[FS徳島] 足代小学校公開授業研究会の案内サイト

 2013年11月29日(金)に開催される徳島県東みよし町立足代小学校の公開授業研究会をご案内するサイトを開設しました。

 

 

 学校の公式ではなく,担当研究者である私が作成したものですが,皆様に今回の公開授業とこれまでの足代小学校の取り組みに対する姿をご紹介したくて開設しました。

 本日(11/13)から「秋の行政事業レビュー」が始まり,14日には総務省と文部科学省が手がけてきた「ICTを活用した教育学習の振興に関する事業」についても議論と評価が行なわれる予定です。

 今回,どのような側面を取り上げられて,どのような議論が展開し,どう評価されるのかは分かりません。国全体の視野から見た場合,厳しい評価も覚悟する必要があります。

 しかし,事業に協力した実証校では,各校でそれぞれ思いと熱意を持って取り組んできました。事業自体の評価を左右するには小さいことではありますが,そのような努力の積み重ねがあったことに対する認識と労いの気持ちをもって議論と評価をしていただきたいと思います。

[FS岡山] 20131031 岡山県新見市立哲西中学校公開授業

Untitled

 

 岡山県新見市立哲西中学校で公開授業がありましたので出席しました。フューチャースクール推進事業&学びのイノベーション事業の実証校の一つ。iPadを導入している学校としても知られます。ご縁をいただき,私が講演を担当させていただきました。

 公開授業は,1年生の国語,2年生の理科,3年生の社会,特別支援学級の取り組みでした。それぞれiPadを日常ツールとして活用した授業。

 国語では,「竹取物語」の作品を読むこと。仮名遣いや古語に触れて,意味を考え音読できるようにしようという授業でした。

 その際に,電子黒板に竹やぶの画像を画面いっぱい映し出し,暗くした教室でその竹やぶを覗き込むことで物語の臨場感を味わう工夫がなされていました。iPadはワークシートの配布と書き込みに利用。

 理科では,電流回路を学ぶために実験を行ない,それをiPadを使って記録し結果をまとめる活動をしました。哲西中での理科実験におけるiPad活用は学習スタイルとして確立されており,どんな単元でも安心して見られる授業の一つです。生徒たちも実験には迷ってもiPadでの作業に迷うことはほとんどありませんでした。

 社会では,「死刑制度」について多角的に考え議論するという重たいテーマの授業。アンケートシステムを授業前半と後半に使い,賛成か反対かを集計するのですが,調べて話しあった結果で意見がどのように変化したのか授業の成果が見えるような使い方です。

 もちろん調べ活動や個人の意見の見える化にはiPadと授業支援システムが活躍しており,シンプルではありましたが,本筋の議論を支える活用がなされていました。

 哲西中学校ではiPadとDropboxとPDFアノテーションアプリ(neu.Annotate+)を使い倒す形で,ICTを文具化していたと思います。生徒数が60名という規模の小ささもあるとは思いますが,ネットワーク接続もほとんど問題ない感じです。

 こうした公開授業のあとで各授業の検討会と全体協議会がありました。

 私からは本事業のおおまかな流れと,昨今の学習に対する考え方の変化についてお話をしました。特に協働学習と呼ばれているものを取り組み際に,単なるグループ活動(班活動)と何か違いがあるのかどうかを考える必要はあることを述べました。

 最近刊行された『ピア・ラーニング』という文献は,心理学研究の側から学びあいについて考えた有意義な書だとご紹介した次第です。

 その中でも引用されていますが,「協同学習の必要条件」として三宅なほみ先生が指摘されている「メンバーがゴールを共有すること」「一人ひとりが仮説をもつこと」「問題解決プロセスが外化され,その情報が共有されること」「多様な学習成果を統合的な考えとしてまとめていくこと」「「協議する文化」をつくること」を意識することは大事と思います。

 それに関わって,授業の終わり,学習の決着の付け方が慌てたものになっていないかどうかを問うことについてもお話ししました。

 せっかく協働学習活動を展開したとしても,授業時間終了だから,チャイムが鳴ってしまったから,その締めくくり方や次につなげていく指示の出し方が疎かになってしまうと,初戦授業での学習はそんな程度のものと受け止められてしまいます。

 ICTを導入することで,慣れないがゆえに時間配分通りに進まず,実のところ最後が尻切れトンボになってしまうという傾向が最初はどこでも見受けられます。こうした慣れない時期を早く脱することが求められるわけですが,それにはそれなりの時間がかかると私は考えています。

 また,これから求められる学習の在り方を受け止めるためにも,45分や50分授業という時間枠組みの方を問題とすべき時代がやって来たのではないかとも思います。

 今回の事業の目的には含まれていない問題や課題ではありますが,これからの教育を考えるためにも,授業の物理的な時間配分についても議論を深めて実行に移していかなくてはならないと考えます。

 哲西中学校の取り組みは,ICT活用において背伸びをするのではない活用のスタイル確立の重要さを感じさせてくれるものと受け止めています。

 もちろん先生方もICT支援員さん,そして新見市の情報課の方々も,陰ながら様々な可能性を試して,新しいものを取り込もうと努力されています。ただ,そうした新しい挑戦も,すでに固めたスタイルがあるからこそ安心して取り組めるわけで,そのブレない安定感が哲西中学校らしさのように思います。  

[FS沖縄] 20131016 宮古島市立下地中学校公開授業研究発表会

Untitled

 フューチャースクールをめぐる旅で全国あちこちへお邪魔していますが,今回は人生で初めて足を踏み入れる沖縄という土地です。

 宮古島には小学校が20校,中学校が16校あり,高校は4校とされています(沖縄県発表の学校基本調査速報)。とはいえ,宮古島では学校統廃合の問題がずっと議論されており,少子化もあってこの数字は年々減少傾向にあるようですが,統廃合に対する反対もあります。

 実証校である下地中学校は,生徒数105名の小規模校ですが,宮古島全体の中学生の数が1800名程度ですので,島内で極端に少ない学校というわけではないと思います。学校は下地小学校や幼稚園・保育所とも隣接しており,寂しいという感じではありません。

 前日に宮古島に到着し島内を散策したのですが,夕方はあちこちで下校する児童や生徒の姿を見かけられましたし,中心地近くは学校も散見されたので,意外と子ども達が多いと印象を抱いたほどです。

 ただ,島には島なりの悩みもあるようで,子ども達には高校以降の進学先が島内に無いため,ほとんどの子が島外や県外に出て行くことになるそうです。そうした島特有のライフコースに対して学校教育がどう貢献すべきなのか。そうした問題意識の中でこの地域の教育が展開していることは押さえておくべきだと思いました。

 

Untitled

 

 公開授業は全クラス(4つ)が公開してくださいました。1年生の理科と社会,2年生の保健体育,3年生の英語でした。

 理科では,大地の変化を読取る単元で,ポーリングによる調査方法をゼラチンでつくったミニ地層とストローを使って模擬的に体験し,その結果をタブレット端末を使って撮影したりまとめる活動をしました。

 社会では,アジアの国々を知る単元で,タイの工業化についてデジタル教科書やインターネットのリソースを使った調べ学習の取り組み。

 保健体育では,傷害の防止のために必要なことを各班が手分けして調べ学習を行ない,その成果をコラボノートなどを活用してまとめあげる活動とプレゼンを行ないました。

 英語では,ビデオチャットを活用して各グループが異なる拠点の相手と英語でインタビューを粉得活動を展開していました。アメリカやインド,台湾などの人々を相手に英語で会話をし,最後はコミュニケーションの内容をまとめていました。

 いずれの授業もタブレット端末とデジタルのコンテンツ,インターネット等を学習の道具として手に馴染ませた活用をしていました。ビデオチャットのスカイプでは,海外によっては回線速度が厳しく音声のみという相手がいましたが,学校側の回線には十分余裕があり接続問題はほぼありませんでした。

 宮古島での教育方針が交流事業に力を入れているということもあり,インターネットで外部と簡単につなげられる道具が入ることは,そうした取り組みにもプラスに働いていることが分かりました。

 遠く沖縄に飛んで,その地域の空気に触れながらフュチャースクール推進事業の取り組みを見ていると,当然のことではありますが,同じようなICT機器を導入していてもその浸透の仕方は地域によって異なることが見えてきます。

 それぞれの地域に生きる私たちが今後の日本でどう生きていくのか。そのために何を学び,その学びのためにどんな環境条件や学習機会を提供できるのか。

 今回の実証事業を踏まえて考えなければならない事が山ほどあり,それは今後ずっと引き受けていかなければならないのだろうと改めて思います。  

『足代小 フューチャースクールのキセキ』

 総務省「フューチャースクール推進事業」の実証校である徳島県東みよし町立足代小学校の取り組みが『足代小 フューチャースクールのキセキ』という書籍として教育同人社から発売されます。

 実証校からの報告が書籍になるのは初だというので、事業に関心のある皆様にはぜひ手にとっていただければと思います。

 ただ、少しお詫びを…。

 この書籍には担当研究者として関わった私の原稿も(たぶん)掲載されていると思うのですが、担当研究者として対外的に書くことを意図したものではありませんでしたので、普段から不明瞭な駄文を書いているのですが、一般読者の皆さんにはなおのこと意味不明な内容となってしまいましたことお詫びします。

 逃避行ばかりしている私が市販されることを聞き漏らしてしまったせいです。ごめんなさい。

 一応、こうした事業に関わる研究者や有識者には様々な人がいて、それぞれ異なるスタンスをとっていることは予防線的に書いたのですが、これだと有識者って名前だけの仕事なのねと一般化して勘違いされてしまいかねません。

 他の実証校を担当した有識者の方々は、私と違って勢力的に事業に関わり、親戚のおっちゃんおばちゃんといった感覚で取り組まれているわけではありませんので、誤解しませぬよう、どうぞよろしくお願いいたします。  この事業に関わられた関係者の皆様に改めてお詫びいたします。

 現行執筆時点では、この事業の関係者を中心とした内部の人々が読むことを主な想定読者としていました。

 そういう方々は「ああ、足代小を担当している、あの…りんさんね。」という風に、私が好き勝手に動き回り馬鹿をやっている関係者であることは知られているので、その言い訳を書いたのがあの原稿でした。

 というわけで、フューチャースクール推進事業に自分が関わることを知ったのは突然でしたが、報告書が市販されることを聞いたのも本日でしたので、びっくりびっくりで始まり終わった私のフューチャースクールのキセキでありました。

その後の総務省

 総務省のフューチャースクール推進事業は、小学校分と中学校・特別支援学校分があります。一年先行した小学校分は3年間の事業を終えて終了しました。残る中学校・特別支援学校分も今年度で終わりを迎えます。
 教育の管轄は文部科学省なのに、なにゆえ総務省が関わるのか。その点、散々論難されてきました。社会全体のことを考える中で教育のICTを総務省が考えることは不自然なことではないはずですが、体制不信の立場からすれば厳しい目を向けないわけにはいかないのも必要なことだと思います。
 中学校・特別支援学校分が残っているとはいっても、すでに最終年度ということもあり、フューチャースクール推進事業自体は各地で粛々と進展しているという感じです。

 先日やっと平成24年度予算が成立したということもあり,各省庁の仕事もようやく本格始動といった感じのようです。
 総務省は何やっているのかというと、安倍政権のもとで「ICT成長戦略会議」を設置して議論を進めようとしています。
 ただ、今回の会議には「教育」の文字は入っていません。
 事業仕分けなどで叩かれた記憶も新しいですから,総務省としては「教育」の文字をあえて除外したと見るのが妥当なのでしょう。
 それでも会議の議事論には小宮山委員の発言として、教育についても触れた方が良いという発言がなされています。

 現政権は、口を開けばアベノミクスだ、経済成長だということに関心が向いており,もろもろの施策もそちらの文脈に絡めてざるを得なくなっているようです。
 こういう場合,教育界に向けては「人材育成」という言葉で様々な要求が高まるわけで,「人間形成」を矜持とする立場にとっては苦々しい。かといって、一方でいじめ問題を契機として「道徳教育」の教科化要求が教育再生実行会議などから飛んでくるのも、矢継ぎ早で不穏な空気を感じます。
 この辺は目的や内容の明確化といった丁寧に手続きが必要な話で,乱暴に「経済成長の手段として教育を扱うな」とだけ吐き捨てることは、主張としてはともかく、現実的な学校教育においてできません。
 であるとすれば、むしろ成長戦略の中に「教育」をちゃんと位置づけてもらった上で,議論を積み重ねて目標と手段を明確化すべきなのですが、そういう風になっていないというのが、少々残念なことでもあります。