画面ミラーリングのソリューション

先日導入した「EZCast 4K」のレビュー続きと画面ミラーリングについてあれこれ記録。

EZCast 4Kに関しては,シンプルなAirPlayとMiracast受信機として使う分には順調に動作しています。4Kテレビに接続して使用したところ,ちゃんと2160pの解像度で接続してくれます。

ただし,画面ミラーリングの仕組み上,接続端末(画面送出)側の制限に縛られるので,ミラーリングされる画面が2160pの解像度というわけではありません。端末によってはブロックノイズが酷いものもあります。

EZCast 4Kは工場出荷時には1080pの解像度に設定されていますので,2160pを必要とする場合には設定変更をする必要があります。ただ,1080pと2160pの画面ミラーリングの差を素人目に判別する事は難しく,フレームレートの違いも分かるような分からないような感じです。

今のところは,4Kテレビあるいは4Kディスプレイで使用する場合と,1080p入力か2160p入力かの組み合わせで,違いが出てくる可能性もあるかも知れないといった推測をしています。つまりテレビとディスプレイ側にアップコンバート機能がある場合,その影響を受ける可能性です。

あとは専用アプリを利用してメディアを直接表示させる場合に,1080pと2160pの解像度の違いがハッキリ見えてくるかも知れません。私自身はまだ専用アプリをそれほど利用していないので何とも言えません。

AirPlay時にブラウザ中の動画を全画面再生した場合の挙動は,接続を引き受けて単独で再生する仕組みに対応していますが,どうしても再生開始位置が引き継がれず最初から再生になります。画面を元サイズに戻す場合の挙動は,多少もたつきますが画面ミラーリングに戻るようになっています。

ただ,iOS端末からYouTubeアプリで動画を全画面再生すると制御不能になってしまうバグがあるようです。ブラウザでアクセスした動画から全画面再生させても問題ないので,これはiOS版YouTubeアプリの問題かも知れません。どちらかがアップデートしてくれればいずれ解消すると思います。

Miracast時の使い込みが足りないので細かい挙動がどうなのか見定められていません。Windows10からの最初の接続が厄介のようです。相性がいいものは繋がりますが,相性が悪いとダメのようです。ただ一度繋がれば,基本的な動作に問題はなく,NHK for Schoolも普通に表示させる事ができます。

総じてEZCast 4Kは画面ミラーリングのツールとして合格点をあげられるのではないかと思います。AirPlay方式やMiracast方式への対応だけで,Chromecast方式への対応がない点は残念なところですが。

あと,EZCastシリーズには「Pro」がありますが,画面分割に強い必要性がない限りは,Proの購入は避けた方がよいと思います。どうしても必要ならば有線LAN対応の「Pro Lan」を購入した方がよいと思います。

Chromecast方式に対応するには「Chromecast」が一番手っ取り早いことになります。

Chromecast Ultraが4K/HDR対応のものになります。旧版と違って最初から有線LAN対応するコネクタが用意されているのが長所です。

YouTube動画を2160pの60フレームで再生したい場合には,いまのところChromecast Ultraを利用する他ありません。(4Kテレビに装備されているYouTubeアプリを利用するならば話は別ですが。)

パソコンの場合,Chromeブラウザを動作させておけば,ブラウザの内容だけでなく,デスクトップをミラーリング表示することも可能なので,案外これが一番便利なのかも知れません。

ただし,iOSデバイスからはChromeブラウザ内の動画とYouTubeアプリ内の動画のみ対応となります。画面ミラーリングを利用することができません。そのため,画面ミラーリングのツールとしては選択肢にあがり難くなっているのだと思います。

ところでAmazonが販売しているFire TVFire TV Stickといったデバイスはどうでしょうか。

中でもFire TVは4K対応ですから解像度としては期待できそうです。2017年10月発売予定のNewモデルはHDR対応もなされるそうです。

ただし,従来モデルに限って確認すると,4K対応はあくまでもAmazon提供の4K対応動画コンテンツか,他社が4K対応させたアプリでのみ2160pに切り替えるだけで,普段のメニュー画面や他の画面ミラーリングアプリを使用時には1080pに留まります。Fire TV用のYouTubeアプリで4K動画を再生しても,テレビ側のモードは1080pのままです。(Newモデルも同様と予想しますが,実際はわかりません。)

Miracast方式の画面ミラーリング機能を持っていますが,これもまた端末との相性のせいなのか,うちの研究室の端末で成功した試しがありません。仮に成功しても1080pレベルでしょう。

「AirPlay&UPnP」という有料アプリを利用するとFire TVでAirPlay方式とChromecast方式の画面ミラーリングが利用できます。こちらは解像度は低いのですが,快適そのものです。あまり鮮明さを必要としない場合には,この選択肢もありかとは思いますが,Amazonを楽しむのでなければFire TVのメイン画面がやかましくて,公的な場で使うのは躊躇われます。

Apple TVは,AirPlay方式の画面ミラーリングの定番であり,唯一の受信デバイスです。

利用している端末がmac OS/iOSマシンなら,これで十分と思います。画面分割はできませんが,シンプルに使うなら最も安定性が高いからです。

Apple TV 4KでAirPlayミラーリングをしたからといって,原理的にはEZCast 4Kと同様なので,特別鮮明であるということはないと思います。

EZCast 4KとApple TV 4Kを比較するのは,なかなか難しいですが,EZCast 4KがMiracast方式と専用アプリでAndroidやChromeOSをサポートする全部盛りであるのに対して,Apple TV 4Kは有線LAN対応で純正の安心感があること,そのどちらを取るかによって選択が変わると思います。

業務用であれば,内田洋行「wivia 5」とBLACK BOX社「COALESCE」があります。

マルチプラットフォーム対応でミラーリング画面を画面分割で複数表示したいといったニーズがあるならば,これくらいの価格水準のシステムを導入すべきと思います。

Miracast方式のものであればActiontec Electronics社の「スクリーンビームプロ・エデュケーション2」という製品もあります。

プリンストン社はEZCastシリーズから「EZPRO-LANB01」「EZPRO-BOXB03」を文教向けに提供しています。ちゃんとしたサポートとセットで導入するなら,こちらの選択肢もありかも知れません。

画面ミラーリングの受信をパソコンで実現するソフトウェアもあります。

Reflector」と「AirServer」はこのジャンルでは老舗のソフトウェアです。3方式に対応しているという点ではAirServerが優勢です。

その他にもメディアを伝送して表示させるためのソフトウェアがありますが,安定して動作するものは少ないのではないかと思います。

画面ミラーリングは,本来的にはHDMIケーブルで接続できることが理想ですが,端末側での簡単な操作で手軽に映し出せたり,複数の端末を軽快に切り替えられるのであれば,無線による画面ミラーリングができると有り難いわけです。

使用端末が同じプラットフォームであれば楽ですが,異なるプラットフォームだと,そのソリューションの選択はなかなか難しくなります。一つの商品で解決するか,組み合わせて使い分けるかなど。いつも安定して期待通りに動いてくれるかどうかも,正直なところ使い込んでみないと分からないことも多いです。

すべてを自分で試すことはできませんが,これからもあれこれ情報収集していこうと思います。

「EZCast 4K」ファーストインプレッション

10月に入りました。リん研究室も後期の専門ゼミナールが始まりました。

今回は研究室で新たに入手した画面ミラーリング商品「EZCast 4K」の使用を開始したので、ファーストインプレッションをお届けします。

パソコンやモバイル端末の画面を大型ディスプレイに映し出したい場合、端末と大画面の接続方法には有線と無線の2パターンがあります。

有線接続は堅実な方法ですが、用意したケーブルと端末のコネクタが適合しない場合もあれば、ケーブル長の過不足や取り回しの面倒さが問題になったりすることがあります。

無線接続は、物理的な煩わしさからは解放されますが、画面ミラーリングの方式が複数あるため、受信側機器との組み合わせによって実現できない場合があります。ちなみに主だった画面ミラーリング方式は3種類あります。「Miracast」「AirPlay」「Chrome Cast」です。

もしあらゆる端末に対応できる受信側機器があれば、とても便利なはずです。が、すべての端末に対応したものは、そう簡単には手に入らなかったのです。

この話は、それだけで長くなりますので、別の機会にたっぷりとご披露します。

EZCastは、HDMIプラグ端子を持ったドングル(小さなハードウェア機器)です。

類似商品としては「マイクロソフト Wireless Display Adapter」「Amazon Fire TV Stick」や「Google Chromecast」といったものがあります。テレビのHDMIコネクタ端子に差し込んで使うスタイルのものです。ちなみに形状がだいぶ異なりますが「Apple TV」もライバル商品です

EZCastには、いくつものモデルがあります。数年前から積極的に宣伝されていたのは「EZCast Pro」という商品で、Proモデルだけあって複数端末からの受信とマルチ画面表示に対応しています。今回入手したものは「EZCast 4K」で、Proモデルではないため一対一のシンプルな画面転送機能しか持ちませんが、4K解像度対応という珍しい商品です。この他にも有線LAN接続を可能にしたBOXタイプモデルが国内販売されています。

「EZCast 4K」のパッケージ内容はこんな感じ。

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これが小さな受信機としてパソコンやモバイル端末からの画面データを受け取り、大画面機器で表示させるのです。使途はいたってシンプル。

しかし、使いこなすまでの道のりは優しくないかも知れません。

結論から言えば、専用アプリを使ったセッティングさえ済ませれば、「AirPlay」と「Miracast」方式の受信機として機能してくれます。特別なアプリを使用する必要がありません。よって、Windows、Mac、iPhone/iPadの混在環境での利用に向いています。

残念ながら「Chrome Cast」方式には直接対応してないため、Android端末とChromeOS端末の場合、専用アプリをダウンロードし、それを使ってミラーリングを開始させる必要があります(Miracast方式に対応しているAndroidスマホというものがあれば話は別です)。専用アプリを起動することに納得できれば、使い勝手は悪くありません。

というわけで、一部の機種で専用アプリを利用する点とLinux端末への対応がないことを除けば、「EZCast 4K」は主要な端末の画面ミラーリングに対応した大変汎用性の高い周辺機器といえます。

高いポテンシャルを持っていることは事実ですが、使用環境に応じたセッティングをこなせるかどうかの問題と商品としての使い勝手にまだ粗削りなところも残っているため、初心者も含む万人に勧めるにはまだ少しハードルがあるといった感じです。

たとえばネットワーク接続のこと。

常設されたテレビの裏に同じく常設するのであれば、職場や家庭内のネットワークにEZCast 4Kを加える形で導入することとなり、初期設定のハードルさえ越えてしまえば日常操作に苦労はないはずです。

しかし、EZCast 4Kを持ち運び、出先の場所でその度使うとなると、インターネット接続との兼ね合いをどうするのかという問題が付きまといます。EZCastと端末間の通信はダイレクトに可能ですが、そうなったときにインターネットアクセスができるかどうかは条件次第です。(追記:専用アプリを使うとスマホのテザリング機能を使う手段が用意されていました。) 

また、EZCast 4Kを複数の端末間で切り替えて使うときも注意が必要。

端末を切り替える際は、接続を切断する操作をしてから、順序良く別の端末で繋ぎ直すといった使い方を心掛ける必要がまだあります。画面転送を乗っ取って強制的に端末を切り替える操作には、十分対応できていません。できなくはないけれども、よく失敗するからです。

一度接続がうまくいけば、かなり調子よく動いてくれるのですが、そうでないときは多少根気よく成功まで操作を繰り返すといったこともしなければなりません。

そうした粗削りなところと付き合う覚悟があれば、この商品は日々修正されてアップデートを繰り返しているようですから、いずれは満足のいく動作や安定性を確保できる商品に思います。

「EZCast Pro」と比較すると機能がシンプルかも知れませんが、逆に5GHz帯の無線LANをサポートしている点は優位点です。また、発熱量も1080pレベルで使っている分には温かい程度でおさまっているように思います。もともと4K利用を想定した商品なので、従来環境での利用ならば実力的にも余裕なのかも知れません。

現時点では4K対応テレビで使っていないので、4Kの場合だとどうなのか。近いうちにレポートしようと思います。

いずれにしても「EZCast 4K」はクセさえつかめば、なかなか便利に使える周辺機器と思えました。

待望の大きなiPad

 2015年11月11日にiPad Proのオンライン販売が開始されました。画面サイズが大きくなり,ペンや本体カバーなるキーボードのオプション品が用意されるなどが話題となっている製品です。

 私は,手書きでノートを取ったり,原稿の朱入れ作業をする仕事があるので,大画面とペン入力を切望していた人間です。iPad Proの登場を心待ちにしていましたから,迷うことなく購入しました。

 2010年にiPadが発売されてからずっと,板型のタブレット端末はノートパソコンやタブレットPCを置き換えることができるのか,そもそも学習活動に使えるのかといった問いが繰り返し投げ掛けられ議論されてきました。デジタル教科書やタブレット対応した授業支援アプリやシステムなども,そのような議論と並行して開発されてきました。

 正直なところ,技術と価格という変数が大きく揺れ動く中で問いに答えようとするのは無茶な話です。個々の目的と予算に応じて満足に目標達成できるかどうかを適宜判断していくしかありません。

 それでも,iPadは議論するに足るタブレット端末です。

 私たちがパソコンで求めていたものと異なる価値観にもとづいて構築された機器であり,「パソコン」と「タブレット」という対比から,私たちが情報機器や情報技術に求めていたものを考え直すきっかけを与えてくれた歴史的な端末といっても過言ではないと思います。その意味では,極めて教育的な端末であると受け止めています。

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 さて,大きなiPadである「iPad Pro」ですが,この大きさにはやはり意味があると感じます。

 初代から続く9.7インチの画面サイズは,とても絶妙なサイズでした。それは「小さくもなく大きくもない」という意味での絶妙さでした。しばらく一種類でしか販売されなかったiPadのサイズとして,そのサイズ選択は大変有効でした。

 しかし,それは中途半端なサイズと言い換えることもできます。

 9.7インチのiPadが手に余る人もいました。小柄な人たちや持ち運ぶ荷物を小さくまとめたい人たちなどは9.7インチiPadは「小さくもなく」大きかったのでしょう。そこでようやく登場したのが「iPad mini」(7.9インチ)でした。その後はiPhone 6 Plusという端末が登場して,iPad miniが中途半端だという人も出てきますが,小型iPadとしては現在も好評を博しています。

 一方,9.7インチのiPadでは画面が狭いと感じていた人もいました。電子書籍を見開き表示で読みたい人や画面の上で何かしたい人には「大きくもない」ために中途半端な印象がぬぐえなかったと思います。

 そこに向けて登場したのが今回の「iPad Pro」(12.9インチ)だと考えれば,その大きさには価値があります。12.9インチはA4判文書の(余白を除いた)内容部分を等倍表示できるだけの大きさがあります。つまり私たちがよく知るサイズの「紙」に画面の大きさが近づいたということです。

 ここにApple Pencilというオプション品が加わって,書き込む行為がある程度満足できるレベルで達成されるのであれば,原稿の朱入れ作業をしたいというニーズには十分役立ちます。それと同じ理由で,ノートを取る,メモ書きするといった用途にも実用的であるかも知れません。

 また,かつてのワープロ専用機のように使うニーズもあるかも知れません。

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 これは手持ちのApple Wireless Keyboard(すでにモデルチェンジしてMagic Keyboardという製品になっています)を組み合わせた場合の写真です。本来であれば純正のスマートキーボードを合わせて購入して使うのがよいのでしょうが,私はこのキーボードを愛用しているので,この形で使う予定です。こうするとiPad Proを縦置きすることができるので,縦のA4判文書を作成するのにも都合が良いのです。(ただ困ったことに,iOS 9の日本語入力環境が賢くなった一方で機能的には後退してしまったところがあるため,この方法で利用する際には多少満足度が低いです。)

 いずれにしても,板型のタブレット端末として登場したiPadには,そのシンプルな形状ゆえに様々な期待がかけられ,一方でiOSというプラットフォームが向いているシンプルな設計思想が様々な制限をもたらしているという現実が,iPadという端末の評価を難しくしているのも事実です。

 少なくともiPad Proの登場によってiOS端末としてのiPadは,また次のステージを登り始めたわけで,前進もすれば後退もするプラットフォームとは今後も,目的と予算に応じて適宜判断しながら付き合う他ないように思います。

新しいApple TVと教室利用

 2015年10月26日に「新しいApple TV」の注文受付が始まりました。

 2015年モデル,あるいは第4世代と呼ばれている「新しいApple TV」は,従来のApple TVと異なり,アプリをダウンロードして利用できる端末としてリニューアルされました。要するにスマートフォンと同じようにアプリ次第で様々なことができるようになります。テレビの大画面を使って。

AppleTV 4G Remote

 これまでApple TVというと,iPadやiPhone(そしてMac)の画面を転送する機能「AirPlay」の受信機として導入されてきました。デジタルテレビや電子黒板に接続して,手元の端末画面を手軽に表示させることができるわけです。

 しかし,それ以外の機能となるとiTunesの映画や音楽,YouTubeの動画を再生するような機能が備わっていたものの,学校の教室利用という点ではあまり有用性がなく,AirPlay(画面転送)機能が欲しいがためにApple TVを選択するという極めて限定的な役割だったわけです。ただ,機能は限定的で価格が比較的安価であることは,学校導入においてはプラスな面もありました。

 もしAirPlay機能が欲しいというならば,Apple TV以外にパソコンのソフトウェアでそれを実現するものがあるため,電子黒板に接続したパソコンにそのソフトウェアを導入するという選択肢もあります。ただし,こうしたソフトウェアはインターネット上でダウンロード販売されている海外製のものなので,購入にはクレジットカードが必要だったりと,公的な購買手続が難しいという難点があります。

 そのような事情もあって,iPad等の端末画面を転送したいニーズに対してApple TVが選ばれ,少なくない学校に導入されているという現状があるわけです。

 さて,新しいApple TVもAirPlay機能がついている点で従来と同じですが,それだけでなくApple TV自体がアプリによって機能拡張される端末に生まれ変わりました。

 いまのところ,Apple TVでアプリが利用できるメリットは,大画面テレビでゲームができるとか,各種の動画配信サービスにアプリで対応できるようになるとか宣伝されています。

 けれど,すでにいくつかの教育用アプリも公開されており,そのような種類のアプリは今後さらに増えていくと予想されます。つまり大画面のデジタルテレビや電子黒板に向けたApple TV用の教育コンテンツや教材アプリが利用できるということです。

 また,これまではiPadの画面を転送して子どもたちの活動の成果物や記録を見せていたものが,Apple TVのアプリが連携して表示するという形に移行することも起こると考えられます。その形の何がメリットかというと,無線LANで画面転送する場面を減らせるかも知れないということです。成果物をクラウドストレージにアップロードさえできれば,あとは有線LANでつながったApple TVがクラウドストレージから直接読み込んで表示することができるわけですから,無線LANによる先生端末の画面転送がうまくいかない場合の予備手段になります。

 また,たとえばNHK for Schoolの動画アプリが登場すれば,Apple TV上で簡単に教育番組を視聴することができるようになります。これらはあくまで可能性の一例ですが,アプリ開発ができるようになったApple TVによって教室のデジタルテレビや電子黒板に面白いことが起こるかも知れません。

 ちなみに同様な機器としてグーグル社のChromecast,アマゾン社のAmazon Fireといったテレビ用機器があります。こうした機器も画面転送の機能がついており,導入においては比較検討する価値は十分あると思います。

 

スマートロックと学校

 携帯電話やスマートフォンを常時持ち歩くようになって,いろんなものを代替するようになりました。

 たとえば小額決済や交通機関への支払はおサイフケータイで済ますことも出来るようになりましたし,デジタルカメラを別途持ち歩く必要もなくなりました。スケジュール管理やメモのための手帳も持つことが少なくなりました。

 デジタル情報として扱える物事をスマートフォンに集約して,これ一つを持ち歩けば事足りてしまうという便利さが生まれたわけです。もちろん善し悪しや使い勝手の問題には個別の議論がありますので,あくまでも重宝な選択肢の一つとして考えることが必要なのでしょうけれども,その上で便利に使えるのであれば,こうした変化は歓迎すべきことと思います。

 昨年あたりから注目が高まっているのは「スマートロック」市場です。

 スマートフォンに「鍵」の機能を持たせ,物理的な鍵を持ち歩かなくてすむようになります。すでに自動車には「キーレスシステム」が普及して,一般にも馴染みが出てきているところですが,それは鍵の変わりのキーレスリモコンが用意されているというのはご存知のこと。これをスマートフォンに代替して,家庭やオフィスのドアロックにも使おうというのがスマートロックです。

 今年から国内でも2つの商品が販売を始めました。「Akerun」と「Qrio」という後付け式のドア用スマートロック機器です。

 どちらもこの新たな市場に向けて意欲的な商品を開発し販売しようと立ち上げられたスタートアップ企業(ベンチャー企業)です。海外にも似たような商品が出てきていますが,物理的なものづくりに長けた日本からこのような商品が登場してきたのは頼もしい限りです。

 学校において鍵といえば,それぞれの教室用の鍵がズラッとかけられたキーボックスの光景を思い浮かべる人は多いと思います。つまり「鍵」も学校教育とは無縁ではないのです。

 そして,特別教室やパソコン教室を利用する毎に,職員室まで鍵を取りに行くなんてことが今日でも続けられているわけですが,誰かが鍵を返し忘れたりすると次使う人が大変困ったりすることもよくある出来事です。

 また,休日に催し物で学校施設を使うとなると,責任上,誰か先生が出勤して付き合わなければならないことは当然ありますが,たとえば鍵だけ渡せばいいときでもわざわざ出勤しなければならないとか,鍵の返却が面倒くさいとか,そういう問題が今でも常に付きまとっています。

 学校のキーボックスを思い出すと,いかに鍵というものが大事なもので,その管理に気を遣わなければならないものなのかを,浮かび上がる印象から学ぶことが出来ますが,一方で,学校施設をもっと柔軟に利活用したいさせたい側の人間からすると,物理的な鍵一つひとつに気を遣わなければならないのは面倒です。

 実際,大学には学生カードをかざすことで解錠できる電子ロックドアが設置され,学内関係者であれば自由に利用できるスペースに備わっていることも少なくありません。こうした利便性にも配慮した鍵システムの導入は決して非現実的なものではないのです。

 ちなみにりん研究室にQrioがやってきました。

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 ゼミ生達とデジタル鍵の共有をすることで,資料を閲覧したいときやゼミの研究をしたいときに研究室への入室が出来るようにしたいと思って,実験的に導入してみた次第。

 AkerunとQrioは,基本的には同じような機能を持ちますが,デザインコンセプトの違いから使い勝手が異なっています。それからAkerunは事業者向けの製品も登場して,法人市場への拡大も目指しているようです。Qrioはまだ登場したばかりですが,ドアに2つロックがある場合に2台のQrioを連携させられる機能を持っていたり,家庭用としての使い勝手をこれからブラッシュアップさせていくのだと思います。

 ところで,学校の場合はこんな洒落たものが取り付けられるドアさえない,スライド扉で南京錠がロックだというところもあると思います。

 そんな場合は,スマート南京錠という選択肢でしょうか。「246PADLOCK」や「Noke」といったものがありますので,これはこれで検討してみると面白いかも知れません。

 そして,今は電子工作が注目を集めているご時世ですので,こんな大げさな商品を購入するのではなく,子供達に自作の電子鍵システムを開発してもらうという課題に取り組んでもらうのも面白い勉強になるかも知れません。その場合は,以前取り上げたRaspberry PiやPaSoRiを組み合わせて,生活の中に紛れ込んでいる非接触型ICカードを鍵代わりにするようなシステムを作ってみるのも面白いところです。

 そんなことに学校教育を開いていくことが未来への鍵になるかも知れません。