韓国「”人材大国に向けた教室革命” スマート教育の本格的導入」

20110629 韓国・教育科学技術省
プレスリリース「”人材大国に向けた教室革命” スマート教育の本格的導入」(粗訳)
(原文:韓国教育科学技術省プレスリリースページ
□ 国家情報化戦略委員会(委員長イガクボム、以下”戦略委員会”)と、教育科学技術部(長官李周浩、以下”教育科学技術部”)は本日、大統領府で李明博大統領に”スマート教育推進戦略” を報告した。
※スマート教育:
21世紀の知識情報社会で必要とされるインテリジェントにカスタマイズされる教授−学習システム。カリキュラム、教育内容、教育方法、評価などの教育システム全体の変化を通して、いつでも、どこでも、個人の資質やレベルに応じた学習が可能な未来の人材育成システムを意味する。
[1] なぜ、スマート教育なのですか?
□ 新しいスマート教育に対するニーズは、最近のソーシャルネットワーク(SNS)、クラウドコンピューティングなどのIT技術の発展とスマートデバイスの急速な普及によって、個人の特性に合わせて差別化された創造的な学習への需要が増加しているところに見出すことができる。
※2011年末のスマートフォン加入者数予測 2,000万人(放通委、2011年3月)
□ 特に、最近発表されたPISA 2009 DRA(デジタル読解力評価)で韓国がOECD加盟国中1位を達成するなど、デジタル社会が整備され、生徒たちの未来のためにも教育パラダイムの転換が必要であるとの認識によるものだ。
※私たちの国の学生の情報化能力(2011年、行政安全部、韓国情報文化振興院)
– インターネットによる必要な情報検索能力(09年70.7%→’10年80.6%)
– 検索情報の質の分別についての自信(09年67.8%→’10年76.5%)
– 検索情報の目的に合った活用(’09年68.6%→’10年78.4%)
[2] スマート、教育の目標と主な課題
□ 戦略委員会と教育科学技術部は共同で「スマート教育推進戦略」を策定し、国の教育競争力が2015年までに世界10位、2025年には世界3位に入ることを目標として設定した。
※主な推進課題
①デジタル教科書の開発と適用
②オンライン授業の活性化
③オンラインによる学習診断·処方体制の構築
④教育コンテンツの自由利用と安全な利用環境の整備
⑤教員のスマート教育実践力の強化
⑥クラウド教育サービスの基盤環境整備
[3] 書籍教科書を、デジタル教科書に転換
□ 2015年までに全教科の書籍教科書が、自己主導的学習を実現できる「デジタル教科書」に転換される。
※デジタル教科書:
教科内容と学習参考書、問題集、学習辞書、ノート、マルチメディア素材のデータなどといった機能が連携した未来型教科書(07年〜現在:モデル事業を推進中)
○ 政府が構想するデジタル教科書は、既存の教科内容に、様々な参考資料と学習支援機能が付加され、PC、スマートパッド、スマートTVなど、すべての端末で利用できる電子的な媒体として、教科書としての法的根拠を付与するための方策が推進される。
○ デジタル教科書は、2014年に小学校を皮切りに、2015年までに小、中、高校の全教科を対象に開発され、開発の標準と活用のプラットフォームを民間に提供し、開発会社の参加と、スマート教育、産業の活性化をサポートすることにした。
○ デジタル教科書は、学生には重いバックパックの代わりとして、保護者には学習指導の参考書を個別に購入する負担を軽減すると期待される。
[4] 正規教科でのオンライン授業の活性化
□ 学生たちの学習の選択を保証し、学業空白を最小限に抑えるため、正規教科のオンライン授業が活性化される。
○ 2013年からは自然災害、病気などによる欠席の学生を優先して、高校における少数の選択教科領域、中学校の集中履修対象学生に順次拡大する予定である。
○ オンライン授業は、やむを得ない事由により学業に空白が生じてしまう学生に学業継続の機会を提供し、専門教師の不足で必要な科目を選択できていない学生の学習選択を保障することになるだろう。
○ また、IPTVの活用サポート体制を強化し、私教育の需要が多い教科等に対して様々な課外プログラムを提供し、他文化の学生の韓国語学習の支援、コンテンツ制作と放送を体験するIPTV放送サークル活動も支援する予定である。
[5] オンラインでの評価および個別の学習診断−処方
□ スマート技術を活用し、中央及び市都教育庁、学校単位のレベルで評価方法を革新し、オンラインによる学習診断−処方体制を構築する。
○ このため2012年から市教育庁には基礎学力の予防・診断・指導システムを、学校単位にはオンライン実施による評価システムを構築し、2015年までに国家レベルの学業達成度評価を段階的にIBT(Internet Based Testing)方式に転換する予定である。
○ オンラインによる学習診断・処方体制は、学生のレベルを正確に診断し、それに応じた学習方法を提供することで、基礎学力不足の学生の学力向上に役立つと期待される。
○ また、紙ベースによる評価が中心の伝統的な評価手法をオンラインで実施する評価へと改善することにより、学生の高次な思考能力の評価が可能となり、教室での授業に大きな変化が予想される。
[6] 便利で安全な教育コンテンツ利用環境の整備
□ 教員と生徒が放課後の授業、休暇期間の授業など、通常の授業時間外で教育コンテンツを教育目的で利用できるよう制度を改善していきたい。
○ 教育関連機関の著作物の共同活用、民間レベルの自由利用許諾を表示(CCL)の運動を拡散し、教育コンテンツの寄付、分かち合いの文化を醸成していく。
※著作物の自由利用許諾を表示(CCL:Creative Commons License):
著作権の部分的共有を目的として、著作物の自由利用を許諾する表示制度
○ また、スマート教育の実施中に発生する機能障害を緩和するために、情報通信倫理教育と人格教育を強化する。
[7] 教員のスマート教育力の強化
□ スマート教育へのスムーズなパラダイム転換のために、教員研修と教員養成教育が強化される。
○ このために2012年から毎年、全教員の25%水準で、スマート教育に関する研修を実施し、2015年までに市・道教育町に合計17個のスマート教育体験施設を構築し、スマート教育の拡散速度に合わせて、すべての教師に向けてトレーニングとスマート機器を普及させる。
[8] すべての学校でのクラウドの教育サービス環境の構築
□ いつでも、どこでも必要な学習機会を提供するために、2015年までにすべての学校へクラウドベースの教育情報サービス環境が整備される。
○ このため、EDUNETをベースとして、すべての教材を網羅した国レベルのコンテンツ・オープンマーケットを構築、運営し、教育コンテンツの生産-流通-管理の好循環体制を用意する。
○ 全ての学校に無線インターネット網を設置し、スマートフォン、タブレットPCなど、どのような端末でも動作が可能な教育情報活用サービス体制の構築を推進する。
○ クラウド基盤の構築により、従来は分散して提供されてきた教育サービスを統合連携させることで、利用者が容易にアクセスできるようになるだけでなく、既存の情報化環境の構築コストを削減することが期待される。
[9] スマート教育の推進策
□ 教育科学技術部に「スマート教育推進委員会」を設置し、韓国教育学術情報院(KERIS)に「未来教育研究センター(仮称)」を設立して、スマート教育の推進体制を整える。
○ また、世宗特別自治市や先導的な教育庁に、スマート・トレーニングを可視化した未来の学校を試験的に導入し、現場の適用性を検証していきながら、徐々に拡大していく予定である。