしいと思います。」(美馬のゆり2016)

「必修化するのであれば、教員養成をきちんとやっておかないと大変なことになると思います。準備不足で導入してプログラミング嫌いを増やすことになる前に、教員がプログラミングの本質を授業で伝えられるようなツールや副読本を作り、授業の実践事例を広めていかなくてはいけないでしょう。」(美馬のゆり2016)

「料理って、アルゴリズム(問題を解く手順)そのものなんです。」(美馬のゆり2016)

「どういう手順で、どういう制約のなかで料理をしているのか、自分の頭のなかにあるものを一度言語化してみて、どうやったら効率的に料理ができるようになるか、パズルのように考えてみてはいかがでしょうか。」(美馬のゆり2016)

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岡嶋裕史(2017)「なぜ子どもにプログラミング教育が必要なのか」(インタビュー記事)

「なぜプログラミング教育が必要なのかといえば、これからの社会において仕事の進め方が大きく変わっていくからです。」(岡嶋裕史2017)

「プログラミングの基本的な知識の有無で、リーダーシップや他者とのコミュニケーション能力にも大きな差がついてしまうわけです。」(岡嶋裕史2017)

「いまは世の中のしくみの大きな部分を情報技術がつくっているので、それを知った上で社会に出ていくことは、大きなアドバンテージになると思います。だからこそ、小・中学生のプログラミング教育が注目されているのだと思います。」(岡嶋裕史2017)

「プログラミングは英語と同じように、あくまでツールなんです。理科や社会を勉強するツールとしてプログラミングを利用することで、これまでは実験すらできなかったような分野での試行錯誤が可能になったり、異なる視角からの理解が可能になる。その結果、学習能力全般が向上する側面もあると思います。」(岡嶋裕史2017)

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原田康徳(2016)「子どもだけではなく全ての日本国民にとってプログラミングが重要である、たった1つの理由」(インタビュー記事)

「人間とコンピュータがそれぞれ足りないところを補って共生していくためには、全ての人がコンピュータの良いところとダメなところを知っておく必要があります。また、『コンピュータとは何か』を追究すると、『計算するとはどういうことか』『モノを覚えるとはどういうことか』など、つまり『人間とは何か』が分かってきて面白いです」(原田康徳2016)

「コンピュータは、今の世の中を劇的に変えている最も大きな要因の1つです。人間から仕事を奪っている一方で、その周りには新たな仕事が生まれています。それにもかかわらず、コンピュータとは何なのかを理解するのはなかなか難しい」 (原田康徳2016)

「プログラミングを行うことで、コンピュータの“ワケの分からからなさ”が少しずつ理解できます」(原田康徳2016)

「『コンピュータとは何か』という純粋にコンピュータを教える時間はコンピュータの専門家が年間で2時間ほど担当するだけで十分です。先生たちには、子どもと同じ目線で授業を受けてもらい、そこから各教科にどう役立てていけばよいのかを発見していただきたいですね」(原田康徳2016)

「小学校のプログラミング教育では、コンピュータの深い知識を教える必要はありません。コンピュータ上で起こっている不可思議な現象には、全てちゃんとした理屈があることを、子どもたちに何となく理解してもらえればいいと思います。」(原田康徳2016)

「今の情報化社会は一部のお金持ちとエンジニアが作っているものです。ここに、一般の人が入ってこないと文化として豊かなものになりません。これからの情報化社会を文化的に豊かにするために何ができるのかを、私も、皆さんと一緒になって考えていきたいと思います」(原田康徳2016)

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阿部和広(2017)「プログラミングの本質と学びへの効果」(インタビュー記事)

「プログラミングは目的を考えるとダメになります」(阿部和広2017)

「プログラミング学習で論理的思考力を養えるといった謳い文句を目にすることもありますが、プログラミングを学習している子どもが論理的になるかどうかは現時点では不明です。プログラミングという行為自体は高い論理性を求められますが、プログラミングが論理的思考力を養うかどうかはまだわかっていないんです。」(阿部和広2017)

「小学生の段階からスマホアプリのコードが書けるようになっても有能なプログラマーになれるという保証は一切ないです。むしろ有能なプログラマーに求められる能力は、コンピューテーショナル・シンキングができるかどうかです」(阿部和広2017)

「プログラミング的思考はコンピューテーショナル・シンキングの一部分」(阿部和広2017)

阿部和広(2017)「「プログラミング教育」における教師や大人の役割」(インタビュー記事)

「学校でプログラミングの教育体制を作っていくうえで何より大切なのは、先生自身がプログラミングを実際に体験することです。体制づくりの過程で、まずは先生が主役になる。そのうえで、子どもが主役になる授業展開ができるようにするんです。」(阿部和広2017)

阿部和広(2015)「Scratchプログラミングをなぜ子供たちに伝えるのか」(インタビュー記事)

「プログラミングを学ぶ理由の一つとして、論理的思考力がよく挙げられる。これは、プログラムが論理的である以上、プログラムを正しく書いて動かすためには論理的思考ができないといけないから、結果として身に付くであろうということだ。ただし、この論理的思考力というのは、どちらかというと二次的な結果、副次的な結果として身に付くのだろうと考えている。」(阿部和広2015)

「プログラミング学習においては、間違うこと自体がむしろ積極的に肯定される。間違いを直すこと、つまりデバッグが、大変効果的な学習となる、言い換えれば、試行錯誤しながら目標に近づく態度が身に付く。プログラミングをすることにより、この態度が自然と身に付いて習慣化することこそが、一次的な目的なのだ。」(阿部和広2015)

 

教育関連パブリックコメント 201702

電子政府の総合窓口で募集しているパブリックコメントの中から教育関係をピックアップしました。

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児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令案に関する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495160378&Mode=0

「児童福祉法施行規則第一条の三十八の厚生労働大臣が定める基準案」及び「児童福祉法施行規則第三十六条の四十六第四項の厚生労働大臣が定める基準案」に関する意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495160379&Mode=0

「第3期教育振興基本計画策定に向けた基本的な考え方」に関するパブリックコメント(意見公募手続)の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000874&Mode=0

いじめの防止等のための基本的な方針の改訂等に関する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000876&Mode=0

平成28年度教科用図書検定調査審議会 教科書の改善について(論点整理)に関する意見募集
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000877&Mode=0

「保育所保育指針の全部を改正する件」に関する御意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495160408&Mode=0

「学校教育法施行規則の一部を改正する省令(案)」及び「学校教育法施行規則第五十五条の三等の規定による特別の教育課程について定める件(案)」に関するパブリックコメント(意見公募手続)の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000879&Mode=0

学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリック・コメント)の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000878&Mode=0

子ども・子育て支援法施行令の一部を改正する政令案に対する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095170110&Mode=0

子ども・子育て支援法施行規則の一部を改正する内閣府令案に対する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=095170120&Mode=0

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