平成28年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果

2018年2月20日に政府統計ポータルサイトe-Statで文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査(平成28年度)」結果の確定値が公開されました。日本の教育情報化の実態を全国的に悉皆で調べている唯一の調査です。

今回の調査結果の発表は例年に比べるとかなり遅かった上に,コンピュータ周辺機器として台数公表されてきた「プリンタ」「スキャナ」「デジタルビデオカメラ」「デジタルカメラ」の項目が削除されました。(逆に平成26年度からは校務支援システムの調査項目が加えられるなど,情勢に応じて項目は見直しが行われています。)

「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」は,質問票の公表はされず,集計前の回答データも公開されていないため,今回の項目削除が調査しなくなったのか,集計結果を公開しなくなっただけなのかは不明です。

こうした変更で困るのは,「経年比較」をする場合です。

りん研究室では,公開されてきた調査結果の一部を,年度順に配置し直した「経年データ」を作成しています。これによって年を経る毎の変化を見ることができるのです。

学校における教育の情報化の実態等に関する調査の経年データ(Googleスプレッドシート)
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1t-PAZ5Ijit2bSzaxbkQcnJ2xPryKsr9gjSZT9wlF9UU/edit#gid=1533587962

経年データを使うと,たとえば,どの周辺機器がどんな変化をしているのか見ることができます。

このグラフからわかることは,

・どの周辺機器台数も普通教室の数を超えていない。
・「実物投影機」と「電子黒板」がスクールニューディールをきっかけに伸びてきた。
・「プリンタ」は減少。

などです。一部の周辺機器の項目が削除されたため,今後はこのグラフを伸ばして比較することができなくなったことは大きな問題です。

また,公立学校のWindowsバージョンの変化もある程度わかります。

この時点では,まだWindows7がかなりの割合を占めていることが分かります。

これらは全国の小中高等学校の数値をまとめてしまったものですが,実際には,学校種や都道府県毎の経年変化に分けて分析することが重要です。その上で,それぞれの地方自治体で導入ペースや今後の計画を設計していくのに役立てるべきです。

もう一つ考えなければならないことは,調査項目そのものがかなり前時代的な内容であるということです。

学校に導入されているものが,実際そのようなものであるという現実もあるし,一方で,ChromebookやRaspberryPi,micro:bit等,昨今急速に注目を集めて学校に導入されようとしているものを掌握できないという課題もあり,これからの時代に学校が導入すべきものが何かという議論と,調査内容を大掛かりに見直す必要が出てきているといえます。

導入すべきものの議論は,すでに「学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議」が議論を行ってきており,近く「教育ICT環境整備指針」というものが示されることになっています。

さらに調査内容の見直しも,これまで使われてきた「教員のICT活用指導力の基準(チェックリスト)」を大幅に改訂する必要性が議論されており,関係者によって作業が行われていると言われています。それをきっかけに他の項目も見直されるべきと思いますが,逆に経年比較ができるように配慮することも必要なので,項目の継続も大事なことになります。

どれも公表という形で蓋を開けてもらわなければ,私たちには伺い知れない議論や見直し作業なので,座して待つしかありません。私たちにできることは公表されたデータをもとに,いろんな語りを交わらせることだと思います。

平成28年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果” への1件のフィードバック

コメントは受け付けていません。