古本コネクション

事情あって徳島と愛知を行ったり来たりしている。

仕事はノートパソコンとタブレットがあればできるといえばできるが、先達達のように移動中に原稿を書くなんて芸当はできないし、そもそも文献資料を山積みにして執筆するスタイルなので、場所を行ったり来たりする状況で原稿を書くのは難儀する。

一、二冊の文献資料を携えて移動するのは当たり前で、四、五冊もざらである。

最近はなるべく電子書籍版を購入するようにしているが、積み上げられないし、取っ換え引っ換えも難しいので、重要なものは印刷書籍の購入も必要になる。

今回は執筆していたテーマの文献をダンボールでまとめて行き先に送って執筆をしていた。

そうやって書いたものが、そうせずに書いたものと大差がないという現実はあるかも知れない。どうせ書いても忘れられるような原稿なのだとしたら、どうして骨折り損な条件で書かれなければならないのか。功利的に考えたら反論が難しい。生成AIで壁打ちがイイネと勢いよく言われると気が滅入る私は全く持って守旧派なんだろう。

蔵書整理は目下頭痛のタネだが、裏腹に蔵書増強も進行中である。

教育と情報の歴史を追いかけるというのがライフワークなので、この分野の蔵書としてはかなりの量が揃っていると思う。研究室はちょっとした図書館か古書店のようだ。

収集活動の実際は多様で、文献リストを辿る方法で入手していく方法もあれば、偶然の出会いで手に入れるものもある。その分野の定番と言われるものを押さえにいくこともする。

たとえば『改訂新版 コンピュータの名著・古典 100冊』はコンピュータ分野の古き定番を知るのに便利だ。

2003年に刊行され、2006年に改訂された文献ガイドなので、これ自体が20年も前の代物。紹介されている名著・古典は、当時ですでに在庫なしや絶版ものがあったほど。この20年間に改訂したものもあれば、さらに多くが在庫なしか絶版した。出版社が消えたものもある。20年間で他に読むべきものも出てきた。

あらためてリストにして現況を調べてみると、100数冊の中で39冊が何かしらの形で現行商品として入手できるという状況だった。その他は古本としてAmazonから入手することが可能だ。ただし、ものによっては高額なので覚悟が必要だ。自分が関与しそうにない技術分野や言語の本なら、よほどの理由がない限り入手する必要もないだろう。

とにかく分野の古典を揃えようと古書の入手に取りかかるとしても、単純にAmazonのマーケットプレイス出店者から購入すればいいというわけでもない。

古本は、出店者ごとに価格が異なっていることがあるし、それはご存知「コンディション」(商品状態)と密接な関連がある。

購入側としてはなるべく状態の良い商品を入手したいというのが本音である。だからといってコンディション表示が「非常に良い」ものは価格が吊り上がっている場合もあり、簡単には手出しができない。

コンディション表示が「良い」ものあたりの価格が妥当であれば、そのあたりを中心に、出店者が複数ならどれを選ぶか悩むことになる。記述によってはコンディション表示「可」のものの方が選択肢になることもある。

しかし、古本入手を試みた経験がある人なら、Amazonでの古本購入は次善策にしている人も多いだろう。

今日、古本入手の主戦場はメルカリである。

個人が所蔵されていて、何かの理由で手放さざるを得なくなった文献が出品されることがある。出品者によっては、売値がリーズナブルなことも多い。また個人所蔵された書籍は保存状態が驚くほど良いこともある。

希望する文献がいつでも出品されているわけではないし、タイミングが悪いと数日前に売れたばかりだったとか、買おうと思っていて気づいたら売れてしまっていたなど、特有な状況になれる必要もあるが、使いこなせれば有力な古本入手手段となり得る。

万人の近所に必ずあるわけではないのが、昔ながらの古書店やブックオフなどを渉猟して入手するのも大事な手段だと思う。

ただ、Amazonやメルカリといったネット系古物商が多勢を占めるようになり、店舗系古物商に品物が出回らなくなっているかもしれない。特に専門書のようなものならメルカリで直接売買した方が利益も出やすいとなれば、店舗の品揃えにも影響は出そうだ。

原稿執筆も一段落ついたので、もうちょっと気楽にじっくりと読書したい。