あれから熊本界隈の人々を敵に回した感だけを残した駄文…
「メーガーの三つの質問」探訪
https://www.con3.com/rinlab/?p=4593
は,これ以上,嫌われたくない私の中で,あれで決着したもの…だとずっと思っていました。
まさか,その続編を書くことになるとは…。う〜ん。
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先日,とあるオンラインセミナーを流し観していたとき,「R.メーガーの3つの質問」と題されたスライドが飛び込んできました。
Where am I going? ←学習目標
どこへ行くのか?
How do I know when I get there? ←評価方法
辿り着いたかどうかをどうやって知るのか?
How do I get there? ←指導内容
どうやってそこへ行くのか?
「引用元は鈴木先生の論稿かな?」
と思って参考文献をチラッと見ると,見た記憶のない書籍の名前。しかもR. F. Mager氏の著作です。
参考文献:R.F. Mager (1997). How to Turn Learners On… Without Turning Them Off. Atlanta : Center for Effective Performance.
おおおお!もしや,謎の答えがもたらされたのか!と,私,興奮気味。
さっそく検索しました。(AmazonとWorldCat)
How to Turn Learners On… Without Turning Them Off: Ways to Ignite Interest in Learning
Amazon.com: How to Turn Learners On… Without Turning Them Off: Ways to Ignite Interest in Learning: 9781879618183: Mager, Robert F.: Books
How to turn learners on– without turning them off : ways to ignite interest in learning | WorldCat.org
How to turn learners on– without turning them off : ways to ignite interest in learning | WorldCat.org
本書はもともと1984年にメーガー氏が著した『Developing Attitude Toward Learning』という書籍を改版の際に改名したもの。1997年のThird Edition(第3版)が最新のようです。
目次を見てみると次のようになっています。(Amazon.comのLook insideから)
Contents
Preface
Part I Where Am I Going?
1 What It's All About
2 Why It's All About
3 Defining the Goal
Part II How Shall I Get There?
4 Recognizing Approach and Avoidance
5 Sources of Influence
6 Conditions and Consequences
7 Positives and Aversives
8 Modeling
9 Self-Efficacy
Part III How Will I Know I’ve Arrived?
10 Evaluating Results
11 Improving Results
12 An Awesome Power
なるほど,パート題目が3つの質問になっています。
Where am I going?
How shall I get there?
How will I know I’ve arrived?
いやしかし,3つの質問とはまた少々異なる順番と語彙で記されているのは気になります。
そうは言っても,前回までの調査の時点では,それまで通説的に挙げられていた文献資料の範囲で,このような3つの質問をストレートに表記した記述を見つけられませんでした。
今回の文献で,目次がこのように記述されている以上,メーガーの3つの質問がメーガーの3つの質問である証拠として十分なものが示された…と考えるのが妥当だと思われます。
「何がギルピンだ。それみろ,やはりメーガーの3つの質問は本当だったじゃないか。りん研究室ブログは,フェイク情報を書きやがったクソ・ブログだ。」
と罵っていただいて結構です。あ〜ん。>_<;
—
ならば,当該文献の中身は一体どうなっているのか?
ここまできたら,紐解いてみようじゃありませんかということで,注文,ポチっ。
続けたくはないけれど,続くかも知れない。
〈追記20221206〉
というわけで,ポチった文献が届きました。
駆け足でページをめくって確認しましたが,日本で多く引用されている表記の英文はありませんでした。
その代わり,こんな粋な詩が冒頭に掲げられていました。
There once was a teacher
Whose principal feature
Was hidden in quite an odd way.
Students by millions
Or possibly zillions
Surrounded him all of the day.
When finally seen
By his scholarly dean
And asked how he managed the deed,
He lifted three fingers
And said, "All you swingers
Need only to follow my lead.
"To rise from a zero
To big Campus Hero,
To answer these questions you'll strive:
Where am I going,
How shall I get there, and
How will I know I've arrived?"
RFM
【粗訳】
昔々とある教師の
抜きんでた素質は
不思議な形で埋もれていた。
生徒たちが数百万
とうてい数えきれないほど
一日中彼を取り囲んでいたためだ。
ついにその姿を
学究の長がとらえて
どうやっていたかを訪ねると,
彼は3本 指を立て
こう言った「迷えるすべての人々よ
私の言うとおりにしなさい。
「ゼロから始め
キャンパスの英雄に至るには
これらの問いに答えるよう努力されるがよい:
どこへ行くのか,
どうやってそこへ行くのか,そして
たどりついたかどうかをどうやって知るのか?」
Robert F. Mager
メーガー先生は,本当に洒落っ気のある粋な筆者だったようです。
そんなわけで,日本で多く表記されている英文は,おそらく引用の際に表現を馴染みやすくする配慮のもと作成されたもので,原文そのままの引用ではないということになりそうです。もちろん憶測です。
ちなみに,原文の表記を直接引用した日本の資料が検索で見つかりました。厚生労働科学研究成果データベースに登録されているもののようですが,具体的な文書名などがはっきり分かりません。
当該文書(1)/当該文書(2)
こちらは改題前の原著『Developing Attitude Toward Learning』からの引用となっています。
少なくとも,今後「メーガーの三つの質問」に関する引用・参考文献の表記は
参考文献:R.F. Mager (1997). How to Turn Learners On… Without Turning Them Off. Atlanta : Center for Effective Performance.
に揃えた上で鈴木先生の議論を参照するような形にするのが無難なのではないかと思われます。
さて,これでこの話題に終止符を打ったことになるといいのですが。