20190121_Mon デジタル教科書の活用の在り方ガイドライン

授業してから原稿書き。

研究室には誰も来ず。原稿も進まず。現実逃避が続いた。

文部科学省で「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」が公表された。

「デジタル教科書」の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン検討会議」で策定作業が行われた結果である。

公表時期は前後するが,このガイドラインの前提となる法律改正に関して「学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令案等に関するパブリックコメント」が行なわれ,その資料として提示された「告示案」の文言が話題となったことは記憶に新しい。

文部科学省告示案には文言があった。

「第一条 学校教育法第三十四条第二項(同法第四十九条,第四十九条の八,第六十二条,第七十条第一項及び第八十二条において準用する場合を含む。以下,この条において同じ。)に基づき,同法第三十四条第一項(同法第四十九条,第四十九条の八,第六十二条,第七十条第一項及び第八十二条において準用する場合を含む。)に規定する教科用図書(以下この条及び次条において「教科用図書」という。)に代えて同法第三十四条第二項に規定する教材(以下「教科用図書代替教材」という。)を使用するに当たっては,次の各号に掲げる基準を満たすように行わなければならない。

一 教科用図書を使用する授業と教科用図書に代えて教科用図書代替教材を使用する授業を適切に組み合わせた教育課程を編成すること。また,当該教育課程において教科用図書に代えて教科用図書代替教材を使用する授業の授業時数が,各学年における各教科及び特別の教科である道徳のそれぞれの授業時数の二分の一に満たないこと。

(後略)」

「第二条 学校教育法第三十四条第三項(同法第四十九条,第四十九条の八,第六十二条,第七十条第一項及び第八十二条において準用する場合を含む。)に基づき,教科用図書に代えて教科用図書代替教材を使用するに当たっては,前条各号(第一号後段を除く。)に掲げる基準に加え,次の各号に掲げる基準を満たすように行わなければならない。

一 教科用図書に代えて教科用図書代替教材を使用した指導において,児童又は生徒の学習上の困難の程度を低減させる観点から,当該児童又は生徒に係る学校教育法施行規則第五十六条の五第三項各号に掲げる事由に応じた適切な配慮がなされること。

二 教科用図書に代えて教科用図書代替教材を使用する授業の授業時数が,各学年における各教科及び特別の教科である道徳のそれぞれの授業時数の二分の一以上となる場合には,児童又は生徒の学習及び健康の状況の把握に特に意を用いること。」

この中の「授業時数の二分の一」という部分が,デジタル教科書などの教科用図書代替教材の使用に制限をかけるように受け止められ,なにゆえアナログな印刷教科書を優先させたいのか,わざわざ「二分の一」と区切る根拠はあるのか,といった反応を一部で引き起こした。

第二条の条文まで読み含めれば,健康上の配慮を明確にする一定の線引きのためともいえる。また,穿った見方をすれば「二分の一に満たないこと」という制限によって,印刷教科書を「主たる教材」として建て付けている様々な法規やここまでの検討内容を辛うじてひっくり返さないように配慮したともいえる。

ちなみに今回のガイドラインには,「授業時数の2分の1未満であること」という記載について,興味深い注釈記述がある。

「学校教育法第34条第2項に規定する教材の使用について定める件(平成30年文部科学省告示第237号)第1条第1項において規定。なお,紙の教科書に加え補助教材として学習者用デジタル教科書を使用する授業は,「2分の1未満」の算定に含まない。」(11頁)

この他の含めて,文部科学省告示とガイドラインとで「二分の一」に対する捉え方や態度に若干の違いも感じられてしまうが,パブリックコメントの反応に対して出来得る限りの補正を試みた結果なのかも知れない。

(追記)2018年12月27日付で「学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令等の公布について(通知)」が出されて,「各条の内容等」で上記の注釈の元となった「補足事項」がすでに公表されていた。告示そのものに書き加えられたわけではないが,パブリックコメントの反応を汲んで本通知が応えた形になっている。

これらの文書は,これまで積み上げてきた学校教育や教科書に関する行政・制度や法規の枠内で,デジタル教科書などの代替教材を使えるように措置したもの。

とはいえ,デジタルに関連する技術や利用の実態はどんどん進化し変わっていくため,学習者が手元の端末画面を参照することを前提とした今回の法改正やガイドラインの策定も,見直しが必要になってくることは当然の流れだろう。まずはテイクオフさせることが今回の一連動きの目標であり,それはなんとか達成された。

しかし,そもそも授業や学習に教材やツールを用いることに,法改正やガイドラインを用意するといった大げさな動きが必要なのか。

こうも考えられないだろうか。

学習に使うための「えんぴつ」や「辞書」の類いに対して,なにゆえ国からルールやガイドラインを押し付けられなければならないのか。「二分の一」云々の決まり事は,個人の手段選択の自由を制限される感覚が伴っている。私が私の授業や学習のために使うものについて他の誰かが(特に国が)口出しをするのは本来野暮な話ではないのか。

そういった捉え方も可能だと思う。

ただ,日本という国の,学校教育という世界は,「国のお墨付き」で動くという現実にあることも一方の事実。今回もその現実に対して最も有効な手段でガイドラインが提示された…ということになる。

ガイドライン自体も興味深いが,一緒に公表された「附属資料」と「参考資料」も情報がまとまっていて便利であるから見ておきたい。