11/24祝 第2回教育と情報の歴史研究会

 11月24日(月曜祝日)に「教育と情報の歴史研究会02」を開催します。

 教育と情報の歴史研究会02 http://kokucheese.com/event/index/220323/

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 今年7/5に初めて開催した研究会の第2回。今回のテーマは「学校とインターネット」について,その初期にかかわられた皆様によるプレゼンが予定されています。

 最近はインターネット自体の歴史を振り返る試みも「インターネット歴史年表」を始めとして,「日本におけるインターネット資源管理の歴史」のWebサイトが公開されるなど賑やかになってきています。

 教育とインターネットの関係についても歴史を振り返ってみる事は大変重要だと思います。ぜひこの機会に過去をご一緒に振り返ってみてはいかがでしょうか。

 研究会と銘打っていますが,気軽にご参加いただければと思います。

語り合いを重ねるということ

 9月に始めたネット上にある教育とICTの語り合いの場「スナック・ネル」が続いています。毎週月曜22時に開店するお店に見立てたYouTube配信です。

 スナック・ネル http://snacknel.edufolder.jp

 開店の経緯については,スナックの「マスター」役を引き受けてくださっている田中康平さんのブログ記事に書かれています(「スナック・ネル」[教育ICTデザイナー 田中康平のブログ])ので参照してください。

 実はもともとマスターの書いたブログ記事に私が懸念を表明したのがきっかけだったのですが,結局コメント欄で継続的にオープンに議論する場の必要性で意気投合?したことになります。

 どうしてそんな場の必要性が感じたのか。

 「教育フォルダTwitter」のニュースリンク集を眺めていただければ分かるように,日々,教育に関するニュースは絶え間なく流れきますし,その中で教育とICT関連項目も網羅できないほどです。それを各人各様にキャッチしているわけですが,つまりは同じ関心を持つ者同士でも受け止め方がバラバラという事でもあります。

 どこか定点観測的にこうした状況を眺めつつ議論する場を作って,継続的に多くの人々が互いの考えを交わらせることも一方には必要なのではないか。そういう場があってこそバラバラである事にも意味が増すのではないかと思われたのです。

 それにこの分野は新しいものが大好きだから,常に前へ進む傾向にありますが,そうして走り続けていると,少し前の事も忘れがちなのです。リセットの繰り返しは,ゼロスタートの気持ち良さもありますが,過去に学ぶ事をおろそかにしてしまう状況も生んでしまいます。

 だから「定点観測的」「継続的」であることを優先した場を作って,模索を始めてみたかったのです。

 そのため私たちは仮想の飲み屋スタイルを採用しました。いつもの時間にいつもの場所へ行く事を気楽に続けられるスタイルといえば,飲み屋通いだろうと,そんなざっくばらんな発想を大事したいと考えたからです。

 幸い,スナック・ネルは少しずつではありますが,教育とICTを語っている場として認知されつつあるようです。

 もちろん否定的な意見も聞きましたし,良くない点はいくつも思い付きます。

 男3人だらだらしゃべって何の意味があるのか…とか,毎回テーマも分からず視聴するモチベーションに繋がらない…とか,特定の人たちだけでやっていて入り難い…とか,お酒を飲んで好きに発言する事は問題ないのか…とか,話長い!夜遅い!つまらない!…とか,そもそも誰に向けて,何のためにやっているのか?…とか。他にも諸々。

 そうした指摘や意見は的を射ている部分もあると思いますし,私たちも認識はしています。改善の余地もたくさんあると思います。

 ただ,それもこれも「定点観測的」「継続的」な場を作る事を優先する上で妥協せざるを得ないと割り切っています。

 毎回テーマも定まらず行方知らずの雑談を聞かされるのはウンザリかも知れませんし,だんだん話がマンネリになっていくことに面白みを感じなくなることもあるでしょう。

 けれども,そのことに対処する事にエネルギーを使うなら,定点観測的に継続的に語りを重ねていく事を優先しよう。マンネリ化するなら徹底的にマンネリ化してみて,その先に何かあるのかないのか確かめてみよう。そんな挑戦が幾度かあってもいいじゃないかというのが「スナック・ネル」なのです。

 幸せな事に,私たちは距離を超えて語り合うためのツール(私たちが使っているのはGoogle ハングアウトというビデオ会議サービス)を手にしています。かつてなら考えられなかった事です。しかもYouTubeという巨大な動画配信プラットフォームでリアルタイムに会話を届けられます。録画を残して時間を超えて見てもらう事さえ可能です。

 また,Podcastという手段を使えば,私たちの会話を聞きやすく編集して音声コンテンツとして届ける事も可能です(SnackNEL Podcast)。より多くの皆さんに語り合いを聞いてもらう事にもつながります。

 私たちがこの場を楽しめる限り,スナック・ネルを通していろんな語りを交わらせたいと考えていますし,そのことを通してその他の事に対する見え方も変わってくるのではないかと思ったりしています。もちろんそれは淡い期待の範疇にとどめておいて,私たちはただ場を楽しむ事に徹していますが。

 洒落から生まれる何かがあれば,それはそれで嬉しい事。洒落が洒落で終わったなら,それはそれで楽しい事。洒落が洒落にならなかったとしても,それはそれで恥じるだけの事。何もしないよりは,面白いツールがあるこのご時世なりの何かをやってみたかったというのが素朴な本心なのです。

 興味を持った皆様はぜひご来店を。常連としてお待ちしています。

20141106 韓国教育学術情報院(KERIS)訪問

 韓国には「韓国教育学術情報院」(Korea Education and Research Information Service:KERIS)という組織があります。院長のメッセージによると…

 「1999年に設立されたKERISは、初中教育の情報化と学術および高等教育の情報化、教育行財政情報、教育学術情報の基準・品質管理と情報セキュリティ、教育情報化政策の策定支援や研究、グローバル協力を通じて、韓国の教育の発展のために貢献しています。

 代表的なものとして、初中教育情報サービスのエデュネット(EDUNET)、学術研究情報サービスのRISS(Research Information Sharing Service)、高等教育教授学習教材の共同利用サービスのKOCW(Korea Open CourseWare)、教育行政情報システムのナイス(NEIS:National Education Information System)、地方教育行財政統合システムであるエデュファイン(edufine:Education finance e-system)などの教育・学術情報サービスを国民に提供しています。」

 というように組織紹介されています。つまり「教育と情報」に関わる事柄を管轄する国の組織です。現時点で,これにあたる組織は日本に存在していません。

 教育情報化に関する取り組みにおいて,KERISのような専任の国家機関の必要性が論じられます。

 本来であれば地方自治体単位で情報化の取り組みが遂行され、それらがネットワークを組んで全体が形成される方がこの分野らしい展開の仕方ではあります。しかし,現実には地方によって財政事情や政策優先順が異なり,他と繋がるための十分な情報基盤が構築できないところも少なくないため,地域格差が生まれています。

 教育情報化の格差が,教育の格差を是正することなく助長しつつあるともいえます。

 そのような事態を回避するためには,全国的な視野で教育情報化を支援していく組織が必要であると考える立場も世界中にはあるのです。

 KERISは,お手本ともいえる組織であり,日本の関係者の多くが注目している組織です。

 私もいつかは訪れてみたいと思っていました。

KERIS

 もともとKERISはソウル市内にありました。

 しかし,韓国はソウルへの一極集中を解消するため,政府や行政組織を地方都市へと移しており、KERISもソウルから大邱という都市に移されました。

 というわけで,今回の韓国出張に合わせて,大邱に建てられた新しいKERISビルに行ってみることにしました。幸い今回の出張はのKERISに勤められている方からの依頼でもあったので,その方の職場訪問という形でビルの中にもお邪魔できました。

KERIS Gate KERIS Lobby

  KERISには未来の教室のモデルルームがあって,新しいビルにも用意されているので短い時間ではありましたが拝見させていただきました。(写真の公開はご遠慮くださいとのことでしたので,外側の看板だけ…)

KERIS room

 KERISビルには,オフィスだけでなく様々なサービスを支えるサーバー設備も備わっており,韓国全体の教育情報プラットフォームの要的存在です。

 韓国の場合,教育情報プラットフォーム提供は国家サービスの一つとして位置づけられているので,KERISという組織も恒常的な組織として設置されているわけです。

 ただし世界にはいろいろなやり方があり,たとえば英国にはかつてBECTA(British Educational Communications and Technology Agency)という組織があり,教育の情報化推進に大きく貢献しました。しかし,情報化が一定程度達成化されたことや政治的な状況変化とも関わって,BECTAという組織は解消されていまはありません。

 日本にも,高等教育に限定的な組織として始まったメディア教育開発センター(NIME:National Institute of Multimedia Education)という組織があり,そこが全般的な教育の情報化に関する取り組みを推進しようとしていた時期がありました。しかし,残念ながら本格的な取り組みをする前に独立法人組織見直しの波の中で解体されてしまいました。

 日本の教育の情報化の進捗が停滞気味であるのは,地方主権という政治的な流れの中で,国による環境整備事業を通した補助金行政が次々に否定され,地方のことは地方が自前でという格差の生まれやすい状況に社会が変わってしまったこと。それと相まって国全体を支援するという組織を国が持つことも難しくなった時代に突入したことも遠因としてあると思います。

 日本にKERISのような組織を作れば何でも解決するというわけではありませんが,そのような立ち位置で全体を俯瞰し,展望を示していくことは重要だと思います。

 短時間ではありましたが,KERISのオフィスでコーヒー飲みながらおしゃべりできたのは楽しかったです。

MetaMoJi Share for ClassRoom発表

 11月12日,MetaMoJi社の「MetaMoJi Share for ClassRoom」という授業支援システムの発表会が行なわれました。これは同社のMetaMoJi Note/Shareを基盤として開発された学校向け製品です。

 あらかじめサーバーあるいはクラウドに児童生徒用のアカウントIDを登録した上で,協働作業できるシェアノートを配布して授業に利用するというシステムです。

 授業支援システムと一口に言っても,具体的にどんな機能で支援をするのかは製品によって異なります。

 一般的には,ファイルの配付/回収,端末画面の転送,教師端末における生徒端末画面の一覧/選択表示,問題やアンケートの出題と回答/集計,同一制作物の同時編集,端末同士の呼び出し/メッセージ交換,端末ロック機能などがあります。すべてを備えているものもあれば,一部に特化したものもありますし,具体的な実現方法や操作方法が異なる場合もあります。

 いずれにしても情報端末が複数台ある環境で,授業における教授学習活動を支援してくれる機能を持ったシステムの事を「授業支援システム」と呼んでいます。

 知識伝達色の強い授業を支援する場合,教材の提示あるいは配布,提出物の回収といった機能による支援が期待されます。つまり先生と生徒の間のやり取りを効率化することです。(一斉学習の支援)

 もう少し発展した使い方として,提出物を回収後,大画面に比較表示する機能の活用が想定されます。いままで生徒を前に呼んで板書させていた活動を効率化するわけですが,全生徒のその時点の学習進捗や成果そのものを授業に生かすことでもあります。(個別学習と一斉学習の相乗支援)

 ここまでくれば,グループ活動における個々の生徒の記録を交換することも難しくありません。グループ内の協働学習活動を支援し,グループ間の学習成果の比較検討を通して,構築的な知識獲得の活動を支援することもできます。(協働学習の支援)

 授業支援システムは,かように様々な学習活動や場面において,学習記録や成果を伝えたり,比較したり,掛け合わせたり,残したりする事を助けてくれる道具なのです。

 さて,MetaMoJi社が提供を始める授業支援システムは,何か目新しい特徴を持つのでしょうか。

 既存の授業支援システムのほとんどが,授業支援システムのために開発された「特別仕様システム」のようなものであり,ユーザーは教材あるいは学習成果であるワープロファイルやら写真ファイルやらのデータをそのシステムに託して利用するといったものでした。

 MetaMoJi社のShare for ClassRoomは,市販のデジタルノートアプリとして評価の高いNote/Shareシリーズを基盤としてシステムが開発されているため,様々な教材や学習成果データをデジタルノートとして管理できるメリットがあります。

 特別仕様で作ったか,市販アプリをもとに作ったのか,この点が決定的な違いです。

 私は,授業で扱う教材や学習成果のデータをデジタルノートとして記録し管理する事がとても重要であると考えています。MetaMoJi社の授業支援システムは,一般にも使われているデジタルノートをベースにした基本的な設計とポジションにおいて,他の製品と一線を画しているといえます。

 既存の授業支援システムでデータを扱う際,2つの方法があります。1)汎用的なファイルを管理する方法と2)独自形式で記録して管理する方法です。MetaMoJi Share for ClassRoomの場合は,後者2)に当てはまります。

 

 1)の方法は,ワープロのWord形式や一太郎形式,スライドのPowePoint形式,文書のPDF形式,写真のJPEG形式,動画のwmv形式やmp4形式といった馴染みのファイルを整理しながら扱います。私たちが日頃パソコン操作でやっている作業です。

 通常のファイル管理と同じである点で敷居は低そうですが,授業や学習が進んで扱うファイルの数が増え続けていくと問題が起こります。分散しているファイル同士の関係を忘れたり見極める事が難しくなり,記録を見返す事が困難になるのです。

 つまり,分散するファイルの形で授業や学習の成果が記録されてしまうと,それらを整理した形で振り返ることが難しくなるということです。

 小中学校において学習ノートが重視される事の意味を問い直してみると,もちろん学習した内容を整理するためでもありますが,授業の内容と学習の成果がノートに順を追って記録され,必要に応じて遡って確認できる事に意味があるのです。

 私たちはノート記録という型のある学習形式の習得を経て,複雑な情報整理や記録へと駒を進めるのであり,最初から煩雑なファイル管理の世界で学習を積み重ねるのはあまり勧められません。それはアナログでもデジタルでも同じです。

 
 一方,2)の方法は,独自の形式で記録しファイルをやり取りすることになります。このやり方は,様々なデータを統合的に記録管理できる点でメリットがあります。

 学習ノートを再現するように授業内容や学習成果を蓄積できれば,学習の振り返りをする際にも記録を容易に遡る事ができます。

 MetaMoJi Share for ClassRoomの特徴は,「授業の記録」がデジタルノートと同じ形式(のシェアノート)でやり取りされて残るため,学習ノートにおける個人の「学習の記録」と容易に統合できる点にあります。

 このように「授業の記録」と「学習の記録」の対応を保って記録を残せるということが,学習を個に返す上で大変重要です。

 

 ただ,この方法では,特定製品にロックインされてしまう問題を孕んでおり,データの永続性という点で不安視されているのも確かです。

 私たちの学習成果を特定製品のデータ形式で蓄積したとして,その製品を使い続けなければならないのか。仮にその製品が開発中止になった場合にどう対処すればよいのか。こうした問題は常に意識しておくべきと思います。

 幸い,MetaMoJi社のNote/Shareアプリは認知度や評価も高く,ビジネスや日常生活でも多く使われています。「学校の中だけで使う独自アプリ」という枠に囚われていません。これが他の授業支援システムと異なるMetaMoJi Share for ClassRoomの優位なポジションです。授業や学習の記録を普段使っているデジタルノート形式で残せれば,学校に閉じてしまうことが少ないといえます。

 (※また当然の事ながら紙の学習ノートの併用も前提とした議論です。アナログとデジタルのノートの組み合わせ方は,それ自体が一つの研究対象になりえます。)

 辛口な事を書けば,MetaMoJi Share for ClassRoomは,まだ登場したばかりの後発製品です。先行製品を無批判に真似た部分は多いし,学校で使うためのツボを押さえた機能にはまだ乏しいといえます。

 たとえば,生徒端末の画面一覧機能は,授業支援システムの基本でありMetaMojI社の製品もそれを機能として実装していますが,それだけでは不十分なのです。一覧表示はモニタリング目的には合致しますが,それを児童生徒への提示目的に使おうとした途端,一覧表示や選択表示ではまったくニーズに応えられないのです。

 具体的には,比較表示の際に生徒の名前は消せなければなりません。モニタリングの際には表示する必要があるものも,児童生徒達に見せるとなれば,誰の画面かを伏せた方がよい場合もあるのです。(大きく表示した画面に「モニタリング」という文字が表示されるということにも本当なら抵抗感を感じなければなりません)

 さらに,比較表示される生徒端末の画面は,整列するだけではダメで,自由位置にも配置ができなければなりません。自在に動かしてグルーピングする必要があるからです。その上,その比較画面にかぶせるように自由に書き込みができなければなりません。

 モニタリングではなく,生徒の画面そのものが提示素材となって説明対象となっているのですから,そこに先生が自由に解説書き込みできなければ意味がないのです。

 こうした機能は,まだ多くの授業支援システムで実現には至っていません。画像保存などして似たような事を再現できますが,本来そうした手間を支援するのが授業支援システムの押さえるべきツボなのです。既存のシステムも含めて授業支援システムはまだまだ進化しなければなりませんし,現在の形を一度壊す必要があるのかも知れません。

 

 私は,こうした進化を実現できる一番近いところにいるのがMetaMoJi Share for ClassRoomだと考えています。それは同社のデジタルノートアプリNote/Shareのもつ実績や技術面からそう考えています。まだまだ備えて欲しいものが多いのも事実。しかし,今後着実に進化してくれることが期待できるのも確か。

 だから私は「本当の意味でデジタルノートを基盤とした授業支援システムが動き出します。今後の進化を刮目すべき製品です」とエンドース文を贈りました。

 理想的には,一般の私たちが日常や仕事で使用しているNote/Shareアプリが直接,必要に応じてMetaMoJi Share for ClassRoomシステムに接続する形がよいのです。今回発表された時点では,デジタルノートとシェアノートのデータ交換が可能であるといったところに留まっているのだと思いますが,それらがもっと融合する事になると思います。

 今後は個人のデジタルノートと授業のシェアノートの橋渡しがどれだけ柔軟に操作できるのかがこの手のシステムにとって大変重要な課題になると考えています。

 

 可能性を秘める技術が学校教育に生かされる事を心から願っていますし,それは今回の製品に限らず,他のどんな会社のどんな製品についても同様です。

20141105 世宗特別自治市ハンソル小学校

 2014年11月5日に韓国・世宗特別自治市にあるハンソル初等学校(한솔초등학교)に訪問し,授業参観を指せてもらいました。

 当日は保護者参観と同時に「デジタル教科書研究学校運営報告会」としても公開されていたようで,大変賑やかな学校の視察となりました。

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  デジタル教科書研究のモデル校ですし,世宗特別自治市はかつて遷都予定地であったということから多くの政府組織が移転していることもあって,比較的環境のよい先導的な学校だと理解するのが自然のようです。

 教室環境は,液晶ディスプレイ式の電子黒板が教室前方の中央に設置され,これにホワイトボードをスライドさせて収納できるようです(ほとんどの教室で開けっ放しで電子黒板を使っていましたが)。先生の机は電子教卓となっており,映像を映し出す機器は普通教室に常設済みというのは,もう何年も前からよく知られた姿です。

 児童側にはサムスン社製のAndroidタブレット端末が用意されており,当然授業ごとに1人1台活用からグループに1台など,利用形態が異なります。もちろん今回は使っていないというクラスもありました。

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 写真のクラスは5年生で,「未来の自分の姿を示して発表しましょう」という活動のようでした。ホワイトボードの手順を見ると「例示データの発見」「発表資料の作成」「発表」という手順で進めていたようです。

 電子黒板を見て分かるように,ポラリスオフィスを使って各自スライド作成して,それをクラスティングと呼ばれる教育用SNSにアップロードする作業が行なわれていました。児童たちはいつもの作業とばかりに各自で黙々と作業をしていて,操作に困ったりする様子は皆無でした。

 その他のクラスや学年もデジタル教科書の提示や閲覧,調べ学習の情報検索,クラウド上のマインドマップ作業などにタブレット端末を活用していました。 

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 ちなみに3年生の教室では,タブレット端末にハードウェアキーボードを組み合わせて利用していたのですが,他のクラスはほとんどがソフトウェアキーボードで済ませていました。韓国の場合,入力するのはハングル文字になりますが,そのテンキー入力方式を利用しているのも印象的でした。(iPadの韓国語標準キーボードにはこのタイプの方式は装備されていません。)

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  滞在時には思いつかなかった疑問ですが,韓国の場合の手書き(筆記)に対する認識がどのようなものであるのか気になります。日常生活や仕事の場面でもほとんどハングル文字で通用してしまう世界ではキーボード入力の効率性は絶大のように思われますが,それに対して筆記による学習効果(記憶定着)といった議論がどの程度取り上げられるのか。次の機会に聞いてみたいと思いました。

 学校全体の教育活動の様子は目新しさに満ちているというより,日本の元気な小学校のそれとほとんど変わらないと思います。教授学習活動が児童の身になっているのかどうかを判断するには語学力がなかったので雰囲気だけを見るしかありませんが,ICT活用がずば抜けて効果を発揮しているということは無いように思います。当日は親御さんも来ている授業参観の授業でしたから,ここから日頃の授業の営みを推し量るのはちょっと難しいかなというのが正直なところです。

 とはいえ,設備の常設化や全学年を通してICT機器の活用をデザインしていける環境にあるというのは,やはりそれなりに意味があることで,ごくごく普通に利用している状況に到達しているということは,それなりの積み重ねがあって初めて成り立っているということをあらためて感じることができた視察でした。

 最後に確認ですが,このハンソル小学校はモデル校の一つですので,他の韓国の小学校では事情が違うことを念頭に置いておかなければなりません。