20141104-05 東アジア教員養成国際シンポジウム

 2014年11月4日と5日,韓国・大田(Daejeon)のホテルを会場に「第9回東アジア教員養成国際シンポジウム」が行なわれました。
 このシンポジウムは,日本と中国と韓国の教員養成大学を中心に設立されたコンソーシアムによって催されているもので,毎年各国持ち回りで開催されているようです。

 今年は韓国が担当国となってテーマを「SMART Education and Teacher Education in Digital Era.」(デジタル時代のスマート教育と教師教育)というテーマで開催されることもあって,何か発表しませんかとお声掛けいただいたことで参加となりました。

 とはいえ,7年ぶりの海外出張と英語による発表。しかも初めてのシンポジウムなので,オーディエンスがよく分からないまま,当日に至るまで準備期間は長かったはずですが,不安ばかりが募っていました。

 結果的には15分程度,日本の教育の情報化動向とモデル校におけるICT活用事例のご紹介をしてお役目を果たしたところですが,もう少し全体趣旨が理解できていれば良かったなと反省しています。

 写真はKERISの曺さんに撮っていただいた1枚。たまたま日本語のパンフレットを見せていたタイミングです。あとは日本の現状を英語を付したグラフや写真で紹介していました。

 教員養成というのは日本的な発想だとかなりドメスティックな,つまり国内限定的な営みのように思われます。それが東アジアで国際コンソーシアムを立ち上げるというのは何故なのか。

 東京学芸大学に設けられているコンソーシアムのホームページによれば,グローバル時代において教員養成大学や大学院の世界も国際化に対応できる環境整備が課題であり,そのような問題意識のもと隣国である東アジアの国々と連携していくことになったようです。

 確かに,歴史教育における様々な議論に代表されるように,他国との歴史的な関係を始め,文化的なものの理解についても十分とは言えない現状は,海外と簡単に情報交換や往き来ができるようになった今日において好ましいとはいえません。

 教員養成の段階において,少しでも国際的な関係を紡いでおくことは,むしろ積極的に取り組むべきことだといえます。また教員養成に関わる研究についても国際的な共同研究が展開することが期待されます。これらがひいては学校における海を越えた交流学習等といった教育の営みとして現れるはずです。

 今回のシンポジウムでは,日本語対応スタッフが3人いらっしゃいました。その3人ともにとてもお世話になりましたが,うち2人は韓国教員大学に交換留学生として来ている学生さんでした。

 彼女たちは1年間の留学期間で滞在しているので,何年も滞在しているわけでは無いのですが,現地のスタッフの皆さんとちゃんとコミュニケートしながら参加者のサポートをしてくださいました。こうした若い皆さんによる海外交流が未来をつくってくれるのだと思うと応援したい気持ちが強まります。

 また,もう1人の日本語対応スタッフの方は,日本に留学経験のある韓国女性で,こうした催事のサポートやコーディネートの仕事をしているようです。その方にもいろいろ気にかけていただいて,とても安心してシンポジウムに参加できました。

20141024 京都市公立学校公開授業(JAET40)

 10月24日と25日に京都を会場とした全日本教育工学研究協議会(JAET40)が開催されているので参加しています。

 まずは京都市内の学校が協力してくださった公開授業から始まるので、予め申し込んだ学校へ。 私は平安神宮の北に位置する京都市立錦林小学校にお邪魔しました。

 こちらの学校にはiPadが配備され、グループに一台程度の活用を中心に授業が展開していました。使用しているアプリはロイロノートが主。カード編集の自由度が低い分、カードの並べ替えなどの作業にフォーカスしやすいのが特徴的なアプリです。

 授業は国語や理科における説明といった言語活動や、総合的な学習の時間のプレゼン作成過程が多く、そこにカードを組み合わせたスライド作成のためにiPadやロイロノートが使用されるといった形です。これまでならパソコンとパワーポイントが担っていた部分をiPadとロイロノートが代替したという感じでしょうか。

 ICT活用以上に印象的だったのは、先生方の授業段取りに統一性が形成されていて、授業の展開とめあてを最初に児童と一緒に確認するスタイルができていたことです。当たり前のことのように思えますが、この確認が形式的になってしまって、本当に児童が一緒に確認できているのか曖昧になっているところは多いのです。

 そして児童の学習規律がしっかり育まれていることもはっきり見えました。「規律」という言葉の響きは、先生の言うことを児童に守らせるといったニュアンスのせいか否定的に受け止められやすい面が大きいですが、「学習規律」はむしろ子供達自身の学習活動を保証するという点で、大変重要です。

 特に小学校段階で基本的な学習スタイルを習得しないと子供達自身がどうしてよいのか振る舞いに困ったままの状態になって、学ぶべき事柄を学べない不利益を被ることになりかねないのです。

 あとから情報交換会の場で京都市内の他校で授業参観した方々とお話すると、やはり「学習規律ができていた」と同じ印象を受けていましたから、京都市内の学校はこうした学習規律の大事さを理解している先生方が多いのだろうと思いました。

 実は、この前日に他府県の学校に訪問され授業を参観した方と話していたら、その学校は「学習規律があり過ぎて、自由度がなかった」という感想を聞いていました。確かに学習規律も度を過ぎれば管理教育に通ずる側面がなきにしもあらず、自由度が極端に少なく息が詰まりそうな授業は側から見ても魅力的ではありません。

 京都の小学校に関しては、息の詰まる印象のものではなかったですし、公開授業であったことを勘定に入れてみても、程よかったと思います。

 錦林小学校5年生の授業では、市内の他校とビデオチャットで繋ぎ、グループ単位で相手校のグループと互いのプレゼンを検討する作業をしていました。ロイロノートで作成したスライドをトンネル機能を使って他校に送信して確認し合っていました。

 遠隔の協同作業が可能なのも、学習規律がしっかりとしている上に検討作業の進行段取りをちゃんと擦り合わせていた成果の賜物だと思います。

 とはいえ、ノートパソコン上の小窓に淡い色で映る相手に向かって段取り通りに話しかけている姿は、なんだか管制塔での会話のようで少し不自由にも思えましたし、スライドもその度ごとに送信してやりとりしているのを見ると、リアルタイムコラボレーションには程遠い感じもします。

 逆に言えば、私たちがGoogleハングアウトなんかでHD品質で雑談しているような道具やインフラ基盤、クラウド対応アプリで同じデータをシェアして同時編集するような環境が、学校で使いやすいようにアレンジされていなかったり、いろんな理由で導入が難しいという現実があるということも理解しなければならないのだと思います。

 限られた条件の中で挑戦せざるを得ないという学校の現実は、それはそれで大事な努力として評価していくべきですが、「限られた条件」そのものを改善する努力もまた重要だなと思いました。

20140919-21 日本教育工学会第30回大会

 岐阜大学で日本教育工学会(JSET)の第30回大会が行なわれました。

 30回という節目ということもあり,従来の「課題研究」を発展的に解消し,新たにSIG(Special Interest Group)を立ち上げ,6つのテーマについて継続的な活動を志向して行こうという取り組みが始まりました。SIGは複数立ち上がり,関心があればどのSIGに参加してもよいことになっています。

 SIG-04とナンバリングされたのが「教育の情報化」というテーマで,私も最初はこのグループへの参加から始めることにしました。

 どんな活動をしていくのかも含めてこれから議論するので,この日は参加者同士のディスカッションを通して課題を整理し,何を達成するのか見通しを立てたといったところです。もちろん,これからどんどん変化していくと思います。

 自由にやることを認められているSIGですが,それぞれのテーマは3年後に継続するかどうかを含めて成果を評価されることがルールになっています。また,テーマは必要に応じて追加できるので,将来的にはSIGの数が増えたり減ったりするということです。

 今後は,SIGにおける活動を通して学会としての情報発信がなされていくことが期待されています。

20140912 大阪市学校教育ICT活用事業コーディネータ会議

 久し振りに大阪市のコーディネータ会議に出席しました。事業自体は残すところ半年になり,ICT活用を通して子供達の思考力や表現力を育成する授業のデザインを助ける指標づくりが主な課題でした。

 10月からは二学期の公開授業も順次始まるので,そのための助言活動もそれぞれのモデル校で始まる予定です。

 徳島からバスに乗れば大阪へはぴゅーっと行けるつもりでいるのですが,なかなか訪問する回数が増やせないのは私の要領が悪いから。後半はもう少し学校にお邪魔する機会を作りたいなと思います。

『教職研修』2014年9月号

 学校管理職の先生方を対象とした雑誌『月刊教職研修』2014年9月号の第2特集「学校タブレット入門――授業は、学校はどう変わるの」の前座原稿を書きました。

 この特集は全くの初心者の方が昨今話題になっているタブレット端末の学校への導入について学ぶ手がかりを提供するためのもので,その最初の入り口原稿を依頼されたのでした。お題は「いま,タブレット授業はどれくらい広まっているのか」と「そもそもタブレットとは?」の2つでした。

 依頼文から依頼主の意図などを読み取ることが最初の難関です。

 入門記事であるので,自分的には正確に事態を書きたいと思うけれど,おそらく細かい話はほとんど理解されないでしょう。そういうことに関心がない人が対象だから。それに字数的にも詳しい話を書くには厳しいのもでした。

 他の執筆者が誰なのかは知らされていませんでしたから(聞けば教えてくれたとは思いますが…),誰の原稿が続いてもふさわしいようにはどうすればいいだろうと頭をひねります。詳細は誰とも知れぬ方々にお願いするつもりで取り掛かるしかありません。

 こういう場合,あえてモヤッとコレとコレとコレ以上…みたいな構成にした方が分かった気になるというものです。国が進めているということ,既に地方が動くフェーズだけど地域によって温度差があること,家庭はすでに渦の中,そして学習指導要領も教育方法に言及し始めてるといったところを盛り込みましたが,一つ一つはだいぶ大雑把です。

 

 タブレットとは?という解説コラムも,乱暴に「タブレット型情報端末」と「タブレット型PC」の2つだけに分けて,タブレット端末そのものは限定された用途のものだと印象づける記事にしました。

 もっと踏み込んで「タブレット端末とパソコンは違うものです」としてもよかったし,その認識の方が問題回避しやすいのではないかと思うのですが,まぁしかし現実にはパソコンの置き換えを狙う人も多いし,確かにタブレット型PCはパソコンだし,この辺は多種多様ですといって丸めることにしました。

 読み側の人間として,こういう原稿は好みませんが,書くにあたっては丸め方をどう工夫するのか試行錯誤する面白さがあるので,嫌いではありません。

 実際に発売されて,他の執筆者が誰であるのか知ると,いやはや私が前座で申し訳ありません…という恐縮した感じになってしまいます。とにかく,タブレットなるものが学校教育とどういう感じなのか知りたい方はご一読を。