研究室退去

年度末3月。りん研究室は退去となりました。

徳島文理大学には15年間在籍いたしました。この間、お世話になった皆様に感謝いたします。

研究室の蔵書はおよそ10トンもの分量があると引越業者に言われましたが、それらを数百箱もの段ボールに詰め込み、次なる地へと輸送いたしました。

大学の教員としては、これで一区切り。いくつか非常勤担当を残すのみです。新年度からの仕事は、まだ明確には決まっていません。なるようになるさ…というスタンスです。

理由をお求めの皆様には、「看護離職」とか「介護離職」の準備といった風にご理解いただければと思います。円満退社と言ってよいでしょう。

実体としてのりん研究室は解体となりましたが、活動は継続していきますし、またどこかでお招きできる場所を確保できればとも思います。

韓国語ワープロ Office HWP for Mac

国産日本語ワープロといえば「一太郎」ですが、韓国には国産韓国語ワープロと呼ぶべきソフトウェアが存在します。Hancom社のOffice HWPです。

ハンコムオフィスというオフィススイートの中の一つです。他にも表計算ソフトのOffice CellとプレゼンテーションソフトのOffice Showがあります。(HWPとWordの違いはよく分かりませんが…)

拡張子hwpxの文書ファイルが当たり前に飛び交っているほど、お隣の国でポピュラーなソフトウェアのはずですが、日本の私たちはその存在についてほとんど何も知らない状態といえます。

私も韓国語はまったく出来ない人間なので、本来なら縁のないソフトのはずでした。

ところが、韓国の教育の情報化事情などをネットで調べたりすると、頻繁にhwpxファイルに遭遇することになり、ファイルを開く必要に迫られたわけです。

幸い、hwpxファイルにはピューアソフトウェアが用意されているので、それをダウンロードすれば文書自体は閲覧することが出来ます。

最近ではPDFファイルで公開される文書も増えているので、hwpxファイルを開く必要が少なくなってきているように思いますが、まだまだhwpxファイルは健在のようです。

というわけで、hwpxファイルに関しては一件落着のはずですが、閲覧だけで終わらない場合もあったりするわけです。たとえば韓国語文書を日本語翻訳したい場合などです。

もちろん翻訳作業もビューアで済むことの方が多いのですが、時と場合によっては文書を編集可能状態で扱いたいことがあるのです。

というわけで、実務的な必要性と共に好奇心も手伝って、ハンコム社のワープロソフトを入手したいと考えるようになっていました。2010年代頃の話です。

その頃はHancom Office ハングル 2014 for Macがリリースされており、これを入手したい考えていたのですが、残念ながらネット上で入手することは難しい様子。パッケージ版をご当地韓国で購入する以外に方法はなさそうでした。

ラッキーなことに、2014年頃、韓国に出張する機会を得ました。

ソウル特別市のミョンドンにあるApple販売店を訪れて、パッケージ版を購入したのでした。

小さくてもボックスで販売しているかと思ったら、ライセンス情報が記載された厚紙をパッケージしたシンプルなものだったので拍子抜けしたのを覚えています。持ち帰るには都合がよかったですが。

その後、ハンコムオフィス自体はWindows版やクラウド版など大がかりな改訂も伴いながら、2018、2020、2022とバージョンアップが進み、最新の2024がリリースされました。

しかし、Mac版はずーっと2014止まり。

この10年間は大きなバージョンアップはありませんでした。Mac版ソフト特有の、そのままサポートがフェードアウトするパターンか?!…と常に不安な状態だったわけです。

ところが実は、最新OSに対応するアップデートは地道にリリースされ続けていました。途中、macOSの方が大きな変化をする際にも対応作業が行なわれましたが、若干の名称変更だけで2014表記のまま。

そしてMacはApple Siliconに移行することになったわけですが、ハンコム 2014はIntel向けのまま。

Universalアプリへの移行がアナウンスされないまま、いよいよフェードアウトか?と思われた頃に満を持してハンコム Office HWP 2024 for Macのリリースが発表されたのでした。

まぁ見たところ、そんなに大きな機能追加はなさそうでしたが、何よりもApple Silicon対応が大きいです。2014のサポートが終了する以上、乗り換えない理由はありません。

2024年1月中に展開したアップデートキャンペーンで既存ユーザーは無償でバージョンアップできるとされました。ハンコム社のWebサイトで直販され、ダウンロード版も用意されています。

すでにユーザー登録は済ませていたので、私も無償アップデートできると思い挑戦してみましたが、残念ながら無償購入処理が実行されませんでした。その場合は、専用フォームで申し込んでくれたら2月に確認後連絡するということだったので、申し込んで待っていました。

2月になって届いた知らせは、残念ながら無償アップデート対象外。

2月の最初の一週間に実施される50%オフセールで購入してくれということだったので、まぁ今後のことを考えて半額購入することにしました。(これらのプロセスでは自動翻訳にほぼすべて助けられました)

結果的に、2014版と2024版でほとんど変化はありません。

Apple Silicon対応と搭載フォントに違いがあるくらいでしょうか。これまでの流れを考えるとMac版に大がかりな機能追加は期待できませんが、それでもまた地道にアップデートはされていくのだと思います。

ゆく年 2023

2023年中は大変お世話になりました。

生成AIに明けて暮れる2023年でしたね。りん研究室も、関係する原稿を執筆する機会などがありました。

日常的には、検索するための予備的準備のツールとしてChatGPTを利用するようになり、プログラミングではGitHub Copilotなどがかなり役立ってくれています。

2023年はコロナ禍明けのタイミングともなりました。社会経済活動もずいぶんと以前のように自由が利くようになってきました。それはよかったなぁと思います。

様々なことが元に戻り始めてはいるものの、さて、また同じ場所に戻るべきなのか。いやいや、生成AIひとつとってもかなりの変化。ずいぶんといろんなことが変わっていますから、戻りようもない。

というわけで、間もなくりん研究室は、徳島時代に区切りをつけます。

徳島時代にお世話になった皆様にあらためて感謝申し上げます。

それではよいお年をお迎えください。

ICカードとクラウドをScratchで

2023年も残り僅かな時期となりましたが、私自身はここしばらく、プログラミング環境であるScratch3.0向けに開発した拡張機能を更新する作業をしていました。プログラミング環境のためのプログラミングというちょっと面白い作業です。

更新したのはScratchからICカードリーダーを使える拡張機能と、クラウドにデータを保存できる拡張機能です。前者を「パソリッチ」(PaSoRich)、後者を「ナンバーバンク」(NumberBank)と名付けています。

2つの拡張機能は、やりたかったことを実現するために突貫的に開発したものでした。

そのため、複雑なことに利用しようとすると、いろいろと機能不足や安定性に欠けるところがあり、多くの皆さんに使ってもらう水準には達していなかったというのが正直なところでした。

ずっと改修する機会をうかがっていたのですが、本業やら状況やらが目まぐるしかったこともあり、なかなか作業に取りかかれずに放置した状態となっていました。

そして、今回、その機会がやってきたというわけです。しかも、2023年は生成AI元年ともいうべき年であり、プログラミング作業においても生成AI技術が支援してくれるようになったことで、拡張機能の改修作業も効率的に達成することが可能となりました。

というわけで、2つの拡張機能は揃ってバージョン2.0にアップすることとなりました。

パソリッチは、ソニー社製ICカードリーダーPaSoRiをScratch3.0環境から操作して、ICカードのIDm(識別番号)を読み取ることができます。(※書き込みはできません)

ICカードのIDmを読み取れると何が嬉しいのでしょうか。

IDmごとに異なる表示や動きなどを実行できるようになります。つまり、かざしたカードによってプログラムの処理を変えることができるということです。電子マネーや会員カードのようなものがつくれます。

今回の2.0では…

  • 新しい型番のICカードリーダーに対応した
  • ICカードリーダーを複数接続して利用できるようになった
  • カードの読み取りに反応するブロックが利用できるようになった
  • デバイスのリセットができるようになった
  • 安定性を向上させた

などの改善改良を施しました。

開発した時点で対応していたPaSoRi(ICカードリーダー)は当時販売されていたRC-S380という型番のみでした。それが2年前(2021年)に新たな型番RC-S300に販売製品が置き換えられたため、新たに拡張機能を利用したいと思った方々が対応カードリーダーを入手できない状態になっていました。

新しい型番への対応は、挑戦してくださる利用者を増やすためにも重要な課題だったので、今回のバージョンアップで達成できたのはよかったです。

さらに、複数のICカードリーダーを接続したときや複数のプロジェクトからICカードを利用するときに生ずる様々な課題についても今回の更新作業で対応を試みました。

ナンバーバンクは、Scratchプロジェクトで扱っているデータをクラウド上のデータベースに保管することができます。Scratchの公式サイトで提供されているクラウド変数のようなものです。

クラウド上に保管できると何ができるのでしょうか。

プロジェクトで使っていたデータを、終了したあとでも後日再利用することができたり、他の人たちのプロジェクトと共有することができます。データの受け渡しで通信するようなこともできます。

今回の2.0では…

  • 動作の安定性と信頼性の向上
  • データの書き込みが発生したら反応するブロックが利用できるようになった

などの改良改善を行ないました。

ナンバーバンクは、Firebaseというサービスのデータベース機能を利用しています。このサービスを自分自身で登録してデータ保存に利用することもできます。

これまで、単純素朴なデータ保存で利用する分には問題はなかったのですが、連続して頻繁にデータ保存の処理を実行しようとすると呼び出しのコンフリクトや安定性に欠けていたのです。これを内部設計を見直して、発生した処理をこなせるように改修しました。

また、クラウド上にデータを読み書きできるのですが、クラウド上のデータが書き込まれたタイミングを確認する方法がありませんでした。今回、特定の保管場所に書き込みが発生したら反応するハットブロックというものを追加しました。データの共有や受け渡しをする際に便利です。

ちなみに、先ほど書いた「Firebaseを自分自身で登録して…」という話は、自分自身でFirebaseサービスに登録して作成したデータベースのAPIキーを預けて、マスターキーを介して利用できるようにするMasterkeyBankという仕組みが用意されています。

これら2つの拡張機能を利用したい場合、すでに用意されている環境を利用するのが便利です。

ストレッチ3(Stretch3)環境は、豊富な拡張機能を用意してくれているScratch3.0環境で、利用者も多い人気のサイトです。他の拡張機能とも連携させながら挑戦してみてください。

なお、これらはSC2Scratchというサイトで情報をご紹介していますが、新しいバージョンを提供できるようになったので、対応した情報を更新する作業はこれから本格的に取りかかります。説明不足なところが多いかとは思いますが、いろいろ自由に試行錯誤して利用してみてください。

教育と情報の歴史資料収集

教育と情報の歴史に関係しそうな資料の収集活動はほそぼそと続いています。

このテーマで資料を集めて保存しておくことは大事だと思うので、ライフワークとして取り組んで、何かしらの形でアクセスしてもらえるようにしたいと考えています。

別のブログ記事にも書いたように、ヤフオクやメルカリが古本収集の主戦場です。個人の方々が所有していたものを放出される機会を狙って譲っていただく感じです。

ずいぶんと放ったらかしにしていましたが、教育と情報の歴史研究というWebサイトを運営しているので、これからは収得した資料や所有している蔵書などをこまめに紹介していこうと思います。

ここしばらくはコンピュータ分野の文献・資料をチェックしている感じです。

ご紹介しながら情報整理していければいいなと思います。