20181031_Wed

小学校でプログラミングをどう取り組めばいいか。

プログラミング体験が必修事項となったとはいえ,初めての先生方にとっては何から手を付ければいいのか分からないのが実際です。

この日も出張先の会議で素朴に問われました。何から読めばいいでしょうかと。

文部科学省は新たな学習指導要領に併せて「小学校プログラミング教育の手引」(2018年11月6日に第二版)を公表し,プログラミング体験を導入した経緯や考え方等について解説しています。その内容をパンフレット化した「「小学校プログラミング教育必修化に向けて」パンフレット」が未来の学びコンソーシアムによって製作されています。またICT CONNECT21からは「小学校プログラミング教育導入支援ハンドブック2018」というパンフレットも出されています。

公益財団法人・中央教育研究所が「小学校プログラミング教育ガイド」というパンフレットを作成しており,裏面にあたる「プログラミング教育 実践事例+教材紹介」で様々な事例を手軽に一望できるようにしています。

巷には『間違えないプログラミング教育』(小学館)という先生たちの心理に付け込んだタイトルではありますが情報満載なガイドブックも登場していますし,『先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本』(翔泳社)といったその名もずばりの本も発刊されています。

先生向けではありませんが,保護者向けに『図解 プログラミング教育がよくわかる本』や『プログラミングってなに?親が知りたい45のギモン』といった本や,様々な子育て・家庭教育雑誌の情報発信も世間の空気を煽っているという点で気にしておいてもいいかも知れません。

プログラミングにいろんな学習の要素や意義があることはわかったけれども,現実的問題としてプログラミング体験事項を厳しい時間進行の中にどう取り込むべきか。

その問いに直接答えることは難しいですが,プログラミング体験を誘発させたり発展させやすくする下準備に何をすればよいかは答えられます。それは,先生が普段からプログラミングを道具として活用している姿を見せ続けることです。

たとえば,パソコンの画面上でアニメーションも作成できるプログラミングツールがありますが,それらを利用して教科の提示物を作成してしまうことです。

また,ボタンやセンサーが備わったプログラミングできる小さな電子機器も様々登場していますが,それらを使って,授業中の提示スライドの表示や順送り操作をすることです。

こういうプログラミングツールや電子機器を,そのものを勉強するために用いるのではなく,普段の授業や学習のために使いこなすということを先生たちが楽しんで挑戦している様子を見せることが大事だと思います。

学習指導要領における例示を踏まえて,算数や理科の新・教科書でプログラミング体験がどのように記述がなされるのか。そんなことばかりを気にしていても,プログラミング体験をうまく溶け込ませることはできません。

先生方がプログラミングの成果を実利用・活用しているその姿を見せることが関心を喚起する出発点になりえますし,そこから学習指導要領の例示を越えた様々なプログラミング体験を生み出せるかも知れません。これは,子どもたちが自らプログラミング体験を生み出すことも含まれます。

そうなったら,プログラミング体験という学習事項を時間進行のどこに位置づけるかという問題は,また違った見え方をするのではないでしょうか。

20181030_Tue

Appleが新しいMacBook Air、Mac mini、iPad Proを発表しました。

英語で「All-new design」とか「Redesign」とか表現されると、筐体を「真新しくデザインした」フルモデルチェンジと思ってしまいがちですが、今回のMacはどちらかと言えば、筐体デザインは大して変えずに「真新しく設計し直した」モデルといったもの。

見た目のインパクト勝負の時代はとうの昔に終わり、確立した製品カテゴリーを持続的に提供するための裏側の取り組みが粛々と続けられていることを印象づけるものでした。それは今回のMacが100%再生アルミニウムで製造されているといったことにも象徴されていると思います。Airとminiというモデル名が残されたのも、末永く使うものだというメッセージを込めているのではないかと思います。

MacというAppleにとってのパーソナルコンピューター・カテゴリーは、決して終わりを迎えるわけではないものの、そこからまったく新しい何かを始めるということはなく、その時代時代の技術トレンドを取り込むというリフレッシュは行いながらも、基本的にはメンテナンスフェーズにあるという気がします。

では、何か新しいが始まるのはどこかと言えば、それはiOSデバイスのカテゴリーということになります。

今回のiPad Proはフルモデルチェンジと言ってよいと思います。

また先に発売されたiPhone Xシリーズも新しいモデルフェーズに入った製品です。

昨年のiPhone XとiOS 11と組み合わせで先行して姿を現しましたが、いわゆる「ホームボタン廃止後」の新しいモバイルオペレーティングシステムの形は、今回の新しいiPad ProとiOS 12の組み合わせによって本格的に始まるわけです。さらに今後は64ビット対応アプリのみが動作する環境へと完全に移行させていくので、iOSの系譜的にもいよいよ新しい段階へ突入したと見なすことができます。

そうした足回り(OSやAPI、独自CPU等)を組み立て固めていく作業過程に、私たちは長いこと付き合わされてきたわけですが、ここにきてようやく一段落付いた感じだと思います。

新しいiPad Pro自体は、ホームボタンが排除されベゼルが細くなり、コネクタがUSB-C規格になったり、Apple Pencilが第2世代へとモデルチェンジしたりと、期待された改良が施されて文句なく買いだと思います。ただし、それだけのフラッグシップ製品であるだけに、価格もそれなりの金額となってしまうのが痛し痒し。

個人的には初代iPad Proを愛用していますが、私の使い方だとパフォーマンス的に不満は少なく、今すぐに買い換えをする必然性がないので、新しいiPad Proは様子見です。今後、アプリが多機能化などして処理速度の要求度が高くなったり、端末自体が不調になって買い換えニーズが発生したときに検討するのでも十分かなと思っています。

先日のブログで中学校の教育用パソコンのOS種別比率をご紹介しました。

比率は公立学校(小中高特別支援等)に範囲を広げた場合でも似たようなもので、要するにWindows一色なのです。ただ、Windowsのバージョン分断が鮮明で、依然多く残るWindows 7に関しては2020年1月14日に延長サポートが打ち切られるため、新バージョンか別のOSへの移行が求められているところです。

それで、学校で利用するOSは、そもそも何を選んだらよいのだろう、という素朴な疑問に、今ならなんと答えるのが妥当なのか。皆さんは自身の答えをお持ちでしょうか。

問いが厳密でないという問題もあるし、答えるための前提はいろいろ考えられるため、答えのコンセンサスが成立しているとはいえない質問です。

理想的なことを申せば「代表的なOSの機器はすべて導入すべき」なのです。

それぞれのOSや機器毎に特性や独自機能があるのですから、要求に合致するOSや機器を使い分けられるように環境を整えるのが学校であってもいいはずです。図書館の国語辞典がたった一種類しかない状態は貧弱な蔵書状況だといえますが、パソコン機種においても同様に考えてもおかしくはないはずです。

とはいえ、現実的にはそう考える人の方が少なく、パソコン導入となると一つの種類に統一するのが正しいと信じられています。

一つに絞るときの答えは「今どきOSは何を選んでもいい」となります。

ただ、この答えにはいくつもの条件が付きます。まずはインターネット接続を前提とすること,Webサービスなどのクラウド利用を前提とすること等です。

Windows 7が発売されたのは2009年ですが、このあたりから時代はモバイル端末への比重移行を本格的に始めていきます。クラウドのサービスが使い物になったのは2014年や2015年頃で、ほんの少し前のことです。そこでようやくWebブラウザがプラットフォームの役目を担い始めます。

そうなると、Webブラウザが安定して動作すればよいという話になってきますから、Webブラウザが動けばOSは何でもよいということになります。何年か前までは「マイクロソフトOfficeが動かないと…」なんて懸念も流布していましたが、いまやそんな呪文を唱えるの人は極少数です。

実際には管理作業やコストの要素が選択の判断材料になることにはなります。私個人は,OSアップデートに伴うバタバタが少ないのでリンゴマークの機器を好んで使っていますし,ブラウザベースのOSも仕事では使います。

そういうわけで,何を選んでもいいという時ほど,好みがないと選び難い時代とも言えるかも知れません。

20181029_Mon

デジタルに対してどう向かい合うべきか。

このところの機器や技術がもたらす事態を眺めていると,その進化あるいは未熟さのどちらをも要因として,私たちの認識をこれまで以上に惑わし,危険水準に連れ込もうとしているように感じられる。

アナログとデジタルの境が見えなくなって,私たちの意識や文化に大きな影響を与えてしまうのではないかという問題意識は,目新しいどころか今では使い古されたもののように聞こえる。けれども,デジタルが表現するものの影響力が一段と強くなってきた昨今だからこそ,今一度,問い直すことが必要な気がする。

分かりやすいところでいえば,デジタル画像・映像処理。

先週,米国でAdobe MAXというアドビ社のイベントが開催された。ユーザーとの交流や製品・技術情報提供の場として毎年催されている。そこで披露された開発中の技術は,アドビ社が手がける画像や映像等分野の先進的な処理技術であり,ディープラーニングの成果を応用して元データから魅力的なコンテンツを引き出す技術だった。

しかし,そこで生み出されたコンテンツは,元データから生成されたとはいえ,どこからかはリアルを離れてフェイクを抱え込んだものになっている。そして,その分水嶺がどこにあるのかを確固として言及することが,今まで以上に難しくなっていることを感じた。

この問題に私が最初に触れたのは『リコンフィギュアード・アイ』(アスキー1994)であった。原著が執筆された当時1992年はPhotoshop2.0時代で,高解像度のデジタル画像を扱うのは難しかった時代である。そのためこの本では,当時まだまだ主役であった(アナログ)写真における視覚受容の文化的な意味を議論するところから掘り下げられており,「意図と人為性」の章では,写真が誇ってきた信憑性について様々な手法事例を通して疑問を投げかけていた。

アナログ時代にもある種の意図と巧みな編集によってフェイクなものはあった。それでもそこには微かな綻びや痕跡が残されていて見抜けるものもあった。しかし,デジタルになったらどうだろう。デジタル処理を人間がする分にはまだ痕跡は残るかも知れないが,その処理を膨大な学習をしたAIが担ったら。

何をもってオリジナルやコピーと見做すべきか。

そもそも原初がデジタルで始まったものに囲まれた世界で,私たちが認識可能な分水嶺を残すべきであるのか,残るものなのか,もはや存在するものなのか。問いかけ自体が変容を迫られ始めて,もはや問いさえ見失いかねない気がした。

英語の学力学習状況調査と中学校の教育用パソコン

文部科学省「平成31年度全国学力・学習状況調査 中学校英語「話すこと」調査」に向けて,調査手順を示す文書が2018年10月9日に公開されました。(平成31年度全国学力・学習状況調査 中学校英語「話すこと」調査に向けて

直後はそれほどでもなかったのですが,しばらくしてからFacebookあたりで,手順に示されているパソコン条件について話題になり,とあるブログ記事とツイートが文部科学大臣の目に触れるなど,少しばかり注目されています。

20180628「【全国学力テスト】英語予備調査、11%の学校でトラブル」(ReseMom)
20181001「全国学力調査で英語4技能調査 中3対象 3年に1回程度 PCやタブレット活用」(教育家庭新聞)
20181009「文部科学省「平成31年度全国学力・学習状況調査の中学校英語「話すこと」調査に向けて」を発表」(今日もワンステップ!)
20181010「ICT環境の確認求める 全国学力調査・中学英語」(教育新聞)
20181010「【全国学力テスト】H31年実施に向け英語「話すこと」調査、手順など公開」(ReseMom)

公表された文書を見て私が思ったことは「担当される先生方が大変だろうなぁ」というものではありましたが,また同時に,文科省や専門会議の関係者がこれ以外の方法を示さなかった理由については「仕方ないのだろうなぁ」という諦め受容をしていたことも事実です。

手順が示している通り,調査実施のため「調査プログラム」をセッティングして動作させること(事前準備),動作させて確実に記録を残すこと(実施),記録を確実に回収すること(回収)を現在の中学校設備でどう実現するか,この3つが大きな課題です。もちろん適切に削除も必要です。

【事前準備】

「またWindows決め打ちか…」という感想が湧かなかったわけではありません。iOSやChromebookの露出も増えてきていますし,Webベースのオープンなコンピューティング環境というものへの意識も広がりつつある中で,Windows用の調査プログラムを開発し用いる仕様は,Society5.0を謳い始めた省庁としてどうなのか。旧態依然な雰囲気を醸し出します。

しかし,現実的な選択をしなければならないのも官公庁。

文科省自身が継続してくれている「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」がありますが,この調査を踏まえればWindowsを前提とした計画を立てることに問題があったとは言えません。

中学校における教育用パソコンのOS種別をグラフ化したものです。

ご覧いただければ一目瞭然ですが,学校におけるWindowsプラットフォームのシェアは依然として9割以上(95.1%)です。併せてWindowsプラットフォーム内のバージョン比率も掲載しておきます。

この状況を前提に,調査プログラムをWindows専用プログラムで開発するか,あるいはWebベースで開発するかを選択する際は,たとえば費用対効果や想定される問題の回避を考えるわけです。

Windowsのバージョンが多様で,導入されている実際の端末のメモリやディスクの容量も多様,インターネット接続状況も(調査から見えない部分で)実に多様,動作時の実際的な条件も多様となると,その中で確実さが求められる「調査プログラム」を問題なく動作させる方法は,正直に言えば「ない」わけです。

Webベースの調査プログラムに関しては,Windows上のWebブラウザ事情(Internet Explorerは調査に使える?等)を考えれば,余計な問題を増やすことになり,確実性に乏しくなるのは目に見えています。結局のところWindows専用プログラムを組むのが一番妥当ということになるというのが落とし所のように思えます。

しかし,調査プログラムのインストールだけでも,許可や制限解除が必要な環境も珍しくなく,再起動するとインストール前の状態に環境復元する設定になっているところも多いため,決して理想的な落とし所ではないのも事実です。

【実施】

「話すこと」の音声データを録音して記録に残す。

単純な処理課題のようにも思えますが,多人数の音声データを確実に管理し,1人1人が調査を受ける毎に調査環境を初期状態に保ち,それを規定の調査時間内で繰り返し処理することは,前提条件が多様であることを思い返していただければ,容易な話ではないと同意してもらえるのではないかと思います。

「平成31年度 全国学力・学習状況調査の時間割のモデル」の補足には次のように書いてあります。

○「話すこと」調査の所要時間は、生徒1人当たり10〜15分程度(準備5〜10分程度を含む)。同一学級の生徒を一斉に調査でき、かつ調査対象学年の生徒全員が3単位時間以内で調査できるように設計されている。

平成31年度 全国学力・学習状況調査の時間割のモデル

先行する学級の生徒たちが調査を受け,後続する学級の生徒たちが調査を受けるまでの間5〜10分程度で,学級生徒数にもよりますが数十台ものパソコンを調査初期状態に戻すための作業(再起動でしょうか)を行なうことになります。

そうなると音声データを回収まで「どう残すか」は大問題です。

インターネット接続が保障もされず,仮に接続されていても回線速度が安定しているかも不明であるうえ,全国から一度に届くであろう音声データを安定して受信して保管するサーバーシステムを組むコストを考えると,音声データを送信してしまう方法は使えない。

USBメモリを使えないように制限を加えたパソコンも多いので,USBメモリを使って音声データを保存するやり方も使えない。

とりあえず個々のパソコンのローカルに保存してもらうしかないけれども,それさえ環境復元ソフトの導入があると叶わない…。公表された文書の裏側で苦悩している様子は手に取るように伝わってきます。

おそらくこの辺は,個別どうするのかを早めに検証して対処方法を見つけてもらうということになるのでしょう。方法を大きく変える時間的・資金的余裕があるとは言えないので,受託企業の性格的なことを考えると人海戦術で対応するしかないと考えているのかも知れません。

【回収】

調査と同時進行で音声データが送信提出されるわけではないので,調査中,パソコンのローカルに記録され残されたデータを個々の学校でUSBメモリに保存回収し,それを全国で回収するという2段階回収となるようです。

音声データをインターネット経由で直接提出させる方法もありそうですが,調査の解答用紙が別にありますので,これとUSBメモリを同時に従来の方法で返送した方が採点集計作業において効率がよいのかも知れません。

オープンな技術プラットフォームが普及するメリットを考えると,今後はWebベースで調査ができるように仕向けていくべきだと思います。しかし,学力・学習状況調査の実施が妨げられてしまうようなことがあっても困るわけです。

私もWindows決め打ちをして書かれる公文書は好ましくは感じません。しかし,この難しいタイミングにおいて出された文書としては,仕方ない部分もあると受け止めます。

今回の問題の背景に,まだまだWebベースやインターネット,オープンなサービスを利用することが難しい学校の縛られたICT環境の現状があること,それを変えることが業界構造として難しくなっている問題について,社会の問題意識が向いてくれることを望みます。

20181027_Sat

入試監督と面接。

緊張している受験生たちが余計な不安を抱かず力を発揮できるように,できるだけ違和感のなく行動することを心掛ける。なんとか無事終了。

徳島行きバスまで1時間半くらい猶予があった。

行くべきだとアドバイスされた餃子店の餃子を食すため「ひろめ市場」へ向った。帯屋町アーケードの西の端,高知城跡近くにある。人が多くとても活気があったので,雰囲気に押されてビールとともに焼餃子を2人前。小振りなのでペロッと平らげてしまった。

昨夜と打って変わって秋晴れの土曜の昼下がり。ステージでは仮装をした子どもたちが曲のリズムに合わせて踊っている。アーケードではハロウィーンのマーチングバンドが演奏行進している。

少し優雅な気分に浸りながら,バスの待つ駅へ向った。