20181203_Mon

授業と研究室。

卒業研究で学生たちが連絡を取った数学サイトの作者から返信を頂いたとの報告。リンクに関して快諾を頂いた上に展開図の実現方法について詳しい説明もしてくださったようだ。有り難い。さらに「林ゼミ」という文字を含めたことから,当方の研究室であること,受賞されたコンクールの審査に私が参加していたことも,すっかりお察し頂いていた模様。直接挨拶できておりませんこと申し訳ありません。ゼミ生に至らぬ点ありましたら,ご指導ご鞭撻のほど,よろしくお願いします。

採用試験対策講座用の定着テストの作成。

過日,小学校プログラミング教育に関するレクチャーをした講座の定着テストを実施するらしく,そのためのテスト問題を作成する依頼を受ける。

情報活用能力やプログラミング的思考あたりの文言を確認する単純な穴埋め問題になったが,過去問があるわけでもないのでこれでよいものか,作成作業は躊躇いを感じながらだった。

最近は,いろんなことを問い直す必要性を感じる分,結論に至るまで堂々巡りをすることが事のほか多くなってしまった。そうやって考えを巡らせたものの,結果的に出来上がったり落ち着くのは月並みなものだったりして,だったら悩まないで機械的にやっちゃった方がよかったじゃないと思うと,気分は凹んだりもする。

とはいえ,余計な負荷がかかって処理速度が遅くなるとしても,自己チェックをしながらでないと何かを見落としそうで不安なのも確か。もう誰も私に迅速さを求めてはいないのだから,開き直ってじっくり慎重に考える立場をとろうと思う。

20181201_Sat

古本オークションで『知的CAIシステム』を落札。

CAIといえば「Computer Assisted Instruction」の頭文字をとった語であり,コンピュータを利用した教授学習支援のシステムを指す。教育内容と演習問題を用意し,それらを機械的に提示していくことで,学習の進捗を促すものだ。その原型は,1950年代後半におけるスキナーのティーチングマシンであり,1960年代後半のコンピュータ登場でCAIを発展させていく。

単なる機械仕掛けといっても,学習者に合わせた支援動作をするように幾多もの工夫やシステムが組まれたが,1970年前後から,そこに人工知能の知見を取り込もうとしたものを知的CAIと呼ぶようになる。

知的CAIは「Intelligent Computer Assisted Instruction」(ICAI)と呼ばれた後,「Intelligent Tutoring System」(ITS)と呼ばれるようになった。一方,ただのCAIは伝統的CAIと呼び分けられたりもする。

伝統的なCAIが,シナリオを用意する方向性で高度化していったシステムとすれば,知的CAIは,(今回の本の表記に沿えば…)「ドメイン知識」「学習者モデル」「教育学的知識」「インターフェイス」の4つのコンポーネントから構成された複合的なシステムであるというところに特徴がある。

そんなわけで,本書の原著は1987年に刊行された知的CAIに関する理論書であり,関連諸原理を詳しく解説している。

正直なところ,翻訳文が堅くて,英語的に読まないと理解の遠回りが起こりがち。冒頭部分を読んでいるだけなので難しいことが書いてあるわけでもないのに,妙にチンプンカンプンである。とはいえ,いずれ翻訳向け人工知能がブラッシュアップされれば,過去に堅い文章で翻訳された古典を優しい文章の翻訳で読めるようになる時代もくるかも知れない。

1990年代(平成初頭)に入ると次第にCAIへの注目は薄れていくが,昨今は,EdTechという勢いに包まれながら,現代的な知的チュータリングシステムとして蘇っているかのよう。計算処理の高速化などによって,これまでの手法をハイブリッドしたものが登場しているように思う。

そんな時代だからこそ,ちょっと源流を訪ねてみたかった。

そういえば,この本の著者は「正統的周辺参加」論で知られるエティエンヌ・ウェンガー氏であった。なんとも幅の広い人である。