Note Anytime 活用事例

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 徳島県上勝小学校での出前授業の様子をNote Anytimeのサイトでご紹介いただきました。研究室に開発者の皆様をお迎えしての楽しい時間でした。
 
MetaMoJi Note Anytime ユーザー事例
https://product.metamoji.com/ja/anytime/showcase/index.html
 
 子どもたちの様子や作品はこちらのサイトでもご紹介しています。
デジタルコンテンツ出前講座(上勝小学校)
http://www.our-think.or.jp/digital/?p=1170

 Note Anytimeも着実にアップデートし,デジタルキャビネットの同期機能も学校で複数台が利用するのに都合よいように改良されています。
 現在,Android版も開発の仕上げにかかっていて,これでiPad版,Windows8版,そしてAndroid版というクロスプラットフォームで利用できるアプリになります。デバイス混在環境でもデータが共通で利用できるのは学校利用において安心です。
 まだまだこれから大きな動きもありそうなので,応援したいですね。
 

20130323 BEATセミナーFINAL

 東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座(Benesse department of Educational Advanced Technology:BEAT)は、新しいテクノロジーがもたらす学習環境について知見を生み出す場として2004年にスタートしました。

 この9年間は第一期「モバイル学習」第二期「学習履歴情報の活用」第三期「ソーシャルな学習環境」といったプロジェクトが展開し、様々な研究成果が発信されました。

 発信活動の一環として一般から参加者を募ったセミナーも開催され、これらはWebサイト上で記録を読むこともできます。ここ数年はUstream中継も行なわれていました。

 そしていよいよBEATが9年間の活動に区切りをつけることとなり、3月23日に最後のセミナーが開催されました。

 私自身がBEATセミナーに参加し始めたのは2005年からでした。

 まだ前職で慌ただしい日々を過ごしていた時のこと、東京大学で開催されたLearning Barという(当時は)小さな勉強会を知り、参加し始めたことをきっかけにBEATセミナーにも参加するようになりました。

 語り始めれば長くなりますが、それがきっかけで上京し、東京大学大学院に御厄介になったわけで、つまり人生の転機をもたらした催事でした。

 そのセミナーが最終回だというので、直接参加しないわけにはいきませんでした。

 今回のテーマは、MOOCs。

 世界で起こっている高等教育の変革です。

 内容については、また改めて書きたいと思います。

 とにかく、この変化はを踏まえて、この世界で生きることの意味や教育の行く先を考えなくてはならないと思います。

 BEATはそのために必要な知見を様々生み出したのでした。

 そのような文脈とはまったく関係はありませんが、私にとって思い出深い場が終わりを迎えるというのは、少し寂しいものでした。
 

20130315 卒業式

 3月15日は卒業式がありました。
 これは皆さんも同じと思いますが,1年はあっという間ですね。
 この数年は外部の仕事も多く、慌ただしかった分だけ時間は早く過ぎてしまいます。
 出会った学生達との別れは寂しいもの。
 新しい春からも頑張りましょう。

20130313 教育ICT活用実践発表会

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 3月13日に文部科学省で「教育ICT活用実践発表会」が行なわれました。
 「教育の情報化」(教育情報化)について、日本の公官庁は様々な取組みをしているわけですが,この「様々」という言葉は「バラバラ」という意味も含んでおり,一般の皆さんが端から見ても全体像を把握するのは簡単ではありません。
 文部科学省における取組みは「教育の情報化」と呼ばれていますが,これとて様々な事業や案件によって構成された複合体で,すべてが一本の筋状にあるわけではないのです。
 それでも比較的大きな結び目はあったりするもので,今回の「教育ICT活用実践発表会」はその一つともいえるものです。
 (ちなみに、その少し前に開催されたCEC「教育の情報化」推進フォーラムという催事も、この業界では毎年恒例の大きな結び目です。主催者が異なるわけです。)

 フューチャースクール推進事業に関わったことから、文部科学省でアルバイトをする機会を持っていたので、この発表会にも申し込んでみた次第です。
 催事の名前が示すように,昨今の教育ICT活用の実践や事例を共有することが目的であり,基調講演や模擬授業、ポースターセッションからパネルディスカッションまで、一通りの企画が用意されていました。
 私は一参加者の立場でしたが、これまたご縁が働いて、模擬授業の児童生徒役を依頼され、中学校の理科と小学校の国語に取り組む事になりました。そのときの様子はこちらのWeb記事をご覧ください。
 iPadを使ってワークシートに書込み転送表示する授業(中学理科)と、紙のワークシートで取り組んだものをScanSnapでスキャニングして表示する授業(小学国語)の両方を体験しました。それぞれ20〜30分に圧縮した疑似授業でしたが,協働学習の場面を実際に聴衆の皆さんに見てもらう事が出来たようです。
 (こういうのはマイクロティーチングならぬマイクロコラボレーションとか言うことになるのでしょうか。変な言葉作っても仕方ないですが…)

 基調講演は2つありましたが,まあ、安西祐一郎先生の「21世紀にふさわしい学びと学校の創造」はご本人の著書でも読めば済む話なので置いといて、東原義訓先生の「デジタル教科書で広がる新たな学び」では、現在検討が進行中の内容について紹介があり興味深かったです。
 従来,「デジタル教科書」という言葉に関しては「教育の情報化ビジョン」という文書の中で定義されたものがありました。
 しかし、「教育の情報化ビジョン」策定時の議論段階では、まだ技術的にも理論的にも不確定要素が多く,根拠を持って定義されたとはいえませんでした。むしろ、デジタル教科書として考えられ得るものを雑多に詰め込んだ内容でした。
 これが、検討チームの作業によって、いろいろな整理がなされてきたことで、「学習者用デジタル教科書」についてより明確なイメージか描かれようとしています。
 すでに来年度の予算として「デジタル教材等の標準化」という予算枠が挙げられている事からも分かるように、国際規格などの動向を踏まえた様々な事項の策定が考えられているようです。

 ポスターセッションでは「ICT教育活用好事例」からピックアップされた4つの実践事例が学校の先生から発表され,それぞれのグループにて質疑も行われました。
 パネルディスカッションは、省庁大臣官房審議官、地方自治体の情報化推進室長、民間企業の教育研究所長、大学教員というメンバーが「新たな学びの実現に向けた学校・地域・企業・行政の連携について」というテーマで発表。無難なパネルディスカッションだったので「うまく連携できるといいね」という結論でした。まぁ文部科学相の講堂で開かれているパネルディスカッションですから、安全運転なのは当然ですね。
 唯一、諸外国の取組みが長期スパンで行なわれているのは韓国のKERISのような産官学の結び目になる組織が存在するのだから,日本にもそのような組織を是非お願いしたいという意見が出た事は,もっと注目や賛同を集めてもよいと思いました。
 新たな利権を生んだり、メーカーの多い日本では中立公平性が保てないのではないか、という懸念があるのかも知れませんが,その辺は知恵を出し合って解決する覚悟を持ちたいものです。

 というわけで、文部科学省の教育の情報化界隈では、一つの重要な催しだったわけなのですが、文部科学省のWebサイト「教育の情報化の推進」も「教育の情報化」も特に更新されず「報道発表」だけで伝えられるので、なかなか位置づけが見えてこない感じかも知れません。
 この辺,もう少し解説する必要があるのかなと思っています。私自身も少し知り得た事を元に解説めいたものを書いてみているところです。

20130312 教育目標・内容・評価 在り方検討会

 3月12日に文部科学省で「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」の第4回会合が行なわれました。
 ちょうど翌日の催事のために東京出張があったので、よい機会と思い傍聴を申し込んで出席してきました。(当日配布資料

 この検討会は、2020年頃の改訂を予定している学習指導要領のための準備として、文部科学省の初等中等教育局のもとで開催されるものです。
 学校教育で教える内容が変わるということがニュースになるのは、学習指導要領がほぼ決まったことをマスコミが取り上げる頃に流れるため,一般の人々には「知らないうちに誰かが決めている…」と受け取られる事が多いかも知れません。
 では、いつ議論して決めているのかといえば,今からです。
 この検討会は、いろんな有識者を招いて、現状で考えなければならない事柄を報告してもらい、情報を集約し検討課題を整理する事を目標としています。
 つまり、「教育目標・内容・評価」について、新しい学習指導要領での「在り方」を決めるのは、この検討会で出てきた課題に左右されるといっても過言ではありません。

 ところで、この検討会では、ICT関係はどの程度取り上げられているのでしょうか。
 検討会はまだ始まったばかりですので、ICTに限らず、まだまだ多くの事柄について情報を収集している最中というのが現状です。次期学習指導要領がどのような方向性のものになるのかは、まだほとんど決まっていないと思います。
 ただ、傍聴してみて改めて確認できたことは、検討会において「教育方法」の扱いにまだ議論を広げる事は慎重を期しているという事です。
 学習指導要領は、教育目標と内容、および評価が中心となるもので、教育方法については規定をしていません。教育の目標と内容と評価に基準性を設ける事は、平等な学習機会確保のためにも必要な事ですが,教育の方法まで縛りつける事はむしろ避けるべきと考えられているからです。
 そのため、「ICT活用」といった教え方に関する話は、この検討会ではほとんど関心を示されていません。

 では、「情報教育」や「情報活用能力の育成」といった事柄はどうでしょうか。これらは教育方法ではなく,教育目標・内容・評価に十分関わりがあるものです。
 これについても真正面からの議論はまだ始まっていません。
 ただし、第4回の検討会でも「スキル」という言葉に関して検討しなければならない事がクローズアップされたのではないかと思います。
 報告の中では「21世紀型スキル」という言葉も登場し,これについて強調する意見も披露されましたが,その言葉自体よりもむしろ、この語中の「スキル」という言葉がこれまでの「技能」と同じものなのかどうなのかといった資質・能力観全体における位置関係に関心が集まりました。
 育成すべき資質と能力を考えるにあたって,「知識」と「スキル(技能)」の2つが取り上げられるわけですが、この2つの関係は上下関係か並走関係か螺旋関係かといったこともコンセンサスが得られているわけではないため,何かしら語の定義についても議論すべきではないかという提起もありました。
 そんなわけで、現代社会や将来社会において必要なスキルというものを明らかにする中で、ICTスキルようなものも吟味されていくのではないかと思われます。

 しかし、この検討会は初等中等教育局が主催するもので,その初中局といえば情報やICT関係は得意とは言えない面もあります。
 召喚される報告者から適切で十分な情報提供がなされないと、こうした話題が教育内容としては捉えられず,教育方法(あるいは学習方法)としてあまり積極的な議論もされずに置かれてしまう懸念も残ります。
 気をつけるべきは,何でもかんでも学習指導要領に盛り込めば良いというわけではないため,この検討会や議論の中で扱うべきかどうかの見極めについても、一歩引いた目線で動向を注視しなければならないという事です。
 そのうえで、次代の学校教育に必要とされる教育目標・内容・評価について、私たち自身も考えていく事が大切です。