東京という場所で-1

user-pic
0

 さて,徳島への引越し準備をしつつも,ぼちぼち東京暮らしを振り返る駄文を書き綴ってみようかと思う。この3年間はどんな時間だったのか,何があったのか,どんな日々だったのか等。


 端的に言って,私は幸運だった。

 3年前に仕事を辞めて上京したとき,私はすべて失う覚悟だった。大学院に入り直そうという,ただそれだけしか選択肢を考えておかなかった。だから,何もかもダメになったら,アルバイトや派遣労働,日雇い労働に従事する覚悟だった。

 けれども,幾人かの先生方が声を掛けてくださり,研究や仕事をご一緒させていただくことが出来た。そして,東京大学大学院に拾ってもらったおかげで,この2年間は大学院生として過ごすことが出来た。

 それまで,東京も東京大学もメディアから受けた情報を膨らませたイメージしかなかった。なのに,私たちは東京から様々な情報を受け止めて,それを踏まえて物事を語りがちである。一体,そんな東京や東京大学とはどんなところなのか。ずっと自分自身で確認してみたかった。そしてようやく実現したのである。

 そこで分かったことは,東京も一つのローカルに過ぎないという当たり前のことだった。ちょうど上京したと同時に,眞鍋かをりが「Tokyo Local」というポッドキャスト番組を始めたのだが,そのネーミングがこの感覚にぴったり来る。「東京ローカル」が日本中に発信されている。ただそれだけのことだと住んでみて実感した。

 東京大学は,律義な大学だと思った。律義に伝統を守ろうとするし,律義に最先端をいこうとするし,律義に世界を相手にしようとするし,律義に批判にも晒される。律義じゃない私は結局追い出されちゃうわけなのだけれども,それもまた東京大学が律義な証拠である。その律義さは大事なことだと思う。

 いろんな企業の方々とご一緒する機会も得た。学校や大学という世界しか渡り歩いていない自分にとって,一般企業の方々と接することが出来て,その仕事の一端も垣間見ることが出来たのは嬉しい経験だった。相手のことが分かってこそ,賞賛や批判のスタートラインに立てると思っている。一般企業で教育関連に従事している方々の顔や思いを知れたことは,とても貴重だと思っている。

 学問への視野も広げられたと思う。それまで懐疑的だった分野に対しても,だいぶ理解を示せるようになってきた。残念ながら度重なる浮気心のせいで,学ぶべきことはまだたくさんあるにも関わらず未熟極まりないまま時間切れとなってしまった。今後,復習しながら自分で積み上げていくことにしよう。


 有り難いことに,再び就職できることになった。これもラッキーであった。場所は徳島県で,かなり遠方へと飛ぶことになるが,新しい場所での生活は楽しみでもある。
 仕事は,以前とほぼ同じポジションを与えられるようだ。ある意味ではもとに戻った感じ。願わくは,以前よりも上手く毎日を過ごしたい。


 あとは,東京暮らしを静かにフェードアウトできればよいと思う。良い別れ方をすれば,また良い再会の縁もめぐってくるはずである。もっとも,良い別れ方をしたことは一度もないけどね,ははは。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://con3.com/mt/cgi-bin/mt-tb.cgi/420

コメントする