第29回 学習デジタル教材コンクール

 今年も学習ソフトウェア情報研究センター(学情研)主催の「学習デジタル教材コンクール」がありました。応募した皆様ありがとうございました。受賞した皆様おめでとうございました。

 本年度も審査業務に関わらせていただき、皆様の応募作品について、厳正な審査はもちろんのこと、作品に添えていただいた開発意図や実践事例について誠意を持って受け止めさせていただいたつもりです。

 ある分野を活性化したいときに、頑張った人々を奨励する「コンクール」や「コンテスト」「コンペティション」を催すという手段があります。

 教育と情報の分野に関わるものとしては「学習デジタル教材コンクール」(学習ソフトウェア情報研究センター)、「ICT夢コンテスト」(コンピュータ教育推進センター)、「全国自作視聴覚教材コンクール」(日本視聴覚教育協会)、「日本e-Learning大賞」(eラーニングアワード事務局)、「特別支援教育教材・教具展示会」(国立特別支援教育総合研究所)などがあります。その他にも様々な団体や自治体が開催しています。

 いずれも、優秀な作品・実践を奨励することを通して、それらを共有し、次なる優秀作品・実践の創造に繋げていきたいという趣旨は共通していると思います。

 昨今、自作の教育ソフトやアプリをつくる余裕がなくなっているようにも見受けられますし、逆に優秀なツールでお手軽に出来ちゃう(作り込んだものもありますが、作り込みの浅いものも少なくない)ため、こうしたコンクールも、なかなか悩ましい状況を迎えています。

 それでも、より良いものを目指した取り組みが賞賛されて、広く波及していくことは大事と思います。デジタル教材が注目を高めつつある昨今だからこそ、実践を踏まえたものが多く出てきて欲しいものです。  

3Dプリンターには2種類ある

 先日のNew Education Expoはもちろん、ニコニコ超会議や教育ITソリューションExpoにも展示登場していた3Dプリンター。

 「3D積層造形装置」と呼ばれており、製造業における試作品づくりでの利用はもちろんのこと、教育現場での利活用もその可能性が注目されているところです。

 一方で、様々な物体を生み出せるということから、殺傷能力を持つ拳銃の設計図が公開されて、一時期騒然となったこともあります。また、造形するための設計図データがあれば、いくらでも複製製造できるため、キャラクターグッズのようなものも無断で作れてしまう問題点が指摘されています。

 こうした3Dプリンターの光と影をワールドビジネスサテライトが特集したこともあり、ますます注目を集めているというわけです。

 私自身は、3Dプリンターを操作したこともない素人なのですが、いつも疑問に思っていました。  テレビなどで紹介されているように、プラスティックの樹脂を細かく積み重ねて立体造形していくのは技術的に理解できるのですが、その場合、造形する物体の底辺はいつも平らになってしまうのではないか?

 だから、つい最近まで、球のような立体物や複雑にデザインされた立体物は、複数の物体を組み合わせて出来上がっているのだろうと思っていたのです。

 たとえば、ボルトを締める「レンチ」を造形したという話を聞いても、あのクルクル回して稼働させる部分は、バラバラに作って後から組み立てたのだと思っていました。

 しかし、先日の展示会で解説を聞いて驚きました。  3Dプリンターには、2種類あって、単に積み上げて物体を造形するタイプ(これとて精度によってピンからキリまである)と、造形した後に後処理を施す高級タイプがあるというのです。

 この後処理とは、物体を熱して蝋を溶かす工程が含まれるとのこと。

 要するに、造形する際に、プラスティック樹脂などの素材だけでなく、空間の隙間を埋めるための蝋も噴射して造形し、後から溶かすことで内部に空間を生み出すことができるというのです。

 先ほどのレンチに関していえば、バラバラの部品ではなく、最初から完成品をイメージして造形することができるということなのです。

 プリンターという名前と、積み重ねる動作の紹介映像の印象が強くて、まさか最後にオープンで焼くような工程が入るとは想像していなかったので、そういう後処理機能をもった高級モデルがあると聞いて大変びっくりしました。

 そして、3Dプリンターが生み出す可能性にみんなが注目する理由もようやく分かってきたように思います。確かにこれなら何でも作れそうです。

 果たして3Dプリンターが日本の教育現場に入り込んで活躍する日が来るのかどうか分かりませんが、教材研究の過程で実際に立体教材を製作できるというのは興味深い話です。まして、児童生徒が何かを表現する道具としての可能性も今後広がるでしょう。

 まだまだ技術的なものとコストの面、光と影の課題も多い3Dプリンターですが、視覚的なデジタル情報だけではなく実物体の教材でも学ぶ手がかりとして存在感を出してくるかも知れません。

学校に1台くらいはMacパソコンを

 教育や学習にタブレットPC端末を…という掛け声や売り込むが賑やかです。

 デジタル教材やデジタル教科書といった新しめの学習材に注目が集められているといった動きもあります。

 なにより政府の国家戦略の一つとしてIT人材教育が取り上げられ、情報教育やプログラミング教育などの関連界隈も賑わいを見せ始めています。

 私自身もiPadなどのタブレット端末を学校でどのように利活用すべきか…という文脈でお仕事をしていたりします。

 ただ、事情を知る方々や街の電器量販店のパソコンコーナーなどを気にしている皆さんはご承知の通り、いわゆるパソコン市場やタブレット端末市場は変化の荒波の真っ最中にあります。

 たとえば、パソコンかタブレットか…多種多様なWindows8端末。

 たとえば、iPadやKindleやArrowsTabなど百花繚乱のタブレット端末。

 たとえば、特定銘柄とセキュリティソフトしか置かれなくなった青息吐息のソフトウェア売り場。

 たとえば、取り換えインクばかりが目立つ主客転倒のプリンタ機器や七転八倒する周辺機器市場。

 買いたいものを買えば良いという法則は、いまも有効ではあっても、何を買えば安心できるのかという問いに答えを見つけることは一段と難しくなっている時期なのです。

 そんな状況下で、たとえばパソコン操作を教えてほしいとか、iPadを導入しようとしているので研修講師にきてほしいという依頼をお引き受けしていて感じたことは、ぼちぼち各学校の職員室に1台くらいはMacを導入しても良いのではないかということです。

 Macが導入されていると、

 ・管理用アプリがあるので、iPadなどと連携しやすい。

 ・写真管理、音楽編集、動画編集ソフトが標準でついている。

 ・別途ソフトだけ購入するとWindowsパソコンになる。

 これだけでも職員室に何かパソコンを1台買う場合の良い選択肢足り得るのですが、入札方式の機器備品購入だと、どうしてもパソコン教室の機器との互換性や統一性の観点から仕様が決まり、購入が難しいようです。

 その他にも

 ・Mac用のワード、エクセル、パワーポイントがある。

 ・無料有料の様々なソフト(App)がネットから入手できる。

 ・画面表示がキレイである。

 ・今までのパソコンの使い方で使える。

 Windows8がパソコンとタブレットを混ぜ始めたために分かり難くなったのに対し、Macの場合はパソコンとして一本筋を通して、タブレットはiPadなどに任せる形になっているのは、混乱が少なくてよいと思います。

 というわけで、今後パソコン教室の端末がどのような変化を辿るのか、また職員室の先生方に用意された教職員用端末がどのように更新されていくのか、様々な変化は続いていくと思います。

 しかし、そういう大量導入部分の荒波とは別に、職員室に教育研究用のパソコンを置くという取り組みがあってよいと思いますし、多様性を確保するという意味でも、その中の1台くらいはMacが導入されると、今後変化の激しいパソコン界隈へも柔軟に対応できるのではないかと思います。  

New Education Expo 2013 in 東京

 教育関連のセミナー展示会として長い歴史を誇るNew Education Expoが今年も開催されています。6月6日〜8日に東京で行なわれ、21日〜22日に大阪で行なわれます。

 フューチャースクールに関わったので、大阪会場のセッションに登壇する依頼をいただきました。なので、予習の意味を込めて、東京会場の偵察に出かけた次第です。

 好評なものは定番セミナーとなって可能であれば毎年行なわれるものもあります。その中では、筑波大学附属小学校の児童・先生方による公開授業があります。

 「フューチャークラスルーム」の公開授業、筑波大学附属小学校ではタブレットが”普通”の光景(ITpro) http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20130608/483382/

 今年度は筑波大学附属小学校で「未来の教室」環境が構築され共同の実証研究が行なわれることも発表されたようです。

 子ども達はタブレット端末を使い始めて間もない時期とのことでしたが、タブレット端末独特の敷居の低さゆえでしょうか、操作の手順はともかく、操作自体に対する違和感はないようです。

 そういう状況で、国語と算数の授業が行なわれました。授業自体はシンプルなもので、タブレット端末と電子黒板の活用が浮かび上がりやすいものだったと思います。

 授業の善し悪しは置いといて、主にICT機器などに関して思いついてメモしたことを挙げておきます。

 ・授業支援システムで児童のタブレット端末の画面を出した時、児童のタブレット端末の制御権(表示の拡大縮小やスクロール操作など)も渡すことができたらいいな。
 ・デジタル教科書の書き込みペンのペン種類や太さなどの選択メニューが画面を覆い隠してしまうUIなのはどうか?
 ・学習者用デジタル教科書への書込みなどの履歴を残し、教師側から遡る操作が出来ると、作業や思考の変化を見せることができるのに。
 ・電子黒板の小ささを(とりあえず)補えているのは、デジタル教科書の固定レイアウトによる忠実な位置関係の再現によるものだろう。
 ・タブレット端末はマルチタッチ対応だが、学習者デジタル教科書アプリはシングルタッチ(マウス操作前提)しか対応していないため、グループ作業で複数の児童が同時に作業できない。
 ・タブレット端末での操作のしやすさも考えると、画面上で移動できる表示部品は大きくせざるを得ないが、そうすると端末画面自体が狭いため多数の表示部品が画面でいっぱいになって大変。さまざまなオブジェクトの拡大縮小がもっと自在にできる設計が必要かも知れない。
 ・適度に黒板への板書もしているので、タブレット端末操作が一段落した児童は、ノートへの記録作業によって時間を持て余す率も減る。
 ・児童のタブレット端末で見せたいと思った画面があっても、見せるタイミングのときに消されていたり、変化していたりすることがある。履歴、もしくは見せたいと思った時点でスナップショットが取れる機能も必要か。  ・教師用のパソコンの画面と児童のタブレット端末の画面を同時に表示したい場合があると電子黒板一台だけでは厳しい。地上波デジタルテレビがあれば併用することを奨励すべきか。

 あとは、こうしたICT機器をたくさん扱う展示会では、展示機器が使うための無線LAN機器だけでなく、多数の来場者が持っているスマートフォンの無線LAN機能がお互いに干渉し合って、深刻な通信不安定状況を生み出している。そのため、公開授業でも通信の不安定さによる画面転送機能の不具合が見られたりもした。

 スマートフォンには電波を停止する機能もあるが、飛行機に乗る機会が多い人は別として、多くの人たちがそういう操作に疎いので、なかなか問題は解決しない。

 そこそこ無線LANは電波であることの様々なメリットデメリットがあり、特に身体への影響に関しては、様々な見解がある。

 正直なところ、私は無線LANについて可能性は理解しているが、基本的に使わない時には電気を切っておける機構が必要と考えているので、無線LANアクセスポイントを作っている企業には、電灯のON/OFFと同じようなスイッチを教育向けには本気で検討して欲しいと思っている。

 パソコンの場合は、無線LAN機能をオフにする方法があるので、そのような操作方法をしっかり学ばせることが大事かなと思う。

 公開授業を見て、改めて考えなければならないものが多いなと思った。その他のセミナーでは、自治体の取り組みなども勉強できて、なかなか興味深かった。

 いろんな人たちの顔も見れたが、失礼ながら省略させていただいたり、軽いご挨拶などで代えさせていただいた。

 多くの人たちが「再び追い風が吹きつつある」という感想を述べていたのは、少し印象的だった。確かに風も大事だと思う。

 もっとも風向きはまだまだ乱れ気味であることも確かなので、もう少し現状を見つめながら先を見通してみたいと思う。

う〜ん

 5月、6月は毎年いろんなことが立て込んで、作業がきつきつ状態。心の余裕がないので、身近な人にはツンケンしてしまう。そういうことは避けたいと思っているところなのだけれども、なかなか難しい。予定調整うまくやらないと…[共有カレンダーPalu]