iPhone発売開始

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 とうとうアップルのiPhoneがソフトバンクから発売された。昨日からマスコミ各社による報道が許可されて,あちこちのWebサイトでは紹介記事やレビュー記事が掲載されている。

 発売日の朝には,各チャネルのニュース番組が東京・表参道のソフトバンク販売店に並んだ行列を中継していた。ちなみに実機によるデモンストレーションをアナウンサーたちが披露するのだが,使い慣れてないせいなのか,緊張して汗かいているのか,あまり上手に操作できていなかった(一番上手だったのはNHKのアナウンサーで,普段からiPod Touchを使っているのではないかと思われるほど手慣れていた)。

 ラジオでも同じように話題を取り上げている。TOKYO FMの番組でも専門家のコメントで機能を詳解しているが,日本語入力の新しいアイデアについて,ちゃんと紹介し評価しているなど,言葉だけの説明ながら掘り下げて報道していた。

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 iPhoneの発売は歓迎すべきことだし,本体価格が2万数千円からであることも嬉しいが,月々の基本使用料が七千円程度かかる。家計に占める通信経費をまとめれば,それくらいになる場合もあるかも知れないが,それをiPhoneだけで置き換えるというわけにはいかないだろう。料金に関しては課題も多い。

 というわけで,当然のことながら私自身は入手することはできそうにない。しばらくはiPod Touchを愛用するつもり。

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 それにしても,今回のニュース報道で,他社の対応を紹介する件があったのだが,他社はiPhoneに対して「日本文化になじまない」というイメージをつけようと躍起になっているのが分かる。

 たとえば「日本はメール文化である」とか「絵文字がない」とか「ワンセグがない」とか「電子マネーがない」とか…。日本がメール文化であるというのは,絵文字メールを使う若いユーザーが多いということで絵文字機能がないのは問題だという文脈のことだと思われるが,とにかく,iPhoneに搭載していない機能について言及する形で差別化を強調していた。


 このような発言を聞くと,日本のケータイ・ユーザーは,確かに絵文字やワンセグ,電子マネーを使っているのだけれども,それは能動的に欲して利用しているのか,受動的に(機能があるから)利用しているのか,いつも考えてしまう。

 あれば便利で,もはや無くてはならないという風になっているのだが,無いと生活できないというわけでもない。少しアンチな考え方をすれば,私たちはメールやワンセグに時間をとられるようになってしまったし,電子マネーで細々とした消費が増えて家計を圧迫し始めたりと,デメリットがないとは言えない。

 iPhoneもまた,メールやインターネット,iPodやYouTubeを扱える多機能さが受けているが,それはそれで,そこに自分のリソースやエネルギーを注ぐことになるわけで,同じようにデメリットを抱えたりする。


 結果的には,道具を使う側の「物の見方」や「リテラシー」や「作法」やら次第だと思う。そうした次元の育成をどこが専門家として見守るのかについては議論が必要だろう。
 学校教育における情報教育や情報モラルに何かを期待するのは簡単なのだが,その学校にはPCがやっと入り始めたばかりでPC環境も十分でない。まして携帯電話やモバイル端末の持ち込みに関しては,ほとんど足並みがそろっていないのである。そうした環境や状況の条件不揃いが起こっている中で,教育することだけ期待されても困るというのが普通である。

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 iPhoneの発売は,携帯電話・モバイル端末市場に一石を投ずる出来事なのは確かだが,携帯電話やモバイル端末というデバイスそのものの存在意義などを考える契機としても捉えられる。

 この機会に,小さなボタンと小さな画面が配された小さな端末に向かう自分たちの姿を見直してみるのも悪くない。iPhoneは,ある私企業が提示した一つの提案でしかなく,形としては商業製品であるから,人々に見過ごされてしまうかも知れない。しかし,そこには,私たちの現在ある姿を肯定的に捉えた上で,どうすれば見えない窮屈さを解消して,あるべき姿へと変えていけるかに関するチャレンジが垣間見える。

 それは,日本の情報教育に欠けていると思われる「哲学的な問い掛け」の具体的な実践姿勢のようにも思う。

 日本だと,例えばNTTのdocomoモバイル社会研究所のように,商業的な部分と学究的な部分の両方が存在するにも関わらず,逆にこうした分離した形でしか扱えていないという問題がなかなか解決されない。

 それはちょうど「基礎」と「探究」の間を橋渡ししようとする「活用」の考え方が学習指導要領に取り込まれたように,商業性と学究性を橋渡しする努力を取り込むことが必要なのではないかと思う。

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