[FS石川] 20121101 内灘町立大根布小学校への突然訪問

 フューチャースクール推進事業の実証校を訪ね歩いています。小学校10校の公開授業に参加するなどして,実際の学校の様子を見せていただいているわけです。
 教育の情報化の歴史的変遷から見ても,この事業は大掛かりな取組みですから,そのタイミングに居合わせた研究者として視察の機会を逃すわけにはいきません。
 来年再来年になれば,見たくても見られないということもあり,学校を巡っています。

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 石川県内灘町立大根布小学校を訪問しました。本来であれば公開授業の時にお邪魔するのが礼儀ですが,自分が担当している徳島県の実証校と日程が重なり行けなかったので,別の出張で金沢を訪れた機会に表敬訪問した次第です。 
 ところが,訪問した当日は「自由参観ウィーク」期間中。学校が開かれていた日であるのは良かったのですが,それゆえ先生方は慌ただしく動かれていた日でした。
 にも関わらず,教頭先生が校内をご案内くださったり,校長先生ともご挨拶させていただくことができ,お忙しい中で丁寧にご対応くださいました。本当に感謝です。
 見て回った教室のIWBは,いつでもすぐに使えるように電源ONにし,各教室様々な画面が表示されていました。日常的な利用を促す工夫です。
 短い時間ながら,教頭先生からは学校の取組みや今後についてお話しいただきました。この学校でもICT支援員さんが大活躍中とのこと。当日,支援員さんとはご都合でお会いできませんでしたが,後日,別の場所で支援員さんの取組みを聞くことができました。

 というわけで,これで小学校のフューチャースクール実証校10校全部にお邪魔したことになりました。
 最初の方で回った学校などは,その後も実践が進化しているでしょうから,10校見たといってもそれぞれの実態を深く理解しているわけではありません。
 そのことも十分留意しながら,今後も訪問は続けつつ,実証校の様子を踏まえた情報発信をしていけたらと考えています。

研究発表「日本の教育情報化の実態調査と歴史的変遷」

 徳島県FS実証校である東みよし町立足代小学校の公開授業の翌日に岡山大学へ移動して,JSET(日本教育工学会)研究会で研究発表しました。

20121027 日本教育工学会研究会@岡山大学
林向達「日本の教育情報化の実態調査と歴史的変遷
 日本教育工学会研究報告集, 12(4), pp139-146
発表原稿PDF
https://dl.dropbox.com/u/6195338/rin_jset20121027.pdf
(Googleドライブ:https://docs.google.com/open?id=0BxBSvLJGifj0S1RrZ3JRMWs4SGc)同一ファイル
発表スライド
http://www.slideshare.net/kotatsurin/jset20121027
(グラフ:編集利用可能)
コンピュータ整備台数内訳.ai
https://docs.google.com/open?id=0BxBSvLJGifj0SmRDZDJIQ1VON28
コンピュータの周辺機器台数.ai
https://docs.google.com/open?id=0BxBSvLJGifj0UTNubVhrcV9RTkE

 文部科学省が昭和62年度から継続して行なっている教育の情報化の実態等調査について,コンピュータと周辺機器の整備について過去のデータを整理しグラフ化したのと,1985年以降の教育情報化に関する歴史年表をまとめたものです。
 電子黒板や1人1台端末,デジタル教科書といったキーワードで人々の関心が高いはずの「教育の情報化」という領域ですが,実はその実態や歴史を知る手ごろで正確な情報はほとんどありませんでした。
 実態に関しては,毎年調査結果が更新され提示されていますが,文部科学省が出す資料のグラフをコピペするだけでは見えないものもあります。今回はコンピュータと周辺機器に絞って,経年的かつ視覚的にも実態が反映されるようにグラフ化しました。
 歴史に関しては,強いて挙げれば文部科学省「教育の情報化に関する手引」という文書が,教育の情報化の進展に関して解説していますが,それを除けば,年表を掲げて広い範囲を概観しているものは,ほとんど無いと思います。
 まあ,忘れたい過去もたくさんありますでしょうが,逆に,たくさんの取組みをちゃんと繋げて見る努力も必要で,今回作成した年表はそのための基礎資料となるはずです。

 この研究は,もうしばらく集中的に情報収集して,データを充実させていこうと思います。そのあとはライフワーク的に史的記述を進めていければと思っています。
 なお,年表作成にあたっては細心の注意を払って情報の確認をしているつもりですが,紙面スペースの関係上,言葉足らず情報が不足していたり,誤解を招く部分があったり,明らかな間違いもあるやも知れません。お気付きの点ありましたら,ぜひ情報お寄せください。

[FS徳島] 20121026 徳島県東みよし町立足代小学校公開授業

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 フューチャースクール推進事業・実証校である徳島県の東みよし町立足代小学校(あしろ小学校)も最後の公開授業を迎えることとなりました。
 今回は2年生の音楽,4年生の算数,6年生の社会でした。
 2年生の音楽では,歌詞を透明GIF化したものを使った共有活動を。4年生の算数では,デジタル教科書を使った平行の授業を。6年生の社会では,コラージュソフトを使った明治時代の人々に関する協働学習を,行ないました。
 今回も足代小学校らしい,ユニークなICT活用の提案も盛り込みながら,授業研究会と研究発表,そして記念講演として玉川大学の堀田龍也先生にお話をいただきました。
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Note Anytimeを学校で使う

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 iPad miniとiPad Retina Displayモデル(iPad第4世代)が登場しました。サイズのバリエーションが増え,性能が高くなることは歓迎すべきことです。

 学校でiPadを利用する事例も少しずつ増えてきています。私も徳島県上勝町の小中学校に出前授業をするにあたって学校備品のiPad(初代モデル)を使うことになっています。

 上勝町のiPadはとある資金で町教育委員会が導入したもの。アプリを購入するためのプリペイドカードも購入してくれました。教育委員会に理解があると,とてもやりやすいということですね。

 とはいえ,アプリなどはなるべく無料のものを活用して,どうしても有料アプリが必要な場合のみ購入したいというのが本音のところ。そういう点で,無料にも関わらず,自由度も性能も高いアプリは教育現場にとって大変あり難い存在です。

 そういった無料アプリの中でも,最近のヒット作は手書きノートアプリ「Note Anytime」でしょう。MetaMoji社のアプリで,Windows 8版とAndroid版(予定)もあります。

Note Anytime
https://product.metamoji.com/ja/anytime/
教職ネットマガジンの紹介記事
https://kyo-shoku.net/column/ict/note-anytime/

 私が個人的にNote Anytimeを評価しているのは次の点です。
 ・無料であること
 ・初代iPadでも遜色なく動作すること
 ・Windows 8版,Android版も用意していること
 ・A4サイズを用紙指定できること
 ・他のノートアプリをよく研究して同等の機能を多く搭載していること
 ・手書きの線をすべてベクターデータで処理できること
 ・PDF保存ができること
 ・Dropbox等のアプリと連携できること
 ・イラストなどのライブラリが充実していること
 ・手書き変換アドオン(mazec)を追加できること

 現在,小学生達に使ってもらっていますが,最初は新しいアプリを覚えるのに試行錯誤で使っていましたが,数週間後に訪れた時には,かなり自在に使いこなしているようでした。

 Note Anytime以外にも,UPADやGoodNoteなどセンスのよいノートアプリは存在していますが,どちらも「ノート」を模した造りになっています。

 NoteAnytimeも,ノートアプリには違いないのですが,どちらかというと「ワープロ」的に使うことができる点で,取っつきやすさがあります。たとえば用紙の設定でちゃんと「A4」を指定できるのはNoteAnytimeの特徴です。

 また,手書きペンや消しゴム,投げ縄,テキスト入力などの操作体系も素直で,初心者には馴染みやすいのも良い点です。有料ではありますが,テキスト入力機能に「手書き変換アドオン」を追加できるので,手書き文字によるテキスト入力が可能なのも面白いです。

 そしてWindows 8版,Android版も開発している点は,ノート資産を今後も活用しようとする場合にとても有利です。

 さて,そんなNote Anytimeには,デジタルキャビネットというクラウドサービスが提供されています。これはiCloudのようなもので,インターネット上にノートの複写を保管できるサービスです。

 Note Anytimeはアプリ内で「タグ」を付ける方法でフォルダに整理することができますが,その状態をまるごとネット上のデジタルキャビネットに写しをとる(同期させる)ことができるのです。こういうのをクラウドサービスとか呼びますね。

 デジタルキャビネットがあると,何が便利かというと,複数のiPadとNote Anytimeがある場合に,それらをデジタルキャビネット経由で同期させて,中身を同じにすることができるのです。

 自宅のiPad上のNote Anytimeでつくったノートは,会社のWindows 8上のNote Anytimeを同期させることで簡単に開くことができ,会社で編集したノートが今度は家のiPad上のNote Anytimeを同期させて家でも開けるというわけです。

 このデジタルキャビネットと同期の機能を使えば,学校にある複数のiPadとNote Anytimeの内容を統一することができるので,保存したノートをどのiPadからでも取り出せるということになりそうです。

 ところが残念ながら,現実はそう甘くはありませんでした。

 もし,学校の複数台のiPadとNote Anytimeの中身を統一したいと考えている場合,気をつけなければならないことがあります。

 「複数台を同時に同期させてはいけません」

 必ず一台一台がタイミングをずらして同期をしないといけないのです。

 というのも,Note Anytimeの同期は手動同期。同期ボタンを押すタイミングで同期作業が始まります。そして,基本的にユーザーは一人であることを前提に設計されています。

 もしもこれを「はい,授業を終わります。ノートのデータを同期してください」と言って,複数の子ども達が同じタイミングで同期ボタンを押すようなことが起こると,同じデジタルキャビネットに複数の同期作業が始まることになり混乱してしまうのです。

 正確には,一人以上が同期をすると「現在他のデバイスが同期中か,前回の同期中に中断している可能性があります。このまま続行しますか?」と表示されて,「はい」「いいえ」を選択するように聞いてきます。ここで無理に「はい」と押して続行すると同期作業が混乱するのです。

 いろいろ実験して分かったことは,
 ・同期しようとして質問が出たら,基本的に「いいえ」を押すこと。
 ・もし「はい」と押して続行すると,同期の情報を保全するためにノートのコピーが生成されること。
 ・一旦作成したノートを削除したい場合,同じく情報保全のためにそう簡単にはデジタルキャビネットから消せないこと。
 ・複数台のiPadとNote Anytimeの同期内容を統一したい場合,一台一台同期する作業を2周しないといけないこと。

 デジタルキャビネットを使うには,このような事柄を理解しておく必要があります。残念ながら現時点では,複数のiPadとNote Anytimeをデジタルキャビネットで同期する同期して管理する使い方はお勧めできません。

 結局,私が出前授業に行く小学校では,iPadに番号を振って,各児童が使うiPadを決めておくという使い方で,デジタルキャビネットは使わない方向で行くことになりました。

 せっかくの機能が活かせず,少し残念ですが,そもそもiPad自体が個人ユーザーを想定したデバイスのため,学校のような複数のデバイスを多数が共有するような使い方には向かないのかも知れません。

 iCloudの場合はファイル単位での同期を自動で行なうため,Note Anytimeとはまた違った現象になります。その場合でも同じファイルが同時に同期するとコンフリクトが起こって,どちらのデータを選択するのか選択が要求されます。

 とはいえ,子ども達がそれぞれ違うファイルを開いて作業しているシチュエーションを考えると,iCloudのようにファイル単位の自動同期が学校現場には向いているのかなとも思います。

 Note Anytimeへの提案としては,ファイル単位での同期を可能にする仕組みを開発していただくか,Dropboxから直接Note Anytimeファイル等の読込み機能をキャビネット画面に追加してもらうかすると,いろいろ応用が利くと思います。

 たとえばPDFファイルなどをDropboxから読み出すには,Dropboxアプリから連携してNote Anytimeに読み込むのが現在可能な方法ですが,直接キャビネット画面からDropboxにアクセスできれば,とても分かりやすくて子ども達にも使いやすいと思います。

 いずれにしてもNote Anytimeは,学校で使うアプリの一つとして大変お勧めです。

[FS山形] 20121009 山形県寒河江市高松小学校

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 フューチャースクール推進事業の実証校めぐりは,山形県の高松小学校にお邪魔することに。東京経由で東北新幹線に乗って山形へ向かい,一泊してから高松小学校を訪れました。
 高松小学校は児童数が130数名で,学年1クラスずつという規模の学校です。
 当日は,2年生の国語と4年生の算数でした。
 2年生の国語はカエル君とガマ君が登場する「お手紙」という題材。登場人物の気持ちを想像して,楽しんで音読することを目指します。
 4年生の算数は「2桁でわるわり算の筆算」という単元で,硬貨を使った計算からわり算の性質を見つける活動でした。
 いずれに授業もIWBを活用しTPCで作業する活動が含まれたものでした。そして,もはや当然ではありますが,どちらの授業もICT機器の活用云々といったことよりも授業や学習のねらいのために授業をどう組み立てていくのかといったことを中心課題に据えて取り組む中でICTも活用しようという姿勢が根付いていました。
 ご好意で授業後の研究ワークショップも参観させていただいたのですが,先生方がそのようなスタンスで真剣に議論されていたのは印象深かったです。
 帰りの電車のために中座することになりましたが,皆さんのご好意に甘えながら無事に訪問を終えることができました。
 夕方の電車の中からの風景は,とても感じが良いものでした。
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