Yahoo!百科事典とWikipedia

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 小学館の百科事典「日本大百科全書」(ニッポニカ)が「Yahoo!百科事典」として無料で提供されるようになるという。これでいよいよプロの編集した事典データが自由にネット検索できるようになる。

 この恩威を受ける人は多いが,特に小中高校の教育機関では,調べ学習の際の情報ソースとして,ようやく信頼できる出典元を児童生徒に使わせることが出来ようになり,Wikipedia寡占状態を脱することが出来そうだ。

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 Wikipediaは,ユーザーによって項目追加や執筆が行なわれる点で,項目や解説に対する柔軟性がある。通常の百科事典では取り上げられない事柄についても項目が立ち,かなり重厚な解説がなされることもある。また,各種言語に対応していることから,それぞれの言語毎(その言語を使う圏内毎)にどのような解説がなされているのかを知ることも出来る。

 その反面,すべての項目が平等に解説されるわけではない。人々の関心が向かないところの項目は存在しないこともあるだろうし,あっても解説が手薄になることもある。項目に対する解釈や具体的な解説方法に関して衝突もある。場合によっては誤解や虚偽の内容が掲載される可能性もある。そのような場合にも複数ユーザーによる相互チェック機能が働くことで訂正がなされたり,あるいは解釈や解説の困難さそのものが情報として伝わるというメリットがないわけではなかった。

 混沌とした現実を直接反映する生きた百科事典としてのWikipediaは,確かにネット検索の際に大変重宝がられてきた。家や職場や大学でも調べたい項目があればネット検索,そしてWikipediaを参照するのはベーシックな調べスタイルになっている。

 そして,同じようなことが小中高校の現場でも起こっていた。果たして,Wikipediaは小中高校の学習活動,調べ活動の情報リソースして望ましいかと問われると,これはいくらか検討を要する問題である。まさに教材論だし,教育情報学として考えてもよい問題である。

 義務教育段階を知識に対する助走期間と考える立場であるならば,むき出しの生の情報ともいえるWikipediaの使用は,教材として扱うハードルが高い。これを使いこなせるほどに児童生徒は知識を扱うスキルを身につけていない(そもそも小学生だと読めなかったりする)し,不必要な内容に学習が振り回されることも考えられる。他にはもちろん,情報の正確性に関する懸念もあるが,それ自体はどのような情報リソースも同じく抱える問題なのであって,むしろ編集責任主体の曖昧さが問題ともいえる。

 そういう意味では,Wikipediaとは別に,プロの編集者によって編まれた百科事典の公開が待たれていたのも事実である。すでに英和/和英辞書や国語辞書などは三省堂や小学館のものがgooやYahoo!で提供されていたが,百科事典はなかった。

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 そこでようやく吉報である。

「Yahoo!百科事典」公開、小学館の百科事典データを無料で閲覧
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/27/21673.html

ヤフーと小学館、プロ編纂の知識の泉「Yahoo!百科事典」を無料公開!
http://journal.mycom.co.jp/news/2008/11/28/007/index.html


 プロが編集した日本語の百科事典がついにネット検索できるようになる。やはりコンテンツをもっている人たちがその気になると,いろんな事が出来るのだなぁ。

 小中学校の現場でも,小学館という信頼できるところから提供された内容のものを利用できるという点で,安心感があるはずである。もちろん一般向けの百科事典なので,小学生が読むのに苦労する場合も少なくないとは思うが,ベースになる情報リソースとしては申し分ないはずだ。

 今後,Yahoo!百科事典とWikipediaという組み合わせで,活用するスタイルが普及しそうだ。

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