あのとき考えていたこと

前回記事で「少しの後悔」として,文部科学省が提示している「学校におけるICTを活用した学習場面」という図について昔話を書きました。

駆け出し有識者としての力不足と,学習場面の10類型の順番に,少しばかり後悔をしているというお話です。あれから8年経って,その実力の無さは折り紙付きのものとなりましたが,あの時考えていたことを紐解くことには一定程度意味があると思います。

ワーキングチームの議論では,もちろん,いろんな見解が交わされました。

実際のところ,10分類でもまだ数が多いという指摘もありました。確かに新しい指導方法のイメージを広く浸透させるためには,もっとシンプルにすべきで,10個も類型があっては扱うのも大変です。数の多さが,前回の順番の後悔を引き起こしたのだと考えることも出来ます。

あの時の私は,フューチュースクール推進事業/学びのイノベーション事業の実証報告から上がってきた実践記録を整理する作業をしていましたが,個別事例を類型化する作業の際には,なかなか至難の業でした。

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当時のメモが残る手帳が引き出しにしまわれていたので,取り出してみました。

1人1台のタブレットPCを利活用する様々な試みを,こうやって場面に変換して,その遷移パターンを分析しながら類型を簡素化していく作業を続けていたのです。

当時の資料をブログでお見せすることは出来ませんが,10分類のA「一斉学習」にはA1以外にもA2やA3があったことはメモからも見て取れるのではないでしょうか。

結果的には削除されましたが,作業の途中で私が付与したキーワードをご紹介しておきます。学習場面を表わすキーワードです。カッコ内は今回あらためて補足的に追加しました。

  • 知る(理解)
  • 気づく(発見)
  • つながる(関係)
  • 尋ねる(疑問)
  • 解く(練習)
  • 深める(思考)
  • 試す(試行)
  • 調べる(調査)
  • つくる(制作)
  • 残す(記録)
  • 聞き合う(発表)
  • 話し合う(共有)
  • 考える(議論)
  • 生み出す(創造)
  • 表現する(構築)
  • 広げる(拡張)
  • 発信する(発信)
  • まねる・応用する(応用)

これらをもっとブラッシュアップすることで,指導方法を整理したかったわけです。その結果が,現在の10分類というわけですが,GIGAスクール構想による1人1台情報端末という時代では,こうした学習場面的な捉え方は,もう少し個々人の精神面で起っている学習現象を考える観点も加味して考えていく必要があるかも知れません。

私の遠隔授業裏舞台

私の職場は、今年度4月下旬から遠隔授業がスタートしていた。

幸い、何年も前から大学のメールシステムはGmailシステムに切り替えられ、その流れでなんとなくGoogle Appsも使えるようにはなっていた。最初は私のような物好きと語学担当の先生方数人が利用しているにすぎなかったが、GSuiteに名称変更されたあたりから少しずつ学内認知度も高まってきた。

ICT活用がとりたてて得意という職場ではないものの、こうした素地のようなものがあって、新型コロナ禍に伴う遠隔授業の実施方針もGoogle Classroomベースで行うというミニマムな方法を基準として打ち出すことができた。

他大学はGW(ステイホームウィーク)明け以降に遠隔授業を開始するというところが多いにもかかわらず、私の職場が早々に4月下旬から始められた理由は、徳島県が全国的にみても感染者判明数がほぼゼロに近く、感染拡大といった事態と無縁だったことはもちろん大きい。

遠隔授業の取り組みそのものに対しても、先に書いたように、なんとなくそういうものがあると意識が広まっていたおかげで抵抗感が少なかったのもあるが、実際のところどれだけ大変なのか訳が分かっていなかった人たちが多かったこともプラスに働いていたのかもしれない。

情報センター等の関係部署の方々は、突貫作業とはいえマニュアル作りや緊急研修の準備など取り組まれて、そうした努力にも支えられてスタートできたのだろうと思う。

私自身も従来までGoogle Classroomを授業の補助ツールとして使用し続けてきたので、そこでの経験を踏まえて遠隔授業の環境準備を行うこととなった。

実のところ私は、対面による授業で、典型的な口頭伝達的講義と、典型的な実技演習授業を行なってきた、極めて旧来型のステレオタイプな授業手法採用者である。

アクティブ・ラーニングの重要性は承知しているし、試みていないわけではないものの、担当している部分が知識習得を担うタイプの科目であり、その先の知識活用を担う授業科目へ学生達を引き渡すという位置づけを期待される度に、派手な取り組みはお任せした方がうまくいくことを感じている。

そのため、Zoom等のリアルタイムコミュニケーションツールによる同期型の授業はほとんど行なっていない。大学院の担当科目で文献購読を行なう際、Google Meetを使ってマンツーマンで議論している程度である。

講義授業については「毎時課題+オーディオ講義+教科書・講義資料」というオンデマンド型オンライン授業を採用している。

演習授業については、本来であれば対面による授業が解禁されるまで休講にしてもよかったのであるが、「情報処理」という名のパソコン基礎操作演習なので、「実演動画+毎時課題」によるオンデマンド型オンライン授業で進めてしまうことにした。

講義授業

教科書があるので、基本的にはそれに沿って授業を行なうが、毎回は、学習部分に対応した「調べ課題」を毎時課題として用意し自学予習の機会を作ってからオーディオ講義を聴いてもらう段取りにしている。

教員による解説講義を聴く前に自学しておくことによって、内容に見当をつけることができるし、解説をピンポイントで聴くことにも役立つ。二度三度と同じ内容に触れることで反復学習の効果も期待されるだろう。

実際の準備は…

・Googleドキュメントによる「毎時課題」配布テンプレートの作成
・毎時課題を紹介するオーディオ説明ファイルの収録
・教科書や講義資料の準備
・毎時課題に即した学習内容のオーディオ解説ファイルの収録
・これらのマテリアルをGoogle Classroomに予約投稿する設定

以上のようなことをしている。

毎時課題はGoogleドキュメントで調べ課題シートを作成して、「生徒にコピーを配布」モードでGoogle Classroomの課題に追加する。基本的には毎時課題の成果が日常的な学習進捗把握の材料となる。

オーディオファイルの作成には、パソコンにオーディオインターフェイスを使ってマイクを接続して音声収録している。

オーディオ収録環境
【パソコン】iMac (Mid 2011) - macOS High Sierra
【オーディオインターフェイス】EDIROL FA-101
【マイク】Shure BETA 58A
【収録用ソフト】Hindenburg Journalist Pro

収録したオーディオは、mp3形式でGoogleドライブに直接書き出し保存をしている。あとはGoogle Classroom上から呼び出し簡単に添付できる。今のところ受講生数が少ないのでGoogleドライブ共有でもアクセス数制限等の問題に直面していない。

Google Classroom上の投稿構成は、授業トピックを講義単位で括るために使用し、ちょっとしたコースウェア的になるようにしているが、一講義分にたくさんの投稿が並ぶと、リストが長くなるし、投稿の手間がかかるため、「出席確認(質問)/毎時課題(課題)/講義解説(資料)」の3投稿に絞っている。

利用者の増加のせいか、Google Classroomの投稿予約機能は設定した時刻にプラス5〜10分くらいの投稿タイムラグが発生するようになっている。そのため、3つの投稿予定は時間差で設定しているが、それぞれ5分程度の遅れを見込んだ時刻設定にしてある。

提出物は、Googleドキュメントで配布している調べ課題だが、学生達は他の授業で様々なやり方に触れているせいか、Googleドキュメント以外にも、手書きノートを写真撮影したものを提出したり、それぞれ利用しているアプリで課題に取り組んだものをPDF化して提出するものもあったり、千差万別である。その辺は私が対応できる範囲でOKにしているため、学生側から課題の取り組み方法について不満が出てくることはほとんどない。

授業時間中は、出席確認から始まり、調べ課題や解説講義に取り組んでいる最中に書き込まれる質問に返答したり、コメントを読みながらやりとりを行う。出席確認投稿に対する学生のコメントで受講生同士が受講していることの相互確認を行ない、オーディオ講義では前回までの取り組みや受講生からのフィードバックを全体に共有などして、講義授業の一体感や活動雰囲気を確保している。

ちなみにオーディオ収録のタイミングは,収録作業に慣れてしまったこともあり,当日の朝になっていることが多い。日付レベルでリアルタイムであることは同期感が高まるメリットはあるものの,収録を失敗した場合のリカバリー作業に時間的余裕がないことにもなるため,収録は前日に済ませるのが良いかと思う。

演習授業

パソコンの基礎操作に関する演習授業は、対面による授業であれば、大学のパソコン教室に配備されたWindowsパソコンを実際に操作して練習する形で進められてきた。

担当者は、パソコン教室の前方に用意された教員機を使い、実際の機器操作をデモンストレーションしながら受講生達を操作練習に誘ってきた。

遠隔授業となれば、パソコン教室のような統一的な機器環境が見込めない。学生達が自宅で扱える情報機器は、主にスマートフォンであり、一部の学生がパソコンを所有しているに過ぎない。

こうなると、受講生自身による演習部分の制約を受け入れて、教員からのデモンストレーションに重きを置いて進行する他ない。その上で、操作練習する演習部分について、可能な範囲で取り組んでもらうスタンスを取ることにした。

授業は、「実演動画」を視聴してもらうことが中心となっている。内容に応じてスライド資料があったり、演習課題が用意される。

実際の準備は…

・操作画面を中心とした実演動画の収録
・スライド資料の作成
・演習課題の素材、配布ファイル等の作成
・これらのマテリアルをGoogle Classroomに予約投稿する設定

実演動画は、担当者のカメラ映像と機器の操作画面映像とをスイッチャーで切り替えて収録できるようになっている。一つの動画は内容によって時間の長さが異なるが、10分〜15分程度を目安に作成している。

実演は、Windowsでの操作だけでなく、スマートフォン(iOS, Android)およびmacOSでの操作についても扱い、同じ課題を行なう際に各基本ソフトでどんな操作をするのか、可能な範囲で個別の動画を作成し実演している。

これまでパソコン教室や教員機がWindowsパソコンに限定されていたために、特定プラットフォームの実演提示に限られていたが、実演に使用できる機器が教室環境に縛られずに済むようになったため、マルチプラットフォームを踏まえた実演提示が可能となったことは遠隔授業のメリットとなった。

受講生達は、身近な端末の操作方法について学べるようになり、高額な出費で手にしたスマートフォンが日常使っていること以外にも活用できることを発見して、それが授業への関心や意欲にもプラスに働いている様子が感想やコメントからも窺える。

さて、動画収録には、少々トリッキーな環境を構築してある。

動画収録環境
〈デモンストレーションマシン環境〉
【パソコン】Mac mini Server (Late 2012) - macOS Mojave
【仮想環境】Parallels Desktop 15 for Mac - Windows 10 Home
【iOSデバイス】iPhone 6iPhone 6s
【Androidデバイス】Pixel3
【画面転送ソフト】Reflector TeacherAirParrot

〈映像収録マシン環境〉
【パソコン】Mac mini (2018) - macOS Mojave
【オーディオインターフェイス】Audient EVO4
【ビデオキャプチャ・スイッチャー】Blackmagic Design ATEM Mini
【画像転送受信ドングル】EZCast 4K
【マイク】Shure SM7B
【カメラ】SONY RX0
【カメラ】SONY HDR-MV1
【映像収録ソフト】Wirecast Pro
【音声キャプチャソフト】Audio Hijack
【動画編集ソフト】Vrew

実演提示するための機器と映像収録するための機器は別々にしてある。通常、これらが一緒であると、操作画面を収録する際に便利であることも多く、利用できる機材が限られている場合にも都合がよいが、マルチプラットフォームで実演をする負荷を考えると分けた方がフリーズ対策にもなる。

デモンストレーションは、mac OS上で動作する仮想環境上のWindows 10を中心に行ない、スマートフォンはiOSとAndroidの画面転送機能(AirPlay等)を使って、仮想環境と同じマシンの画面に集約表示できるようにした。そのデモンストレーションマシンの操作画面をさらに画面転送アプリ(AirParrot)から受信ドングル(EZCast 4K)に送って画面収録できるようにしている。この辺がトリッキーである。

映像収録マシンは、接続されている映像キャプチャ・スイッチャーATEM Miniで切り替えられた映像を録画する。録画に使っているWirecastは、本来は配信用ソフトウェアであり、もっと安価な時に購入してずっと使い続けているが、いまでは高額なソフトとなってしまった。代替ソフトとしてはOBS Studioがある。

撮影は、カメラ映像で動画の内容を説明したあと、操作画面の映像に切り替えて実演提示を行う。基本的に一発撮りで、多少のミスがあっても撮影中にリカバリーして、編集をせずにYouTubeにアップロードする。

一部の参考動画では収録時間が40分〜60分程度になってしまい、言い間違いなどの修正が必要になるものもある。その場合は動画編集ソフトVrewに読み込ませて編集作業を行なっている。

Vrewを使うと機械学習を活かした字幕生成を行なってくれる。さらに認識した音声テキストを編集することができるが、これは字幕テキストとは別であり、音声テキストの編集が動画の編集と連動するようになっている。そのため削除したいセリフ部分を文字で削除すれば、映像の方もその部分が削除されて便利である。その他にも沈黙部分を短めに詰める機能など使う。

オンラインによる遠隔授業においては、学生側の通信料金コスト負担の問題が取り沙汰され、なるべく授業に関わる通信データ量を下げるように呼びかけが行われている。YouTubeを実演映像の保存先にしているのは、YouTubeが備えている動画の圧縮や配信に関しての技術的なメリットを享受できるからである。

こうしてYouTubeに限定公開された動画は、Google Classroom上の投稿でリンクされて受講生が視聴できるようになる。この際、演習授業では一講義分を「出席確認(質問)/実演動画(資料)/毎時課題(課題)」という3投稿で構成し、それらを投稿予約機能を使って時間差で公開していく。

授業時間中は、動画視聴がひと段落して実際の操作練習のタイミングになる頃にたくさんの質問や様子の報告が限定公開コメントに上がってくるので、個別に返信を行なう。

パソコンやデバイスのトラブルを文字だけで遠隔サポートすることが如何に大変かは、経験された方ならお分かりになると思う。

もちろん、それを見越した解説や実演を動画に盛り込むことは必須だが、それでも想定していないパターンのトラブルや説明が不足している事柄は残るもので、授業時間中に飛んでくる受講生からのコメントはなかなか興味深い。

Google Classroomはコメントに画像を貼り込めないため、こちらからは基本的に文字ベースで確認事項や手順を伝えるほかない。学生からは、場合によって課題添付の形でスクーリーンショットを送ってくれることもあるので、それを頼りに問題を把握して返答することもある。

問題所在を確認するために、使用しているデバイスは何かといった初歩的な確認から始まり、視聴した動画の何本目の、何分何秒あたりが説明と実際とで異なるのかを確認するなど、遠隔サポートのノウハウを駆使しながらやりとりは続いていく。

確かに対面による授業の方が、直接画面や状況を把握して、問題解決のためのアドバイスを提示しやすい。しかし、今回の遠隔による演習授業の試みを通して、こちらからは動画による実演提示でマルチプラットフォームに対応した丁寧な解説が届けられ、対する受講生は自分の馴染みのデバイスを利用して、実際の操作を練習したり、アドバイスを得るにしてもトラブルを自己解決しなければならないという状況に直面することで、かなり積極的な授業(アクティブとまでは言わないが…)を展開できているのではないかと思われる。

ただし、どうしても学習課題の設定時には環境制約が伴うため、課題目標を低めに設定しなければならないことも起こる。「トラブルを自己解決する経験」は聞こえはよさそうであるが、そもそも解決できないトラブルが起こらない程度にはハードルを低くする必要もある。

遠隔授業準備は、やはり授業や課題の内容吟味も大事になってくる。

収録環境

作業をする研究室が、必ずしも静粛な環境ではなく音声収録に向いていない。

映像や音声のメディアを利用する場合、やはり音響部分の聴取品質が高くないと、満足感も高まらないし、逆に視聴している際の疲労感が高まってしまう。オンライン授業やビデオ会議が疲れる一因には、音の良し悪しが少なからず関係しているとも考えられる。

そのためオーディオ関連は、これまでもマイクの種類を変えたり、音質調整するソフトウェアを変えたりといろいろ工夫を重ねてきた。

マイクに関しては、一般的に「コンデンサ」型マイクが集音感度に優れているとして勧められることが多く、そのような事例報告が多いことも手伝って、USB接続できるコンデンサ・マイクが選ばれやすい。しかし、もともとの収録環境が静けさを確保できない場所である場合、感度の良いコンデンサ・マイクよりも、感度の低い「ダイナミック」型マイクを利用した方が都合が良いこともある。

利用するシチュエーションに応じて適したマイクを選択していくことになるが、その際、USB接続タイプのマイクでなければ、オーディオインターフェイスと呼ばれる周辺機器を併せて購入しなければならない。このオーディオインターフェイスも、本来であれば使用するマイクに必要なパワーや仕様を持っているかどうかを確認する必要があり、安価なものを一つ買えば済むといった簡単な話にはなっていない。問題なく使えても、音質を良くする観点からパワー不足である可能性は少なくない。

私が導入したShure SM7Bは、ダイナミック・マイクの中でも最も集音感度が低いマイクとして知られている。そのおかげで余計な環境ノイズ等を拾わないメリットはあるが、パワーのないオーディオインターフェイスと組み合わせると、本来収録したい音声も小さく集音されてしまう。入力つまみを最大限に上げても小さいわけだが、このつまみを最大限に上げていることが機器からのノイズを大きくしてしまう別の問題を生む。ダイナミック・マイクを使用する場合、パワーに余裕のないオーディオインターフェイスは気をつけなければならない。

なお、映像収録に関しては、固定カメラを用意することと画面映像を収録できるように機材設定している以外に特別な配慮はしていない。強いて書くなら撮影用ライトが確保してある。

クロマキー処理をして、合成による映像づくりが行えるように道具立てはしているものの、実際に運用するには面倒が多そうなので、現時点では活用していない。グリーンバックを背に画造りをしても楽しそうだが、普段の研究室を背景にしても(散らかっている恥ずかしさを除けば)特段困らない。

新型コロナ禍による遠隔授業提供の試みより以前から、音声収録やネット配信等の試みを続けてきた経緯もあり、こうした細々としたこだわりのようなものが積み重なって、現在のような裏舞台が出来上がっている。(機材も手持ちのものを新旧組み合わせている。)

ただ、結局は「授業」や目的の活動になるべく取り組みやすい環境・条件を作りたいということを目指して来たのであり、継続的に目的の活動が行えるよう利用環境をシンプルに維持することが大事だ。

収録がパッと取り組めて、結果をザクッと放り込んで、提供する側も視聴する側もある程度の予測が可能なルーチンに基づいて進行させながら、その中に面白みを割り込ませるような構造。奇をてらったものは何もないが、持続的に取り組めることを重視すると、そうした方が内容吟味の方にエネルギーを割ける。

おかげで毎回の準備において機材や収録環境で手を煩わされることは滅多にない。毎回の授業で扱う内容に関連する準備に手こずることはあっても、これは純粋に授業内容準備であるから省きようがない。

こうした調子で、遠隔授業に取り組んでいる真っ最中である。

音声講義の収録環境

4月16日(木)に緊急事態宣言対象が全国に広げられました。

5月6日までを期間として措置が行なわれ,地域によって対応が異なるものの,公立学校の多くが休校となって,関係者が対応に追われています。

一部では,5月6日以降も事態好転は困難ではないかと予想し,休校継続の場合の在り方さえ,本格的に検討されています。これは普段からの危機管理対応体制の準備が如実に表れているため,基礎自治体によって本当に様々なようです。

私が住む徳島県は,検査による感染判明者数がゼロ(判明していた3人の感染者は回復し陰性判定済み)であるため,状況として幸いな反面,意識としての危機感や恐怖感は高まり,人に対する猜疑心でギスギスしているようです。

このような中で,私の勤務校も明日(4/20)からWebで授業開始です。

ニュースでもオンライン授業の取り組みが様々紹介されています。

テレワーク(Work from Home)での利用事例が多い事もあってか,教育分野でもZoomというビデオ会議システムを利用する試みも目立ちますし,動画教材を撮影・制作してYouTube等で配信する例もあるようです。

私も普段から授業で利用しているGoogle Classroomに動画を掲載して,オンライン授業に対応すればいいかなという程度の考えでいました。

私個人の性格もあって,環境づくりをしながら今後の作業構想を練るという段取りが得意なので,まずは手持ちの機材を確認し,どう組み合わせれば目的を達成できるのか試行錯誤を始める事にしました。

そうすると,動画収録環境を構築するという道のり途中で,音声収録環境の整備さえすれば目標達成できる部分も見つかったりします。講話中心の授業であれば,ラジオ講座のような方式でOKなのです。

すでに「ポッドキャスト」や「インターネットラジオ」の試みはしていましたので,そういうものにコンテンツを載せれば出来上がりです。

さて,音声収録環境です。

iPhone等のスマートフォンは,音声・映像処理部品の塊みたいなものなので,パソコンの下手なマイクやカメラに比べれば,はるかに性能の良いマイクとカメラで音声と映像を収録する事が可能です。

講義の音声ファイルをもっとも簡易に収録したいなら,スマートフォンと適切なアプリを組み合わせれば実現可能です。

お望みであればiPhoneアクセサリとして外部オーディオ機材を組み合わせればさらにグレードアップできます。

iPhoneアクセサリ(Apple Online Store)
https://www.apple.com/jp/shop/iphone/iphone-accessories/creativity

とはいえ,編集等の作業をするなど,パソコンで収録環境を構築したい場合があります。

今回は次のようなパソコンと機材で収録環境を構築しました。

○コンピュータ
Mac(macOS端末)
https://www.apple.com/jp/mac/
○ソフトウェア
Hindenburg Journalist(ポッドキャスト/インタビュー編集ソフト)
https://hindenburg.com/products/hindenburg-journalist
○オーディオインターフェイス
Audient evo4
http://www.allaccess.co.jp/audient/evo4/
○マイク
Shure SM58(ダイナミックマイク)
https://www.shure.com/ja-JP/products/microphones/sm58

追加の機材を導入するだけの価値があるかといわれると,これは収録した音声を聴く人の価値観によって答えが変わってくるかも知れませんが,私個人としては少しでも収録成果が良くなる事を目指しました。

iPhoneで収録した音声
macと追加機材で収録した音声

どちらも同じ環境の中で,口元とマイクの距離も似たような距離で収録し,違い過ぎてはいけないので,ノーマライゼーションという最大音量を揃える処理だけ施した結果です。

iPhoneもずいぶんクリアに収録していますが,ホワイトノイズと呼ばれるものも気付けばかなり聞こえていることが分かります。

macの方は,そもそもセッティングとしてマイク感度に合わせたレベル調整を施しているという事もあり,ホワイトノイズ系の音は抑えられていると思います。

もし長時間聴くようなことになれば,このあたりが「聴き疲れ」に関わってくるのではないかと思います。

オーディオ編集ソフト「Hindenburg Journalist」は,Apple社GarageBandをポッドキャストやインタビュー向けに洗練したようなソフトウェア。

有償ですが,音声コンテンツを扱いたい人には都合のよい機能も多く搭載しているので,関心がある人は試してみてください。

オーディオインターフェイス「evo4」を選んだのは,ダイナミックマイクのShure SM58を使いたいという希望が先行した結果です。別の候補としては「ZOOM UAC-2」という製品もありました。

実はオーディオインターフェイスには,もっと安価で手軽なものもたくさんあります。たとえば「ZOOM U-22」はコンパクトで安価なオーディオインターフェイスの一つです。それで十分な場合も確かにあります。

ただ,使うマイクによっては「マイク感度」が弱く,オーディオインターフェイスに補える性能やパワーがあるかどうかによってスペックが違ってくるわけです。安価なものの場合は試してみるまで十分かどうかが分からないということもあります。

そこで,それなりの性能を持ったオーディオインターフェイスを用意する事で,様々な特性のマイクに対応できるようにしておきたいという事がありました。上を目指すと値段にキリはありませんが…。

あるいはミキサーにオーディオインターフェイスが内蔵されたものもあります。その場合,ミキサーの性能次第ではマイク感度を様々に補える可能性があります。これもいろいろあるので確かめてみないといけないのは変わりません。

さて,マイクはShure社のSM58という定番マイクを使用しています。

マイクには,ダイナミックマイクとコンデンサーマイクの2種類に大別されるということは知られていますが,SM58はダイナミックマイク。電源が不要で感度が低いのです。

なぜ感度が低いダイナミックマイクを使うのか。

それは感度が良いと雑音を拾い過ぎるので,それを避けたいためです。

コンデンサーマイクは,電源必要ですが,その代わり感度が高いため,微妙な音を収録する際にはとても役立ちます。プロがそれなりの環境で使えば効果が発揮されるというわけです。

しかし,自宅も職場も実はあまり静粛な環境とはいえない,という一般ユーザーにとっては,感度が高いコンデンサーマイクよりも,感度が低いダイナミックマイクの方が扱いやすい事になります。(ケースバイケースですが…)

先ほどの音声サンプルでiPhoneとmacでの収録の違いをお聴きいただきましたが,まさにあれがコンデンサーマイクとダイナミックマイクの違いであると考えてもらってよいと思います。

というわけで,私の音声収録環境について雑にご紹介しました。

自宅と研究室とでは,収録環境が全く異なるため,実は機材構成もかなり異なるのですが,上記は比較的シンプルな構成をご紹介した次第です。

私の研究室は音声収録にとっては劣悪な環境で,普通に過ごしていても通電音のようなものがずっと鳴り響いていて,最初の数年は気が変になりそうになりましたが,最近は気にしない事ができるようになりました。(それでも聴いている事には変わりないので,それで疲れるんでしょうね)

人間なら気にしない事もできますが,音声収録となると話は別ですので,いろんなノイズリダクションやキャンセリングの技術を使って,なんとか聞き苦しくない音声を収録しようとしています。

とはいえ本来,音声を加工するのはご法度行為。

作品を創るという世界なら別ですが,ありのままの音をありのままに収録するというのが音響収録世界の本来の在り方ですし,そのためにそもそもの収録環境を整えるとか,機材を洗練するとか,聴きやすさの追及も原音をいかに崩さず調整できるかとか,そういう努力が積み重ねられてきた世界なわけです。

普段私たちが聞いている「いい音」は,そうしたプロの仕事のおかげで聴きやすく,疲れにくく,気持ちよく聴けるわけですが,それを自分たちでいざやってみようとすると,なかなか大変なんだという事が分かります。

それだけでなく,コンテンツとしての「音声」自体も重要です。

生まれ持った声も様々だと思いますが,少しでも聴きやすさを向上させるテクニックというものはあると思いますので,そうしたことにも意識したいなと思います。私にとっては一番頭が痛い部分ですが。

good times & bad times

前回ブログ記事からも刻一刻と状況は変わり,首都東京の感染者数の止まらない増加傾向と日本医師会の「医療危機的状況」宣言によって,私たちが本当に恐れなければならない事態が見え始めました。

厚生労働省・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の4/1提言を踏まえて,3/24付けで出された文部科学省「新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン」が4/1改訂されました。これにより新年度からの学校再開機運は地域の別はあれ一気に休校継続へと引き戻されていきました。

3/31の内閣府・経済財政諮問会議では,緊急経済対策とともに「デジタル・ニューディールの推進」が議題に上がり,デジタル化・リモート化の環境整備を進めることが議論されました。その中で遠隔教育やオンライン授業についても言及されました。

総務省は,家庭からのオンラインラーニングやリモートワークを後押しするために,情報通信ネットワーク整備推進の補正予算を立案や,電気通信事業者関連の団体に学生の通信環境の確保,通信費負担軽減等を要請するなど動きを見せています。

4/2の内閣府・規制改革推進会議「新型コロナウイルス感染症対策に関する特命タスクフォース」では,遠隔医療と遠隔教育に関して議論されました。このうち遠隔教育に関しては「ICT環境の早急な整備」「遠隔授業における受信側の教師設置基準の見直し」「遠隔授業における「同時双方向」要件の撤廃」「遠隔授業における単位取得数の制限緩和」「オンラインカリキュラムの整備」「オンラインでの学びに対する著作権要件の整理」といった論点が取り上げられています。

オンライン授業に関しては,著作権制限に関するハードルがありますが,これに関しては平成30年の著作権法改正で「授業目的公衆送信補償金制度」が規定され,すでにその保証金をやり取りするための窓口団体である「一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会」(SARTRAS:サートラス)が設立されていましたが,制度をいつ始めるのかの様子を窺っていた状態でした。

休校延長や授業開始延期等の緊急事態にあたり,授業目的での著作物利用(オンライン授業での教科書等の著作物利用)に関して特別な配慮をする動き[文化庁SARTRAS文部科学省],授業目的公衆送信補償金制度の前倒し施行を求める動きなど,これまでであれば後手にされがちであった事柄が喫緊の課題として繰り上がってきたのです。文化庁は前倒しを決めたようです[共同通信]。

4/3首相官邸・未来投資会議では,論点メモの中には「学校現場におけるオーダーメイド型教育(ギガ・スクール)」という議題も含まれ,感染症の影響だけでなく,5Gといった進行中である技術革新を踏まえた今後の方向性についても同時進行的に話し合われています。

携帯通信企業3社は,先の要請の流れもあって,25歳以下のスマートフォン利用者のデータ通信料についての支援措置を打ち出しています。[NTTドコモau by KDDIソフトバンクモバイル

学校関係者(教師や児童生徒たち)によるオンラインの集合や授業が世界中で行なわれていることが一般ニュースの項目として報道され,その視聴者もまたそれに関わらなくてはならない立場に立っているという,類い稀なる事態によって,教育ICTに対する注目はかつてないほど高まっています。

しかし,多くの学校や多くの家庭が,そうした事態に初めて遭遇することでもあり,何の準備もないこと,何から取り組めばいいのか,必要なものが何なのか,そもそもそれは自分たちが取り組むべきことなのかといった様々な疑問や不安が広がっています。

昨年末から急展開していたGIGAスクール構想は,そもそも学校内のネットワーク整備と児童生徒数分の端末整備が守備範囲の施策であり,一人ひとりが自宅で学習することをフォローするものではありませんでした。今回の事態のために前倒しするといっても,あくまでオプションだった「持ち帰り利用」をメインに据えるようにデザインし直すのは大変な作業です。

学校の先生達にとっても,本年度からは新しい学習指導要領にもとづくの授業の実施が始まるため,そのことだけでも手一杯だったところに,感染症予防対策業務が発生し,さらにオンライン授業のための教育方法を突貫的に習得しながら実践しなければならないとなれば,今年度の教育活動や個々の子どもたちの教科学習的な成長について,ほとんど誰も結果を見通せないのが現実です。

先回書いたように「あの日にかえりたい」という心理がないわけではないものの,事態はすでに厳しい局面に突入しているわけで,この緊急事態の中で,できるだけ先を見通しながらもできることから地道に取り組んでいくしかないといった状況だと思います。

こうした厳しい状況下で,様々なところで様々なノウハウの共有活動も活発化しているようです。悪い時だからこそ,協力し合って良い時を作り出していこうとするのは大事なこと。

確かに,非常事態に便乗した形でしか私たちは物事を変えられないのだろうかと,少し残念な思いを感ずる時もあります。普段から協力し合えていれば,もっと備えもできていただろうにと。

とはいえ,この期に及んで何もしないというわけにはいかないわけで,危機をうまく転じて私たちの未来に繋げていける前向きさも持ち続けたいものです。今回の事態で,苦しんでいたり,哀しいことになっている人たちのことを想いながらも,自分たちの身を守りつつ,考え続け,行動できるように準備したいと思います。

GIGAスクールネットワークとGIGAスクール

あらかじめお断りしておきますが,今回も読むべき内容は何もありませんので,いつもの駄文とご理解ください。

さて,こちらの2つの図をご覧ください。

令和2年度概算要求主要事項1
令和2年度予算(案)主要事項

GIGAスクールに関わる予算説明スライドです。上が令和元年8月に公表された概算要求時のもの,下が令和2年1月に公表された令和2年度予算案に添付された令和元年度補正予算のものです。

関係者の方にとっては涙目になりそうな並びの2つのスライドですが,ご承知の方がいらっしゃるように,概算要求時には「GIGAスクールネットワーク」となっていたものが,補正予算が絡んできたことによって「GIGAスクール」と改名されました。

GIGAスクールネットワークで描かれていた青写真が,GIGAスクールのものより,もう少し緩やかであったということはお分かりいただけるのではないかと思います。

消費増税による景気悪化を回避するために大型補正予算を組むという路線が進められていたわけですが,この10兆円規模を目指した補正予算に「学校に1人1台端末」がいつから項目として上がったのか,これは地方に住む田舎研究者には知る由もありません。

消費税アップが決まれば,それと合わせて景気対策が必要であることは既定路線だったわけで,政治臭覚鋭い議員の人々にとれば,そのために超党派の議員連を作って働きかけを続けてきていたわけだし,規制改革推進会議の場での議題に取り上げられた時から,誰かの腹の中にはGIGAスクールネットワークがGIGAスクールの前座の役目でしかないというシナリオが温められていたかも知れません。

そういう意味では,年末年始から今に至っても続いているGIGAにまつわる関係者の苦闘を,それさえ最初から予想していた人たちもいたのだと思います。

当初予算に盛り込める予算金額枠は,財務省が緊縮財政を路線としている以上,当然限られています。せいぜい全国の中の1万校を整備しようというGIGAスクールネットワークの規模程度です。

全国の学校内ネットワークインフラを一気呵成に整備するような規模(それでも割れば微々たる規模の)予算と,小中学生への1人1台学習端末の整備というそれなりに大きな額の予算を確保するには,今回のように15か月予算というスパンでとらえ補正予算によって確保する他ない…おそらく,そういうストーリーなのだろうと素人解釈で思います。

しかし,補正予算扱いにするからには法律上,その緊急性が問われることになっています。当初の計画になかったものが割り込むのですから,その理由が必要というわけです。

ここで多くの人々が思い当たると思いますが,その理由の一つに挙げられたのがPISA2018の結果とその解釈でした。曰く,デジタル読解力に課題がある。考えられる要因には日本の学校のICT環境や活用頻度が乏しいからではないか。これはまずいぞ,大変だ…といった緊急性です。

その他にも,教育情報化の実態調査はこれまでもずっと国内における整備格差の存在を示し続けてきました。さらに本格実施される学習指導要領は情報活用能力を始めとした資質・能力の育成を前提としたものなのに,学校の教育環境はそれを実践する条件を満たせてないこと。プログラミング体験・教育が本格的に始まることも待ったなしの緊急性に数えられると思います。

経済対策としての即効性と早期着手を必要とする緊急性,さらにインフラ整備事業という性格から来る様々な制約に追い立てられた状況の中で降りてきたのがGIGAスクール構想ということになります。

財政や経済が私の専門ではありませんので,この現実をどのように捉えて付き合うべきか,正直なところ答えを持ち合わせていません。(そもそも全体解釈も専門家から見れば違っているのかも知れません。)

この問題には様々な次元(レイヤー)があって,政治,財政,教育行政,地方自治,学校,教職員,児童生徒,産業界,学術界,市民住民などなど,どのレイヤーで理解したり,批判したり,主張したりすべきかは人や場面で変わり得ます。

莫大な支出が伴うことを肯定するのか否定するのかも,レイヤーが異なれば変わり得ますし,どういうスパンで議論するかによっても違ってきます。

効果があるのかないのか,十分活用できるのかどうなのかという論点も,ICT整備を教具や文具を揃えるという観点で捉えるのか,学校が備えるべきインフラ条件という観点で捉えるかによっても,議論の幅が広がっていきます。

実際のところ,こうした物事の決まり方は酷く乱暴です。

これをもっと丁寧に実現することができないものかと,私たちはいつも考えます。今回の件で苦しんで,文句の1つも2つもたんさん言いたいという人たちの心情も,痛いほど察します。そう思いつつ,いま目の前のこと,協力もしあいながら,理解も示しながら,なんとかやっていくしかない。

でも一方で,こうした酷い事態を招いてしまったのは,この国の在り方をそのまま引き継いでしまったことにも遠因があるわけで,実のところ私たちもその一端を担ってしまっていたことを考えたとき,百も言いたい文句の中に,一つくらいは「だったらこうしてはどうか」と前に進む言葉も入れたいと思いもします。

現実を相手にされている皆さんには,なんら慰めにもならない話で終わりましたが,宛てもないブログで私が書けるのはこの程度のお話でした。