葛飾区立本田小学校の参観を終えて、午後は東京学芸大学へ移動しました。いろいろ教育関係の催し物をやっているので,ふらっと寄ってみようと思ったからです。
「教育フォーラム2012」は,大学と地域の連携事業の一環として、2008年から始まった催し物。私も一度参加したことがあって,久し振りに覗いてみることにしました。
今回も,海外からのゲスト発表者の興味深い発表がなされていました。やはり海外の事例は探究活用学習的なものが多く,たとえば,Androidタブレットとアプリを使ってモノの高さを三角測量しながら数学の知識を確認していく活動や自作問題作成と配布のシステムなどの紹介をしていました。
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当日は他に「学校図書館げんきフォーラム」という催し物があり、その傍で「デジタル教科書展示会」が行なわれていました。
教科書会社10社(東京書籍、大日本図書、学校図書、教育出版、光村図書出版、帝国書院、新興出版社啓林館、第一学習社、実教出版、数研出版)がブースを構えて指導者用デジタル教科書を展示説明してくれるのですが、他の学会や展示会と違って大変ゆったりとしたスペースでした。
普段だと,他社のブースと隙間なく並んでいることもあって,あるブースで話を聞いている様子を隣りのブースの人に聞かれているような気もして,順に隣りのブースで似たような話を聞くのが恥ずかしくなってしまうのです。
今回は,少し距離にも余裕があるので,同じく聞かれているとしても,気持ち的には同じ話や質問を繰り返しやすい環境でした。
なので,今回改めてじっくりと各社の指導者用デジタル教科書を見ることが出来ました。あらためて各社のシステムの違いを見て、これが混在したら先生方大変だなぁと思った次第。
共通のUI規格を策定するという考え方もあれど、丁寧に設計を進めないと使えるものにならないとも思いました。そういうことに専念して取り組む研究者が音頭を取らないと難しいかも知れません。
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じっくりと話を聞いて回っていたら,いつの間にか催しの終了時刻。すっかり日も暮れた学芸大を後にしました。
[FS東京] 20121110 東京都葛飾区立本田小学校公開授業
11月10日に東京のFS実証校である本田小学校で公開授業が開催されたので参加しました。
フューチャースクール推進事業は当初、小学校10校でスタートし、翌年に中学校8校、特別支援学校2校で始まりました。
実証校は全国に散らばっていますが、たとえば、在京のマスコミや有識者が手軽に視察したいとなると、当然のことながら一番近い学校を取材したいということになります。
その一番の候補になるのが、葛飾区にある本田小学校です。本田小学校は他の学校の分も代わりに代表になって視察を受け入れてくれており、関係者の私たちからすれば、そのご苦労や心労など慮らずにはいられません。(ちなみに、西では広島県にある藤の木小学校だとか、佐賀県の西与賀小学校がよく取り上げられます)
しかし一方で、フューチャースクール実証校の印象を特定の小学校だけを視察して断定されてしまうのではないかと懸念する気持ちもあり、代表になってくれる小学校に対しては複雑な思いもなくはないのです。実証校は十校十色。そのことを視察したり紹介したりする人には肝に銘じて欲しいと思う次第です。
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この日の本田小学校は午前中の三時間を使って授業公開をしました。当日は保護者の授業参観の日でもあったため、多くのクラスが公開モードでした。
本田小学校では、単にIWBを使っているだけではICT活用とは呼ばず、タブレットPCを使って初めてICT活用をしていると考える方針です。
ですので、フューチャースクールとしての公開授業では必ずタブレットPCを活用しているのですが、その他の授業においてもIWBは普段使いしていましたし、すっかり機器が学校の日常に根付いている様子を見ることができます。これは他の多くの実証校でも同様です。
今回はタブレット上でのネット調べ活動や学習まとめや説明書づくりといった作業ももちろんありましたし、コマ撮りアニメの制作,ディベートの論点整理などにも活用していました。タブレットPCを普段遣いしている雰囲気がよく伝わってくる風景でした。
子ども達の文字入力の方法についてはいろいろ議論が展開されていますが、本田小学校では,低学年の児童は手書き文字をそのまま書き込むことや中学年に向けて手書き文字入力機能を使う場面も見えて、高学年はキーボード入力していくといった様子が見えました。
当日は,6年生の皆さんが体育館で朗読劇を披露しており,体育館までの階段に置かれたタブレットPCが案内表示をしていました。こういう風に利用しているのも,タブレットPCが身近な学用品に近づいている一例なのかなと感じました。
20121107 上勝町立上勝中学校出前授業
徳島県の事業として行なっているデジタルコンテンツ人材育成のための出前授業で、上勝中学校にお邪魔しました。
今回は動画編集の方法の2回目で、iMovie for iPad の操作方法を実演しながら解説するといった内容。実際に2年生達が沖縄に修学旅行へ行った時の動画や写真を使ってやってせます。
小規模校なので、全学年あわせても5つのグループができるだけですが、残念ながら動画編集できるiPad 2以降の機種は3台だけ。あとは初代が10台程なので、すべてのグループが試しながらというわけにはいかない状況です。
こういう道具環境が統一的に揃わないというのは、授業者として一番面倒な問題でもあります。使う素材が異なるのは如何様にも味付けできますが、動画編集したいのに動画編集ツールが動かせないのは、ちょっと次元の違う問題ですね。
仕方ないので、今回はみんなに実演を見てもらうことにしました。その代わり、私がやって見せても注意は集められないので、2年生の中からアシスタントを急遽募集。みんなの推薦もあってひとり男子生徒が手伝ってくれることになりました。
これは効果覿面で、やっぱり仲間の生徒が操作して出来上がる作品に興味津々ですし、あれこれ指示(「あっちの写真使えば?」とか)も飛んできて、教室前だけの実演でしたがみんなで編集作業している感じで進められました。
さすがに次回からは自分たちでも編集したいでしょうから、足りないiPadを用意しないと…と思いますが、とりあえず動画編集の概要は伝わった感じなので、これからどんどん進めていってもらえそうです。
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iPad用のiMovieは、シンプルさを追求したため、Mac用のような凝った編集機能がありません。特にタイトルや字幕を付ける機能は貧弱で、その辺は別に自作のタイトル写真を用意するなど工夫で乗り切るしかありません。
iPad用の動画アプリ自体も種類は少なく、iMovieとPinnacle Studioという有料アプリか、vimeoなど動画投稿サイト向けのアプリなどくらいです。また、初代で動作するものはほとんど無いと考えてよいです(ゼロではないんですが…)。
某社がユニークな動画アプリを開発中という情報もありますが、まだ時間も掛かりそうです。
iPadにおける動画編集は、まだ課題の多い分野とも言えそうです。
iPad miniやって来る
iPad miniが登場し,りんラボにも1台届きました。
教育と情報の過去現在未来を見通すのが我が研究室の使命なら,当然1台くらいはやってきます。(もちろん自腹でございますよ ^_^ )
私の見立てでは,ライトニング・コネクタとA6チップを搭載した第4世代iPadが登場するだけで,iPad miniは来年初頭までとっておくのではないかと思われたのですが,多くの噂情報の通り,この秋の発表・発売となりました。
最初は,7.9インチのサイズに小さくなるため,UIを見直してくるんじゃないかと思われたのですが,サイズ感については7.9インチまでなら縮小しても大丈夫という開き直りにいたったようで,本当に「小さなiPad」です。
そのわりには高いとか,Retinaディスプレイを搭載しなかったことを残念がる声もあって賛否が分かれていましたが,販売が始まれば,買う人が買い,買わない人が買わないだけの話ですので,議論も鎮まりました。
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フューチャースクール推進事業や様々なタブレット教育利用研究の成果を見ていると,当然のことではありますが,使途によって適したサイズが望まれるという傾向にあります。
個別の資料閲覧やWebブラウジング等の場合はiPad程度(10インチ)の大きさでも良いですが,画面のワークシートに書き込みや複数で共有して閲覧する場合はノートパソコン程度(12インチ〜)の大きさが欲しくなりますし,教室から持ち出すなどして外部での記録や特別教室などでの利用にはiPad miniあたり(7インチ)の大きさが手軽ということが,感覚的には共通認識になりそうです。もちろん,重量や背面カメラの有無など様々な条件も加わっています。
そう考えると「バリエーションがある」ということは歓迎すべきことで,かつそれらが「同等に扱える」ということが重要だと考えると,iPadとiPad miniの取り合わせ,およびiPhoneやiPod touchの組み合わせは,iOSという基盤の上で様々なバリエーションを同等に扱うことが出来るソリューションということになります。
一方,バリエーションが売りであるAndroidは,Nexusシリーズがその方向性を目指しているようで,Nexus 10やNexus 7そして新しいスマートフォンNexus 4を揃えようとしています。もっとも惜しいのは開発メーカーがバラバラで,Nexus7には背面カメラがなかったりと完全に同等に扱えない弱点も残ります。その辺は早く解決して欲しいものです。
(追記:そういえば,Androidで統一的なバリエーション展開を目指しているのはGoogleというよりもSamsungのGalaxyシリーズの方かも知れません。もっともそうなるとSamsungのアレンジが加わったり、アップデートに時差が発生するなど,ちょっと面倒なこともあるので,なかなか難しいところです。)
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私は基本的にResouce Enrichedな教育を目指したい人なので,児童生徒1人1台という姿にこだわるというよりは,1グループに1台程度の数で数種類のデバイスを導入するという形でも利活用できる環境を整備すべきと考えます。 あるいは先生が必要なツールを使い分けられる(そうしても破綻しない)環境が実現されることが一番とも思っています。
iPad miniの登場は,それ自体の善し悪しというよりは,同様に安心して使える機器のバリエーションが増えたという点で歓迎すべきことですし,軽量コンパクトになったことは子ども達にとっても扱いやすくなったという点で評価すべきかなとも思います。
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ただし,これまで先んじてiPadを導入してきた学校や先生にとっては,新しいライトニング・コネクタへの切り替えは悩みの種となりそうです。特に従来のiPadとライトニング化したiPadを同時並行して使う場面では,充電や外部出力,SDカード読み取りなどの作業においてケーブル問題は深刻だと思います。
ただ,ライトニング・コネクタは,充電や外部出力の際にケーブルがコネクタから外れてしまうという問題を解消してくれるメリットももたらしますので,早く移行できることを願うばかりです。
20121102-03 全日本教育工学研究協議会2012金沢大会
11月初めに日本教育工学協会(JAET)主催の全日本教育工学研究協議会が金沢で開催されたので参加してきました。
日本教育工学協会とか,全日本教育工学研究協議会とか,これと似たような名称の組織に日本教育工学会(JSET)とか,日本教育工学振興会(JAPET)とかありますし,教育と情報分野にかかわる学会は他にもたくさんあります。
教育の情報化界隈に関心を持つ人間としてそれぞれを気にはしていますが,正直なところバラバラ過ぎて把握し切れません。^_^;
教育情報化や情報教育のトピックスは,似ているようで違いますし,それぞれ論者によってこだわり,主義主張がありますから,正直なところコンセンサスのようなものがあるようでなく,一般の人々にはあらゆるバラバラなメッセージが届いているというのが実際のところです。健全といえば健全ですが,議論の土台さえバラバラなので意思決定に結びつくのが難しいというわけです。
日本教育工学研究協議会という場は,「実践者」「研究者」「事業者」が集って研究や取組みの成果を発表し会い,教育工学分野から教育を向上させていこうとする会です。主催団体である日本教育工学協会の略称を取ってJAET大会と呼称することがあります。
そういう意味でJAETは間口の広い会ですし,全国の都道府県毎にある先生達を中心とした教育工学関係の研究会との関係を持っている点もユニークです。必ずしも学会ではないので性格付けが難しいところもありますが,同じ土台で異業種が交われるのは大事な機会と思いますので,もっと多くを巻き込んで一般の方にもメッセージが伝わるような場になることが大事かなと思います。
つまり「実践者」「研究者」「事業者」の輪に「生活者」も入るように向かっていけたらいいなと思います。
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さて,そんな日本教育工学協会には,たくさんの理事がいらっしゃいますが,今年度から私もその末席に入れていただくことになりました。
初めて「理事会」なるものに出席し,ものすごい緊張…。
ずらっと並ぶ先生方の顔を見ることも出来ず,もじもじしておりましたが,聞いてみたかったこともあるので,いつもの調子で質問したりと,これからたくさんご迷惑をおかけするにあたっての仁義は切ったみたいな感じになりました。
まあ,何にも出来ないでしょうけど,賑やかしくらいには役立ちたいと思います。