20181119_Mon

気になる本『敵とのコラボレーション』(英治出版)を読んだ。

日頃,外部の人とやりとりする機会が少なく,議論する相手も身近にはいないので,独り思索を巡らすことで考えを深めることがほとんどである。本来であれば,他者とのやりとりで議論を膨らまし,認識を深めるのが理想的なのだが,相手がいない以上,文献資料を土台として,テーマを多角的に検討するしかない。

独りで議論を展開する場合,批判対象(仮想敵)を設定した方が思索を活性化しやすい。

他者の主張に同調してみるだけでなく,主張を批判的に捉え直すことで,見えなかったものが見えてくるかも知れない。そうやって考えを深めたりするのだが,これをやり過ぎるとこの本で言うところの「敵化」(enemyfying)をする心的傾向が強くなってしまう。敵化症候群だ。

筆者の言うことには,従来型コラボレーションでは窮屈であり,敵化症候群を生じさせやすい。そこで本書が提示するのが「ストレッチ・コラボレーション」である。「対立とつながりを受容すること」「進むべき道を実験すること」「ゲームに足を踏み入れること」の三つのストレッチを含んだものとされる。

決して目から鱗の方法というわけではなく,全てをコントロールしようと思わず,名前の通り柔軟に押し引きを当事者として継続しましょうという提案である。付かず離れずの距離感を構築・維持できれば光明がさすと言った感じだ。

やはり当事者の立ち位置にどうやって至るのかという問題は残る。その辺が読後感として物足りなかった。