ただ粛々と

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 平成20年4月22日に二回目となる全国学力・学習状況調査が行なわれた(昨年度は4月24日)。小学6年生と中学3年生が対象となって,国語と算数(数学)の学力試験と学習状況の質問紙調査に取り組んだ。報道によれば,無事終わったようだ。

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 全国学力・学習状況調査の実施に関する議論にはいろいろな層(レイヤー)や位相(フェイズ)がある。

 1) 必要性に関する議論
 2) 政治・政策的な議論
 3) 経費コストの議論
 4) 調査内容・手法に関する議論
 5) 実施に関する議論
 6) 結果の扱いに関する議論

 学力・学習状況調査の必要性や意義について議論が生まれるというのも,よく考えると不思議なものである。私は調査は必要なものと考えるけれども,他の立場に立てば「全国一律にやる必要があるのか?」とか「現場を圧迫する」という考えのもと必要ではないと考えることもできる。
 しかし,その時点ですでに議論のレイヤーやフェイズがごっちゃになっていることに注意したい。「全国一律」の悉皆なのか「現場圧迫」的なものかどうかは,調査手法などの問題として切り分けて考えなければならない。

 調査は文部科学省や文教族の政治・政策的な道具であるとの議論もあるかも知れない。当然予算の問題と絡んでくるだろう。経費やコストの問題からは逃げられない。
 どんな調査を行なうのか,調査計画の立て方や調査の方法,実際の試験や質問紙の内容についても,議論は尽きないだろう。そしていざ実施となれば,三万二千校もの学校と試験用紙や関係書類のやりとりをする必要がある。そして採点・集計を経て,結果の返却。その結果をどのように扱うかも議論は山積みだ。


 粗雑なものでもレイヤーやフェイズについての枠組みを手元に置いた上で,全国学力・学習状況調査に関して議論を続けることは大事だ。メリットとデメリットがあるのは承知のこと。私たちに必要なことは,メリットに対してオープンな態度を取り,デメリットを少しでもより小さくしたり,抑制的に接することだと思う。

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 今年度の試験問題や質問内容は,昨年度実施に対して出た声をいくらか踏まえた形跡も見受けられる。主として知識を問う「A」問題,主として活用をみる「B」問題という構成は踏襲している。一見しただけなので印象論でしかないが,小学校に関しては,国語の出題にはあまり変化が見られないが,算数はB問題の出題に図が多用されていることがわかる。

 また,学習状況などを問う質問紙では,質問項目が少なくなったり,選択肢順を入れ替えたりしている。学力テスト自体に関する質問(問題について,どのように思いましたか?)の関連項目は大幅にカットされた。
 こうして調査内容自体は見直しが図られ改善されていく。

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 私は,理想的なことをいえば,こうした調査が粛々と続いていき,結果の扱いについても私たちが抑制的であること(例えば,この結果は限定的なものであることを理解し,オーバーリアクションしないこと)を保つことで,教育を良くする努力に役立てられると思う。
 もちろん,調査の内容や方法に対する技術的な改善,より妥当な可能性を模索する努力も,同時に怠らないことが前提条件ではある。悉皆調査のせいで調査結果の返却が遅いことが問題ならば,それを何かしらの方法で解決すべきである。


 ただ,現実的なことをいえば,この国には残念ながらそのような方向性をとる気はないし,そのための予算経費は増額されるどころか,縮小されるパイの中で分捕らなければならない。
 その現実を前に,私は現在の形のままで全国学力・学習状況調査が続けられるとは思わないし,そのコストを他に回した方がよいという判断をしなければならない場合もあると考える。私たちが想像している以上に,この国は困窮している。

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