5年目のマストドン

2016年にリリースされ、2017年には世界中を巻き込んだ盛り上がりを見せていた分散型ソーシャルネットワーキングシステム「Mastodon」(マストドン)。

一時はTwitterを代替するか?!とまで言われましたが,2018年以降は表舞台からフェードアウトして,ニッチな界隈で生き残っている感じでした。マストドンのシステム自体は,いまも着実にバージョンアップを繰り返しています。

2017年4月に日本初の教育系マストドン・インスタンスとして開設された「elict-mastodon」(エリクト・マストドン)は,開設以来ずっと運営を継続してきました。

もっとも利用者が減り,システムの管理も停滞し,マストドンのバージョンも2.7.4でストップ。そのため,周りのインスタンスが3.0などにアップデートする中で,こちらとのフェデレーション(連合)機能も動かなくなっていました。

旧システム(2.7.2)

このブログでも当時のシステム構築について記していますが,マストドン推奨のサーバーOSではないCentOSで運用しようとしていたことも,アップデートが困難だった理由です。

いつかはサーバーそのものを引っ越しし,推奨サーバーOSのUbuntu上で再構築したいと考えて,早5年。

まさかTwitterがイーロン・マスク氏に買収され,Twitterというプラットフォームが揺るがされる日が来るとは思っていませんでした。再び,その代替システムであるMastodonが話題に。

すでに最新バージョンは4.0.2になっています。お引っ越し先のサービスとしてXserver VPSがよさそうだということも見えてきたところだったので,この機会にエイやと再構築することにしました。

というわけで,新生「elict-mastodon」を立ち上げました。

新システム(4.0.2)

すでに時代はGIGAスクール構想で小中学校や都道府県によっては高等学校にも学習者用情報端末が整備された世となりました。大学入試の世界でも情報科目の扱いを本格議論するようになってきています。

そうした話題をメインに扱う情報交換の場があってもよいはずですので,elict-mastodonをいま一度しっかり構築して,引き続き継続できるように整えた次第です。

もちろんTwitterは,運営会社のゴタゴタはあれど,コミュニケーション・プラットフォームとして今後も存続していくでしょうし,マストドンへの関心もまた時間とともに薄れるのだとは思います。それでも,何かあるときの緊急避難場所や選択肢の確保は決して無意味なことではないと考えています。

elict-mastodonは教育学習とICT活用に関心のある皆様の登録をオープンに受付けています。

教育関係者のみならず,お子様が学校に通っているご家族,学校ICT関係の企業に関わられている皆さん,教育と情報に関係することに関心があれば,どなたにも参加資格はあります。

情報交換の場を守るために,ご配慮・ご遠慮いただくこともあるとは思いますが,ゆるやかにコミュニケーションを展開できればと思います。どうぞお気軽にご参加ください。

マストドン v2.0.0アップデート(CentOSにて)

Twitterをモチーフにした分散型ソーシャルネットワーキングシステム「マストドン」(Mastodon)が2017年4月頃から日本でも話題になり,いくつものインスタンス(分散したサーバー)が運営を続けています。

独自にインスタンス(サーバー)を立てて運用するため,どちらかというと限定されたコミュニティ内で使うのに適しています。そのためTwitterを置き換えるというものではありませんが,決してコミュニティ内で閉じるのではなく,外部とも連携できるしくみが備わっているのがマストドンの興味深いところです。

教育学習とICT関係に関心のある皆さんに向けたマストドンとして「elict インスタンス」というものを立ち上げて運用しています。教育学習やICTのことを話題にするというだけでなく,その界隈の人々がマストドンを試す場所を提供するのも目的です。

Mastodon manager

それから,CentOS 7上で最新のマストドンシステムを構築して運用する実験をすることも目的としています。とはいえ,マストドンシステムのアップデートは一筋縄ではいかない難しさがあります。そもそもマストドン本家は同じLinuxでもUbuntuを推奨していて,CentOSでの運用は詳しく説明してくれていません。

先日(10/19),マストドンが v2.0.0へとメジャーバージョンアップしましたが,このアップデート作業もすんなりとはいきませんでした。

10月22日にv.2.0.0へのアップデートを試みたところ,エラーメッセージとともに作業は足止めされ,サイトはダウン状態となりました。それから暇を見つけては対処法を探り続けましたが,闇雲に作業すれば泥沼行き。かといって始めからやり直してみようと試みても,なぜか同じエラーの結果になるという幽閉状態。

参考情報を探そうとしても,同じ条件で構築している人は少ないし,ほとんどの人々がv2.0.0アップデートの難関さを前に躊躇っている状態か,難なくクリアしたかで,手がかりは極めて少なかったのです。英語のぶっきらぼうなエラーメッセージだけでは,何をどうしたらよいのか,万策尽きた感じさえしました。

しかし,端末から発せられるメッセージはエラーメッセージばかりではないのですね。それを丁寧に追っかけると,そもそも最初に出ていたエラーさえ適切に対応すれば良かったことがわかりました。

本当なら,自分が解決した道筋を,再検証して整理しながら解説すべきなのですが,なかなかそういう余裕もないので,とにかく手がかりになりそうなコマンドをここに書き記していこうと思います。

まずマストドンの基本的なインストール方法はこちらを参照してください。

Mastodon Production Guide

CentOSの場合,「apt」よりも「yum」を使うことが多いかなと思います。たとえばrootユーザーで

yum -y install ImageMagick libxml2-devel libxslt-devel git curl file g++ protobuf-compiler protobuf-devel gcc openssl-devel libyaml-devel zlib-devel ncurses-devel libffi-devel gdbm-devel readline-devel libicu-devel libidn-devel bzip2 

という感じです。また,CentOSのdevelopバージョンは-devではなく-develと表記することが多いです。

ちなみに,上の並びはnode.jsとYarnとffmpegとpostgresqlとnginxなどは別途作業したときのコマンド並びなので,構築されるサーバ環境によって追加したり減らしたりする必要があります。

「Dependencies That Need To Be Added As A Non-Root User」項目から以下はわりとそのままだと思います。

これらでなんとか構築完了して,運用を始めましょう。もし問題が発生したら下の方に書く対処を試みます。

定型的なアップデート作業は次の通りです。普通はマストドンユーザーでログインし…

cd live
git fetch
git checkout $(git tag -l | sort -V | tail -n 1)
bundle install
yarn install
RAILS_ENV=production bundle exec rails db:migrate
RAILS_ENV=production bundle exec rails assets:precompile

そして,rootユーザーに切り替えてから

systemctl restart mastodon-*.service

としてマストドンを再起動するとアップデートが反映されます。

アップデート作業などで問題が発生した場合に試みたこと。

export PKG_CONFIG_PATH=/usr/lib64/pkgconfig

bundle installでエラーが出た場合,パスが通ってなかった可能性があります。上はその一つ。

cd /home/mastodon/.rbenv/plugins/ruby-build && git pull && cd -
rbenv install 2.4.2
rbenv rehash
rbenv global 2.4.2
rbenv global

Ruby環境を最新にしないといけないアップデートもありました。上はマストドンユーザーでログインして2.4.2にするときのもの。ディレクトリ構成は自分の環境に合わせてください。

wget https://dl.yarnpkg.com/rpm/yarn.repo -O /etc/yum.repos.d/yarn.repo
yum install yarn

Yarnを最新にする必要があるときもありました。上はrootユーザーで入力したもの。

git checkout v1.6.1

gitから取ってくるmastodonバージョンを指定したいときに。マストドンユーザーで,liveディレクトリに移行後。ただし元に戻りたくても戻れないときもあります。

git reset --hard origin/master

ローカルをいじり過ぎておかしくなった場合,ローカルを上書きしてリモートに合わせてしまいたいときに使います。いわゆるリセット。

rm .bundle/config

オプションなしで「build install」すると以前の設定が引き継がれて処理されます。その履歴を消したいとき。

gem install lograge
bundle install --with production

v2.0.0アップデートで一番泣かされたのが「lograge」Gemファイル未インストール問題。インストールしたいと思って「gem install lograge」してみても一向に問題が解消されないとき,「bundle install –with production」と明示的に指定したら問題が解決しました。いやはや,回り道をしました。

この他に効果があったかどうかは分からないけれども試してはつまずくのを繰り返したコマンドは以下の通り。

gem cleanup
gem install bundler
gem install rails --no-document
gem update --no-document
bundle update
yarn cache clean

この他にもhttps通信を行なうための証明書取得など必要な手続きはありますが,それはまた別の機会に。

 

マストドンの投稿公開範囲を調べる -2

インスタンスを立ち上げたこともあって,先月からマストドンに触れ続けています。投稿公開範囲について調べた結果を見やすい図にしてみましたので掲載します。

ダウンロード

[PDF] http://www.con3.com/files/Mastodon_toot_visibility_20221202.pdf

[PNG] http://www.con3.com/files/Mastodon_toot_visibility_20221202.png

この図は「投稿者」の投稿が,公開設定によってどのタイムライン(TL)や画面に表示されるのか(到達範囲)を表した図です。

図には表しませんでしたが,投稿者のことをフォローしたユーザーが誰もいない「インスタンスC」というものがあれば,基本的に投稿が届くことはありません。とはいえ,フォローしていない相手にもメンションは送ることは可能で,その場合メンションは相手の通知と連合TLに表示されます(これを他のユーザーが見ているかどうかまでは未確認です)。

また,「返信」と「ブースト」の場合はどうなるのか。まだちゃんと確認作業をしていませんが,今のところの観察メモとして

===

【返信】
○自分のホーム
○プロフィールTL
○元トゥートの詳細内
〈メンション無し〉
×元トゥートしたユーザーの通知
〈メンション有り〉
○元トゥートしたユーザーの通知
〈自分のトゥートの場合〉
○フォロワーのホーム
○公開TL(ローカル+連合)
〈他者のトゥートの場合〉
×フォロワーのホーム
×公開TL(ローカル+連合)

【ブースト】
○自分のホーム
○プロフィールTL
○フォロワーのホーム
○元トゥートしたユーザーの通知
×公開TL(ローカル+連合)

===

と見ています。ただ,条件を整えて実験をしていないので,間違っている部分があると思います。

ところで,Pawooさんが「おすすめユーザー機能」という新機能をリリースしたとのこと(5/12)。私はPawooでアカウントを作成していないので,まだ拝見することはできていませんが,インスタンス内の出会いや交流を促す機能が付き始めたのはよい方向性だと思います。

やはりマストドンは進化段階にあるシステムです。今回紹介した投稿公開範囲・到達範囲の在り方も今後変わっていく可能性があります。

とにかく,自分自身の投稿に責任をもって制御するためにも,投稿公開範囲や到達範囲について理解することは大事かなと思います。

マストドンの投稿公開範囲を調べる

マストドンのインスタンスを開設した目的の一つは,投稿(トゥート)がどのように閲覧されるのか,投稿の到達範囲や閲覧可否の制御ができるのかどうかを確かめることでした。

すでに「Mastodonの投稿範囲「公開」「未収載」「非公開」「ダイレクト」とは」(gori.me)という記事がこの疑問に答えてくれようとしているのですが,外部向けプロフィール画面の投稿一覧(プロフィールTLと書きます)のことや,ローカルタイムラインの特性については触れていないので,まとめて整理しておきたいと思います。

まずは一覧表(ブログシステムの関係上,罫線表示がなくてすみません)。

プロフィールTL
非フォロワー
プロフィールTL
フォロワー
ホーム  ローカルTL  連合TL  フォロワー
ホーム
Public
(公開)
Unlisted
(未収載)
× ×
Followers-only
(非公開)
× × ×
非公開
アカウント
ダイレクト × ○(相手)
×(相手以外)
× × ○(相手には通知)
×(相手以外)

マストドンに登録すると,「ホーム」「通知」「ローカルTL」「連合TL」という投稿の流れを追う画面を操作していくことになります。なお,マストドンではローカルTLと連合TLのことを合わせて「公開TL」と称することがあります。投稿側からすると2つは同じ扱いです。

必要に応じて,他人のプロフィールを表示しますが,マストドン通常画面の右端列に表示されるプロフィール表示以外にも,外部向けに独立したプロフィール画面があります。どちらのプロフィールでもフォロー/フォロワー一覧や投稿一覧が表示できますが,ここでは外部向けに公開する画面の投稿一覧のことを「プロフィールTL」と名付けます。

ユーザー設定画面には,投稿の公開範囲を設定する箇所があり,デフォルト時の投稿公開範囲を決められます。選択肢には「公開」「未収載」「非公開」が用意されています。ただし,投稿を書き込む時に個別的な切り替えが可能で,その際は「ダイレクト」という項目が加わります。

プロフィール設定画面には,「非公開アカウントにする」という設定箇所があります。これを設定するとフォローは承認制になり,デフォルトの投稿公開範囲が「非公開」になります。ただし,プロフィール画面や過去の投稿は表示されたままなので,Twitterの非公開とは違うことに注意する必要があります。

ちなみにマストドンAPIでトゥートする場合,ユーザー設定(デフォルト)とは異なる公開範囲設定になる可能性があります。APIを使うサービス側の設計次第です。

まず重要なことは,マストドンは公開を基本としたオープンなシステムだということです。

他者に知られては困る情報をやりとりするための暗号化機能は備わっていませんし,インスタンス内のやりとりを非公開にする仕組みはほとんどありません。グループ内で秘匿的に使用するには,システム改変するか,存在を知られない運用の工夫が必要になります。

どれほどオープンなのでしょうか。

たとえば,インスタンス内の公開TLに投稿されたものは,インスタンス登録者以外(外部から)でもツールを利用することで閲覧が可能です。「Mastodon Timeline Peeping Tool Made by YUKIMOCHI」は,指定したインスタンスから公開TLの内容を取り出すツールの一つです。

また,プロフィール画面は外部に対して非公開にはできず,公開していた過去の投稿を遡って非公開にする機能はありません。プロフィール画面を閲覧するにはURLを指定する必要があるため,URLを知られなければよいとも言えますが,URL自体は「https://インスタンスURL/@ユーザ名」というシンプルなルールで構成されているため,推察して閲覧することは難しくありません。

一方,興味深いのは,投稿時に使う「CW」(Contents Warning)ボタンと画像に対して使う「NSFW」(Not Safe For Work)ボタンという投稿内容の目隠し機能が用意されていることです。オープンであるからこそ,配慮の必要な内容等は目隠ししておけるようにしてあるのはマストドン独特の機能です。

いずれにしても,クローズドなグループ利用(登録者以外には閲覧されたくない)というニーズにはピッタリと応えられないのがマストドンの現状です。Facebookグループのように登録者のみの閲覧で投稿を囲う使い方はできません。

オープンを前提としてグループで利用するとしても,現状のマストドンの仕様はインスタンス内の出会いや交流について十分な配慮が盛り込まれていません。

そもそも関心を一にしてインスタンスに集った登録者同士が,インスタンス内で出会うには,ローカルTLに投稿しなければなりません。マストドンには登録者一覧やリストはありません。Twitterと同じといえばそうですが,インスタンスという単位に集ったのに,誰が登録しているのか一覧で知れないのは少々不便も感じます。

ローカルTLがそれなりに賑やかであれば,そこから気になる人をフォローするということになるのでしょう。しかし,お互い様子見していたり,投稿控えめなグループであることも考えられます。そうなると,なかなか出会いや発見も難しくなります。

ならば,登録者にどんどん投稿してもらってローカルTLを賑やかにして欲しいところ。

ただし,投稿が控えめになる要因がいくつか考えられます。

一つの要因は,ローカルTLへの投稿がプロフィールTLに記録されて,外部に公開されてしまうこと。

インスタンス内での交流を目的に投稿をすると必然的に外部に投稿が公開されてしまうのです。これを防ぐには投稿公開範囲を「非公開」にすることですが,ところが上の表にあるように非公開にすればローカルTLへの投稿が行なわれず,フォロワーだけにしか届かないのです。

「新規のフォロワーと出会いたくてローカルTLに投稿したいけれど,外部に投稿が表示されるのは恥ずかしいので非公開にしようとしたら,ローカルTLに投稿されず新規のフォロワーと出会いようがなくなる。」

現在のマストドンの仕様では,この問題を解決する術はありません。

もう一つの要因は,ローカルTLへの投稿が連合TLにも必然的に流れて公開されてしまうこと。

すでに説明したように投稿者側からするとローカルTLと連合TLには投稿先としての区別がなく,公開される投稿は公開TLに投げ出されるという考え方になります。

逆に言えば,インスタンス外部に投稿を出したくなければ「非公開」で投稿する以外にありません。

ところが,そうするとフォロワー以外に投稿は届かなくなり,ローカルTL,つまりインスタンス内の非フォロワーには投稿が読まれないということになります。

「同じ関心を持っているインスタンス登録者全員に投稿を届けたいけれど,外部に投稿が表示されるのは恥ずかしいし関心が違うだろうから非公開にしようとしたら,ローカルTLに投稿されず他のインスタンス登録者に届けられなくなる。」

現在のマストドンの仕様では,この問題を解決する術はありません。

マストドンが,分散型システムによるソーシャルネットワークであり,独自にインスタンスを立ち上げられることやグループ単位で利用する点に注目が集まっているにもかかわらず,一方で一過性の技術的ブームでしかないと見なされてしまうのは,利用するためのデザインに不足があるからだと思います。

現在のマストドンは,他のSNSがあって始めて利用開始が成り立っている状態です。

そしてインスタンスを立ち上げて,登録を促してみても,上記のような矛盾にぶつかり,マストドン単体で解決できない以上は,まだ一般の人々を巻き込んで利用を拡大してもらうことは難しいと思います。

マストドンはオープンです。

そのことは揺るぎないし,何よりも優先すべきことではあります。

しかし,だからこそ,関心の異なる人たちが分散し,偏在できるためのオープンな間仕切りの仕組みも必要だと思います。

マストドンは開発進行中のプロジェクトでもあります。

上記の課題に対する解決策やアイデアを実際に提案したり実装することが可能な取り組みです。そのようなことができるようになる能力としてコンピュテーショナル・シンキングやプログラミング・スキルようなものが必要なのでしょう。

たとえ一利用者だとしても,要望を伝えて共有することから物事が変わり始めると思います。

おそらくマストドンは,もう数年したときには,より成熟したソーシャルネットワークプラットフォームとしての姿を見せるのではないかと思います。あるいはそう時間はかからないかも知れません。

ただし,いまはまだ進化の途上といったところです。 

マストドンの投稿公開範囲を調べる -2 へ]

マストドン4月までの動き

ソーシャルネットワークを実現するためのオープンな技術仕様がいくつか設計され,開発・実装が試みられてきました。しかし,TwitterやFacebookほどの普及には至っていないというのが現実です。

昨年(2016年)から開発が始まり,2017年2月6日付けでGitHubというソフトウェア公開共有サイトにてバージョン1.0がリリースされた「Mastodon」(マストドン)は,4月初め頃からネットメディアでの露出が増え,注目度が急上昇しました。

Mastodonとは、Twitter風のソーシャルネットワーキングシステムのソフトウェアです。TwitterやFacebookのような中央集中システムに繋げていくのではなく,分散したシステム同士を繋ぐ設計となっているフリーなオープンソースソフトウェアであることが特徴です。

つまり,自前のMastodonシステム(インスタンスと呼びます)を構築できて,それが他のMastodonインスタンスと繋がり合えるという案配です。

日本でも4月10日のASCII.jp配信記事をきっかけに個人インスタンス(mstdn.jp)が立ち上ってからというもの,新しもの好きネットユーザーを巻き込んだ導入と技術チャレンジが始まり,企業運営インスタンスがいくつも運営を開始する状況にまで至っています。

教育関係では,国内外の大学が独自インスタンスを構築し,登録時のメールアドレス認証で大学ドメインメールのみ受け付ける方式をとって, イントラ的に利用しようとする事例が登場しています。しかしまだ少数です。(@koshix 先生の参考トゥート)

[mastodon no_iframe=”1″]https://mstdn.jp/@koshix/6255748[/mastodon]

教育学習ICT関連に関心のある人達向けの elict-mastodon も開設から10日ほど経過していますが,認知度が低いのもありますし,教育関係において「新し過ぎるものに手を出すのはおのぼりさんのやること」的な空気もあってか,あまり話題になっておらず,静観されている感じです。メジャー化しそうになれば大御所がガバッとさらっていく感じになると思います。

現在のmastodonは,仕様的にオープン基調なため,学校向けのイントラシステムとして使いつつ,適宜必要に応じて外部にリモートフォローをいれて選択的に繋がって広げていくという使い方にはまだ不都合な箇所も多いです。

たとえば,児童生徒のトゥート(投稿)をローカルタイムラインには公開してインスタンス登録者間で共有したいが,自分の公開アカウントページ(フォロー,フォロワー,投稿が一覧できてリモートフォローしてもらうために外部に公開されているページ)には投稿を掲載したくない…という使い方はできません。
その逆(ローカルに投稿せず外部に見せる)ならばユーザー設定で「未収載」モードに設定することで可能であるという点がMastodonの外向性を象徴しているのかも知れません。

上記のことを理解するためには,Mastodonのタイムライン表示に「ホーム」「ローカル」「連合」という3種類あること,さらに外部に見られてしまう「公開アカウントページ」で表示される自分の投稿一覧と,(Twitterと同じように使う)タグによって表示される投稿の並び等について,整理して理解する必要がありますが,正直なところ,もともとのMastodon仕様設計がうまく整理されているとは言いがたいのも事実です。

いずれにしてもMastodonは分散型のソーシャルネットワーキングシステムをオープンに構築できるという特質と,Twitter風のインターフェイスゆえに取っ付きやすいことから,多くの人々が可能性を探り始めていますし,その過程で新しい可能性を提案する余地がまだあるシステムです。

現時点では教育学習の分野に対して可能性という程度にしか影響しませんが,それぞれの学校が緩やかに他の学校や社会と繋がっていくという「社会に開かれた」学校教育を目指していく流れに,Mastodonというシステムは親和性が高いのではないかと思います。

今後の動向もウォッチしていきたいと思います。

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[2016]
2/21 Mastodon GitHub Initial commit by Gargron (Eugen Rochko)
3/16 Mastodon 0.10 GitHub公開
10/5 mastodon.social(独) 開始
10/6 Show HN: A new decentralized microblogging platform (github.com)」(HackerNews)
11/23 Mastodon is an open source, decentralized version of Twitter」(TheDailyDot)
11/28 Are You on Mastodon Yet? Social Network of Our Own」(The Chronicle of Higher Education)
[2017]
1/6 What would Twitter be if it adopted Wikipedia’s politics?」(openDemocracy)
2/6 Mastodon 1.0 GitHub公開
3/17 アプリ「Amaroq for Mastodon」1.0.0 公開
4/1 Welcome to Mastodon」@Hacker Noon(Eugen Rochko)
4/4 mastodon.cloud(仏) 開始
4/4 Mastodon.club(加) 開始
4/5 niu.moe(仏) 開始
4/5 Mastodon Is Like Twitter Without Nazis, So Why Are We Not Using It?」(MOTHERBOARD)
4/6 Twitter Lite 提供開始
4/6 What Is Mastodon and Will It Kill Twitter?」(PC Magazine Australia)
4/7 A beginner’s guide to Mastodon, the hot new open-source Twitter clone」(The Verge)記事配信
4/7 ika.moe(仏) 開始
4/10 Twitterのライバル? 実は、新しい「マストドン」(Mastodon)とは!」(ASCII.jp)記事配信
4/11 mastodon.nil.nu 稼働
4/12 mstdn.jp 開始
4/13 kirakiratter.com(米) 開始
4/13 アプリ「Tusky」1.1.2 公開
4/13 ポストTwitter? 急速に流行中「マストドン」とは」(ITmedia)記事配信
4/14 Mastodon Wiki 開設
4/14 pawoo.net 開始
4/15朝 mstdn.jp さくらインターネットへ移行完了
4/15 pawoo.net が一部海外インスタンスから遮断される
4/18夜 mastodon.cloud DDoS攻撃受ける
4/19 friends.nico 開始(niconicoアカウント連携)
4/20 tuner.1242.com 開始
4/20 AbemaTVニュース番組AbemaPrime でマストドンが取り上げられる
4/21 Chrome拡張「Tooter」0.26 公開
4/21 mstdn.jp管理人(@nullkal)ドワンゴ入社を発表
4/21 Pawooとpixivのアカウント連携開始
4/21 アプリ「Pictdon for Mastodon」1.1 公開
4/22 elict.net 開始
4/22 iomstdn.tokyo 開始
4/24 アプリ「Pawoo」(Android版)公開
4/24 アプリ「Mastodon-iOS」1.0 公開
4/24 MathJaxにより数式表示するブックマークレット公開(by @EzoeRyou #math)
4/24 世界最大の「mstdn.jp」を立ち上げた大学院生“ぬるかるさん”は一体何者か」(ITmedia)
4/25 pixiv Night #4 (by pixiv)
4/25 アプリ「Tootter for Mastodon」1.0 公開
4/26 アプリ「friends.nico」1.0.0 公開
4/27 アプリ「Pawoo」(iOS版)1.0 公開
4/27 アプリ「Oyakodon」1.0 公開
4/27 mstdn.itmedia.co.jp 開始
4/27 pawoo.net 10万ユーザー突破
4/27 Mastodon Tech Night#1 (by TechFeed #dontech
4/28 マストドン会議 (by 角川アスキー総研)
4/28 Webクライアント「Naumanni」(by @shi3z@UEI)発表
4/29 アプリ「Ore2」Mastodon対応
4/29 mstdn.jp 10万ユーザー突破
4/29-30 ニコニコ超会議
5/17 マストドン会議2(by 角川アスキー総研)

マストドンWiki
https://ja.mstdn.wiki/メインページ

Mastodon (Wikipedia)
https://en.wikipedia.org/wiki/Mastodon_(software)

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ちなみにちょうど東京滞在している期間なので,マストドン会議2に参加予定です。