時間が経つのは速いものだと分かってはいるものの,気付くとあれから数年経っていたということは珍しくなくなってします。歳をとったせいですね。
学習科学の分野ではよく知られた “How People Learn“(HPL I, 邦訳『授業を変える』北大路書房)は原著が2000年に,邦訳も2002年には刊行されました。
以前の検索活動で,この新しい版であるHow People Learn II(HPL II)が取り組まれているという情報を見かけたように思ったのですが,そういえばどうなったっけと再度検索してみたところ,すでに出版済み。
この数年,『学習科学ハンドブック 第二版』邦訳の第1巻,第2巻,第3巻と,そのガイドブックともいえる『主体的・対話的で深い学びに導く 学習科学ガイドブック』が立て続けに刊行され,学習指導要領改訂における「メタ認知」等の知見導入もあって注目が高まっていたところです。
おそらくこうした動きに敏感な人々は,とっくの昔にHPL IIの刊行も察知して議論していただろうに,うかつな私は知らずじまい。
HPL IIの中身を覗くと,HPL Iの成果を再度検討した上で,20年分の新しい研究知見によってアップデートを試みたようです。これはこれでなかなか興味深い。
上記のリンクからFree Downloadできるので,普段から斜め読みできるようにiPadにでも入れておきたいところ。
2018年には公開されていたわけなので,HPL Iの邦訳出版タイミングを振り返ると,あるいはそろそろHPL II邦訳の声が聞こえてくる感じかも知れません。
学習科学にしても,インストラクショナルデザインにしても,これまでは学術現場における新しめの知見程度にしか思われていなかったものが,日本の教育の現場にいよいよ降りていかなくてはならない時期が来たようにも思えます。
いま,新型コロナウェルスの影響で混乱のさなかにあるため,とても新しいものを受け止めたり,取り入れたりする余裕はないという風に学校や先生達はなっているかも知れません。
ただ,一方で,何か新たに立て直す必要があるという問題意識が,稀に見る広範囲の人々を巻き込んで共有されていることも確かです。
生まれた混乱によって,今のところ,あまりにも先へ突っ走った人々と,逆にいろんな困難を抱えさせられた人々というように,立場や場所によって乖離や分断のようなものが起っています。
それは本当に大変なことで,まずはそのことに向かい合わなければならないのですが,けれども,それを経て,私たちが向かうべきものは,この時代に相応しい新しい何かを立て直すというか,打ち立てていくというか,そういうことに向かって学び合える世界なんじゃないかとは思います。
新しい道具も,そういうことに役立てられればよいなと思うのです。