未来とは

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 日本では麻生総理が首相官邸に引っ越したことがニュースになっているが,米国時間の20日火曜日には,第44代アメリカ合衆国大統領にバラク・フセイン・オバマ氏が就任する。就任式(Inauguration)は,大統領選挙が行なわれた翌年の1月20日に行なうのが通例とされている。

 書店には,オバマ氏の自伝や著書はもちろん,演説集や選挙の様子を記録した出版物が集められている。岩崎書店が少年向けのオバマ本を緊急出版したりもしている。小学校の教室や図書室に置かれることを意図した内容だ。日頃,海外ニュースに疎い日本でもこうした動きがあるくらいである。世界中がオバマ氏の大統領就任を今か今かと待ちかまえている。

 それは無理もない。8年間のブッシュ政権は,各任期の最初こそ勢いはあったものの,前時代的なドンパチで富とパワーを得ようとした一部の浅はかさが,世界を混乱に陥れたのだから。そして,大統領のキャラクターのバカさ加減が印象的なだけだった。そういえば,パパ・ブッシュも唇ネタでバカにされたな。

 とにかくそれだけ長い時間のストレスと,現われた新星への期待が掛け合わさっている。この新星は,アフリカ系アメリカ人であり,シカゴ大学で教鞭をとり,そして権威ある『ハーバード・ロー・レビュー』誌の編集長を務め,州議員,上院議員のキャリアを歩んで,いまや合衆国のみならず世界に向けて「変化」を訴えている。そんな彼の語りは人々の心を捉えて放さない。

 当然ながら,多くの人々の期待とは別に,新しい大統領が直面する困難について指摘し,新星の力は及ばないかも知れないとする声もある。人々もマスコミもとりあえず静観する3ヶ月程度のうちに,目に見える成果を出すことができなければ,彼もまた批判の対象になるという。それが仮に半年に伸びようが,確かに新しい大統領のなすべきことは困難を極める。

 だからこそ,ますます新星に対する期待は膨らむ。もしかしたら彼なら変えられるかも知れない。かつてキング牧師が「夢」と語ったことを実現して見せた彼である。この8年間の悪夢からの目覚めがすがすがしいと言えないまでも,少しはホッとできるものであるように,彼なら思わせてくれるのではないか。いや,もしかしたら,夜明けを告げるスピーチとともに,新たな日々を見せてくれるのではないか。

 米国市民はもちろんのこと,世界中が,オバマ新大統領を加えた新しい世界の潮流に期待を寄せている。

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 それにしても,未来とは何だろうか。オバマ氏は,常々,融和や統一を口にする。私たちの未来は,お互いを分け隔てることに慢心するのではなく,共感を通してお互いが協調していく生き方が必要とされる。それは逆に言えば,タイトな関係を維持するコストを払わなければならないということであり,むしろ緊張感が伴うものであると考えるのが妥当であろう。

 もう少し踏み込んで考えるならば,その「緊張感」とは,同時代の者同士のそれというよりも,後世に対する緊張感といった方がよりオバマ氏の考えに沿うように思う。

 オバマ氏がハーバード大学の博士課程に進み,大学講師も勤めた研究・教育歴をもっていることは,今にしてみれば,政界で活躍する布石であるという捉え方にはなろう。しかし,「教育」という次代の人々を育み,知を受け渡そうとする営みに関わったという経験は,何かしら彼自身の根本に強く影響しているように思う。それは彼の娘たち(そして同じように学び夢を見る権利を持つ子どもたち)に対する想いからも垣間見られる。

 彼はこの世界を,次代に受け渡すための責任を果たそうとしているのではないか。


 それは「変化」というよりも,おそらく「選択」の問題になるだろう。月並みな見方だが,それが現実であり,オバマ氏が何を選択して次代に残そうとするのかが問題なのだ。そこに不安がつきまとうのも当然である。あるいは,ある人々にとっては,ブッシュ以上に残忍な大統領としてオバマ氏が立ちはだかるだろう。

 日本がオバマ大統領のアメリカ(あるいはヒラリーのアメリカ外交とでも言おうか)に対等な相手として扱われるかどうかは,日本が適切な選択をする国かどうかにかかっている。少なくとも今現在の日本は,その点に大きな不安を抱えている。


 日本は,未来に対する責任を,しっかり考えられているだろうか。その余裕を一人一人が持ちえているだろうか。

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 第44代アメリカ合衆国大統領が誕生する。

 この大統領の誕生が,歴史的にどれほど重要な意味合いを持つのか。この機会に学び直してみることも重要だろう。そして,この時代に居合わせたことに何かしらの意義を見出すことは,決して無意味なことではない。そこから未来に向けた「夢」を語ることができるのだから。

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