20181120_Tue

授業と会議。

卒業研究には,「教育玩具」をテーマとしたWebサイトを構築するというものもある。サイト自体はこれから構築作業をするのだが,事前調査は進めてきており,その歴史的な流れについて調べてもらっているところである。

教育玩具の近代』(世織書房)は,教育玩具に関する数少ない文献の中の貴重な一冊だが,日本において「教育玩具」がどのように生まれ受容されてきたかをまとめている。そこには明治期における内外の博覧会への出品に関わって展開する,幼児教育にとって意義ある玩具を具現化しようとした試みと失敗,ビジネスチャンスを生み出した商才とそこへの便乗,そして教育関係者による玩具の改善といった歴史がある。

そのような歴史の中の,教育博物館(現在の国立科学博物館)の存在や,百貨店の三越による児童博覧会や児童用品研究会の設置は興味深い。(時間差を伴いながらも)産官学の連携が教育玩具の世界でも成立していたということだろうか。

個人的には高島平三郎が作成した「年齢別の発達段階に適応した玩具分類表」や関寛之が作成した「玩具の科学的な分類表」を機会があれば探して見てみたいなと思う。

この本の後半は幼稚園教育と教育玩具としての積木を軸に論じられていて,これはこれで担当している授業にも関わるので興味深い。フレーベルの「恩物」が外来玩具として持ち込まれ,日本の幼稚園教育の形成とともにどう受け止められたのか。またじっくり読んでみたい。

20181116_Fri

来客対応と授業と対策講座。

午前は来客対応。学生指導の難しさを痛感しながら。

午後は研究室で,卒業研究指導と金曜日なので専門ゼミナールを。やはり学生指導の難しさを痛感しながら。

専門ゼミで文献講読。

しかし,発表担当だった学生が準備不足を理由に発表できないと直前に連絡。

2週間以上前から予定は共有していたので,発表当日までの期間には十分余裕があったはずだった。とはいえ,発表準備する余裕がなかったのだと言われれば,何かしらの理由でそういう事態も起こりえるかも知れない。百歩譲って「代わりに何をするのか考えておいてください」と返した。

いざゼミが始まり,本日の発表担当学生に進行を振った。

学生は,とある動画をみんなで観て話し合いたいと切り出した。何かしら日頃の問題意識をもとに議論したいらしい。まずは動画を観てみることになった。

男性が独り語りする30〜40分くらいの動画だった。語りのテンションが高く,観るだけで疲れた。

しばらく発表担当学生の問いに寄り添いながらゼミ生同士で意見を披露し合った。それが一巡した後,他の人の意見を受けて質問者本人がどう思ったのかを聞いてみても,あまりはっきりとした受け答えになっていなかった。動画の独り語りに感化されたような意見は述べるのだけれども,異なる意見が対峙するとすぐに立ち止まってしまった。

「動画を観た感想が聞きたい」となった。最初の質問なら発せられても違和感はないが,困った末に逃げ込んだ質問がこれではいただけない。

結局,本来やるべき発表準備をしなかったことで,それを無理やり埋め合わせようとしても無理が生ずるし,全体の進度が遅れて他人に迷惑をかけることになるのだ。もちろん,埋め合わせが上手くいくこともあるだろうから,そうなれば怪我の功名として喜んでも良かったとは思う。でも今回は駄目だった。

発表準備をしなかったことを叱った。あとは,本人がやるかやらないかを選び直すだけ。

・正しいことが出来るように気づき考えて欲しい

・人に寄り添って欲しい

・異なること,特に反対のことについても考えて欲しい

この場合,自分が正しいと思うことをやっていたとしても,人に寄り添えていなかったし,自分とは異なる考えについて気を配ることが出来ていなかった。

今回上手くいかなかったとしても,次回上手くいくように立て直せばいいと思う。

20181110_Sat

ゼミ旅行の日だった。

そもそもゼミ生の1人が,東京のダンススタジオが主催するステージに立つことになり,その活躍を応援しに東京へ行くことをゼミ旅行として計画した。徳島から東京へ行くのは難しいことではないとしても,単に観光しにいくというのではゼミ旅行として理由が弱いので,今回はよいチャンスだった。

だったのだが,残念ながら都合がつかなくなってしまったゼミ生もいたため,今回は全員で旅行することはできなかった。というわけで「半ゼミ旅行」。

私は事前に東京入りしていたが,学生は夜行バスで当日朝に着く。

ホテルで身支度して連絡を待っていたら,なにやら新宿の人の多さと場所のわからなさに困って,カラオケに非難したとメッセージがきた。

とりあえず新宿に向い,カラオケ店から出てくる時間までApple新宿で新しいiPad Proなどをレビューしていた。

その後,迎えに行って,新宿駅周辺を観光。ランチを食べてから,新宿駅をぐるっと一周するように街を歩いた。せっかくなので東京都庁へ。展望室からの眺めを堪能してもらい,そこから新国立劇場へ。

ゼミ生が参加しているステージは新国立劇場・中劇場で上演される。

その分野は詳しくないが,ステージを主催する名倉ジャズダンススタジオの代表・名倉加代子さんは長いキャリアをお持ちの凄い方らしい。そして,今回は,歌手の森公美子さんと,元宝塚の湖月わたるさんといったスターがゲスト参加している。私は正直,森さんしか分からないのであるが,劇場の他のお客さんたちの雰囲気を感じ取るに,錚錚たる出演者たちなのだということは理解できた。

ダンスを踊るゼミ生は,自分が好きでやっていたこととはいえ,週末や休日を中心に東京へ通いつつも,ときに授業を欠席しなければならないことがあったりして,もしかしたらちょっとだけ後ろめたさも感じていたのではないか。

私たちにしても,その学生が時々いなくなりながら頑張っている事柄を直接は知らないまま,なんとなく様子を見守っているのは,少し中途半端な気もしていた。

だから,ゼミ仲間でその活躍を直接見に行くことは大事なことと思った。

ステージは圧巻だった。

用意してくれた座席はど真ん中の特等席で,森公美子さんを真正面にしながらその歌声を聴くことになった。さらに,ゼミ生がその肩越しにダイナミックに踊っている様子が観えた。素晴らしいショウだった。

終演後,ロビーでゼミ生と会って言葉を交わす。良かったと思う。

半ゼミ旅行は,その後,東京タワーと東京駅を駆け足でめぐり,最後は徳島へ戻る夜行バスに乗るため新宿バスタへ。たった一日だけだったけれども,なかなか楽しい旅行となった。

『作ることで学ぶ』をゼミ講読

後期が始まってしばらくはドタバタとした日々だったため,こちらに落ち着いて文章を書く余裕がありませんでした。りん研究室もいよいよ始まった専門ゼミナールや歴史研究のための資料集めが活発化しています。

専門ゼミナール(りんゼミ)では,文献講読を中心に卒業研究の取り組みにつながる活動をしていますが,今年の文献は『作ることで学ぶ ――Makerを育てる新しい教育のメソッド』(オライリー・ジャパン)にしました。

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この本は全14章で構成されていますが,1章から5章が理論編で,6章以降に実践解説編が展開しているという感じに分けることができます。ゼミメンバーは私を入れて5人なので,1章を私が担当して,残りをゼミ生に担当してもらいながら一緒に読んでいくことになっています。

1章 かけ足で巡るメイキングの歴史
2章 メイキングが導く学習
3章 考えることについて考える
4章 よいプロジェクトの秘訣とは?
5章 教えること

1章は歴史を扱った章なので,私の経験も踏まえながらとても駆け足に流れを紹介しました。

ゼミ生は児童学科所属で,小学校の教員志望だけでなく保育士・幼稚園教諭志望の学生たちとともに学んでいるという環境でもあるため,進歩主義教育の風景的なイメージは理解しやすい立場ですし,メイキング(ものづくり)についても比較的身近に感じている方だと思います。1章に出てくる「レッジョ・エミリア・アプローチ」なんかも『驚くべき学びの世界』の展示会カタログ本の写真なんかを眺めると,その世界観について驚くとともに,それでも子どもたちが生き生きとしている様子には好感を持つというか,納得できる学生たちです。

さあ,しかし,こうした実践を言葉として理屈づけるという行為となるとそう簡単ではありません。もちろんそれを一緒に経験して学んでいくのが専門ゼミナールの活動であり,卒業研究への助走でもあります。

2章から学生たちが担当の購読が始まりました。

『作ることで学ぶ』は難解な文章で書かれたものではないので,丁寧に読めば書かれていることは理解できるはずですが,使われている言葉(たとえば2章はいきなり「構成主義」と「構築主義」が現れます)に面食らうこともあるでしょう。また,英語からの翻訳書であることから,段落構成が結論的文章プラス具体的文章の順番になっているため,読み慣れないと結論的文章で足止めを食らって,具体的文章のところの解説で理解できるはずのものが読み取れないままということもあります。

学生たちの本を読む力は,人によって様々。これくらい難なく読みこなす学生もいれば,本を読み慣れていない学生は知らない言葉で悩んでしまうこともあります。一緒に読むことが目的なので,困った場面が来たら助け合って読み進められればよいなと考えています。幸い,ゼミ生達はうまく助け合ってくれています。

「メイキング」だけならともかく,加えて「ティンカリング」とか「エンジニアリング」とかとの違いを意識しなさいとなると,それだけでも十分金縛りにあったまま読み進めることになり,文献講読は予想以上に時間がかかりそうです。せっかくなので,14章分を読むということはこだわらず,最初の5章分をじっくり理解することに重きを置くことにしようと思います。

今後の学校教育が,知識伝達に限らない知識構築や知識創造にも拡張していくというならば,その基本的な理論について学ぶ機会が必要です。理論書は他にもたくさんありますが,いまはこの本を読むのが一番よいタイミングではないかなと思います。

また,幸いなことにMITメディアラボがオンライン講座「Learning Creative Learning」を開講中です。短い動画をときどき視聴することも文献講読に役立ちそうです。レズニック先生の新著「Lifelong Kindergarten」からの抜粋を日本語で最速に読めるチャンスでもありますね。

2017年度専門ゼミナール

昨年度2人の卒業生を送り出した当研究室に,今年度は4人の3年生が所属してくれています。

専門ゼミナール自体の授業枠が確保されているのは後期からですが,いまは互いの授業空き時間が合うときに集まっている感じです。少しずつ卒業研究に向けて何をやりたいか考えてもらっています。

後期は『作ることで学ぶ』を講読しようと考えています。

ボランティアや実習といった活動に重きを置きがちな昨今のため,文献を読む行為自体を持ち込むことが時間的にも学生のモチベーション的にも難しくなっています。その中で押し付けてでも読んでもらうことに躊躇いのない文献があるとしたら何か。

いろいろ考えて『作ることで学ぶ』が一番バランスが良いかなと考えました。これからの時代の古典になる本といってもよいと思います。

資格取得を目標にしている学生たちばかりということもありますが,学生たちは授業が5時間目まであって,大学が終れば部活やサークル,アルバイトに出向くといった様子で,行動スケジュールがタイト。4人のゼミ生が集合する時間を調整するのも苦労します。

誰かが誰かを取っ換え引っ換えしながら断続的に捉え続けて,身動きできなくなっているような気がするのは,私がのろまな社会人だからでしょうか。もっといい意味で放ったらかしておいた方が良いように思うのですが,私たちの一挙手一投足をデータに変えて仕事やビジネスの材料にする世の中では,お許しが出ないようです。

ルーチンに搦め捕られている学生たちの知的好奇心を発掘する作業は年々難しくなっているのですが,そういうこちらも年々身動きが取れなくなる中で,どうすれば面白いことができるのか模索する日々です。