第8回教育ITソリューションEXPOでミニ講演

2017年5月17日〜19日に東京ビックサイトで「第8回教育ITソリューションEXPO」(通称EDIX)が開催されました。私が関心を寄せる教育と情報の分野における展示会としては規模の大きなものの一つなので,なるべく参加するようにしています。

この展示会は,もともと商業目的のものであり,企業や大口購買者が出展者と商談をするきっかけの場です。そのために,いろいろな製品やサービス等に関する最新情報が集まる場所になっているわけです。

私が参加する目的が商談でないのは明白ですから,最新情報の収集や関係者と再会する場として利用している感じです。今回も各社の動向や製品について知ったり,何人かの人たちと会って情報交換などできました。

ずっと来場者として通っていたEDIXでしたが,いつもお世話になっている方から仕事の依頼をいただいて企業ブースでミニ講演をすることになりました。依頼タイトルは「教育とICTにおけるクラウドの活用」でした。

クラウド利用といえば,アカウント登録が必須。今どきの大学生がどんなアカウントを所持しているのか,取り急ぎ調査した内容をご紹介した上で,私が職場で利用しているGSuite(Googleアカウント)をどのように授業で活用しているのかをご紹介していきました。

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私のミニ講演は,最終日の14:00と16:55の2回でしたが,初回はいつものごとくおしゃべりが過ぎたため,最後の2回目は完全に開き直って発表内容を大幅に端折り数分で終了。

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突然始まったのは延長戦講演。観衆は何が起こったかわからずハテナマーク多発(だったらしい)。

頼まれもしない「第8回EDIXに至るまでの教育ICTの苦難と課題」という企業ブースも関係ない展示会全体を相手取った講演をぶってみました。おそらく今回のEDIXで一番馬鹿馬鹿しい講演だったはずで,アンケートを配付していたコンパニオンさんたちさえ振り返り立ち見する前代未聞のトークでした。

私たちがなぜこの場所に出展し,講演し,来場し,アンケートを配付し,名刺を交換しているのか,その歴史的経緯を教育と情報の時系列図をもとにさかのぼってみようという大胆な企て。

まずは私たちが居る2017年に登場した「マストドン」のお話からスタートしたのも,この分野の講演としては初めてのことだと思います。日本で初めての教育関連マストドンを立ち上げた人間が直接話すんですから,最後まで残った皆さんは歴史的な講演に立ち合ったことになります(って大げさですが)。

EDIXの歴史を遡ると第1回が2010年に開催されたことが分かり,この年とはiPadが登場した年であったことが分かります。つまり,EDIXの始まりはタブレット端末への期待が膨張し始めた流れと重なっていたわけで,そのタブレット端末への期待値とEDIXの勢いとの相関を考えると味わい深いものがあるかも知れません。

話はさらにパソコン通信→インターネット→クラウドコンピューティング→ブロックチェーンという流れを遡り,教育と情報の取り組みが,それぞれの時代にどう企てられたのか,企てが失敗し続けたのかを概観するものとなりました。

そして,文部科学省の資料もぶった斬りながら,来場者である自治体や教育委員会は主体的に何を掴み取っていかなくてはならないのか,出展者は何を提供していかなくてはならないのか,そのことをもっと考えなくてはならないと投げ掛けてました。

今回のミニ講演なりの延長戦の落とし所はやはり「アカウント」。そして本来であればここからアカウントに関する更なる議論が展開するわけですが,さすがに講演時間も終わりになりそうだったので,お終いにしました。

他で登壇している先生方が真面目で役に立つお話をたくさんしてくださっているので,私は安心して講演を遊ぶことができたという感じです。きっと来年は呼ばれないだろうしね。

今回,ミニ講演の登壇者として遊ばせてくださったレノボ・ジャパンの皆様に感謝いたします。ノリをわかっていただけたMCとコンパニオンの皆様にも感謝いたします。

今回のスライドは,延長戦のためにいろいろ作り替えちゃったので,またゆっくり編集してから公開したいと思います。

教育とICTの時系列図 縦バージョンをつくってみた

新バージョンが出ています。


以前から「教育とICTの時系列図」をご紹介していたのですが,そろそろ改訂しないといけないと思いつつ,なかなか手付かずでした。

今回,教育ITソリューションEXPOの中でご紹介できる機会が飛び込んできたので,せっかくだから欲しかった縦バージョンをつくることにしました。

Edu timeline tate 2017a

まだいろいろ悩んでいるところがあるので,今回は雰囲気だけ(早速訂正も入ったし…)。

そういえば,2012年の研究会発表内容を国立教育政策研究所の報告書に参照していただいたようです。

「資質・能力を育成する教育課程の在り方に関する研究」研究報告書4~ICTリテラシーと資質・能力~ (平成29年3月)

あれから 5年経過したので,あちらもアップデートをしないと。そのためにも集めた資料を読み込む時間が欲しいです。

東京滞在

来週は東京滞在をします。

たくさんの催事があるので備忘録として…

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5月16日 平成28年度 総務省「教育の情報化」フォーラム

5月17日〜19日 第8回 教育ITソリューションEXPO

5月17日 マストドン会議2

5月18日 全国ICT教育首長協議会 平成29年度 総会・提言2017

5月18日 リアル・ネル in Tokyo 2017 

5月20日 落合陽一 氏スペシャルレクチャー in 秋葉原プログラミング教室

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地方に住んでいることもあり,日頃は教育ICT関係の方々とお会いする機会がないため,直接お目にかかって最先端の空気を感じてきたいと思います。

東京滞在は基本的に遊んで過ごしていますが,仕事をもらっていたかも知れません。また,いろいろ教えていただければと思います。 

マストドンの投稿公開範囲を調べる -2

インスタンスを立ち上げたこともあって,先月からマストドンに触れ続けています。投稿公開範囲について調べた結果を見やすい図にしてみましたので掲載します。

ダウンロード

[PDF] http://www.con3.com/files/Mastodon_toot_visibility_20221202.pdf

[PNG] http://www.con3.com/files/Mastodon_toot_visibility_20221202.png

この図は「投稿者」の投稿が,公開設定によってどのタイムライン(TL)や画面に表示されるのか(到達範囲)を表した図です。

図には表しませんでしたが,投稿者のことをフォローしたユーザーが誰もいない「インスタンスC」というものがあれば,基本的に投稿が届くことはありません。とはいえ,フォローしていない相手にもメンションは送ることは可能で,その場合メンションは相手の通知と連合TLに表示されます(これを他のユーザーが見ているかどうかまでは未確認です)。

また,「返信」と「ブースト」の場合はどうなるのか。まだちゃんと確認作業をしていませんが,今のところの観察メモとして

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【返信】
○自分のホーム
○プロフィールTL
○元トゥートの詳細内
〈メンション無し〉
×元トゥートしたユーザーの通知
〈メンション有り〉
○元トゥートしたユーザーの通知
〈自分のトゥートの場合〉
○フォロワーのホーム
○公開TL(ローカル+連合)
〈他者のトゥートの場合〉
×フォロワーのホーム
×公開TL(ローカル+連合)

【ブースト】
○自分のホーム
○プロフィールTL
○フォロワーのホーム
○元トゥートしたユーザーの通知
×公開TL(ローカル+連合)

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と見ています。ただ,条件を整えて実験をしていないので,間違っている部分があると思います。

ところで,Pawooさんが「おすすめユーザー機能」という新機能をリリースしたとのこと(5/12)。私はPawooでアカウントを作成していないので,まだ拝見することはできていませんが,インスタンス内の出会いや交流を促す機能が付き始めたのはよい方向性だと思います。

やはりマストドンは進化段階にあるシステムです。今回紹介した投稿公開範囲・到達範囲の在り方も今後変わっていく可能性があります。

とにかく,自分自身の投稿に責任をもって制御するためにも,投稿公開範囲や到達範囲について理解することは大事かなと思います。

マストドンの投稿公開範囲を調べる

マストドンのインスタンスを開設した目的の一つは,投稿(トゥート)がどのように閲覧されるのか,投稿の到達範囲や閲覧可否の制御ができるのかどうかを確かめることでした。

すでに「Mastodonの投稿範囲「公開」「未収載」「非公開」「ダイレクト」とは」(gori.me)という記事がこの疑問に答えてくれようとしているのですが,外部向けプロフィール画面の投稿一覧(プロフィールTLと書きます)のことや,ローカルタイムラインの特性については触れていないので,まとめて整理しておきたいと思います。

まずは一覧表(ブログシステムの関係上,罫線表示がなくてすみません)。

プロフィールTL
非フォロワー
プロフィールTL
フォロワー
ホーム  ローカルTL  連合TL  フォロワー
ホーム
Public
(公開)
Unlisted
(未収載)
× ×
Followers-only
(非公開)
× × ×
非公開
アカウント
ダイレクト × ○(相手)
×(相手以外)
× × ○(相手には通知)
×(相手以外)

マストドンに登録すると,「ホーム」「通知」「ローカルTL」「連合TL」という投稿の流れを追う画面を操作していくことになります。なお,マストドンではローカルTLと連合TLのことを合わせて「公開TL」と称することがあります。投稿側からすると2つは同じ扱いです。

必要に応じて,他人のプロフィールを表示しますが,マストドン通常画面の右端列に表示されるプロフィール表示以外にも,外部向けに独立したプロフィール画面があります。どちらのプロフィールでもフォロー/フォロワー一覧や投稿一覧が表示できますが,ここでは外部向けに公開する画面の投稿一覧のことを「プロフィールTL」と名付けます。

ユーザー設定画面には,投稿の公開範囲を設定する箇所があり,デフォルト時の投稿公開範囲を決められます。選択肢には「公開」「未収載」「非公開」が用意されています。ただし,投稿を書き込む時に個別的な切り替えが可能で,その際は「ダイレクト」という項目が加わります。

プロフィール設定画面には,「非公開アカウントにする」という設定箇所があります。これを設定するとフォローは承認制になり,デフォルトの投稿公開範囲が「非公開」になります。ただし,プロフィール画面や過去の投稿は表示されたままなので,Twitterの非公開とは違うことに注意する必要があります。

ちなみにマストドンAPIでトゥートする場合,ユーザー設定(デフォルト)とは異なる公開範囲設定になる可能性があります。APIを使うサービス側の設計次第です。

まず重要なことは,マストドンは公開を基本としたオープンなシステムだということです。

他者に知られては困る情報をやりとりするための暗号化機能は備わっていませんし,インスタンス内のやりとりを非公開にする仕組みはほとんどありません。グループ内で秘匿的に使用するには,システム改変するか,存在を知られない運用の工夫が必要になります。

どれほどオープンなのでしょうか。

たとえば,インスタンス内の公開TLに投稿されたものは,インスタンス登録者以外(外部から)でもツールを利用することで閲覧が可能です。「Mastodon Timeline Peeping Tool Made by YUKIMOCHI」は,指定したインスタンスから公開TLの内容を取り出すツールの一つです。

また,プロフィール画面は外部に対して非公開にはできず,公開していた過去の投稿を遡って非公開にする機能はありません。プロフィール画面を閲覧するにはURLを指定する必要があるため,URLを知られなければよいとも言えますが,URL自体は「https://インスタンスURL/@ユーザ名」というシンプルなルールで構成されているため,推察して閲覧することは難しくありません。

一方,興味深いのは,投稿時に使う「CW」(Contents Warning)ボタンと画像に対して使う「NSFW」(Not Safe For Work)ボタンという投稿内容の目隠し機能が用意されていることです。オープンであるからこそ,配慮の必要な内容等は目隠ししておけるようにしてあるのはマストドン独特の機能です。

いずれにしても,クローズドなグループ利用(登録者以外には閲覧されたくない)というニーズにはピッタリと応えられないのがマストドンの現状です。Facebookグループのように登録者のみの閲覧で投稿を囲う使い方はできません。

オープンを前提としてグループで利用するとしても,現状のマストドンの仕様はインスタンス内の出会いや交流について十分な配慮が盛り込まれていません。

そもそも関心を一にしてインスタンスに集った登録者同士が,インスタンス内で出会うには,ローカルTLに投稿しなければなりません。マストドンには登録者一覧やリストはありません。Twitterと同じといえばそうですが,インスタンスという単位に集ったのに,誰が登録しているのか一覧で知れないのは少々不便も感じます。

ローカルTLがそれなりに賑やかであれば,そこから気になる人をフォローするということになるのでしょう。しかし,お互い様子見していたり,投稿控えめなグループであることも考えられます。そうなると,なかなか出会いや発見も難しくなります。

ならば,登録者にどんどん投稿してもらってローカルTLを賑やかにして欲しいところ。

ただし,投稿が控えめになる要因がいくつか考えられます。

一つの要因は,ローカルTLへの投稿がプロフィールTLに記録されて,外部に公開されてしまうこと。

インスタンス内での交流を目的に投稿をすると必然的に外部に投稿が公開されてしまうのです。これを防ぐには投稿公開範囲を「非公開」にすることですが,ところが上の表にあるように非公開にすればローカルTLへの投稿が行なわれず,フォロワーだけにしか届かないのです。

「新規のフォロワーと出会いたくてローカルTLに投稿したいけれど,外部に投稿が表示されるのは恥ずかしいので非公開にしようとしたら,ローカルTLに投稿されず新規のフォロワーと出会いようがなくなる。」

現在のマストドンの仕様では,この問題を解決する術はありません。

もう一つの要因は,ローカルTLへの投稿が連合TLにも必然的に流れて公開されてしまうこと。

すでに説明したように投稿者側からするとローカルTLと連合TLには投稿先としての区別がなく,公開される投稿は公開TLに投げ出されるという考え方になります。

逆に言えば,インスタンス外部に投稿を出したくなければ「非公開」で投稿する以外にありません。

ところが,そうするとフォロワー以外に投稿は届かなくなり,ローカルTL,つまりインスタンス内の非フォロワーには投稿が読まれないということになります。

「同じ関心を持っているインスタンス登録者全員に投稿を届けたいけれど,外部に投稿が表示されるのは恥ずかしいし関心が違うだろうから非公開にしようとしたら,ローカルTLに投稿されず他のインスタンス登録者に届けられなくなる。」

現在のマストドンの仕様では,この問題を解決する術はありません。

マストドンが,分散型システムによるソーシャルネットワークであり,独自にインスタンスを立ち上げられることやグループ単位で利用する点に注目が集まっているにもかかわらず,一方で一過性の技術的ブームでしかないと見なされてしまうのは,利用するためのデザインに不足があるからだと思います。

現在のマストドンは,他のSNSがあって始めて利用開始が成り立っている状態です。

そしてインスタンスを立ち上げて,登録を促してみても,上記のような矛盾にぶつかり,マストドン単体で解決できない以上は,まだ一般の人々を巻き込んで利用を拡大してもらうことは難しいと思います。

マストドンはオープンです。

そのことは揺るぎないし,何よりも優先すべきことではあります。

しかし,だからこそ,関心の異なる人たちが分散し,偏在できるためのオープンな間仕切りの仕組みも必要だと思います。

マストドンは開発進行中のプロジェクトでもあります。

上記の課題に対する解決策やアイデアを実際に提案したり実装することが可能な取り組みです。そのようなことができるようになる能力としてコンピュテーショナル・シンキングやプログラミング・スキルようなものが必要なのでしょう。

たとえ一利用者だとしても,要望を伝えて共有することから物事が変わり始めると思います。

おそらくマストドンは,もう数年したときには,より成熟したソーシャルネットワークプラットフォームとしての姿を見せるのではないかと思います。あるいはそう時間はかからないかも知れません。

ただし,いまはまだ進化の途上といったところです。 

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