good times & bad times

前回ブログ記事からも刻一刻と状況は変わり,首都東京の感染者数の止まらない増加傾向と日本医師会の「医療危機的状況」宣言によって,私たちが本当に恐れなければならない事態が見え始めました。

厚生労働省・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の4/1提言を踏まえて,3/24付けで出された文部科学省「新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン」が4/1改訂されました。これにより新年度からの学校再開機運は地域の別はあれ一気に休校継続へと引き戻されていきました。

3/31の内閣府・経済財政諮問会議では,緊急経済対策とともに「デジタル・ニューディールの推進」が議題に上がり,デジタル化・リモート化の環境整備を進めることが議論されました。その中で遠隔教育やオンライン授業についても言及されました。

総務省は,家庭からのオンラインラーニングやリモートワークを後押しするために,情報通信ネットワーク整備推進の補正予算を立案や,電気通信事業者関連の団体に学生の通信環境の確保,通信費負担軽減等を要請するなど動きを見せています。

4/2の内閣府・規制改革推進会議「新型コロナウイルス感染症対策に関する特命タスクフォース」では,遠隔医療と遠隔教育に関して議論されました。このうち遠隔教育に関しては「ICT環境の早急な整備」「遠隔授業における受信側の教師設置基準の見直し」「遠隔授業における「同時双方向」要件の撤廃」「遠隔授業における単位取得数の制限緩和」「オンラインカリキュラムの整備」「オンラインでの学びに対する著作権要件の整理」といった論点が取り上げられています。

オンライン授業に関しては,著作権制限に関するハードルがありますが,これに関しては平成30年の著作権法改正で「授業目的公衆送信補償金制度」が規定され,すでにその保証金をやり取りするための窓口団体である「一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会」(SARTRAS:サートラス)が設立されていましたが,制度をいつ始めるのかの様子を窺っていた状態でした。

休校延長や授業開始延期等の緊急事態にあたり,授業目的での著作物利用(オンライン授業での教科書等の著作物利用)に関して特別な配慮をする動き[文化庁SARTRAS文部科学省],授業目的公衆送信補償金制度の前倒し施行を求める動きなど,これまでであれば後手にされがちであった事柄が喫緊の課題として繰り上がってきたのです。文化庁は前倒しを決めたようです[共同通信]。

4/3首相官邸・未来投資会議では,論点メモの中には「学校現場におけるオーダーメイド型教育(ギガ・スクール)」という議題も含まれ,感染症の影響だけでなく,5Gといった進行中である技術革新を踏まえた今後の方向性についても同時進行的に話し合われています。

携帯通信企業3社は,先の要請の流れもあって,25歳以下のスマートフォン利用者のデータ通信料についての支援措置を打ち出しています。[NTTドコモau by KDDIソフトバンクモバイル

学校関係者(教師や児童生徒たち)によるオンラインの集合や授業が世界中で行なわれていることが一般ニュースの項目として報道され,その視聴者もまたそれに関わらなくてはならない立場に立っているという,類い稀なる事態によって,教育ICTに対する注目はかつてないほど高まっています。

しかし,多くの学校や多くの家庭が,そうした事態に初めて遭遇することでもあり,何の準備もないこと,何から取り組めばいいのか,必要なものが何なのか,そもそもそれは自分たちが取り組むべきことなのかといった様々な疑問や不安が広がっています。

昨年末から急展開していたGIGAスクール構想は,そもそも学校内のネットワーク整備と児童生徒数分の端末整備が守備範囲の施策であり,一人ひとりが自宅で学習することをフォローするものではありませんでした。今回の事態のために前倒しするといっても,あくまでオプションだった「持ち帰り利用」をメインに据えるようにデザインし直すのは大変な作業です。

学校の先生達にとっても,本年度からは新しい学習指導要領にもとづくの授業の実施が始まるため,そのことだけでも手一杯だったところに,感染症予防対策業務が発生し,さらにオンライン授業のための教育方法を突貫的に習得しながら実践しなければならないとなれば,今年度の教育活動や個々の子どもたちの教科学習的な成長について,ほとんど誰も結果を見通せないのが現実です。

先回書いたように「あの日にかえりたい」という心理がないわけではないものの,事態はすでに厳しい局面に突入しているわけで,この緊急事態の中で,できるだけ先を見通しながらもできることから地道に取り組んでいくしかないといった状況だと思います。

こうした厳しい状況下で,様々なところで様々なノウハウの共有活動も活発化しているようです。悪い時だからこそ,協力し合って良い時を作り出していこうとするのは大事なこと。

確かに,非常事態に便乗した形でしか私たちは物事を変えられないのだろうかと,少し残念な思いを感ずる時もあります。普段から協力し合えていれば,もっと備えもできていただろうにと。

とはいえ,この期に及んで何もしないというわけにはいかないわけで,危機をうまく転じて私たちの未来に繋げていける前向きさも持ち続けたいものです。今回の事態で,苦しんでいたり,哀しいことになっている人たちのことを想いながらも,自分たちの身を守りつつ,考え続け,行動できるように準備したいと思います。