「サーバーをもたない」時代

私たちがインターネット上で利用するサービスは,それを提供するための処理をする「サーバー」コンピュータというものが存在しています。

企業が自社のメールやWebサイトを運営したりする場合には「サーバーをもつ」(オンプレミス)というのが一般的でした。大きな組織ならサーバールームという専用の部屋が確保されることもあったわけです。

学校もコンピュータネットワークを利用するようになって「ファイルサーバー」あるいは「ネットワークHDD」(NAS: Network Attached Storage)といったものをもつことがあります。みんなで使うコンピュータファイルの共有置き場所として,昭和時代の物置のような感覚で一家に一つ,自前でもつようにイメージする人が少なくありません。

この「サーバーをもつ」あるいは「サーバーをたてる」というのは,システムを設置・管理することを通して所有欲を満たしたり,万能感を抱かせる側面があります。また手元で運用することが安心感ももたらしました。

しかし時代は,「サーバーをもつ」時代から「サーバーをもたない」時代へと移りつつあります。

たとえば,物が爆発的に増えてしまった状況の物置を考えてみると,家の物置で対応するには容量が足りず,やがて外部の「貸し物置」(レンタルスペース)を利用するようになったことは知られています。

サーバーも,自前で管理するよりも外部の専門家が管理するものを利用するのが最も楽で安心。しかも外部専門家は,サーバーの提供の仕方も多様なものを用意してくれていて,私たちが商売や業務で必要とするものにフィットした形のサーバーサービスを提供してくれるのです。

というわけで,こうした流れは「サーバーレス」とも呼ばれており,クラウドというものを構成し支える一つのピースなのです。

もちろん,これはGoogleやアマゾン,マイクロソフトのような,世界中に「サーバーをもつ」クラウド企業の存在があって,それらが無償・有償でサービス提供してくれるからこそ「サーバーをもたない」でよくなっていることになります。

逆に外部に頼らないならば「サーバーをもたざるを得ない」ことも事実。

ある人はクラウドでも大規模障害が起こりうるのだから,自前で管理した方が安心だと考える向きもあるようです。どちらが安心かは,現実の設計や運用に拠るのでしょう。

とはいえ,何かを始めるために最初は「サーバーをもたない」状態から始めて,いずれ必要ならば自前の「サーバーをもつ」ことにすればよいのではないでしょうか。

最近は「クラウド・バイ・デフォルト」という言葉で,外部クラウドサービス等の利用を基本にするといった原則が再確認されています。サーバーを自前でもたずにサーバー機能を活用するスタイルが標準となっているのです。

「サーバーをもたない」時代であることの認識が高まる必要がありそうです。

ちなみに,りん研究室ではGoogleのサーバーレスソリューションである「Firebase」をいじっている最中です。

基本的にはモバイルアプリケーション開発を助けるものですが,これを使うと大掛かりな投資の必要もなく,世界的なサービスを開発して公開することが出来ます。

HTML5(html,css,javascript)を使いこなしさえすれば,自分自身で簡易なメッセージやSNSサービス等を構築することは可能です。

その具体的なやり方については機会を改めてご紹介したいと思います。

テクノロジーへの依拠と無縁

日本のインターネット利用が一般社会で始まって20数年経過しました。仮に1995年を基点と考えれば24年ということになります。

メディアの普及にかかる年数(Consumption Speeds)については,あれこれ調査研究がありますが,大概のものは30年も経過すれば普及率8割9割といった「当たり前のもの」になっているというのがこれまでの知見です。

たとえばインターネットに関しても,あと5年くらい経てば「当たり前のもの」と言える…なんてことを待つ必要がないほど,今日の私たちの社会生活はインターネット基盤の存在を前提に成り立っていることに異論を唱える人は少ないと思います。

ただ,その現実をすべての人が認識する立場にあるかと問われると,直接的にインターネット基盤と関わらなくて済む仕事もあるでしょうから,インターネットテクノロジーに対する印象が俗にいう〈ネットの世界〉といったプライベートな娯楽世界の印象に引っ張られてしまうのは致し方ないのかも知れません。

また,日本は1980年代から高度情報通信システム(INS)構想といった先行する取り組みが華々しく喧伝されながらも多くの日本人の実生活になんら届けられなかった経験をしているため,技術で何かができるという期待感よりも,サービスとして現実に提供されているものを享受する姿勢が強化されていったのだと推察されます。

サービスや消費財を介してテクノロジーの恩恵を受けることはあるけれども,テクノロジーが社会や生活をより良くしてくれているという認識があるわけではない。だから,テクノロジーが使えないことで自分の生活が成り立たないとは思っていない。ただし,具体的なサービスや消費財が利用できなくなると社会や生活で困るとは思っている。

日本人のテクノロジー観はだいたいこんなものだと見立てられます。

そういう日本人が,ある意味ではもっとも目の肥えた消費者であると世界中から思われているのもさもありなん。テクノロジーがいくら高度でも,プロダクトの完成度という点で満足できなければ消費者としての日本人は納得しない。それもまた一つの特徴なのだろうと思います。

ただ,大半の消費者日本人を守るために国が発展を続け,制度も規則も慣習も枠組みとして出来上がってしまうと,枠を超えたものを創ろうとする人々にとっては能力を発揮し難い国になったのでしょう。

あらためて,そんなことを書き留めてみたのは,蛯原健『テクノロジー思考』(ダイヤモンド社)を書店で見かけたからでした。

正直,「ナントカ思考」はもう食傷気味だったのですが,「テクノロジー思考」という言葉で技術の価値を理解する必要があるという趣旨は重要だと感じました。

日本は技術の国だというスローガンのような言葉がありましたが,そのことを超えては,日本の技術のことも,世界の技術のことも考えたり知ろうとしなかったのではないか。深く依存しながらもテクノロジーに対して思考停止という無縁状態を維持し続けてきた日本人の距離感覚がいま各所で危機的状況を招いていると思います。

巷のSociety5.0(スマート社会)の話は,4.0(情報社会)を経たうえでのお話ですが,あらためて情報通信技術がどれだけ社会生活と密接に関わっているのか,個々人のテクノロジに対する認知を高め,理解を深めることが必要なのだろうと思います。

日本教育メディア学会2019年次大会へのお誘い

2019年11月2日・3日(土・日)に徳島文理大学で日本教育メディア学会年次大会を開催します。視聴覚教育の流れをくむ歴史ある学会です。是非ご参加ください。

日本教育メディア学会年次大会
http://jaems.jp/conference/
第26回年次大会会場校サイト
https://sites.google.com/view/jaems2019/

8月19日より一般発表の募集開始となり、9月30日に原稿締め切りとなります。

学会名に付された「教育メディア」に関係する研究は、捉え方次第で幅広いものになると思いますので、どうぞ奮ってご発表いただければと思います。

また、続く11月4日(祝日)には小さな研究会「教育と情報の歴史研究会」を同じく徳島文理大学で開催する予定です。

少し経ってから参加申し込みサイトなどを公開する予定ですが、前日までの日本教育メディア学会とも少し絡ませながら、昭和時代のコンピュータ教育や平成時代のインターネット利用などの歴史を振り返る機会を持ちたいと考えています。

研究発表は学会で、そのあと個々人の私的な振り返りは歴史研究会でできると面白いかなと思います。

元号に意味はないと言えば確かにその通りですが、令和元年という記号を一つの契機として、これまで情報技術などがもたらした変化などを考える機会にできればと思います。

WordPressでUDデジタル教科書体を使う

りん研究室ブログは数カ月前から「UDデジタル教科書体」を使用しています。

最近,この新しい教科書体フォントが読みやすさを手助けしてくれるということで話題になっています。記事見出しのように学力向上とどれだけつながるかは分かりませんけれども。

20190805「革命的に読みやすい、UDフォント 学力向上効果も期待」(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASM83358VM83UTIL00H.html

この「UDデジタル教科書体」フォントは,2017年からWindows10に標準採用されていますので,お持ちのパソコンがWindows10搭載パソコンであれば画面表示に利用できます。ワープロ文書の書体として選択することもできます。

残念ながら,macOSの場合は別途購入する必要があります。

ところで,このサイトのようにブログで「UDデジタル教科書体」を使いたい場合には,Webフォントとして利用することになります。

これを提供しているのが「TypeSquare」というサービスです。

TypeSquare
https://typesquare.com

「UDデジタル教科書体」を提供している株式会社モリサワが運営しているサービスです。

基本的には有料サービスですが,有り難いことに無料プランも用意されており,1書体を限られた範囲で無料利用できます。書体は様々用意されていますが「UDデジタル教科書体」を選択も可能です。

たとえばWordPressというブログシステムで利用する場合,登録を済ませたあと,この説明ページを見ながら「専用タグ」と呼ばれる文字列を手に入れて,WordPressにコピペし,ブログ本文のフォント指定を「UDDigiKyokasho R」にすれば準備完了です。

  1. TypeSquareに登録しログイン
  2. 無料プラン設定で利用書体の選択と利用するブログのURLを登録
  3. 提示される「プラン専用タグ」をコピー
  4. WordPressの管理画面で「外観」>「テーマエディター」を開く
  5. テーマファイル内の「テーマヘッダー(header.php)」の中に専用タグをペースト
  6. テーマファイル内の「スタイルシート(style.css)」の中で「font-family: “UDDigiKyokasho R”;」を指定

以上が基本手順で,あとはそれぞれ適切な場所でペーストや指定ができているかを調整することになります。

同じ書体でも,ブログ本文の文字サイズや文字間隔によって読みやすさは変わります。

りん研究室のブログは,文字をガンガンと見せていくタイプのブログなので,段落全体がキュっと締まる印象に調整しています。そのため文字サイズも小さめで,わざと文字間隔も詰めています。

cssファイルの指定としてはこんな感じです。

	p{
	    font-family: "UDDigiKyokasho R";
	    font-size: 15px;
	    line-height: 1.8;
	    margin: 1.3em 0px;
	    letter-spacing: -0.8px;
	    text-align:justify
	}

ただ,せっかくの「UDデジタル教科書体」の見やすさを,逆に段落レイアウトで見難くしているかも知れません。これはどちらかというとWebサイトの印象デザインを優先させたやり方です。

ちなみにその他のWebフォントについては利用しているレンタルサーバー会社が提供してくれているWebフォント機能を利用していたり,Google Fontsを利用しています。

Google Fonts
https://fonts.google.com

何でもかんでも「UDデジタル教科書体」にすればよいわけでもありませんし,配慮するとしたら書体だけでなく配色についても考えなければなりません。

目指したいものが何か深く考えながら,適切なものを選択できるようにしていくことが大事なのかなと思います。

ちなみに色については…

MS Office に続きMac OS 用のCUDカラーパレットをこちらで配布しています
http://www2.cudo.jp/wp/?p=5014

でmacOS用のカラーパレットを配布しています。