少しの後悔

教育の情報化に関する手引』の追補版が公開されました。

もともとは令和元年12月のものですが,その後の動向の反映や図版の追加などがあったようです。

手引自体は昨今の教育の情報化に関わる情報がてんこ盛りですので,この分野に関して知りたいことがあった時にはまず参照すべき資料でしょう。

ところで,この手引きの第4章には次のような図版が掲載されています。

いろんなバージョンがあり,今回掲載されているものもイラストをいくらかアップデートしたものになっています。

もともとは平成26年の「学びのイノベーション事業」の実証研究報告書において公表された「学習場面に応じたICT活用事例」でした。

実は私も,ご縁をいただき,この学習場面10類型の作成に関わりました。

この類型やイラストができ上がる過程で,なんとか類型とパターンのようなものを示して理解しやすいようにしたいよねという議論を展開していた一人ということになります。

私が参加した小中学校ワーキンググループ 指導方法等の検討チームでは,総務省のフューチャースクール推進事業と文部科学省の学びのイノベーション事業の成果を普及させるため,実証実験校での実践を分析・検討しました。

毎回の会議,私は徳島から夜行バスに乗って東京に出かけ,到着した足で朝入浴できる施設に向かい,そこでリフレッシュしながら,実践記録とにらめっこをして分析をしていた記憶があります。

私なりの作業を提出するものの,実際には,文部科学省の職員の方が実質的に作業したものが会議で検討され,少しずつ成果をかたちにします。

そして,報告書の原稿作成も,事務局が作業した叩き台を,私たちがチェックし修正しながら作業を進めていきます。

私は,書き出しする際の作文は苦手ですが,校正作業にはうるさいタイプの人間で,そのときも報告書の原稿は,かなり手を加えた結果のものを返しました。

けれども,その結果はほとんど採用されませんでした。

どんなに一生懸命に朱入れ作業しても,次見る時にはすべて元に戻されたり,提案が却下されていたり,なかなか提案は反映されません。

もちろん,そう簡単に一委員の提案や願望が通るわけありませんので,提案却下自体は問題ないし,それが残念なわけでも,それで凹むわけではありません。

それよりは,私が徳島に帰った後,東京という向こう側に残っている関係者で議論したり検討した結果が,特に相談も確認もないまま,反映されてしまっていることが繰り返されて,次第に「ああ,なんだ私いらないじゃん」という無力感が募ることが辛かった。

最終的に,上の図版ができ上がった時,私は特に厳しくチェックすることもなく異論らしいことは言いませんでした。何かを言う気持ちが少し失せていたのかも知れません。

いま思えば,提案が通らないのは,単にそのときの私の提案に価値がなかっただけであり,実力がないことを周りが配慮して言わないでくれてただけのことでしたが,文部科学省での初めての仕事だったこともあり,気持ちが空回りしていたのだろうと思います。

いまも空回りしかしないですが。

この後,学習場面の10類型は,5〜6年経過した今も取り上げられます。

現場の先生方の中にも,この図版を引用したり参照してくれる人がいて,分かりやすいと評してくれる方々も多いです。

もちろん一方で,分かりやすさを優先したためかなり大ざっぱなところや,技術の普及が進んだ今日から活用場面を再吟味すると,見直すべきポイントはかなりたくさんあります。

それでも,「一斉学習」「個別学習」「協働学習」という典型的な分類のもとに学習場面の10類型を示すという理解しやすさは,理解の入口としては大変有効だと思います。

私が,この10類型について唯一後悔していることは,「協働学習」の学習場面の順番をちゃんと吟味しなかったことです。

皆さんもご覧になると分かるように協働学習は…

C1 発表や話合い
C2 協働での意見整理
C3 協働制作
C4 学校の壁を越えた学習

という順番です。

ちなみに,今回の新型コロナウイルスに関わる事態で,オンラインやテレカンファレンス,リモートカンファレンスが普及し,「C4 学校の壁を越えた学習」についてかなり具体的なイメージをみんなが持てるようになったことはよいことだなと思います。

そのC4が最後なのはよいのですが,問題はC1〜C3の順番です。

私はこれを

C2 協働での意見整理
C3 協働制作
C1 発表や話合い
C4 学校の壁を越えた学習

という順にすべきだったと後悔しています。

これは「個別学習」のB1〜B5の並びとの整合性を考えても,その方がよかったと思っていて,この10類型を授業などで説明する際,いつも流れの悪さを感じてしまうのです。

最初のうちは,そのうち新しいものを誰かが作るから,それに取って代わられればいいか,と思って諦めていましたが,なんだかんだでもう5年。

ようやく最近,学習場面の10類型が授業場面のみに特化して作られたものであり,日常的にICTを利用する現代では十分ではないことを指摘した国際大学GLOCOMの豊福晋平先生が「ICT利活用の用途」という1人1台の日常利用前提とした配列を提案しています。

私も,一刻も早くそちらに乗り換えてもらった方がよいと思います。

あのとき,最後までちゃんと意見を述べる気持ちでいたら,こういう違和感を5年も抱えずに済んだかも知れないと思うと,少し後悔をしていますが,まぁたぶん,私が提案したところで変わらなかっただろうなぁとも思います。

というか,まだしばらく違和感は続くようです…。