先日,Twitter上で教育用情報端末の導入に関わる「iPad問題」をツイートしました。
今このタイミングは,教育用情報端末を選択するには,とても困難な状況が発生しているわけですが,その困難を象徴するのがiPadというデバイスとその導入にまつわる問題だという内容でした。
新しい道具を教育の現場に取り込む事に関しては,繰り返したきた歴史がありますので、今回もまたその変種と考えることができます。その話はいずれご披露しようと思います。
それよりもここ数日「iPad対抗」という文字の踊る記事が続いたことが印象的でした。
20120527「ウルトラブック、利幅も存在感も薄い? iPadに対抗」(朝日新聞)
20120618「「iPadに十分対抗できる」、NECが10.1型のタブレット端末」(日経新聞)
20120619「マイクロソフト:タブレット端末開発 iPadに対抗」(毎日jp)
これほどまでに業界は「iPad」を意識しなければならない事態になっている。
20120618「iPhone・iPad業務利用へ70社連携 日立やNEC アプリ開発、アップルに技術・情報提供求める」(日経新聞)
そして,こうした動きに動かざるを得ないというところまで来ているということでしょう。現時点の選択肢として,手に入る現実的なデバイスはiPadぐらいしかないということなのでしょう。ベストとは言いたくないとしても,ベターであると…。
もちろん時代とともにベストもベターも変わります。だからこそ,その時に選びたいものが選べるようになるといいなと思います。
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思い返すと今から4,5年前には,Windows XP Tablet PC Editionを搭載したタブレットPCが教育利用に期待を寄せられていました。
たとえば,東京大学で実験されていた教育環境の研究プロジェクトMEET(ニュース記事)や、マイクロソフトのNEXTプロジェクト,インテルと内田洋行の研究プロジェクトなどがタブレットPCの活用を一つの目玉として取り組まれていたのです。
そのような系譜の中で,フューチャースクールは構想されたため,総務省からの事業入札仕様は当然タブレットPCを想定したデザインでした。
しかし,仕様が固まる過程で起こった出来事は,ポストPC時代の幕開けを告げる出来事でした。iPadの発表です。
従来のタブレットPCの鍛練は始まったばかりでしたが,世間の関心は一気にスレート(一枚板)型のタブレットデバイスに向かってしまいました。何よりiPadの出来が初球にしてはあまりに良かったことも従来のタブレットPCを色褪せたものに見せました。
市場にiPadやウルトラブックのような軽量薄型のデバイスが並び始めた頃に,分厚くて重たいタブレットPCを未来と呼ぶ事業が進行したことは、フュチャースクール推進事業の意図せざる不幸だったと思います。
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従来のタブレットPCは,次世代PCを担うには認知度が低く、分厚いノートPCや昔のペン操作デバイスの悪夢から抜けきれていませんでした。
かつて,タブレットデバイスシステムのご先祖としてGO社のPenPoint OSというものがありました。90年代初期に登場したこのデバイスはiPad並に衝撃でしたが,PCのOS覇権を守ろうとしたマイクロソフトによって潰された歴史は知られたところです。
しかし,そのリベンジを代理で果たしたとも言われるiPadがペンではなく指タッチ操作のデバイスとして成功を収めたのは興味深い事実です。
確かに教育利用の場面では,ペンによる手書き入力の必要性も指摘されるところですが、かといって長らく模索されてきたペン操作デバイスがなかなか成功しなかったこと、iPadの爆発的な広がりなど見ると、デバイスの設計はなかなか難しいものだと感じます。
そういう意味ではマイクロソフトが発表した独自のタブレットPCがペン入力と指タッチの両方に対応するタイプのデバイスにしたのは,正しい選択なのだと思います。
個人的には,iPadでSu-PenやiPenを使うペンソリューションでも用途によっては問題ないかなと考えています。
日本デジタル教科書学会のスタート
〈デジタル教科書〉に関して学術研究と教育実践を取り結ぶための場として「日本デジタル教科書学会」が設立されたようです。
これまでの学術研究団体の系譜から派生したものではなく、〈デジタル教科書〉の可能性に期待を寄せる学校現場の先生方や研究者有志の方々によって構想され発足したものであることが特徴的です。
ネットによるソーシャルな活動が勢いづいたこの時代ならではの学会の誕生に、まずはお祝いの言葉を贈りたいと思います。おめでとうございます。
垣根を越えたところで研究活動を推進していくとの理念通り、広く会員を募集しているようですので、関心のある方はWebサイト(http://js-dt.jp/)をご覧になってはいかがでしょうか。
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「物好きなお前のことだから、この学会に一枚噛んでいるんじゃないの?」と思われた皆様もいるかも知れませんが、私はもちろんノータッチ。
そもそも〈デジタル教科書〉という語に対して懐疑的かつ慎重な態度をとっている私がその名を冠した学会の設立に参加しているわけもなく、暗躍していたんじゃないの?という推量は見当違い。
そんなわけで、祝辞を言ったそばから宣戦布告するのも無茶苦茶ですが、〈デジタル教科書〉という用語を解体していく姿勢で臨みますので覚悟しておいていただきたいと思います。^_^
[FS岡山] 20120601 岡山県新見市立哲西中学校授業参観
2012年6月1日に岡山県新見市立哲西中学校で公開授業参観期間がありましたので午後から参観してきました。午前中は同じ新見市の高尾小学校が絆プロジェクトに参加していることを知ったので急遽表敬訪問しました。
20120531高知県高等学校放送・視聴覚教育研究会にて講演
高知県の高等学校放送・視聴覚教育研究会から講演の依頼をいただいたので、高知南高等学校にお邪魔してきました。
秋に研究大会があるので、それに向けた取り組みの参考にするためのお話をしなさいというのが今回のお題でした。
先進的にやっている中高の実践事例があれば紹介して欲しいというご注文でもあったのですが、中高の事例は小学校のそれに比べると少なく、まして私が持ち合わせているものはかなり乏しいので、直前まで内容は悩みました。
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講演というものには、既存の知見を紹介して理解を広く得るという役目があります。なので、基本的には講演内容に関しては決まった持ちネタがあって、それを違う場所で繰り返すというのがごく普通の活動になります。
ただ私は、講演内容のスライドなどがあれば公開するのが基本方針なので、それを方々で繰り返すのは自身の心理として後ろめたさがあるのです。そりゃまぁ、私も語れることは限られていますから、ネタが繰り返すことはありますが、プロットに何も変化を加えないでしゃべるのは、ボランティアならばともかく、ある程度の謝礼をもらう仕事だと申し訳ない気持ちになります。
それで、今回も直前まで、ご要望と持ちネタとを掛け合わせて、新しい講演のプロットを考え出すのに苦労したという次第です。
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今回は「コミュニケーションを育む情報技術と学校」という題目をつけて、もしも研究大会で何か提案されるのであれば、こうした点に着目してはどうですかというメッセージを込めてお話を構成しました。(後日、資料やレジュメは追加して公開します。)
先方の研究会の趣旨などを読んで、新しい時代について意識されていたので、「新しい時代」というのは何だろうところから話を始めました。
そして未来を考えるために、私たちが歩んできた過去の出来事を社会年表も見ながら皆さんと一緒に振り返り、メディアや機器の寿命などを意識することを通して、今あるもの、新しいものについて感じてみたわけです。
今回は、前々から使ってみたかった「ネオ・デジタルネイティブ」のお話を入れました。私たちが相手にしている児童生徒たちがどんな世代なのかを意識することも大事だし、その人たちに新しい時代を生きてもらうために何が必要なのかを考えてみたかったからです。
それから現在起こっていると思われる「コミュニケーションに関する困難」を三つご紹介し、こうした困難を乗り越えることもこれからは必要ですよねというお話もしました。今思うと、この部分は分量オーバーだったかなと思いますが、思考スキルの鍛錬が大事ということをお話しする中で取り上げた関西大学初等部の取り組みに関心を持った先生もいたので、まあ、無駄ではなかったなと思います。
そしてかなり未来にぶっ飛んだ話で終わるのも忍びなかったので、日常から取り組めることを三点示した感じで締めました。
途中う、簡単な実践事例の写真を見せて、ご紹介した知見がこんな形で関係しますよとお話したり、質疑応答の時に届いたばかりのフューチャースクール推進事業のDVD映像を見せたりして、まあ、テープレコーダー的な講演もしました。そちらの方が会場の関心度も高かったので、あらやっぱりという感じでしたが… ^_^;
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直前まで講演内容づくりにこだわるのは結構だけど、やっぱり盛りだくさん過ぎたし、ぶっ飛んだ話も多かったので、講演直後は会場「ポカ~ン」状態。またやっちゃったかなと直後は凹むのですが、それでも雑多な話の中からフィードバックを返してくださる方もいて、それほど酷いこともないかなとちょっと自分を慰めるという感じです。
その後、私を呼んでくださった先生のメールには「よい研修会になったと思います」と書かれていたので、刺激にはなったのかなと思います。まあ、たまには変わり種もよしということで。^_^
講演音声を自分で録音したつもりだったのですが、押したはずの録音ボタンの直後に停止ボタンに触れてしまったらしく、残念ながら録音ならず。まあ、残すほどの講演はしていないので、また次回の新作に向けて精進をしましょう。
というわけで、講演を終えて、次はその足で岡山を目指したのでした。