Osmo 遊びベースのデジタル学習キット

Tangible Play社の「Osmo」(オズモ)は紹介するのが若干難しい商品です。

彼らの日本語サイトは「受賞歴のあるiPad用の教育ゲームシステム」としていて,それはそれで的確ではあるのですが,Osmoの特徴がiPad用であるかのような印象になります。実際にはFire Tablet用もあります。

検索の仕方を変えると「遊びベースの学習」というタイトルをつけた販売ページが出てきます。こちらの方がいくらかOsmoの特徴を表わしている気がします。それから,PR TIMESなどのプレスリリースサイトで紹介されるときには「デジタル学習キット」と書かれたりします。こちらも製品を表現できていると思います。

そんなわけで,組み合わせて「遊びベースのデジタル学習キット」としてみました。

それから,「Osmo」というブランド名をつける他のジャンルの製品も多く,検索しても辿り着き難い問題が残ります。どうしてもアクションカメラとか,スタンプとか,他のものが混ざってしまうのです。

それでも,日本ではトイザらスで販売されているようですし,物理的な玩具教材との組合せという特徴は魅力的なので,もう少し話題にされてよい商品だと思います。

あらためて,Osmoというのは,iPadのカメラを上手に工夫した仕組みを共通の土台とする,様々な玩具やアプリ教材の集まりです。

Osmoサイトより

タブレットを立てる「ベース」(台座)と前面カメラにかぶせる「ミラーヘッド」(反射鏡)の基本セットがあって,これの上に,いくつものゲームや教材が展開しているという製品群となっています。

そのため,販売されているものは,あらかじめ基本的なものを組み合わせたセット商品とか,追加的に購入する個別のゲームや教材といった形であったりします。

どのようなものがあるかは本家サイトをご覧いただきたいのですが,英語圏に関していえば,この仕組みを使った様々なコラボレーション商品が出ていたりします。


少し昔話。

Osmoが登場したのは2014年頃。最初はクラウドファンディング形式の予約販売でスタートしました。

「タングラム」と「ワード」という玩具+アプリ教材と,「ニュートン」というアプリのみの教材という構成で登場し,早期予約者は49ドル(50%OFF)で購入できました。

私は,そこで1セット予約購入し,実際に届いたものを試してみたのです。

当時,2013年ごろにはベネッセコーポレーションもiPadと物理的な玩具を組み合わせた幼児向け教材である「Tangiblock」を登場させていました。

単にタブレット画面とのやりとりで終わるのではなく、画面の外側に実在するものを組み合わせて活動を展開するような発想が注目されていた時期でもありました。「タンジブル」という言葉は「実体があるもの」とか「手触りがある」ということを指す言葉ですが,そういう手に触ることができるものを介してコンピュータと関係するという考え方に関心が集まっていたわけです。

そういうこともあって,Osmo1セット予約購入して好感触を得たことから,その後,追加で3セットほど注文して,機会あるごとに周りに触ってもらうようになってました。

時間の経過とともにiPadのモデルチェンジが進んでいくと,最初に購入したセットのベース(台座)で対応できなくなっていきます。

ベースの初期デザインは,対応するiPadの大きさや厚みにフィットするよう寸法決め打ちでつくられていたため,モデルチェンジによるサイズや厚みの変更に対応できなかったのです。

しばらくなら古いモデルを使い続けることで対処できても,いずれは旧いiPadのサポートが切れたりするため,新しいモデルに対応できないOsmoを披露する機会はどんどん少なくなっていったのでした。OsmoをつくっているTangible Play社も解決策を模索していたとは思うのですが,なかなか新しいベースは登場しませんでした。

かなり時間が経過してから,ようやく幅広いモデルのiPadに対応できるベースとミラーヘッドが登場します。

しかし,そのときにはOsmo登場当初とは製品バリエーションも変わっており,もしも新しいベースやミラーヘッドが欲しければ,新たにセットを購入し直さなければならない状態。すでに基本的なセットを持っている初期ユーザーにとっては,重複購入になってしまうことになり,そのため,しばらく放置状態が続きました。

さらに時間が経過して,ようやく新しいミラーヘッドが単体販売され,その次にようやく新しいベースも単体販売されるようになったのでした。

ところが,日本の場合,Osmo日本正式販売の開始が新しいベースを含んだセット商品登場以降であったため,新しいベースだけの単体販売の必要性が薄いと判断されて,国内で正規購入できるのはミラーヘッドだけ(いま現在,品切れ)。私のような個人輸入の初期ユーザーは,新しいベースも米国Amazonなどから個人輸入する必要があるのです。(日本のAmazonでもベースのみを購入できますが,法外な郵送料を設定されているので,場合によって直接米国Amazonで購入する方がよかったりします。)

左:初期モデル/右:新モデル

しばらく放置していましたが,久し振りに催事で展示する必要が出てきたので,この機会に米国Amazonで新しいベース新しいミラーヘッドを購入することにしました。

9/28に注文して10/6に届きました。発注時は10/18到着予定でしたが、結果的には2週間もあれば届くようです。追加料金を払って,もう少し速く配達してもらうこともできます。

上の写真をご覧いただければ分かるように,旧モデルが横幅を決め打ちして設計し,結果的に当時存在していたiPadのモデルだけ対応するものになっていたのに対し、新モデルは横幅はフリーになっています。おかげで12.9インチのProモデルも世代に関係なく立て掛けられます。さらにminiモデルにも使えます。

ミラーヘッドも再設計されていますが,実はミラーヘッドの方は3世代存在していて,初期モデル,それを新ベース用に合うよう再設計した第2世代,そして狭ベゼルiPadに対応するため再々設計された第3世代に分かれています。

もし狭ベゼルのiPadをお持ちでないなら新しいベースだけを買えばよいのですが,狭ベゼルiPadで使いたいとなると新しいベースだけでなく,新しいミラーヘッドも別途購入しなければなりません。

そもそも新しいミラーヘッドをバンドルしてくれればいいのに,現時点では別売りです(ずるいですね)。

とにかく,揃ってしまえば,ようやくOsmoがもっている魅力を発揮してくれることになります。

2019年にTangible Play社はインドのEdTech企業Byju’sに買収されグループ企業となりました。

スタートアップ企業が大きな企業に買収されることで更なる拡大を目指すのは珍しいことではありません。今後もいろんな教材が登場してOsmoのバリエーションが増えていくのだろうと思います。