マストドン4月までの動き

ソーシャルネットワークを実現するためのオープンな技術仕様がいくつか設計され,開発・実装が試みられてきました。しかし,TwitterやFacebookほどの普及には至っていないというのが現実です。

昨年(2016年)から開発が始まり,2017年2月6日付けでGitHubというソフトウェア公開共有サイトにてバージョン1.0がリリースされた「Mastodon」(マストドン)は,4月初め頃からネットメディアでの露出が増え,注目度が急上昇しました。

Mastodonとは、Twitter風のソーシャルネットワーキングシステムのソフトウェアです。TwitterやFacebookのような中央集中システムに繋げていくのではなく,分散したシステム同士を繋ぐ設計となっているフリーなオープンソースソフトウェアであることが特徴です。

つまり,自前のMastodonシステム(インスタンスと呼びます)を構築できて,それが他のMastodonインスタンスと繋がり合えるという案配です。

日本でも4月10日のASCII.jp配信記事をきっかけに個人インスタンス(mstdn.jp)が立ち上ってからというもの,新しもの好きネットユーザーを巻き込んだ導入と技術チャレンジが始まり,企業運営インスタンスがいくつも運営を開始する状況にまで至っています。

教育関係では,国内外の大学が独自インスタンスを構築し,登録時のメールアドレス認証で大学ドメインメールのみ受け付ける方式をとって, イントラ的に利用しようとする事例が登場しています。しかしまだ少数です。(@koshix 先生の参考トゥート)

[mastodon no_iframe=”1″]https://mstdn.jp/@koshix/6255748[/mastodon]

教育学習ICT関連に関心のある人達向けの elict-mastodon も開設から10日ほど経過していますが,認知度が低いのもありますし,教育関係において「新し過ぎるものに手を出すのはおのぼりさんのやること」的な空気もあってか,あまり話題になっておらず,静観されている感じです。メジャー化しそうになれば大御所がガバッとさらっていく感じになると思います。

現在のmastodonは,仕様的にオープン基調なため,学校向けのイントラシステムとして使いつつ,適宜必要に応じて外部にリモートフォローをいれて選択的に繋がって広げていくという使い方にはまだ不都合な箇所も多いです。

たとえば,児童生徒のトゥート(投稿)をローカルタイムラインには公開してインスタンス登録者間で共有したいが,自分の公開アカウントページ(フォロー,フォロワー,投稿が一覧できてリモートフォローしてもらうために外部に公開されているページ)には投稿を掲載したくない…という使い方はできません。
その逆(ローカルに投稿せず外部に見せる)ならばユーザー設定で「未収載」モードに設定することで可能であるという点がMastodonの外向性を象徴しているのかも知れません。

上記のことを理解するためには,Mastodonのタイムライン表示に「ホーム」「ローカル」「連合」という3種類あること,さらに外部に見られてしまう「公開アカウントページ」で表示される自分の投稿一覧と,(Twitterと同じように使う)タグによって表示される投稿の並び等について,整理して理解する必要がありますが,正直なところ,もともとのMastodon仕様設計がうまく整理されているとは言いがたいのも事実です。

いずれにしてもMastodonは分散型のソーシャルネットワーキングシステムをオープンに構築できるという特質と,Twitter風のインターフェイスゆえに取っ付きやすいことから,多くの人々が可能性を探り始めていますし,その過程で新しい可能性を提案する余地がまだあるシステムです。

現時点では教育学習の分野に対して可能性という程度にしか影響しませんが,それぞれの学校が緩やかに他の学校や社会と繋がっていくという「社会に開かれた」学校教育を目指していく流れに,Mastodonというシステムは親和性が高いのではないかと思います。

今後の動向もウォッチしていきたいと思います。

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[2016]
2/21 Mastodon GitHub Initial commit by Gargron (Eugen Rochko)
3/16 Mastodon 0.10 GitHub公開
10/5 mastodon.social(独) 開始
10/6 Show HN: A new decentralized microblogging platform (github.com)」(HackerNews)
11/23 Mastodon is an open source, decentralized version of Twitter」(TheDailyDot)
11/28 Are You on Mastodon Yet? Social Network of Our Own」(The Chronicle of Higher Education)
[2017]
1/6 What would Twitter be if it adopted Wikipedia’s politics?」(openDemocracy)
2/6 Mastodon 1.0 GitHub公開
3/17 アプリ「Amaroq for Mastodon」1.0.0 公開
4/1 Welcome to Mastodon」@Hacker Noon(Eugen Rochko)
4/4 mastodon.cloud(仏) 開始
4/4 Mastodon.club(加) 開始
4/5 niu.moe(仏) 開始
4/5 Mastodon Is Like Twitter Without Nazis, So Why Are We Not Using It?」(MOTHERBOARD)
4/6 Twitter Lite 提供開始
4/6 What Is Mastodon and Will It Kill Twitter?」(PC Magazine Australia)
4/7 A beginner’s guide to Mastodon, the hot new open-source Twitter clone」(The Verge)記事配信
4/7 ika.moe(仏) 開始
4/10 Twitterのライバル? 実は、新しい「マストドン」(Mastodon)とは!」(ASCII.jp)記事配信
4/11 mastodon.nil.nu 稼働
4/12 mstdn.jp 開始
4/13 kirakiratter.com(米) 開始
4/13 アプリ「Tusky」1.1.2 公開
4/13 ポストTwitter? 急速に流行中「マストドン」とは」(ITmedia)記事配信
4/14 Mastodon Wiki 開設
4/14 pawoo.net 開始
4/15朝 mstdn.jp さくらインターネットへ移行完了
4/15 pawoo.net が一部海外インスタンスから遮断される
4/18夜 mastodon.cloud DDoS攻撃受ける
4/19 friends.nico 開始(niconicoアカウント連携)
4/20 tuner.1242.com 開始
4/20 AbemaTVニュース番組AbemaPrime でマストドンが取り上げられる
4/21 Chrome拡張「Tooter」0.26 公開
4/21 mstdn.jp管理人(@nullkal)ドワンゴ入社を発表
4/21 Pawooとpixivのアカウント連携開始
4/21 アプリ「Pictdon for Mastodon」1.1 公開
4/22 elict.net 開始
4/22 iomstdn.tokyo 開始
4/24 アプリ「Pawoo」(Android版)公開
4/24 アプリ「Mastodon-iOS」1.0 公開
4/24 MathJaxにより数式表示するブックマークレット公開(by @EzoeRyou #math)
4/24 世界最大の「mstdn.jp」を立ち上げた大学院生“ぬるかるさん”は一体何者か」(ITmedia)
4/25 pixiv Night #4 (by pixiv)
4/25 アプリ「Tootter for Mastodon」1.0 公開
4/26 アプリ「friends.nico」1.0.0 公開
4/27 アプリ「Pawoo」(iOS版)1.0 公開
4/27 アプリ「Oyakodon」1.0 公開
4/27 mstdn.itmedia.co.jp 開始
4/27 pawoo.net 10万ユーザー突破
4/27 Mastodon Tech Night#1 (by TechFeed #dontech
4/28 マストドン会議 (by 角川アスキー総研)
4/28 Webクライアント「Naumanni」(by @shi3z@UEI)発表
4/29 アプリ「Ore2」Mastodon対応
4/29 mstdn.jp 10万ユーザー突破
4/29-30 ニコニコ超会議
5/17 マストドン会議2(by 角川アスキー総研)

マストドンWiki
https://ja.mstdn.wiki/メインページ

Mastodon (Wikipedia)
https://en.wikipedia.org/wiki/Mastodon_(software)

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ちなみにちょうど東京滞在している期間なので,マストドン会議2に参加予定です。

徳島新聞紙面におじゃましました

恥ずかしながら徳島新聞の紙面にお邪魔しました。

テーマである「スマホを持つ児童増加」について話が聞きたいと連絡をいただいたので、記者の方を研究室にお招きして1〜2時間ほどおしゃべりをしていたという感じです。

小さく片隅に〈大学の先生のコメント〉として載るくらいかなと思っていたら、写真もデカデカと掲載されていて驚いてます。新聞取材を受ける以上、何書かれても怒らないようにしようと覚悟を決めていましたが、わりと穏当に言葉を紡いだくださったので、ホッとしているところ。

この手の話題で話し合える相手を滅多には捕まえられないので、この機会に記者さん相手に私があれもこれもと自由闊達にしゃべり倒していたのは皆様のご想像通り。その面白い部分はほとんど反映されていない感じもしますけれど、記者さんもあまりにたくさん話されてメモも膨大になり、だいぶ困りながら記事にしてくれたのだと思います。

掲載するときは連絡をくれるみたいな話だったんですが、結局、職場の人に言われて初めて掲載されたのを知りました。まぁ手離れがいいってのは嫌いじゃないので、まぁいいか。なかなか面白い経験でした。

 

Tokushimashinbun2017 04 25

教育学習とICT関心有り人向けマストドン

教育学習ICT分野のマストドンを立ち上げました。

年中行事になってるサーバー見直し作業のついでに、Twitter後継のSNSツールとして注目を集めつつあるMastodon(マストドン)の独自インスタンス(独自サーバー)を立ててみました。

単なるプライベートMastodonを作るのでは意味もないので、インスタンスの趣向として「教育とICTに関心のある人達向け」ということにしました。まだ実験段階なので学校の先生方や業界の関係者を中心に入っていただいて、いろいろ試してもらってからじわじわと広がってもらえたらと思っています。

ちなみに「elict-mastodon」(エリクト・マストドン)と名乗っています。いまのところelict.netというアドレスで開設中です。ちなみにEducation & Learning with ICTが由来です。教育でのICT活用についてはもちろん、情報活用やプログラミング等の教育学習についてもトゥート(書き込み)し合えればと思います。

私のマストドンアカウントは kotatsurin@elict.net となります。

構築のこと。

Mastodonは、個人単位でのインスタンス構築も可能ですし、そういう使い方もありですが、むしろ関心グループ単位で構築するのに向いてるかなと思います。

Mastodonインスタンス構築には、必要なソフトウェア等がパッケージングされた「コンテナ」を導入して動作させるDockerというプラットフォーム環境を利用するのが比較的簡便な方法です。レンタルサーバーを借りるなどして、Docker環境とMastodonコンテナをインストールしてインスタンスの出来上がりというわけです。

しかし、elict-mastodonではDockerは使用せず、レンタルの仮想サーバー上に一からMastodonをインストールする方法をとりました。面倒が増えるので特段のメリットはありませんが、サーバー構築の学習やノウハウを蓄積ができるというのが理由です。パッケージングされたものを使う方が便利ですが、少しでも裏側に触れたいと思うのがプログラミング的思考っぽいでしょうか。

個人やグループが構築した方が面白いはずなのですが、そのための敷居がまだまだ高いので、また少しずつ構築の手順について紹介していきたいと思っています。

ちなみに今回のサーバーは、EX-CLOUDというレンタル仮想サーバー(クラウドVPS)と契約したものを使用して、CentOS7というシステムを選択しています。ドメインも同サービスで取得しました。

Elict mastodon

学習指導要領案への私のパブリックコメント

2017年2月14日から3月15日まで学習指導要領案に対するパブリックコメントが募集されていました。

政府側にすれば一か月も期間を取っていますから,時間的に不十分とは言わせないつもりでしょうけれど,年度末近くの一か月は,腰を落ち着けて検討するにはなかなか微妙な時期です。

何より,3月15日締切りで11,210件も集まったコメントを,3月31日告示の学習指導要領案に反映させるための検討や作業が2週間弱で足りたのかどうか。むしろそのことの方が国のやっつけ感を漂わせます。

「時間がないのはお互い様」という共犯関係を何とか打ち破りたいとは思いつつ,締切り間際に出すことになった私のパブリックコメントをこちらに残しておきます。

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 「小学校学習指導要領案について」
 
学習指導要領案の作成に関する労を多として以下に意見を述べさせていただく。
 
今回の改訂に関して、中教審答申では「2030年の社会」の「よりよい人生とよりよい社会を築いていくため」、教育課程の在り方を検討し、その背景認識には「急速な情報化や技術革新」による人間生活の質的変化等への対応もあった。よって、今回の小学校学習指導要領(案)では,総則だけでなく,多くの教科で「コンピュータや教育機器」と「情報通信ネットワーク」の活用に関する記述が盛り込まれたと受け止める。
 
しかし,各教科の記述バランスには問題が残る。3点述べる。
 
1)各教科「指導計画の作成と内容の取扱」のうち,算数と理科についてはプログラミング体験の要素を入れるため単元レベルの記述があるが,これは学習指導要領の記述として限定が過ぎるのではないか。
 
2)体育「指導計画の作成と内容の取扱」でのみ,他の教科にはない「その際,情報機器の基本的な操作についても,内容に応じて取り扱うこと。」との文言が記述されていることは記述の統一性および教科としての整合性から見直すべきではないか。
 
3)総合的な学習の時間と特別活動を比較した場合,コンピュータや情報通信ネットワークや情報活用能力等に関するについて,量的な差があり過ぎる。学校の日常的な活動における情報活用能力の醸成を考えるのであれば,特別活動における記述を増やすべきである。
 
以上、ご検討いただき,情報化や技術革新を適切に踏まえた学習指導要領の改訂となることを祈る。
 
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(Facebookには掲載したのですが,タイムラインを休止しているので,こちらに再掲するものです。)

私の情報環境

サーバー分散型ミニブログMastodonは、確かにTwitterに登録した頃の訳のわからなさを思い出させてくれる点で後継っぽさがあり、注目を集めています。

インスタンスと呼んでいるサーバー単位の登録が基本で、いまは公式っぽいドメインを獲得して構築した個人によるインスタンスに登録が集中している状態です。そこを含めて、実験段階かなと思います。

いろいろ仕切り直しをしているところで、私自身の情報環境をスナップショットしていないことに気がつきました。教育やICTのことを論じる私がどんな利用程度のユーザーなのか、記録しておくことも大事かなと思います。

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■端末機器
MacBook Pro (2014)
iMac (2011)
iPad Pro 12.9
iPhone 6s
Chromebook 11 (DELL)
Chromebox
Keyboad PC
Mac mini
Apple TV (2nd/3rd/4th)
Amazon Fire TV
Raspberry Pi (1/2/3)

■周辺機器
Apple Magic Keyboard (ワイヤレスキーボード)
Apple Pencil (iPad Pro用ペン)
Ricoh PJ WX4141 (単焦点プロジェクター)
Ricoh GX7000 (ジェルジェットプリンタ)
Scansnap iX500 / iX100 (書類スキャナ)
AirMac Express (無線LANアクセスポイント)
Logicool Webcam / Spotlight (ウェブカメラ / ポインタ)
テプラPRO SR5500P (テプラプリンタ)
ZOOM F8 (マルチトラックレコーダ)
Cintiq 13 HD (液晶ペンタブレット)
Transporter Sync (自宅クラウドストレージ)
Insta 360 nano / Air (360度カメラ)
Giroptic 360 / iO (360度カメラ)
QuietControl 30 (ワイヤレスヘッドホン)

■サービス
Dropbox
Google
iCloud
Office365
Adobe Creative Cloud
Yahoo!
Amazon / AWS
Radiko
niconico
Evernote
Omni Sync Server
MetaMoJiクラウド
Edmodo
SlideShare
RealtimeBoard
Pocket
SoundCloud
WordPress
GitHub
Scratch
Twitter
Facebook
LINE
Skype
通販系
銀行系
etc…

■ソフトウェア
Safari
Chrome
Gsuit
Microsoft Office
iWorks
FileMaker
Outlook
Nisus Writer
Calendars 5
GEMBA Note
Notability
LiquidText
Papers 3
PDF Expert
Acrobat Reader
Scanbot
Prizmo
Note Always
Jedit
Ulysses
iA Writer
Scrivener
Google Keep
Evernote
OmniGraffle
OmniOutliner
iThoughts
Graphic
MarsEdit 3
Blogo
MetaMoJi Note / Share
ATOK
Post-it Plus
Kindle
dマガジン
iBooks
SmoothReader
Flipboard
Reeder 3
Reflector
AirParrot
Transmit
Prompt
Coda
duet
Astropad
GarageBand
Gadget
etc…
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目的に応じてたまに使うものが他にもたくさんあるのでここに書いたものは普段使うものとすぐ使えるようにしてあるものという感じになります。

やはり完全にクラウド環境ベースの構成だなと思います。クラウド環境ベースにすると複数のデバイスやサービスやアプリ間でデータを連携利用することがやり易くなります。

クラウド環境ベースの一つ手前の世代は、ローカルネットワーク内でファイルサーバー(共有フォルダ/ファイル共有)を利用するという形があり、職場に張り付くような仕事であればこれで不満はないのでしょう。たとえば学校はその傾向が強いと思います。

ところが、世間的にはクラウド環境ベースへと物事が移行していて、利用できるデバイスやサービスやアプリもそれを前提として変化してきているので、逆にクラウドを使わない前提だとできることが限られたり、変に面倒くさくなってしまいます。

特にデバイス単位ではなくアカウント単位に情報環境がデザインされてきていることに対応できないと、導入するデバイスそのものを有効活用できないことはもっと認識されるべきだと思います。

確かにアカウントの管理は大変です。セキュリティの問題も気を使わなければなりません。私自身も主要なサービスはセキュリティ設定で2段階認証などかけています。しかし、そうなるとサブ・デバイスとの連携が必要になることも多いので、それもまた面倒という側面はあります。

とはいえ、もう世の中はクラウド環境は当たり前でアカウント単位で情報を管理する時代です。クラウド環境の利便性とアカウント管理の手間を天秤に掛けたとしても、前者が勝るのは明らかで、むしろそのように全体を仕向けていくようにすることが大事なのだろうと思います。