情報教育の流れ

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 研究会のミニ講座「新学習指導要領と情報教育」を担当することになったので,下調べのために,あらためて学習指導要領や情報教育に関する政府関係の資料や,巷の解説書を見渡している。
 最近,日常的な情報収集をさぼっていたので,結構大変。文部科学省の努力もあって,必要な資料はたくさん開示されているから,情報を集めることは楽になったが,逆に膨大な情報を整理して理解するのは難しくなっているようにも思う。

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 学習指導要領の改訂。私たちは,それがほぼ10年周期で改訂されてきたという歴史を教わった。けれども昨今では学習指導要領を取り巻く環境や認識も変わり,改正も行なわれているので,10年単位で変わるという話は,そろそろ忘れた方がよさそうな時代に入ってきた。

 それに伴って「新しい学習指導要領」とか「新学習指導要領」という呼び方も,だいぶ混乱気味になっている。30代後半の私にとって「新学習指導要領」と聞くと平成元年改訂のものを思い浮かべてしまうのだが,私より上の世代の方はもっと以前の改訂を思い浮かべる人も出てくるだろうし,下の世代は平成10-11年改訂のものをそう思うかも知れない。いまやそれは平成20年改訂のものを指すわけであるが,じゃあ次の改訂も「新学習指導要領」となると,古い資料を漁る身には結構厄介な表現で勘違いを引き起こしやすい。是非とも「S52-53学習指導要領」とか「H20学習指導要領」とか年号表記していただきたいものである。

 学習指導要領の変遷については,文部科学省の「新しい学習指導要領」ページ内にある「参考資料(リンク集)」で開示されている資料など,あちこち説明があるので参照していただきたいが,おおよそ次のような変遷である。


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S33-35改訂:教育課程の基準としての性格の明確化
     →「(試案)」が取れた指導要領として有名
S43-45改訂:教育内容の一層の向上(「教育内容の現代化」)
     →そして「四六答申」が出るも実現せず
S52-53改訂:ゆとりある充実した学校生活の実現=学習負担の適正化
     →「教育の人間化」,落ちこぼれ問題の反動として

(S59-62 臨時教育審議会)

H1改訂:社会変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成
     →「新しい学力観」と「生活科」が鍵語
H10-11改訂:基礎・基本を確実に身につけさせ,自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成
     →学級崩壊への対応と学力低下議論の始まり
H15改正:学習指導要領のねらいの一層の実現の観点から(「確かな学力」)
     →世紀を超えた学力低下論争の末に…「学びのすすめ2002」
H20改訂:「活用」型学習
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 いやはや,気がつけば21世紀です。何やっていたんでしょうか私たちは…。

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 さて,情報教育の方はどうなっていたか。上の変遷と対応させながら流れを追うことにしよう。ただ,その前に,情報に関わる歴史的な出来事を確認してみたい。そもそも情報教育が重要視されてきたのは,情報を扱う機会増え,それに関係する機器などが生活に入り込んで利用が日常化したからである。その変化を大雑把に押さえてみたい。

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S21 東京通信工業株式会社(現ソニー)設立
S30 日本初のトランジスタ・ラジオ
S33 ソニーへ社名変更
S33 ダイエー開店
S34 「少年マガジン」「少年サンデー」創刊
S35 所得倍増計画

▽S33-35改訂〜拘束力強化

S37 ビートルズ来日
S39 東京オリンピック
S43 映画「2001年宇宙の旅」
S44 「8時だよ全員集合」開始
S45 大阪万博

▽S43-45改訂〜「教育の現代化」

S46 NHK完全カラー化
S47 情報誌『ぴあ』創刊
S51 家庭用VHSビデオ発売
S51 NEC社「TK-80」
S51 アップルコンピュータ社「Apple I」
S52 アップルコンピュータ社「Apple II」
S52 「月刊アスキー」創刊
S53 日本語ワープロ「JW-10」

▽S52-53改訂〜「教育の人間化」

S54 シャープ社「MZ-80K」
S54 NEC社「PC-8001」
S56 IBM社「IBM PC」(PC-DOS)
S57 カード式公衆電話
S57 「ログイン」創刊
S57 「PC-9801」
S58 「PASOPIA7」「MSX」
S58 「ファミリーコンピュータ」(ファミコン)発売
S59 アップルコンピュータ社「Macintosh」
S59 NHK衛星放送
S60 つくば科学万博
S60 パソコン通信「アスキーネット」
S60 「PC-8801mkII SR」
S61 パソコン通信「PC-VAN」
S61 使い捨てカメラ「写ルンです」
S62 パソコン通信「NIFTY-Serve」
S62 「一太郎Ver3」
S62 国鉄からJRへ

▼S59-62 臨時教育審議会〜教育の自由化路線

S63 ドラゴンクエスト3発売
S63 初の完全デジタルカメラ「DS-1P」
S63 「アエラ」創刊
S64 「ゲームボーイ」
S64 天安門事件・ベルリンの壁撤廃

▽H1改訂〜「新しい学力観」

H2 エプソン互換機
H2 「FM TOWNS」
H3 リーナス・トーバルズ「Linux」
H6 携帯電話販売自由化
H6 個人向けインターネットプロバイダー誕生
H6 「Yahoo!」始動
H7 マイクロソフト社「Windows95」
H7 レッドハット社「Red Hat Linux2.0」
H8 「Yahoo! Japan」始動
H10 アップルコンピュータ社「iMac」
H10 「google」始動
H11 NTTドコモ「i-mode」サービス開始
H11 「魔法のiらんど」開始
H11 「2ちゃんねる」開始

▽H10-11改訂〜「生きる力」

H12 「プレイステーション2」発売
H13 電子マネー「Edy」実用サービス開始
H13 電子マネー「Suica」正式サービス開始
H13 「iPod」発売
H13 アップルコンピュータ社「MacOS X」
H13 マイクロソフト社「Windows XP」
H14 マイクロソフト社「Xbox」
H15 「Skype」配布開始
H15 「Second Life」始動

▽H15改正〜「確かな学力」

H16 「iPod mini」発売
H16 おサイフ・ケータイ開始
H16 「mixi」開始
H18 「モバゲータウン」開始
H17 愛地球博
H17 「iTunes Music Store」始動
H18 ワンセグ放送開始
H18 「プレイステーション3」「Wii」発売
H19 マイクロソフト社「Windows Vista」
H19 「PASMO」サービス開始
H19 iPhone発売
H20 iPhone G3発売

▽H20改訂〜「知識活用」型

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 こうしてみると,当時の社会状況を思い浮かべながら学習指導要領が改訂されていく様子を想像しやすいだろうか。だいぶ長くなってしまったけれども…。

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 つづく

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