[FS徳島] 20131129 東みよし町立足代小学校公開授業研究会

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 私が担当研究者をしている徳島県東みよし町立足代小学校で公開授業が行なわれました。これが最後の公開授業。足代小らしさが凝縮された実践が披露されました。

 小学校分のフューチャースクール推進事業は昨年度で終了しているため,学びのイノベーション事業の実証校としての公開授業ということになります。

 3年生の国語は,お城までのイラスト地図をもとに「おはなしづくり」に挑戦しました。その際に,イラスト地図のミニチュア(ジオラマ風)を製作し,小型USBカメラを使って道のりを立体的に体感することで,物語への意欲を高める工夫が行なわれました。お話しづくりの作業にはコラボノートを利用。つくったお話しを発表する際にも,そのお話に合わせてUSBカメラを動かし映像を添えるといった活用がされました。

 4年生の理科では,体育館にビニールで作った球体ドームが用意され,オープンソースのプラネタリウムソフト「Stellarium」を使った天体学習が行なわれました。星の動きをあらかじめ予想し,自分たちの学校の風景を合成した今宵の星空を再現することで,星が自分たちの土地の空でどのように動き,どの風景や方角を手がかりにすれば星を見つけられるのかを学ぶことで,実際に子ども達が夜空で星を見つけられるようにするのがねらいです。

 5年生の外国語活動は,「What’s this?」という質問を使ったコミュニケーション活動でした。クイズをタブレット上で製作し,友達同士や他のグループの子達に対して出題をする活動をしたり,問題を製作するにあたって教室内の様々なものの英語名を確認するためAR技術を使って教室内のQRコードを読み取りタブレットから音声を取り出したりする活動も行ないました。

 6年生の算数では,おおよその面積を基本図形を使って求める活動をする際にネットで公開されている「E-Student」という測定ソフトウェアを利用しました。また次回は立体の体積を求めるため,そのイメージを理解するのに「SketchUp Make」というソフトも利用し,ハンバーガーと円柱を比べたりしました。

 当日は,玉川学園大学の堀田龍也先生をお迎えして対談をさせていただきましたが,堀田先生に外部から見た足代小学校の取り組みをお話しいただくことができました。

 すっかり言い忘れてしまったのですが,今回の裏テーマは「立体(3D)」。

 立体造形物や空間的活動など,どの授業も3Dをモチーフにした挑戦を盛り込んだこと,お分かりになった参加者はいたでしょうか。

 足代小学校の取り組みは,どちらかといえばフューチャースクール推進事業的な色彩(ICT機器や技術を授業や学習で使い倒してみる)が強いともいえそうで,それが学習効果的に高いか低いかという尺度が似合わない事例かも知れません。

 しかし,これは誤解して欲しくないのですが,足代小学校はぶっ飛んだ取り組みをしていても授業設計自体を疎かにはしていないということです。

 この日,先生方がパネリストとして登壇したパネルディスカッションでは,それぞれの授業者が授業に込めたねらいを語りましたし,ICT支援員さんからもこの3〜4年間で大事にされてきたのは「授業への配慮」であるということが述べられたほどです。授業への配慮とは,児童達の学びに対する配慮ということであり,丁寧な授業づくりこそが子ども達の学習を大事にすることに繋がることを私たちは常に意識しているということです。

 そして,そのような取り組みを実現するためには,教職員が一丸となって自分たちも学びあい成長することが大事であり,ICT活用への対応とは,新しいプラットフォーム上で学校教育というものを再構築する,一種の原点回帰作業だということを私たちは身をもって理解したわけです。

 足代小学校の中川斉史先生がまとめられたスライドには「学びのイノベーション事業は,教師の協働的な学びや授業作りを促した」ということ。「忘れかけていた『同僚性』の復活=日本の学校が大事にしてきたもの」ということが記されていました。

 実践の見え方が冒険的なものであるのか,あるいは堅実なものであるのか,様々違いはあるのかも知れませんが,いずれにしても先生方が協力しあって学校における学びのための文化を活性化しなければ,どのような道具も宝の持ち腐れであるし,逆にいえば,新しい道具を持ち込むことで新しい環境基盤の上に学びの文化を再構築する契機を作り出すことが,学びのイノベーション事業が目指していることだともいえます。

 というわけで,この公開授業をもって,担当研究者としての私の仕事も一段落つくことになりました。まだ実証校では報告書づくりなどの作業が残っていますが,事業自体はあと4ヶ月で終了です。

 私自身は,あともう少し他校を見て回ったり,情報の整理をして情報発信するなどする予定です。

[FS徳島] 足代小学校公開授業研究会の案内サイト

 2013年11月29日(金)に開催される徳島県東みよし町立足代小学校の公開授業研究会をご案内するサイトを開設しました。

 

 

 学校の公式ではなく,担当研究者である私が作成したものですが,皆様に今回の公開授業とこれまでの足代小学校の取り組みに対する姿をご紹介したくて開設しました。

 本日(11/13)から「秋の行政事業レビュー」が始まり,14日には総務省と文部科学省が手がけてきた「ICTを活用した教育学習の振興に関する事業」についても議論と評価が行なわれる予定です。

 今回,どのような側面を取り上げられて,どのような議論が展開し,どう評価されるのかは分かりません。国全体の視野から見た場合,厳しい評価も覚悟する必要があります。

 しかし,事業に協力した実証校では,各校でそれぞれ思いと熱意を持って取り組んできました。事業自体の評価を左右するには小さいことではありますが,そのような努力の積み重ねがあったことに対する認識と労いの気持ちをもって議論と評価をしていただきたいと思います。

[FS岡山] 20131031 岡山県新見市立哲西中学校公開授業

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 岡山県新見市立哲西中学校で公開授業がありましたので出席しました。フューチャースクール推進事業&学びのイノベーション事業の実証校の一つ。iPadを導入している学校としても知られます。ご縁をいただき,私が講演を担当させていただきました。

 公開授業は,1年生の国語,2年生の理科,3年生の社会,特別支援学級の取り組みでした。それぞれiPadを日常ツールとして活用した授業。

 国語では,「竹取物語」の作品を読むこと。仮名遣いや古語に触れて,意味を考え音読できるようにしようという授業でした。

 その際に,電子黒板に竹やぶの画像を画面いっぱい映し出し,暗くした教室でその竹やぶを覗き込むことで物語の臨場感を味わう工夫がなされていました。iPadはワークシートの配布と書き込みに利用。

 理科では,電流回路を学ぶために実験を行ない,それをiPadを使って記録し結果をまとめる活動をしました。哲西中での理科実験におけるiPad活用は学習スタイルとして確立されており,どんな単元でも安心して見られる授業の一つです。生徒たちも実験には迷ってもiPadでの作業に迷うことはほとんどありませんでした。

 社会では,「死刑制度」について多角的に考え議論するという重たいテーマの授業。アンケートシステムを授業前半と後半に使い,賛成か反対かを集計するのですが,調べて話しあった結果で意見がどのように変化したのか授業の成果が見えるような使い方です。

 もちろん調べ活動や個人の意見の見える化にはiPadと授業支援システムが活躍しており,シンプルではありましたが,本筋の議論を支える活用がなされていました。

 哲西中学校ではiPadとDropboxとPDFアノテーションアプリ(neu.Annotate+)を使い倒す形で,ICTを文具化していたと思います。生徒数が60名という規模の小ささもあるとは思いますが,ネットワーク接続もほとんど問題ない感じです。

 こうした公開授業のあとで各授業の検討会と全体協議会がありました。

 私からは本事業のおおまかな流れと,昨今の学習に対する考え方の変化についてお話をしました。特に協働学習と呼ばれているものを取り組み際に,単なるグループ活動(班活動)と何か違いがあるのかどうかを考える必要はあることを述べました。

 最近刊行された『ピア・ラーニング』という文献は,心理学研究の側から学びあいについて考えた有意義な書だとご紹介した次第です。

 その中でも引用されていますが,「協同学習の必要条件」として三宅なほみ先生が指摘されている「メンバーがゴールを共有すること」「一人ひとりが仮説をもつこと」「問題解決プロセスが外化され,その情報が共有されること」「多様な学習成果を統合的な考えとしてまとめていくこと」「「協議する文化」をつくること」を意識することは大事と思います。

 それに関わって,授業の終わり,学習の決着の付け方が慌てたものになっていないかどうかを問うことについてもお話ししました。

 せっかく協働学習活動を展開したとしても,授業時間終了だから,チャイムが鳴ってしまったから,その締めくくり方や次につなげていく指示の出し方が疎かになってしまうと,初戦授業での学習はそんな程度のものと受け止められてしまいます。

 ICTを導入することで,慣れないがゆえに時間配分通りに進まず,実のところ最後が尻切れトンボになってしまうという傾向が最初はどこでも見受けられます。こうした慣れない時期を早く脱することが求められるわけですが,それにはそれなりの時間がかかると私は考えています。

 また,これから求められる学習の在り方を受け止めるためにも,45分や50分授業という時間枠組みの方を問題とすべき時代がやって来たのではないかとも思います。

 今回の事業の目的には含まれていない問題や課題ではありますが,これからの教育を考えるためにも,授業の物理的な時間配分についても議論を深めて実行に移していかなくてはならないと考えます。

 哲西中学校の取り組みは,ICT活用において背伸びをするのではない活用のスタイル確立の重要さを感じさせてくれるものと受け止めています。

 もちろん先生方もICT支援員さん,そして新見市の情報課の方々も,陰ながら様々な可能性を試して,新しいものを取り込もうと努力されています。ただ,そうした新しい挑戦も,すでに固めたスタイルがあるからこそ安心して取り組めるわけで,そのブレない安定感が哲西中学校らしさのように思います。