Note Anytimeを学校で使う

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 iPad miniとiPad Retina Displayモデル(iPad第4世代)が登場しました。サイズのバリエーションが増え,性能が高くなることは歓迎すべきことです。

 学校でiPadを利用する事例も少しずつ増えてきています。私も徳島県上勝町の小中学校に出前授業をするにあたって学校備品のiPad(初代モデル)を使うことになっています。

 上勝町のiPadはとある資金で町教育委員会が導入したもの。アプリを購入するためのプリペイドカードも購入してくれました。教育委員会に理解があると,とてもやりやすいということですね。

 とはいえ,アプリなどはなるべく無料のものを活用して,どうしても有料アプリが必要な場合のみ購入したいというのが本音のところ。そういう点で,無料にも関わらず,自由度も性能も高いアプリは教育現場にとって大変あり難い存在です。

 そういった無料アプリの中でも,最近のヒット作は手書きノートアプリ「Note Anytime」でしょう。MetaMoji社のアプリで,Windows 8版とAndroid版(予定)もあります。

Note Anytime
https://product.metamoji.com/ja/anytime/
教職ネットマガジンの紹介記事
https://kyo-shoku.net/column/ict/note-anytime/

 私が個人的にNote Anytimeを評価しているのは次の点です。
 ・無料であること
 ・初代iPadでも遜色なく動作すること
 ・Windows 8版,Android版も用意していること
 ・A4サイズを用紙指定できること
 ・他のノートアプリをよく研究して同等の機能を多く搭載していること
 ・手書きの線をすべてベクターデータで処理できること
 ・PDF保存ができること
 ・Dropbox等のアプリと連携できること
 ・イラストなどのライブラリが充実していること
 ・手書き変換アドオン(mazec)を追加できること

 現在,小学生達に使ってもらっていますが,最初は新しいアプリを覚えるのに試行錯誤で使っていましたが,数週間後に訪れた時には,かなり自在に使いこなしているようでした。

 Note Anytime以外にも,UPADやGoodNoteなどセンスのよいノートアプリは存在していますが,どちらも「ノート」を模した造りになっています。

 NoteAnytimeも,ノートアプリには違いないのですが,どちらかというと「ワープロ」的に使うことができる点で,取っつきやすさがあります。たとえば用紙の設定でちゃんと「A4」を指定できるのはNoteAnytimeの特徴です。

 また,手書きペンや消しゴム,投げ縄,テキスト入力などの操作体系も素直で,初心者には馴染みやすいのも良い点です。有料ではありますが,テキスト入力機能に「手書き変換アドオン」を追加できるので,手書き文字によるテキスト入力が可能なのも面白いです。

 そしてWindows 8版,Android版も開発している点は,ノート資産を今後も活用しようとする場合にとても有利です。

 さて,そんなNote Anytimeには,デジタルキャビネットというクラウドサービスが提供されています。これはiCloudのようなもので,インターネット上にノートの複写を保管できるサービスです。

 Note Anytimeはアプリ内で「タグ」を付ける方法でフォルダに整理することができますが,その状態をまるごとネット上のデジタルキャビネットに写しをとる(同期させる)ことができるのです。こういうのをクラウドサービスとか呼びますね。

 デジタルキャビネットがあると,何が便利かというと,複数のiPadとNote Anytimeがある場合に,それらをデジタルキャビネット経由で同期させて,中身を同じにすることができるのです。

 自宅のiPad上のNote Anytimeでつくったノートは,会社のWindows 8上のNote Anytimeを同期させることで簡単に開くことができ,会社で編集したノートが今度は家のiPad上のNote Anytimeを同期させて家でも開けるというわけです。

 このデジタルキャビネットと同期の機能を使えば,学校にある複数のiPadとNote Anytimeの内容を統一することができるので,保存したノートをどのiPadからでも取り出せるということになりそうです。

 ところが残念ながら,現実はそう甘くはありませんでした。

 もし,学校の複数台のiPadとNote Anytimeの中身を統一したいと考えている場合,気をつけなければならないことがあります。

 「複数台を同時に同期させてはいけません」

 必ず一台一台がタイミングをずらして同期をしないといけないのです。

 というのも,Note Anytimeの同期は手動同期。同期ボタンを押すタイミングで同期作業が始まります。そして,基本的にユーザーは一人であることを前提に設計されています。

 もしもこれを「はい,授業を終わります。ノートのデータを同期してください」と言って,複数の子ども達が同じタイミングで同期ボタンを押すようなことが起こると,同じデジタルキャビネットに複数の同期作業が始まることになり混乱してしまうのです。

 正確には,一人以上が同期をすると「現在他のデバイスが同期中か,前回の同期中に中断している可能性があります。このまま続行しますか?」と表示されて,「はい」「いいえ」を選択するように聞いてきます。ここで無理に「はい」と押して続行すると同期作業が混乱するのです。

 いろいろ実験して分かったことは,
 ・同期しようとして質問が出たら,基本的に「いいえ」を押すこと。
 ・もし「はい」と押して続行すると,同期の情報を保全するためにノートのコピーが生成されること。
 ・一旦作成したノートを削除したい場合,同じく情報保全のためにそう簡単にはデジタルキャビネットから消せないこと。
 ・複数台のiPadとNote Anytimeの同期内容を統一したい場合,一台一台同期する作業を2周しないといけないこと。

 デジタルキャビネットを使うには,このような事柄を理解しておく必要があります。残念ながら現時点では,複数のiPadとNote Anytimeをデジタルキャビネットで同期する同期して管理する使い方はお勧めできません。

 結局,私が出前授業に行く小学校では,iPadに番号を振って,各児童が使うiPadを決めておくという使い方で,デジタルキャビネットは使わない方向で行くことになりました。

 せっかくの機能が活かせず,少し残念ですが,そもそもiPad自体が個人ユーザーを想定したデバイスのため,学校のような複数のデバイスを多数が共有するような使い方には向かないのかも知れません。

 iCloudの場合はファイル単位での同期を自動で行なうため,Note Anytimeとはまた違った現象になります。その場合でも同じファイルが同時に同期するとコンフリクトが起こって,どちらのデータを選択するのか選択が要求されます。

 とはいえ,子ども達がそれぞれ違うファイルを開いて作業しているシチュエーションを考えると,iCloudのようにファイル単位の自動同期が学校現場には向いているのかなとも思います。

 Note Anytimeへの提案としては,ファイル単位での同期を可能にする仕組みを開発していただくか,Dropboxから直接Note Anytimeファイル等の読込み機能をキャビネット画面に追加してもらうかすると,いろいろ応用が利くと思います。

 たとえばPDFファイルなどをDropboxから読み出すには,Dropboxアプリから連携してNote Anytimeに読み込むのが現在可能な方法ですが,直接キャビネット画面からDropboxにアクセスできれば,とても分かりやすくて子ども達にも使いやすいと思います。

 いずれにしてもNote Anytimeは,学校で使うアプリの一つとして大変お勧めです。