大学院: 2008年6月アーカイブ

 秋田喜代美先生の授業「授業の心理学」に出席している。今年この授業では"Preparing Teachers for a Changing World" (→版元)という文献を講読している。主に教師の学習や教師教育に関して焦点を当てたもので,タイトルからも分かるように新しい時代を見据えて取り組まれた仕事である。教師が知っておくべきことや何を学ぶべきであるのか,教師教育カリキュラムの在り方も射程に入れて論じられていたりする。

 ちなみに学習科学に関する枠組みとしてHPLフレームワークと呼ばれるものがあるが,本書はそれに則った成果でもある。HPLとは"How People Learn" (→版元)という学習科学に関する文献のことで,今日,学習を語る際に多く参照される考え方。邦訳は『授業を変える』(北大路書房2002)という書名で,実は名前が似ていて紛らわしい書があって困るのだが,教育や学習に関して興味がある人は一読しておくべきである。

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 学生時代を教員養成学部で過ごし,現場の教師にはならなかったけれど違う角度から教育や実践のことを考え続けてきた。そうした関連の問題が,21世紀に入ってから徐々に,このようなまとまった形の学術成果として現れてきていることを思うと,大変興味深い。とはいえ問題は整理されたからといって,それにどう取り組んでいくかはまだまだこれから。考えなければならないことは,まだたくさんあるいえる。

 あらためて,教師というのは「学習者以上に優れた学習者であらねばならない」のだと確信した。そう考えたとき,研修受講モデルを基本とした教師教育や教師学習の在り方が望ましいのかどうか。そのような問いから出発して,もう一度,日本の教育を眺め直さなければならないと思う。