201407 集中講義「現代授業メディア論」

 7月31日〜8月2日の3日間,鳴門教育大学で「現代授業カリキュラム論」という集中講義を担当しました。

 授業で利用できるメディアがこれだけ進化した今日,アナログ/デジタル問わずメディアとしてのツールをどのように活用するのか,関連する理論にはどのようなものがあるのか,実践と理論の橋渡しができるよう学ぶ講義です。

 遠隔教育による大学院プログラムの授業科目の一つで,夏のスクーリングとして開講されました。受講生は現役の先生方が中心で,少人数でじっくりと議論できました。

 当初は視聴覚教育の文脈で学術知識を学ぼうかと考えていましたが,受講生の皆さんの興味関心や他の講義の内容を聞き出しているうちに,認知心理学と学習科学に関して学んだ方がよさそうであると判断して,ヴィゴツキーの文化的学習理論など扱いました。

 ヴィゴツキーの三項図式は,主体(A)と対象(B)の結合が媒介項(X)を介して行なわれるというものでしたが,それが「メディア」をテーマとする講義の内容に合致していたので,結果的にはよい流れとなりました。

 理論的な話だけでなく,様々なメディア/ツールについても概観していきました。特にICT関連ツールはアプリやWebサービスなどを仕組みも含めて解説しました。これだけでも授業回数分消化できそうですが,ほどほどにしながら理論と合わせて進めた次第です。

 もう少し体系立てて授業を構想すべきなのかも知れませんが,野球のピッチングにおける初球の面白さと同じで,生みの試行錯誤をそのまま出していった方が面白い授業になることも多く,今回はそれがうまくいった感じです。

 来年度も委嘱いただけるかどうかは分かりませんが,自分なりに蓄積していきたいと思っています。

20140705 教育と情報の歴史研究会01

 2014年7月5日,千葉県柏市にある「さわやかちば県民プラザ」の会議室をお借りして,「教育と情報の歴史研究会01」を開催しました。

20140705_editreki01.jpg 記念すべき第1回に30数名もの参加者を得ることができ,地域インターネットの取り組みとして有名な柏インターネットユニオン(NPO-KIU)の関係者の方々にご登壇いただいたことで,内容も大変充実したものとなりました。

 当日の様子は「教育と情報の歴史研究」サイトに動画とシェアノートを公開しています。昨今は佐賀県の方が先進的な取り組みをしているとばかり話題になりますが,千葉県が過去から積み重ねている努力についても是非この機会に触れていただければと思います。

 この研究会の成果は,後日ニューズレターも発行する予定でいますが,当日の参加者付箋などを収録したシェアノートについてもご注目いただきたいと思います。また,記念冊子として配布した年表についても同様にシェアノートとして公開しています。

 Share Anytimeというアプリを利用しています。インターネットを介して情報更新が共有できる仕組みを持っていますので,研究会当日の質問への回答を後から付け加えると皆さんの手元のシェアノートにも自動的に届きますし,皆さんが動画をご覧になって抱いた感想や質問を書き込むことで全員のシェアノートに反映されますので,時間を隔てながらも研究会に擬似参加することが可能です。

 シェアノート活用は皆さんとの関心共有活動をどのように維持していくかという模索の一環ですし,Share Anytimeもまだ進化していくシステムですが,しばらくはこの方法を使っていこうと考えています。

学習場面の類型化はバラバラに…

 

 2014年6月21日にNew Education Expo 2014 in 大阪の国際セッションに登壇させていただきました。

 当日は日本における教育情報化の施策についてご紹介する役目だったのですが,相変わらず語りまくり,韓国からのゲストに通訳する人にご苦労かけてしまいました。付き添っていた大学院生の方に「先生,すごく早口…」とチクリ言われてしまいました。>_<;

学びのイノベーション事業の実証研究報告書は,分厚くて読むのが大変とはいえ,その後あんまり話題にならないので,私なりに活用方法をご紹介しました。

 「教育の情報化ビジョン」で示された「一斉学習」「個別学習」「協働学習」のイラストをバージョンアップし,事業で実践された事例を踏まえた「学習場面の類型化」として報告書に提示しました。イラストの一覧は概要資料に掲載されています。

 このイラストを眺めているだけでは仕様もないので,雑誌の付録のようにチョキチョキとハサミで切って,バラバラのカードにしていただきたいのです。

 本来であれば,このカードの組み合わせパターンを分析した上で,パターンの法則のようなものをお示ししたかったというのが本音なのですが,それはまた今後の課題ということで,皆さん自身でカードをいろいろ並べながらパターンを生み出していただきたいと考えています。

 21世紀型スキルを踏まえた授業づくりは,「前向きアプローチ」と呼ばれる目標創造型の学習活動デザインがイメージされています。あらかじめ目標が決まっている目標到達型の学習活動をデザインする「後ろ向きアプローチ」(あるいは逆向きアプローチ)とは異なります。

 これまではどちらかというと(目標から学習活動を導き出す)後ろ向きアプローチが授業づくりになじみがあったわけですが,(個々の学習者の学習現在地点から望ましい目標を紡ぎ出す)前向きなアプローチも組み合わせていくことが求められています。

 その上で評価についても,知識が生み出され構築されていくことを評価できる「変容的な評価」というものを受け入れていく必要があります。

 この「変容」という言葉は難しいのですが,評価の物差しが人によって伸び縮みするという意味ではありません。むしろ,多種多様な物差しを駆使して,適切な評価が可能になるように組み合わせを変えていくことにイメージが近いと思います。

 学びのイノベーションの学習場面一つ一つや,状況に埋め込まれる変容的な評価の細かな一つ一つも,いままで見たこともない新たなものが持ち込まれるというわけではありません。それらを学習者中心にどう組み合わせて配置し,配置替えし続けていくのか,その基盤と営為を学校教育に持ち込むことこそ重要なのです。

 学びのイノベーション事業は,フューチャースクール推進事業と合わせて展開していたこともあり,教育の情報化やICT機器活用といった側面が強烈に目立っています。学習場面イラストもほとんどがICT機器の利用シーンを描いたものです。

 もうお分かりかと思いますが,学習場面でICTを活用するか否かも,また組み合わせの問題であり,紡ぎ出す目標に応じて要不要をデザインしていくことが求められています。

 学校教育が担うべき新たな教育学習活動を支える基盤や道具としてICTは有用ですし,変容的な評価を可能にするためにもテクノロジーは多いに活用すべきでしょう。教育におけるICT活用の推進は,その可能性に対する国の条件整備として行なわれれているものです。

 その上で,学校での教育と学習においてICTをどのように活用していくのか,目的目標等に応じて吟味していくことが望まれるのです。  

20140425 大阪市学校教育ICT活用事業推進会議

 事業に関わるアドバイザーとコーディネータ(どちらも研究者)が集まる推進会議が大阪市の教育センターで開催され,新任コーディネータとして初出席しました。

 アドバイザーの先生と他のコーディネーターの先生方,計8名の方とは面識はあるので,私の面倒くささも先刻承知。事務局の皆さんに慣れていただくのに多少時間はかかると思いますが,なるべく迷惑かけないように分け入ってみようと思います。

 今回は今年度初めての会議なので,取り組みの方針やスケジュール確認,そして来年度から全市展開するための「大阪市スタンダード」をつくるべく,授業づくりに関する枠組みのようなものを検討するといった内容でした。

 午後からの会議に出席する前に,午前中,自分が新たに担当する「むくのき学園」に訪問することが出来ました。

 以前訪問したのは「中島中学校」の校舎の方だけで,そちらから「啓発小学校」の敷地に中学校がお引っ越しした形なので,現在の敷地への訪問は完全に初めてでした。

 (ちなみに,中島中学校・旧校舎は特別支援学校として利用されるとのこと。ちょうど26日に中学校校舎お別れ大同窓会が開催されるとのことで,きっと地域で賑やかに集ったのではないかと思います。)

 1年生から9年生までが同じ敷地で学んでいるわけですが,もともと小学校校舎は規模が大きかったこともあり,建て増しすることなくすべての児童生徒が納まったようです。それなりに年季の入った校舎であり,建物や備品のそこかしこに歴史を感じさせる面影があります。

 道路一本挟んだ敷地に元は地域の施設だったものを転用した2つ目の体育館が用意され,各学年2クラスの間には学習室が用意されています。また,もともと小学校にはランチルームがあって利用していたようです。

 そして,各学級には70インチ相当の電子黒板が設置され,3年生から9年生まで1人1台のiPadを用意されているという環境となりました。もちろん電子黒板用パソコンとApple TVも用意されています。

 やはり70インチ程度あってようやく黒板と張り合う感じで設置できるので,「これは良い選択をした」と心の中で賞賛していました。しかし,面白いことに「70インチもいらんかったかな」という声も関係者からちらち聞くので,活用を進めてその声がどう変化するのかこれから興味深いです。

 歴史ある校舎で新たな小中一貫校としてスタートを切った「むくのき学園」における学校づくりは,私が想像するよりもはるかに大変なことだと思います。ゼロからではない分,2つの文化をどう折り合い付けて融合させるのかというより難しい問題があるからです。

 また校区外から新たに「むくのき学園」に入学転入してきた児童生徒たちもいます。その子たちや保護者にとっては,真新しい環境や文化への期待と不安がいろいろ混ざりあっている感じなのかなと思います。

 始まったばかりの学校の様子を一通り見せていただき,まずは1年生から9年生までが集う学校自体の雰囲気をどう作り上げていくのかが最優先なのだなと感じました。

 一方で,ICT活用や英語教育など教育事業モデル校としての役目を務めなければならない現実もあり,この数年間は先生方にとっても大変慌ただしく,場合によっては苦しい期間になるかなとも案じています。

 機会があれば,できるだけ覗きに行こうかなと思っているところです。

 すでに他のICT活用モデル校7校は1年目の取り組みから2年目に入り,授業づくりを刺激する枠組みの具体化にコマを進めるようです。

 教育センターとしては,さらに教員研修の機会を設けて,管理職や教員を対象にひろく普及させる計画も練っています。モデル校の公開授業も各校2人が出席するように方針が決められたそうなので,今年度で一気にICT活用を全教員共通課題に持ち込もうという意気込みが伝わってきます。

 それとはまったく別個に,この日(25日),大阪市の平成26年度補正予算案が提示され,ました。「平成26年度予算(当初+補正案)について~『大阪の再生』への確かな歩み~」と題し,再選した橋下市長が改めて様々な事業を打ち出してきたわけです。

 その中には,この事業についても「全小中学校へのタブレット端末の貸し出し(平成26年12月〜)

 補正 2億4,800万円」(フリップ10~16)とあり,スタンダードモデル作成と教員研修事業に合わせて,実際の機材についても提供する準備を示したのは,理屈として真っ当だと思います。ちなみに補正予算にはその他にも教育関係の項目がいろいろ含まれています。

 率直に書けば,こうした追い風のほとんどは政治の側から吹いているので,学校教育の側にとってみると思わぬ強風に髪が乱れ始めているといったところかなと思います(関西色に合わせると「乱れる髪の毛もないわ」と落とすべきところかも知れませんが…,もうちょっと受け入れてもらえるまでふざけは控えめにします)。

 渦中の人々にすれば変にハードル上げられても追いつかないというのが正直なところ。そこで,どうすれば前向きな歩み寄りへと踏み出せるのか,その一歩や次の二歩目を丁寧に考えないといけないなと思います。

 会議自体は,先行している物事をいろいろ学べたという点で大変興味深いものでした。まだ要領を飲み込めていないので,根掘り菜掘り聞いたりしてしまいましたが,とりあえず各学校での取り組みを今後も見守っていくという感じでスタートするようです。

大阪市 学校教育ICT活用事業

 本年度から大阪市の学校教育ICT活用事業に関わることになりました。新しい出来た小中一貫校である「むくのき学園」(大阪市立啓発小学校・大阪市立中島中学校)のコーディネータとしての仕事です。

 国が進めていた「フューチャースクール推進事業」「学びのイノベーション事業」の方向性を積極的に地域の学校教育で推進していこうという意欲的な取り組みです。事業自体はすでに昨年度から7校のモデル校によって開始され,ニュースにもなっていました。

 今回,新たなモデル校として開校したばかりの「むくのき学園」も参加することになり,そのコーディネータも新規に追加することになったわけです。関西に近くて,iPad大好き研究者を探したら私が居たみたいな感じだと思います(半分冗談です)。

 小中一貫教育に関しては,様々な議論が展開していることはご承知の通りです。法律上で「中等教育学校」が規定されている中高一貫教育とは異なり,小中一貫教育は法律による明確な定義がありません。

 小中一貫研究をされている西川信廣・牛瀧文宏らの定義として次のようなものがあります。 「小中一貫(連携)教育とは,小学校教育と中学校教育の独自性と連続性を踏まえた一貫性のある教育をいい,第一義的には小中9年間の教育課程の構造的理解を通した教師の指導力向上を目指す取り組みである。」 (『小中一貫(連携)教育の理論と方法』ナカニシヤ出版2011)

 この西川・牛瀧の見地からは,教師の変化に一貫教育の意義を着目しているということになります。実際,小学校と中学校という学校文化が異なる教育をつなげるのは,先生方の仕事を大きく変えざるを得ないわけで,挑戦的な試みといえます。

 一方,小中一貫に対しては批判的な立場も少なくありません。たとえば,9年間を通した教育の効果について,まだ十分な効果が示されていないともいわれます。また,学校統廃合の問題は,地域の学校が失われる立場にとって深刻な問題として受け止められています。

 小中一貫教育に対する様々な議論は,確かに有機的に繋がってはいますが,分けて考えていかないと建設的な未来を見通すことが難しくなることも肝に銘じておきたいところです。

 私が関わる「むくのき学園」は施設一体型の小中一貫校であり,同じ屋根の下で児童生徒が学ぶ形の学校です。これから学校を見学する予定なので,雰囲気については後日ご紹介するつもりですが,学校のWebサイトを除くとすでに様々な取り組みを重ねている様子が伝わってきます。

 モデル校には同じく施設一体型の小中一貫校である「やたなか小中一貫校」が参加して,先行して取り組んでいますので,そこの成果も教えていただきながら,コーディネータとして「むくのき学園」の取り組みを見守っていけたらと思います。

 従来の小学校・中学校の名前は残っているものの,一貫校として新しい学校が出発したばかりですので,学校の文化を作り出すことで一生懸命な時期だと思います。

 私の役目は,外部の人間としてその取り組みを言葉にして返したり,対話の相手としてICTに関しても何か気付いてもらったりすることだと思います。慌てずにじっくりと学校の成長を見せていただくつもりです。