本棚増設

 先月下旬から慌ただしくて心落ち着かない日々が続いていました。科研費申請もそうですし,フューチャースクール関連の仕事,そして私個人の蔵書引っ越しなど,いろいろ出来事がめまぐるしかったからです。

 そして,いま私の研究室は大変な状態になっています。分散していた蔵書を統合するために運び込んだ荷物が片付けられない…。本棚二重にしてみたんですが,荷物の半分くらいを開封した時点で満杯になってしまいました。
 20101118books.jpeg
 印刷書籍のデメリットは場所を取ることだと言われていますが,まさにこのデメリットに泣いている状態です。とはいえ,これを「自炊」と称して電子化したところで場所の問題は解決するとしても,今度は二度と開かず読めないのではないかという恐怖感もあり,あらためて「モノとしての本」の存在を考えてみたりします。
 というわけで,落ち着いて考えたり文章を書いたりする環境がまだまだ安定しないために,最近は心も穏やかではありません。

政策コンテスト・パブリックコメントの手順 – コメント提出編

 来年度の予算編成を左右する「政策コンテスト」。私たちがパブリックコメントを提出する数によって事業予算の確保が決まってしまうのです。
 今回は,文部科学省が応募している「未来を拓く学ぴ・学校創造戦略」に対してコメントをする場合を例に,コメント提出の方法をご紹介します。
 なお,以下の手順は「ユーザー登録編」からの続きです。すでにユーザー登録が終わっている場合には,政策を選択する手順をしてからコメント提出の手順に繋がります。
 1.「ユーザー登録編
 2.「コメント提出編」(いまここ)

(1) ログイン画面で登録したメールアドレスとパスワードを入力し「ログイン」する
pubcome_28.jpg
 
(2) 自分のユーザー情報の確認画面の下に,事業に対するコメント欄が表示される
pubcome_29.jpg
pubcome_032.jpg
 
(3) 事業に対する評価とコメントを入力する
pubcome_033.jpg
質問は以下の通り

【必要性】

(1)記載された政策目的を実現するために,この事業を実施する必要があると思いますか。

(2)記載された政策目的に照らして,地方公共団体や民間等に委ねることは難しく,国が率先して行うことが必要だと思いますか。

(3)限られた予算枠の中で,この事業は,同一分野(関連項目)の他の事業と比べて,優先して実施する必要があると思いますか。

【事業効果】

(4)この事業を実施することを通じて,「元気な日本」の復活につながると思いますか。

(5)この事業に関する「要望概要」の「事業の新規性,見直し内容」の欄に記載されている内容は,評価できるものだと思いますか。

【手法】

(6)この事業の手法(事業主体,支出先等)は適切だと思いますか。

(7)要望額や事業規模は事業内容からみて適切な(過大ではない)ものだと思いますか。

【その他 この事業に対する評価】

・良い点

・悪い点

【その他 ご意見】

自由記述

 
(4) 「送信内容確認」をクリックして内容確認画面を表示させる
pubcome_036.jpg

(※画面例のコメント内容は個人的意見ですので参考程度に…)

 
(5) 「この内容を送信する」をクリックして提出完了画面を表示させる
pubcome_038.jpg
以上で提出完了!

政策コンテスト・パブリックコメントの手順 – ユーザー登録編

 2010年10月19日まで,国の予算編成について国民からのコメント(パブリックコメント)を募集しています。要するに,どんな事業にお金を使うべきか,国民に投票してもらおうという取組みです。「政策コンテスト」と銘打たれています。
 (ある条件を満たした上で)この政策コンテストに応募し,選ばれると,規模の大きい予算を獲得することが出来るようになっています。
 文部科学省が管轄する教育分野は,より多くの予算を必要としているため,大きな賭けに出ました。耐震化を含む学校施設の整備,ICT活用環境を整備する学校創造戦略,35人学級を実現するための経費などを,この政策コンテストの枠に出したのです。
 これが意味するところは,私たちがパブリックコメントで「この事業予算は大事です!必要です!」と投票しないと,事業予算を確保できず,大事な教育政策を実現することが困難になってしまうリスクが生まれたことです。
 こんな事態になったことは残念なことですが,事態は進行中です。10月19日までに多くのコメントを集めないと,限られた予算の中で教育分野への配分は劣勢に立たされてしまいます。
 ぜひ,コメントをしてください。以下,手順をご紹介します。
 1.「ユーザー登録編」(いまここ)
 2.「コメント提出編

(1) 政策コンテスト・パブリックコメントのWebサイトへ


pubcome_002.jpg
(2) 「文部科学省」をクリックすると「組み換え予算」の一覧が表示される
pubcome_005.jpg
(3) 「要望事業一覧を見る」をクリックするとコンテスト対象の事業一覧が表示される
pubcome_010.jpg
(4) 自分がコメントしたい事業名をクリックすると詳しい事業説明が表示される
pubcome_013.jpg
(5) 「この要望について意見を提出する」をクリックするとログイン画面になる
pubcome_015.jpg
(6) 登録をする必要があるので基本情報を入力する
pubcome_17.jpg
(7) 「送信内容確認」をクリックしてユーザー登録内容の確認画面を表示させる
pubcome_019.jpg
(8) 「この内容で送信する」をクリックすると完了画面表示とメールが送信される
pubcome_020.jpg
(9) 自分に届いたメールを確認して,メール内のリンクをクリックする
pubcome_22.jpg
(10) ユーザー登録手続が全て完了するので,「ログイン」する
pubcome_24.jpg
コメント提出編」へ

田原「デジタル教育批判」本を斜め読みして

 デジタル教科書に関心のある人々の間で話題になっていた田原総一朗さんの『緊急提言!デジタル教育は日本を滅ぼす』(ポプラ社/1400円+税)を読みました。
 近所の本屋さんに売っていたのは意外でした。ハードカバーであることも含めて,やはり田原総一朗さんの影響力は大きいのだなと感じました。
 多少駆け足で目を通す感じの斜め読みをした感想としては,「デジタル教育」というキーワードに触れつつも,基本的には田原総一朗さんの教育論をまとめた本だと分かりました。
 筆者自身の提案なのか,企画した出版社の提案なのかは定かではありませんが,もともと田原さんの教育論が支柱にあって,そこに昨今の教育の情報化やデジタル云々も絡ませようとした結果であることは明白です。
 そのことを理解して読むと,この本を「デジタル教育批判」として受け止めて,その部分の記述を細かく反論することに意味がないことは分かります。
 細かい反論を試みる行為自体が,何かしら正解を出さねばならぬという意識から出発しているのではないか。
 確かに,困ったイメージ(デジタルやその技術の活用が教育に害があるかのようなイメージ)の流布を放っておくわけにはいかないと考えている人も多いので,そのためのパフォーマンスは必要と思いますが,それと合わせて,この田原本の位置づけをできるだけ背景を踏まえて明確にする努力も必要です。
 

 ここ数ヶ月,田原さんがメディアに登場する際,教育の問題について語る機会が多くなっていました。おそらく,この本を執筆していた時期だったのではないかと思います。
 そして,戦争と戦争に負けた以降とで,学校の教師の言うことが変わってしまい,価値観が180度変わったエピソード(76頁前後)を語ることが多かったのです。こうしたことからも田原さんの言動は,この原体験に強い影響を受けていると思われます。
 こうした原体験を持った人から,戦後の教育行政や教育改革,あるいはマスコミにおける教育言説や現代社会における人々の行動様式を見たとき,目に見えない形ではびこる「無責任」体制が日本を滅ぼしつつあると考えるのは理解できなくはありません。(その無責任さをデジタルで象徴させようとした意図がチラッと見えますが,残念ながら失敗していると思います。)
 
 なぜ人々は,自らの範疇を超えてでも物事の懐疑に正面向かって対峙しようとせず,(定型的な落とし所で)完結してしまいがちなのか。
 「教育」でも「政治」でも「事業」でも「デジタル教科書」でも,どんな事柄においても,その範疇を超えたところに関係し得る重要問題があるやも知れないのに,それを掘り起こそうとしないのはなぜなのか。
 今回の場合は「デジタル教育」なる言葉で新しい教育の可能性が語られているけれども,それが結局は旧態依然の定型的な教育行政(あるいは政治・官僚手法)で進められていく変わらなさになぜ誰も疑問を呈さないのか。
 
 田原さんの問題意識は,こうした事柄に重心があると私は理解します。
 

 「♪だって〜,しようがな〜いじゃない」と思うかどうかは立場にも拠るでしょう。国の仕組みが変わっていない以上,現実を動かすには旧来手法を援用しなければならない事情もあります。
 
 ただ,田原さんがその可能性を認めているように,ネットの在るこの時代においては,新しいコミュニケーションの可能性も生み出し得るはずです。
 「そのことを真剣に取り組むつもりがあるなら,やってみろ!」
 この本は,長い年月,日本という国を見続けてきたジャーナリスト田原総一朗さんからの激励なのでしょう。そのためには,積み残している様々な課題に真正面から取り組むことが大事なのだとアドバイスが添えられている…そう受け止めておくことが大事なのかなと思います。
 そう理解するためには,かなり行間を補って読む必要がある点は,玉に瑕なのですが,それは緊急出版させた出版社にも責任がありますね。ポプラ社さん,もっと丁寧にね。

阿波踊りと引きこもり

 りんラボがある徳島は,12日から阿波踊りで街全体が祭り期間です。とはいえ,盛り上がりは夕方から始まりますし,日中は普通に出勤している人も多いので,会場に近づかなければ,平穏な日常でもあります。
 昨夜は,徳島駅周辺に出かけて,阿波踊りの人の賑わいを感じてきました。残念ながら見る阿呆に留まっていましたが,徳島に住んでいる以上,いつかは思いきり踊ってみたいものです。とにかく,ちょうど街中を流れる新町川の川沿いに軒を連ねる屋台を眺めながらぐるっと歩いて堪能してきました。

 りんラボは,教育と情報を扱っている研究室です。以前の私は「教育」にかなり重心があったので「りんゼミ」という風に名乗っていた時代がありましたが,最近は「情報」や技術系の話題を扱うことがグッと増えたので,「りんラボ」と称しています。
 いまはiPhone/iPadアプリの開発のために,いろいろなデータやプログラムの解析を行なっていたりします。Twitterのログを分析するツールにも興味があって,ログをパースするアルゴリズムのための解析もしたいですが,いまは別のWebアプリケーションの動作を解析する作業にかかりきりになっています。
 それから,教室向けiPadアプリのデザインに困っています。UIデザインも本当なら根本から再設計すべきですが,それは次の機会にするとしても,最も大事な「見た目」のデザインが手付かずなのです。最終兵器のPhotoshopを取り出して,ぐりぐりデザインするしかないみたいですが…,ああ猫の手も借りたい。

 9月18日18:00から,愛知県の金城学院大学で行なわれている日本教育工学会大会でワークショップ「タッチデバイスの教育利用」を開きます。
 このワークショップで目指したいことは,別にある教育関連ブログでも書いたのですが,「ミスディレクション」を減らす手だてを模索することです。
 新しい技術やデバイスを研究対象にしたり,積極的に推進していく過程で起こり得る様々な議論。その際に私たちは多くの「ミスディレクション」に出会います。それは意図的・無意図的に関わらず,私たちをある見方に追いやってしまったり,何かを見落とさせたりする可能性を孕むものです。
 私は,タッチデバイスという今まさに注目を集めている対象を一つの具体事例として,学術研究や世間一般の議論がどう噛み合っていくべきなのか,あるいは私たち個々人はどう振る舞っていくべきなのかを考えたいと思います。
 …というワークショップの高らかな目的に見合う準備もまだまだこれから。まあ,出たとこ勝負が大好きなので,多くの皆様に意見出ししてもらう会になればいいなと単純に考えています。可能であればUstream中継を入れます。

 つい最近,一つ失望したあとに,私はぼちぼち「りんラボ」から「りんゼミ」に戻そうかと考えていました。
 技術もロジックも扱い始めると面白いのですが,それに呑み込まれた人間の在り様に疑問がないわけではなかった。いつしか私も醜さを露にしているのではないか,そう思えたとき,もう一度,思索の世界に戻ることがよいのではないかと感じたのです。
 けれども,人生とは不思議なもので,そう簡単には引きこもらせてくれないようです。縁がないと思っていた事柄に,いつの間にやら巻き込まれていたりします。
 私自身も状況を把握してからご報告したいと思いますが,どうやら「いろいろ文句を言うつもりなら,お前自身がやってみろ」と神様からお鉢が回ってきたようです。
 なるほど,そう来ますか。面白いじゃないの。受けて立ちましょう。
 私はすでに,人生の中で阿波踊りを踊っているようです。