職場の最近のブログ記事

第2週を終えて

user-pic
0

 新学期の慌ただしい日々を含んだ第2週も終わり,明日から平常授業が続く4月第3週が始まる。研究室環境はほぼ完成し,贅沢を言うなら冷蔵庫とか電子レンジがあるといいなぁという感じである。

 前職の時から引き連れている蔵書と部材があったから,もともと一通りのものは揃っていたし,足りないものは職場の近所(?)にある文具店やホームセンターで調達できた。研究室を見ると,まるで数年前からここに居たんじゃないかと思うくらいにモノがたくさんある。というか,この部屋に馴染んでいる。

--

 研究室の環境を整備し終えたら,ぼちぼち仕事に取り掛からねば。環境作りで体力も使って,少しくたびれているものの,授業の準備もしなければならないし,研究成果の発表準備もしないと…。

 でも,正直なところ,学生達を見てみないことには,どの程度のレベルで授業を進めるべきかわからない。学生達同士は,総合大学ゆえか,かなり温度差がある。大学における最大の関心事が「学習意欲をどう喚起するのか」というところにあるのだから,東京で調子こいて講義していたのとはまた違う次元の努力が必要だ。


 う〜む,そんな調子じゃ,また研究とご無沙汰になっちゃうんじゃないかという不安は募れど,焦っても結果は出ないし,とりあえずは,自分のモチベーションを維持するために「教育らくがき」を再開することにした。

 隠居して沈んじゃわないためにも,まずはこの場所で孤軍奮闘,七転八倒しないと…。

終電がない

user-pic
0

 久しぶりに大学のすぐ傍に住むようになって、好きなだけ大学に残れるようになった。東京大学在学中はどうしても終電に乗らないと帰れなかったが、いまは終電が無いので気にせず居残り。今日も夜中の1時半まで。明日は1時間目から授業だというのにね…。

 家に帰っても誰もいないし、何もないので、大学の研究室に居残るのが大好きである。願わくは邪魔されずに研究室でのんびりと本を読んだりしていたいのであるが、世の中そういうわけにもいかないので、まあ、授業やら仕事やらをこなしつつ過ごしたりする。大学院の時は、他の院生もいたりして一人の時間を確保するのも難しかったが、それに比べれば新しい職場の環境は有り難い限りだ。

--

 ここ数日、宙ぶらりんを楽しんでいたが、さすがにそのままというわけにはいかないようで、細かい所属と学生指導の仕事をいただいた。生活科学科食物専攻にぶら下がり、10人ほどの学生の面倒を見ることになった。

 栄養学は素人同然の私に、栄養士を目指す学生達をサポートできるのかどうか怪しいが、まあ、学生生活上の困ったことや相談事があれば話を聞くという役目なので、何とかなるかなと思う。

 男子学生が一人居る以外は全員女子学生。嫌だ嫌だと念じても、どうもそういう運命にあるようで、また気を使う日々の始まりである。どこまでも女性陣にご奉公の人生らしい。神様、太陽を見すぎました、来生は誰か一人の女性にご奉公するぐらいの運命にしてください。^_^;

 というわけで、こんな調子で突然仕事が降ってくるらしいので、とにかくうまくこなせるように頑張りたいと思う。

--

 あちこちに住所変更や勤務先変更を届け出る作業も進めている。銀行やカード会社、学会や定期刊行物、いままで名刺や年賀状をいただいた皆さんにもご挨拶をしないと…。住所録が未整理なので、改めて作成し直す必要があるなぁ。こういう作業はなかなか大変である。

 さてと、明日も頑張りますか。

研究室はOK

user-pic
0

 4月1日から新しい職場に着任し,右も左も分からないまま担当授業が始まり,週末を挟んで,今日は入学式。徳島にやってきて一週間経ったが,まだ腰を落ち着けて仕事を始めるには至っていない。

20090406lab220090406lab それでも,職場の研究室の環境準備も進み,いくらかの段ボールを除けば,人を受け入れる環境にはなったと思う。ご覧のように両側が本棚で,目茶苦茶な方針でかき集められた蔵書が並ぶ。教育学系の文献は実家に残してあるので,年内には一緒にしようと思っている。一番奥に私自身のデスクがある。私のデスクから見ると,入り口とテーブルはこんな感じ。私とテーブルにはある程度距離を持たせたので,基本的にテーブルは誰が利用しても良い感じにしてある。


 仕事場の整備はOKとして,一方の自宅は未整理。とりあえず隣り近所から丸見えだったので足りなかったカーテンを買い込んで,なんとかプライバシーは確保した。

 不動産屋さんによると,物件にもよるが,徳島の賃貸物件に電灯やガスコンロの無いものあるという。実際,私が借りた部屋も電灯とコンロがない。なので,真夜中に帰ると,お風呂とトイレの明かりと,持ち込んだデスクライトの明かりしかない。もちろんガスコンロがないので,まだ自炊もできない。

 いっそのこと,部屋の明かりは全部間接照明にでもしてやろうかなと思う。ガスコンロは,さすがに無いと自炊ができないが,置く場所一つの安いコンロ買って,立派なオーブンレンジを買ったほうがいいのかな。


 まあ,まだ徳島生活始まったばかり。環境は少しずつ良くしていくとして,ぼちぼち仕事に取り掛かろう。

やられた

user-pic
0

 新2年生以上は4月2日から授業開始なので,私も着任早々に授業を始めた。その勢いで月曜日の1時間目の授業からあるもんだと思って,真夜中までどうしようか困っていたら,ついさっき月曜日が入学式だと気がついた。

 ん?入学式ってことは,休講なのか?

 ああ,新任者説明会で途中抜けしたから,肝心のスケジュール説明を聞いてなかった。どこを調べりゃいいんだ。学内のポータルサイトをあちこち探し回るが,教員向け情報がたくさんありすぎて見つからない。

 学生向け情報の2月掲示分から,ようやく目的の情報が得られた。

 4月6日と7日は休講…。


 あ,そうですか…,ホッとするやら,悲しいやら…。

さっそく授業

user-pic
0

 昨日,辞令と研究室をいただいたばかりだが,さっそく2年生以上の学生たち向けの授業が始まる。幸い,2時間目に1コマだけだったが,新任者ガイダンスを抜け出したり遅刻したりとお恥ずかしい行動になる。僕のせいじゃないのに…。

 教育方法・技術論の授業は,「教育課程及び指導法に関する科目」に属する教職科目で,免許法上は「教育の方法及び技術(情報機器及び教材活用を含む。)」と表記されているものである。この授業を担当するために,一応,私の名前が文部科学省に届け出されたわけである。

 受講してくれたのは,心理や看護や栄養など様々な学部学科の学生たち。ストレートな教職というよりは養護教諭や栄養教諭といった資格を目指している。

 そう考えると,これは今までとは多少内容を変えなければならないかなと考えている。今までは教室という舞台で勝負をする教師を育成することを主に考えていたわけだが,今度は保健室や給食室,あるいは職員室といったところをメインの舞台とする教育職の在り方を考えていかなくてはならない。

 なかなか興味深いテーマである。これについては私自身も,知識や見聞きした経験を整理し直す必要が出てくるだろう。40数名の受講生たちと一緒に授業をつくっていければと思う。いや,ゼロからのスタートでごめんなさい。何しろ荷物が届いてないから,本当に手ぶらなのさ。

--


 あ,ところで新年度になって,新しいこのブログにお越しになった皆様こんにちは。

 昨今は,名前を見たらまず検索,なんて時代になったから,私を間近に見ている人たちもいるのだとは思う。学生の皆さんも混じっていることだろう。とりあえず,いらっしゃいませ。

 さて,このブログは私のこだわり分野である教育と情報を中心として,ざっくばらんに駄文を公開し続けている場所である。途中のブランクは細々あれど,スタートして10年以上経つので,ネット世界では比較的長寿サイトということになる。

 基本的には私の日常や思考から生まれた話題を書いているのであるが,事実もあれば妄想もある,ただの思考実験もある。とにかく雑多で長文傾向の強い駄文ブログなので,ちょっと楽しみ程度に読むくらいがちょうどよいと思う。もちろん,読まなくてもいいと思う。


 そもそもは,教育を考えるきっかけや刺激をつくろうというのが出発点なので,書いてあることは絶対ではないし,完成されてもいない。それゆえにここの文章のことを「駄文」と称している。


 駄文を書くために,あえて批判的に書くし,自分の考えを先へ進めたりする。なので,書いてあることと普段考えていることがずれることはあるので,私と直接やりとりする機会のある皆さんは,ずれに注意しながら,こっそり楽しむというのが暗黙の約束なので,よろしくお願いしたい。


 というわけで,いろいろ至らないところはたくさんあるが,今後も続く予定。そして近いうちに,タイトルをあれに戻しちゃいますかね,いよいよ。


--


 Y先生から余っている自転車を安く譲っていただくことが出来た。おお,これで移動範囲が格段に広くなる。素晴らしい。Y先生ありがとうございます!


 明日は引越し業者さんが預かってくれている荷物を持ってきてくれる。わがままを言って,本の段ボールを職場に持ってきてもらうことにした。そして,夏になったら実家の方にある残りの蔵書たちを呼び寄せよう(あ,自分で箱詰めしますけどね…)。徳島の地で,ようやく自分の蔵書が1カ所にまとまる。いやぁ,楽しみだわぁ。


 でも,宙ぶらりん教員なので,いまのところゼミ生とか持てないんだよねぇ。せっかく,未来のゼミ生のためにこつこつ買い集めてきた蔵書も,まだ活用されないのね。「りんゼミ」復活は,まだ遠い先になりそうだ。

新年度のご挨拶

user-pic
0

 4月になり,新しい年度がスタートした。私は徳島県にある徳島文理大学というところで,再び大学教員として働かせていただくことになり,また気持ちも新たに教育・研究生活を始めることとなった。

 正式には,徳島文理大学短期大学部の准教授として一般総合科目を担当する。主に情報関係の授業だが,二足のわらじを履いているということで,教育学や教職課程の授業も担当に含まれている。どんな教員生活が始まるのか,いまの段階ではまだ想像もつかないが,とにかく,授業に力を入れることが期待されているようだ。

--

 辞令式のあとに記念撮影が終わると,たくさんいた新任者や参列者はちりぢりばらばらに分かれていった。取り残された私は,とりあえず学務係へ出向いて明日からの授業について聞いてみる。なにしろ新任者のガイダンスと最初の授業が重なっているのだ。

 学務に聞くと「授業を優先」して欲しいらしい。まあ,当然といえば当然。それは分かったので,今度はこの大学での居場所について,研究室はもらえるのか聞いてみた。それならば施設係が窓口だという。

 施設係に行くと,私の研究室の割り当てを教えてくれた。なんか自分についてハッキリした情報や割り当てが返ってきたのは初めてだったので,ちょっとホッとした。メディアセンターという建物に研究室をいただけるという。新しくてきれいな建物なので,それはとても嬉しい。

20090401lab というわけで,私の新しい仕事場とようやくご対面。これからこの場所で授業の準備や研究などをしていくことになる。まだ荷物もないせいか,なかなかの広さ。嬉しいのは棚が備え付けてあること。これなら蔵書を持ち込むことができる。引っ越し業者さんに相談してみることにしよう。

 このあと,着任前からいろいろご配慮くださっていたY先生が,必要な事柄について詳しく説明してくださったり,授業する予定の教室を一緒に回って見せてくださったり,しばらく足りない機材を貸してくださったりと,あれこれ面倒を見てくださった。本当に心強い。感謝感謝。

 それから,短期大学部の事務の方が一人いらっしゃるというので,会いに行く。その方に,全体の中での自分の位置づけがどういうものなのかを教えてもらった。ぼんやりとしたイメージは分かってきた。なるほど,結構宙ぶらりんなのね。

 そして,購買へ行って,学生たちが使うテキストを眺めて,自分が担当する学部学科の学生たちがそれぞれ勉強する専門分野の概論書を買うことにした。私が担当するのは情報教育だけど,それぞれの分野にフィットさせるためにも,別の分野の知識も吸収しないといけない。今回買ったのは『給食経営管理論』『やさしい栄養学』『医療秘書』である。いやはや,まったく世の中には知らない世界がまだまだたくさんあると思う。

--

 とにかく,徳島での大学教員生活が始まった。まだまだ環境整備が十分でないが,はやく落ち着いて,あれこれ取り組み始めたいと思う。とりあえず,お昼食べないで夜になっちゃったので,お腹減った。

踊るなら

user-pic
0

 踊り踊るなら東京音頭の東京から,踊らにゃ損々な阿波踊りの徳島へ。

 この度,春からの行方が決まり,また大学教員として働けることになりそうです。西は四国の徳島へ。西日本にも行ってみたいと思っていたので,有り難いご縁をいただいたことになります。

 またお世話になっている皆さんには改めて詳しい情報のお知らせとご挨拶をさせていただく予定ですが,とにかく春からは徳島で生活することになりますことを取り急ぎご報告させていただきます。

--

 東京に暮らしていたがゆえに機会を与えていただいていた仕事もたくさんあります。そうした機会がなくなるのはちょっぴり寂しいですが,それも人生。ご縁があれば,またご一緒できると信じています。

 さて,また慌ただしい日々が始まります。
 

お疲れさま

user-pic
0

 私が前の職場を辞める直前に,私がお願いして採用になったパソコン教室の助手さんがいる。ご一緒に働けたのは数ヶ月だけであったが,とても仲よくなったので,たまに連絡をしてくれる。

 この度,ご主人の都合で引っ越されることになり,3年間の勤務が終わると連絡をもらった。大変だったが,楽しい毎日を過ごしたとのこと。私と同じである。

--

 人を取るとか,採用するとかは,とても難しい。仕事の能力が必要なのももちろんだし,一緒に働く相手なのだからお互いの相性も大事だ。そうした様々な条件を満たす人材を探し出したり,あるいは巡り合ったりするのも難しい。

 でも,私の場合,最終的にはとても良い人達と巡り合えたので,ご一緒する仕事はとても前進した。

 え?私が上司っぽい仕事をするのが想像できない?ああ,そうですか。まあ,少なくとも島耕作みたいじゃないわね,確かに。前の職場の売店のおばちゃんに「先生は商売に向かないわ,あはははは」とハッキリ笑われたので仕方ない。

 とにかく,私の場合,どちらかというと人柄重視で評価し,人材を育てる覚悟で採用する傾向にあった。お給料が安い分だけ,専門知識を提供しようというわけである。そうやって技能を身に付けたら,また別の仕事にチャレンジしてもらえれば,本人にとっても得るものが大きいはずである。とにかく,毎日が学習だった。

--

 今回,勤務を終えられる助手さんも,数ヶ月間の限られた時間の中で,あれこれ一緒に学んだ。そして,私は退職することになったけれども,その後3年間,しっかり職場を支えてくださったようである。本当にお疲れさま。

 しばらく慌ただしさのために記録が滞ってしまった。非常勤先の担当講義も残すところ3回となり,そろそろ授業の締めにかからなければならない。

 「初等教育の内容と方法」は,最後に試験,その前に復習とゲストを迎えることになるため,自由に講義できる最後の日ということになった。教科書の内容はすでに先週のうちに片づけたので,その中の教育評価に関する復習とリクエストのあった指導案の書き方や在り方について論じ,十八番である就学前教育から高等教育までの各学校段階を通して見る話をして,初等教育の位置づけを確認して講義を終えた。

 3年ぶりの週一講義と修士論文研究を同時並行させるという無茶ぶりな担当であったが,なんとか一通り授業を終えられそうである。しかも,初等教育の内容と方法に関して学校教育の内部だけでなく外部のまなざしも強く意識した授業内容となり,他の授業が描く教育の姿と比べて,より現実的なものを描けたのではないかと考えている。

 概して,教員養成の授業で膨らまされている学校教育に対するイメージは,伝統的な教師文化の再生産といったものや,マスコミベースで展開する表層的情報が,教員養成現場に流布する素朴な誤解とともにないまぜになってしまっている。

 こうした混線状態を解きほぐしたり整理する機会は意外と少ない。このまま次代の教育現場を担う人たちが誤解を持って現場に入ってしまうと,想像と現実の齟齬でストレスや精神的負担を感じ,教員生活がより苦しく感ぜられてしまいかねない。まして,困難な時代に入ったこのご時世では,そうした状況に耐えられず教職を辞してしまう人も出てきてしまいがちある。だからこそ地方自治体の一部で,教師塾のようなものが作られ,少しでも現実に即した知識と技能を伝授しようとする動きがあるのだと考えられる。

 「大学という高等教育の現場で教員養成を行なうことの意義とは何か」

 教員養成に携わる人間全てが,真摯に考えなければならない問いだと思う。それは,少し変化球ではあるが,教員免許更新制度の講習の場において,どのような研修内容を扱うべきなのかという問いとして,投げ掛けられているところもある。しかし,現実的には,この問いに応える余裕が高等教育からも失われている実態があることも理解されなければならない。

 職場を捨てて自分のための勉学に精を出し始めた無責任な男に,なぜだか神様は,教員養成の現場を手伝うようにと運命の糸をたぐり寄せた。「まだ問いの答えを出したわけじゃないだろう?」そう言う神様に,私は「僕でいいんでしょうか」と聞いてみたりする。神様は「本当は誰よりもやりたいくせに」と言いたげな雰囲気で2つの授業を任せてくれた。

 高等教育の講義としては,あまりにジャーナリスティックであり,あまりにロマンチックであり,あまりに高尚で,あまりに下世話な授業であった。開始は時間通りで,終了は時間オーバー。同じ教室を使う次の時間の先生も,最初のうちはにこやかだったが,次第に呆れ始めていく。そういう授業を,たぶん他で見つけるのは難しいだろう。

 それが答え? そうは思わない。でも,そんな授業が一つあることも大事だと思う。

 一つ一つの授業によって教員養成が営まれているのではない。一つ一つの授業が集まり連携を通して教員養成を営んでいくのである。多くの授業が指導案を書く課題を相次いで出す。ならば,指導案というものの存在を思惟する授業があっていいはずだ。学生が疑問に思ったことに対して,考える術を提示するのも教員養成の仕事である。しかし,単なる批判に終わらぬようしっかりと手綱を取りながら。

 さて,初等教育の内容と方法も一段落。今日は授業アンケートも書いてもらった。かなり手厳しい評価も返ってくるだろうけれど,また次の機会に活かせるように精進したい。来週は試験のための復習とお楽しみゲストコーナーである。


--


 「教材論」は,各自の調査の中間発表を終えて,ようやく私が講義をする授業らしい授業が先週から始まった。アン・スファードの「学習のメタファー」について学生達は学んでいないというので,今日はそのお話から始めた。

 「獲得メタファー」という学習観とともに「参加メタファー」といった状況論的な学習観が重要視されており,これらを目的や状況に応じて使い分けることが大事と紹介した。その上で,私たちが各自で調査している「教材」というものが,どのような意味で重要なのかを,活動理論の変遷をみることで確認した。そう「三角形」の登場である。

 ヴィゴツキーの三角形モデル(三項図式)は,AからBの間が直接つながるのではなく,Xという媒介項を介してつながるリだという,ただそれだけのことを言っている理論である。その大事さを伝えるのは,なかなか難しい。手を替え品を替え言葉を替えて,媒介することの意義を語る。そしてXを道具であると考えるとき,教材の存在価値が見出されるように仕向けてみる。
 さらには,エンゲストロームの活動理論に発展させて,授業で行なってきた活動が三角三角のあの図の上で,どういう風に説明できるのかを線引きして見せた。悔しいながらも,これまた活動理論の三角形は,授業をうまいこと説明してくれるのである。ずるいくらいに。

 そして,後半はグループに分かれて発表の進捗報告や相談。私も各グループを呼び出して,集団面接状態で進捗確認をする。面白そうな進捗ばかりで,話を聞き込んでいたら,「先生!時間過ぎました!」「あ!」また時間オーバーである。

 次回も少しばかりまとめをして,各グループの作業時間。そして最後の日には,外部ゲストをお招きして,いろいろと教材製作の裏話もお聞きしたいと思っている。

 教材論における各自の成果は,Web上で公開予定である。やっぱり本人達の最初の希望通りには調べは進まず,あれこれを諦めながらまとめているようだが,まあ,卒論じゃないから当然だし,それでいいと思う。最初からテーマは小さくて絞り込んで良いと言ってあったし。

 この「教材論」の授業は,先の「初等教育の内容と方法」に比べると小さい規模で,わりとみんなで和気あいあいと活動をしてきた。授業という大義名分を利用して,実際の現場に出かけたり,情報を集める計画を実行したり,学生時代だからこそ挑戦できることをやるようにけしかけてみた。若者の経験不足を嘆くならば,若者に経験の機会を与えよう。単純な発想である。

 以前にもここで紹介したことがあるが,ある大学生からこんな話を聞いた。教員養成に通うその学生さんが小学校の児童と関わったとき,自分の紹介として「先生を目指している」と語ったら,「もう夢がないんだね」と言われたという。小学生からそんなことを言われるとは…,それはそれはショッキングなエピソードである。というよりも,その小学生にそんなことを思い至らせた周りの大人を取っ捉まえてやりたい。

 とにかく,いつもと違う試みや出会いをすることで,今後の人生に少しでも花を添えることができれば,それだけでも十分価値があると思う。私が東京にやってきて,いろいろな方からいただいたご縁をちょこちょことつなぎ合わせたり,学生の背中を押してみたりすることで,そういうものが生み出せたなら成功かなと思う。


--


 いつものように授業を終えて帰ろうかと思ったが,今日はたまたま学内で研究会が催されているというので,興味本位で飛び入り参加することにした。「PISA / TIMSSと教師教育 -日本とドイツの教師教育に何をもたらしているか-」(PDFチラシ)という公開研究会。こちらも大変興味深い内容だった。そして,いつもの質問癖が顔を出して,あれこれ口出ししてしまった。ああ…ごめんなさい。

 日本の文脈とドイツの文脈について,それぞれPISAショックを受けたといっても,その程度はかなり異なるというのが本当のところだろう。曖昧になりがちな両国の差異と,取り組みに対する受け止め方の違いなど,もう少し丁寧に議論しないと,難しいなと思った。たとえば他の人の質問にあったのだが,ドイツの「母語による教育」がドイツ文化を背景に持たない家庭の子たちに対する配慮や重視を教師に促しているのを受けて,日本も外国人をより多く受け入れる時代を迎え,それを見据えた日本語の教育の変化があったとして,それはいかがなものだろうかという懸念も,もう少し丁寧に議論することで答えを見出していくことはできるのではないかと思う。


 そうそう,今日の授業のコメントに「学内でPISAとか,TIMSSと書いた看板があって,授業のことを思い出しました」と書いてくれた学生が何人かいた。ええ,うちの授業は大学院レベルのこともしておりますからね,受講生には胸を張っていただきたいものです。

【講義後記】20081020

user-pic
0

 今日は非常勤講師先での後期初授業。授業のガイダンスとさわりをお話ししてきました。いやぁ〜,行ってしゃべって帰ってくると,さすがに疲れるねぇ。これ毎週ですかぁ,体力と健康維持が大事になりそうだ。

 講義は「初等教育の内容と方法」と「教材論」。学生さんから履修する意思表示としてもらう履修申告用紙を数えたら,前者が101名で,後者が24名。まだ履修登録期間中だから,場合によっては若干増えるかも知れないが,大体こんな規模である。

--

 今回は,ほとんど事務手続き的なお話しと,少しばかり教育内容と方法に絡んだ話題や過去を振り返ったり,教材論ではこの授業でどんなことをしてみたいのかを語ったりして,受講生の皆さんの関心度を尋ねてみる感じになった。いつものようにコメント用紙を準備して,ざっくばらんに書いてもらう。いろんな所属といろんな関心が混ざり合っていることがわかった。

 みんなそれぞれ元気だし,親切だし,叩けば響きそうなポテンシャルを垣間見たように思う。今日は様子見で,ぷにっと押してみただけなので手応えわからず仕舞いだが,こちらがエネルギーを投入したらしっかり返してくれそうな感じはわかる。これは気が抜けない。

 いずれ誰かが検索でもして,このブログも発見されるだろうと思っていたら,最初から「ブログ読んだので受講しました」という受講動機を書いてくれた人がいて驚いた。とにかく有り難いことです。感謝感謝。このブログも,もう少しシャキッとしないとね。でも,どこよりも遠回りしているのは相変わらずなんだけど。

--

 授業が終わってから,大学に関する情報集めをした。大学全般の事柄を知ろうが知るまいが授業の本質とは関係ないのも確かだが,もともとカリキュラム研究出身なのだから,全体も把握して部分も把握するということを押さえないと気が済まないのである。気が済むまでやってみるのがモットーなので,事務に行って,学生の履修手引きちょうだいだの,大学案内ちょうだいだの,それは広報課に行ってくださいだの,それじゃ広報課はどこにあるの?だの,それは本部にありますだの,やりとりして,キャンパス内を歩き回った。

 途中,生協の書籍部に寄って,書棚チェック。なかなか,押さえるべき基本文献はちゃんと並んでいることに好感を抱く。こういう環境なら悪くない。図書館も立派みたいだから,今度またゆっくり覗こう。

 たくさんの戦利品を持って,帰路につく。さすがに非常勤講師でこんなことする人はいないみたいなので,最後は呆れられていたようにも思うが,まあ,やっぱり学生が,どんな学風の,どういう学習環境で,どういうカリキュラムの全体性の中で自分の授業を受講しているのかを知るためには,これくらい調べないとねぇ…,子どもの実態把握を説くような人間としては。

--

 こうやって多人数の大学の講義を受け持って,新鮮なのは,必ず新しい名字に出会うことである。下の名前ももちろん個性豊かなのだが,名字に関してもまだ初めて聞く名が出てくる。いやぁ,まだまだ日本も世界も未知なるものがあるんだなぁと思う。

 とにかく不慣れながらも初回はなんとか終了。次回以降でグッと中身に入り込まないと…,1回分もったいないしね。さあ,毎週月曜日頑張っていきましょ。