行く年2014

 さぁ2014年も残り少なくなりました。

 今年を振り返ってみると,相変わらず慌ただしい日々であっという間に過ぎてしまったというのが正直なところ。

 ・学びのイノベーション事業報告書
 ・大阪市の学校教育ICT活用事業のコーディネーター
 ・教育と情報の歴史研究
 ・非常勤講師
 ・韓国出張
 ・いくつかの原稿執筆
 ・教育フォルダTwitter
 ・スナック・ネル(教育とICTに関する対話活動)

 研究業績らしきものはひとつも生み出しませんでしたが,情報収集は地道に続けてきたというところでしょうか。

 教育と情報の歴史研究は2014年の7月と11月に研究会を開催することができました。少なくない参加者に恵まれて,このテーマを追究する必要性を再確認した次第です。

 ニューズレターも3号出すことができました。まだ発行体制は模索中ですが,いつの日か編集協力してくれる人を得られればと思います。それまではちまちま1人で自家編集です。

 年表整備作業は,2015年から次の段階に入ろうと考えています。FileMakerというデータベースソフトを入手しましたので,これまでの情報と文献資料を統合的に記録して歴史データベースの構築にコマを進めます。年表だけでは記録し難い項目間の関係性もデータベース機能を使って記録を残せると期待しています。

 2015年も夏と秋に研究会を開催する予定。

 韓国出張は,久し振りの海外渡航ということもありとても印象深いものでした。

 ハングル文字の学習は頑張ったものの,会話までたどり着けなかったのは痛かったですが,iPhoneのGoogle翻訳アプリを片手に街探検を楽しみました。

 行ってみたかったKERISにもお邪魔でき,韓国の雰囲気を肌で感じることが出来のは良かったです。

 そして,9月から始めた「スナック・ネル」は予想外の反響を得ました。

 Googleハングアウト・オンエアを使ったミーティングや会議の事例はすでにあったわけですが,教育とICT界隈で活用しているという事例をあまり知らなかったので,実際にやってみたいと常々考えていました。それがこういう形で実ったわけです。

 3人で始めた毎週月曜夜の「教育とICT」談義でしたが,ゲストをお招きするようになって毎週興味深い話を聞くことが出来るようになり,先日の年内最終営業日には海外からのゲストも含めた十数人がカウンター席に集い,Facebook内のボックス席でも様々な書き込みが続きました。

 こんなに輪が大きくなるとは思いもしていませんでしたし,予想以上にいろんな方に知られるところとなりました。嬉しいことです。

 これはこれで気楽に続けられればと思っています。

 りんラボが所属学生の居ない一人研究室であることは周知の通りですし,資金も無しスポンサーも無しという超貧乏体制なのも知られているところ。やっていることがゲリラ的なのはそういう理由もあるわけですが,今後もそのような状況は変わりそうにありません。

 「教育と情報の過去・現在・未来を見通す」ことをスローガンに掲げたりんラボは,考える研究室です。考えを深めて見通す先を皆さんと共有していくことを大事にしています。遠慮なくオープンに厳しくも対峙すべき意見や議論を交わすこと。これからもその方向で進んでいきます。

 本年もありがとうございました。よいお年をお迎えください。

パブリッククラウドサービス

 いよいよ師走も下旬に突入。クリスマスなどで賑やかな気分も漂ってきますが,片づけの変わらない宿題が積み上がっていて頭の痛い時期でもあります。

 最近,サーバーのお引っ越しやハードディスクの修復と古いデータの整理,そしてポッドキャストの編集など,パソコンの前で作業するばかりの日々。時間もあっという間に過ぎてしまいます。

 そういうこともあって,最近は「クラウド」について考える機会が多く,「パブリッククラウドサービス」と呼ばれるものへ関心を寄せています。

 
 そもそもクラウドというのは,インターネット上のサーバーシステムのための基盤技術で,一般の利用者にとっては意識する必要のない代物です。それでもクラウドという技術によってインターネットサーバーが支えられるようになったおかげで,私たちは至るところでインターネット絡みのサービスを快適に享受できるようになったのです。そういう意味では重要キーワードとして知っておきたい言葉ではあります。

 私が「パブリッククラウドサービス」が気になるというのも,私がWebサイトとかブログを自分自身で運営しようとする時に,こうしたクラウド技術のサービスを個人で利用できるからです。

 一般的に,Webサイトを構築するとかブログを解説する場合,「レンタルサーバー」というサービスや,「ブログサービス」というサービスに加入するか登録するかの方法と,自前でインターネットに接続したコンピュータを用意する「自前サーバー」という方法があります。

 レンタルサーバーやブログサービスを利用すれば,サービス提供会社がサーバーコンピュータを代わりに用意し貸してくれるので,自前でサーバーを用意する必要も管理する手間も省けます。

 いずれにしても,こうしたやり方は,どこかにサーバーコンピュータを用意するというやり方です。

 しかし,コンピュータの技術が進み「仮想化」という考え方が主流になってくると「コンピュータを用意する」ときに「本物のコンピュータを1台用意する」のではなくて,本物のコンピュータ1台を高速処理で素早く使い分けて「仮想のコンピュータ複数台分」として新しいサーバーコンピュータを用意するようになっていきました。

 つまりサービス提供側の会社にとっては,本物のコンピュータ1台で,サービスで貸すコンピュータ数台分を賄えるというおいしい話になるわけです。逆に言えば,コストが安くなるので低価格でレンタルできるようになる,あるいは無料でブログサービスを提供できるということにもなります。

 もちろん複数台に見立てるのにも限界はありますから,それなりに実物のサーバーを用意することもビジネスには必要になりますが,こうすることでたくさんのWebサイトを受け入れて管理すること(ホストすること)が出来るというわけです。

 しかし,インターネットが日常的に不可欠なものとなり,情報量や通信量が日々膨大に膨れ上がってきた今日,こうしたサービスに限界がやってきます。

 1つのサーバーにアクセスが集中したら対応しきれなくなってしまう問題です。契約したレンタルサーバーが高速なものでも,1つだけでは耐えられないですし,通信回線もパンクしてしまうかも知れません。

 デジタル教科書のデータをダウンロードしようとしたら,転送が極端に遅かったり,接続がエラーになったりした出来事がありました。無線LANネットワークに問題があったのではないかと指摘され,たしかにそのような問題もあったようですが,もう一つ,教材会社が用意したサーバーにアクセスが集中してしまったために問題が発生したという指摘されています。

 つまり,どんなに立派なサーバーコンピュータを用意していたとしても,1台用意しただけでは多勢に無勢。もっとサーバーの台数や複数の通信回線を用意して,アクセスを分散させて効率的に処理できるようにすべきなのです。

 しかし,教科書をダウンロードする時期は限られていますし,アクセスが集中するのは学校に登校している時間帯くらい。そのためにコストのかかる処理速度の速いサーバーコンピュータや高速通信回線を複数契約するのは予算的にも厳しいものです。それが悩ましい問題でした。

 もうお分かりかと思いますが,こうしたサーバー側の一時的な増強を実現しやすくするのが「クラウド」という技術です。

 サービス提供会社はあらかじめ世界中にサーバーコンピュータや高速通信回線を完備した「データセンター」施設という設備投資を行なっておき,それをたくさんの人々に切り売りするのです。しかも量り売りのように必要なタイミングで必要な処理能力や通信能力を指定して契約でき,使い終われば契約解除することができるので,コスト的にも融通が利くようになっています。

 しかも,専用のデータセンターで管理しているので,セキュリティやメンテナンスの問題も自前サーバーで管理するよりも優秀となっています。いまやこうした外部サーバー(クラウドサーバーとも呼びます)で情報を管理した方が安全であるという場合も少なくありません。

 私たちが日頃利用している通信販売サイトも,膨大な買い物手続を処理するためにクラウドサーバーが利用されており,クレジットカード情報や住所などの個人情報も当り前のようにクラウドサーバーで管理されているのはご存知の通りです。

 というわけで,最近,総務省の「学習・教育クラウド・プラットフォームのアイデア募集」にあるように,学習・教育クラウドを使った先進的な教育利用のための取り組みが賑やかになっています。

 これまでは校務システムに使うことなどが主に考えられてきました。たとえばNTTコミュニケーションズ「教育クラウドサービス」にも横浜市教育委員会の事例が掲載されています。

 しかし,もう私たちは様々なサービスを通じて間接的にクラウド技術の恩恵を受けることが出来るようになっていて,たとえばDropboxとかEvernoteとかGoogle Appsとか,そうした一般的にも使われているクラウドサービスが学習や教育にも役立つことを知っています。

 そして,面白いことに私たち自身で手軽にサーバーを作って運営することも出来るようになってきているということです。それで世界を相手にしたサービスを構築するということも出来るようになっています。

 それは現在の学校教育に直接関係することではありませんが,子供達が大人になって世界に向けて仕事をするようになる時には,そのような道具を避けて通ることが難しいわけですから,いまのうちにそのようなインフラ技術についても理解を深めておくことが大事になってくるのだと思います。

 ちなみに多くのクラウドサービスを支えているのが通販サービスのアマゾン社が提供している「Amazon Web Service」です。

「授業」支援から脱け出せない

こんなニュースが配信されていました。

「ソニー、来年8月に教育分野向けLinux搭載タブレット発売へ ~倉敷の中学校での実証実験の取り組みを追う」(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/gyokai/20141208_679040.html

 5月の教育ITソリューションEXPO(EDIX)に参考出展されていたそうですが,残念ながら私は触れることができていませんでした。昨年(2013年)の第10回日本e-Learning大賞の部門賞も得ていたという「小中学校向け Tenobo学習システム」(Tenobo 21世紀型クラスルームソリューション)の実証実験の記事です。

 岡山県倉敷市の多津美中学校という公立中学校で試用されている端末は,オリジナルで製造された2画面折り畳み式のクラムシェル型の端末で,Linuxをベースに開発されたシステムだといいます。

 また,来年発売を予定しているのは1画面タイプのタブレット型端末のようで,大画面にすることで画面分割する使い方を想定しているとのこと。メーカーのWebサイトに説明があります。

 端末やシステムについて。

 2画面分割で教科書などを参照する領域とノートなど記録する領域を併存させるというアイデアは,過去にもありました。代表的なものとしては,Knoと名付けられたタブレット端末がありました。

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 iPadと時を同じくして登場した端末でしたが,残念ながら紆余曲折を経てソフトウェアに絞り込んだビジネスに転換し,いまはインテルの傘下で提供されている形になっています。つまり,Knoの2画面タブレットは失敗に終わったとされています。

 Knoは米国のテキストブック業界(教科書業界)の電子化という課題に取り組もうとしていたということもあり,今回のソニーのTenoboとは位置づけられ方が異なりますが,端末に限っていえば同じ夢を見ているといってよいでしょう。

 そのTenoboの方は,学習システムと銘打ってはいますが,当初は「クラスルームソリューション」と名付けられたいたことから分かるように「授業支援システム」として開発されたものです。

(ソニーエンジニアリング株式会社 Webサイトより)

 

 冒頭の記事やメーカーの図からもわかるように,授業内の情報のやり取りを電子化によって効率的にすることが目的で,そういう意味では確かにシンプルなシステムに徹しているように見えます。

 「教材表示のための画面」と「記録作業のための画面」の2画面は,学習側から見れば「教材を見る」ことと「ノートを書く」ことを併置する当たり前な最低限の条件を満たしたにすぎませんが,教師側から見れば「教材を配布する」ことだけでなく「学習者の進捗をのぞき見る」ことを可能にしてくれるものとなります。

 Tenoboには学習者が同じ領域に書き合うようなコラボレーションノートテイキング機能は搭載されていないようですので,そういう意味でも,教師−学習者個人というシンプルな双方向を実現しているシステムのようです(複数の学習者端末の画面を教師側で提示することは可能みたいです)。

 こうしたシステムを取り巻く認識について。

 授業支援あるいは学習支援システムを紹介する時に難しいのは,開発者の人々が考えて実装した機能の一つ一つについて何をするものなのか使用例を説明した途端,説明をされた側は,そういう形式の授業をすることが教育界全体で目指されているのだという風に勘違いしがちであるということです。

 たとえば先生端末から学習者端末の進捗がリアルタイムで「モニタリング」できるという機能があります。なるほど授業に遅れている子を見つけられたり,問題に対する解答の違いを把握することが,その機能によって可能ではあるかも知れない。

 しかし,そのようなあり得る断片的なシチュエーションだけで授業が成り立っているわけでないことは,考えてみれば分かります。そもそも授業支援システムを使う時間も全体から見れば限定された場面でしかありません。

 ところが,説明を受けた側にしてみると「児童生徒はずっと監視されるのか?」とか「授業中,先生はずっと画面を見てしまうのかしら?」というような疑問や違和感を持ってしまいがちです。

 一方,開発者側にしても,「授業や学習を支援する」といったときの想定範囲があまりにステレオタイプであり,このようなシステムの上で支援された学習の記録が,システムに閉じこもってしまうことに何の疑いも持っていないようにさえ見えます。

 たとえば,Tenobo上のノートテイキングは卒業時にどのような形で児童生徒本人に手渡されるのでしょうか。それとも授業や学習が終わればそれらは消去してよいと判断しているのでしょうか。この問いを「PDFに変換して残せるようにすれば良い」というエンジニアリング的な解答で片づけることは可能ですが,その発想がまさに授業支援システムが「授業」支援という範疇に閉じこもっている証しなのです。

 現在,多くの学校から注目が集まるロイロノート・スクールが良い線をいっているのは,タブレット上のアプリ単体でスライド作成が完結し,それを共有する形をとっているからです。

 つまり,基本的には「個人の範疇」(タブレット上のアプリ)で学習活動が完結するように設計されて,それを先生がのぞき見ていたり,必要に応じてスライドを共有できるという「集団の範疇」にリンクさせるというシステムデザインだからです。

 なぜなら,ロイロノート・スクールがもともとロイロノートという単体アプリを出発点に出来上がっているからです。そのため,ロイロノート・スクールで作成したスライドデータをロイロノートに移せば,児童生徒は自分のデータを卒業後も保持できることになります。(理屈上は…なので実際にそうできるかどうかは未確認です。でも可能性は開かれています。)

 ロイロノートの問題は,動画に特化したアプリだということです。書き出しも動画データのみで,PDFデータとして書き出す機能はありません。また,スライド管理機能もたくさんのデータが蓄積されることを想定したものでは無く,大人が実務で使う範疇へとステップアップするようにはデザインされていません。

 ロイロノートは授業という範疇から学習成果を持ち出すことは可能ですが,基本的にはロイロノートで閉じていて,そこから持ち出す方法が動画書き出ししかない点が短所です。

 

 単体アプリを出発点に開発されたシステムとして先日発表されたのがMetaMoJi Share for ClassRoomでした。こちらは動画データを扱うことはできませんが,タブレット向けのノートアプリとして高評価を得ているMetaMoJi Note/Shareをベースにしていることから,蓄積されたデータを個人に返しやすい点は同じく良い線をいっています。

 またMetaMoJi Note/Shareはそれ自体も実務に使えるアプリやデータ形式ではありますが,PDF書き出しや様々な共有機能を有している点で,アプリからデータを持ち出す際の選択肢が用意されています。

 しかし,あえてfor ClassRoomという形でMetaMoJi Shareをベースにシステムを構築したのは,やはり「授業」というものに捕らわれてしまって,理想へ遠回りになってしまったのではないかと思います。私自身はMetaMoJi NoteをベースにしてShareの技術を組み合わせる形にして欲しかったと考えています(つまり「授業」ノートをShareするのではなく「個人」ノートをLinkやShareする発想)。

 端的にMetaMoJi Share for ClassRoomの短所を書くなら,Shareノート(授業ノート)を先生が配布しないと何も始まらない点です。児童生徒側のアプリで個人ノートを作成しておき書き進めておくという使い方は難しいのです。これも「授業」の支援に捕らわれてしまった一つの例です。

 誤解して欲しくないのは,ソニーのTenoboにしても,ロイロノートにしても,MetaMoJi shareにしても,それぞれはそれぞれの開発思想に則って作られた(あるいは作られているところの)システムで,「授業」支援に対しては効果を発揮してくれる素晴らしいシステムだということです。

 お読みになっている皆さんは,目的や目標を設定してシステムを選択したり利用したりしているはずですから,それに叶ったシステムを選択すればよいだけのことですし,その目的や目標を,これらのシステムは満たしてくれる部分があるはずです。万能なシステムはありません。目的・目標に応じて選択するだけです。

 そのうえで,私たちは本当はどんな支援をしてくれるシステムを必要としているのか,考え続けておかなくてはなりません。授業支援が本当のゴール(目標)なのか,その先の個々人の学習支援は?,学習の記録の行方は?

 問いは尽きません。まだまだ考えていろんなアイデアを描き,試してみることが必要です。

平成二十六年師走

 なんだかんだと今年も師走になりました。

 しかも今月に入って急に寒くなってきたため,体調も崩れぎみ。身体がこわばって,肩が凝って仕方ないです。できるだけ暖かくしたいものです。

 年末の慌ただしい時でしたが,サーバーをお引っ越し。気分良く再スタート切れるかと思ったのですが,いきなり調子がよくありません。サーバー自体は問題なさそうですが,使っているソフトとの相性が悪いようで,この文章も変な記号が出て投稿されてしまうのでしょう。しばらく実験しているのですが,ダメなら方法を考えなければなりません。

 いずれにしても今年もあっというに終わりそうですから,今年のことは今年のうちに。

 追記:どうやらHTMLモードで書き込めば問題なさそうです。それなら良かった。 ^_^;

サーバー切り替え完了

 con3サーバーを切り替えました。それに際してブログを構築し直しました。見た目は変わりません。

 ただ,なぜか利用していたブログエディタと相性が悪くなってしまったので,試行錯誤していたのですが,残念ながら解決方法は見当たらず。当面は別のエディタを使って更新することにしました。