3〜5章-『省察的実践とは何か』

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第2部 プロフェッショナルによる行為の中の省察 −いくつかの文脈

3章 状況との省察的な対話としての建徳デザイン

4章 精神療法 −固有の宇宙をもつ患者

5章 行為の中の省察の構造

■  3〜5章はワンセット。

 3章では建築デザインにおける図面上のデザイン指導の事例,4章では精神医学分野の臨床実習指導の事例を取り上げて,それぞれ,問題に直面している学生とそれを指導する指導者との間のプロトコルを分析している。

 5章では,この2つの章を取り上げて,両者の類似点をあげながら,指導者が学生の問題にどのようにかかわっていくのかを分析しながら,行為の中の省察の構造を描き出そうとする。

 ここで新たに登場するキーワードは「状況との省察的な対話」である。なかなか興味深い3つの章である。

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〈3章〉建築デザイン

●指導者は,学生がはまり込んで困ってしまった問題に対して,手本を示すことによって,習得して欲しい能力が実際に使われる様子を見せようとする。

○〈デザインすることについての言語〉=「メタ言語」

 →メタ言語を介して,学生にデザインするという行為について省察する手ほどきをしている。


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〈4章〉精神治療

●研修医の患者である女性がかかえる男性問題に関して,スーパーバイザーは,患者と治療者との関係に問題を転移させることによって,何かしらの糸口をつかませようとする。

○エリクソンが描き出している精神分析的な治療実践:「転移」という現象への特別な位置づけ

 →スーパーバイザーは,患者と男性との関係から患者と治療者との関係へとわずかに言い換える。


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〈5章〉行為の中の省察の構造

○ふたつの事例とも,実践者は実践の問題を,固有の事例として取り組んでいる。

○問題状況に固有の特徴を発見しようとし,徐々に発見していったものから,そこでのかかわり方をデザインしている。(148頁)

○その状況が問題であることを見つけ出した以上,その状況の枠組みの転換(reframe)をしなければならない(148頁)

○実践者の〈わざ〉は,膨大な情報を選別して管理する能力,ひらめきと推論の長い筋道をつむぎだす能力,探究の流れを中断することなしに同時に複数のものの見方を保つ能力(148-149頁)


○未知の状況を既知の状況と見なし,既知の状況でおこったことがあるとしながら未知の状況の中でおこなおうというのが,私たちの能力なのである。(158頁)

○行為の中の省察での新たな経験は,実践者のレパートリーを豊かにする。(159頁)


○実践者による仮説を試す実験は,状況とのゲームである。(167頁)

○行為の中の省察を行なう探究者は,実験の三つの段階,すなわち探究,手立てを試すこと,および仮説を試すことの三つのレベルに関連する考察が制約を受けるような状況においてゲームを行なっている。(169頁)


○実践者は自分の仮想世界では,仮説を試す実験において,実践世界に固有ないくつかの制約を管理することができる。したがって,自分の仮想世界を構築し操作する能力は,実験を芸術的に実行するだけでなく,実験を厳密に遂行するために重要な要素である。(174頁)

○探究者はある状況をみずからの枠組みにあてはめようとすると同時に,状況からの反論にみずからを開いておかなくてはならない。(180頁)

 
 


【メモ】
 残念ながら斜め読みなので,それぞれの事例の深いところや具体的な分析については取りこぼしがある。「状況との省察的な対話」の構造記述に関しては,教育者としての経験を重ねて興味深く読むことができたが,無意識にやっているからできるんだなとも思う。全部意識してたら大変だ。


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