東京国際ブックフェア & 国際電子出版EXPO 2013

 先日、東京で行なわれた「東京国際ブックフェア」と「国際電子出版EXPO」が開催されたので、その他の用事と兼ねて視察しました。

 教育分野において書籍や電子出版の動向は無縁ではありませんし、私自身が図書館司書資格の科目も担当しているのでこの分野の動向を勉強する意味でも通うようにしています。

 ブックフェアは20回目を数える節目の回でしたが、残念ながら数年は年を追う毎に規模や勢いを減じており、今回は目新しい話題にさえ乏しかったというのが正直なところ。

 この分野に詳しい方のブログを拝見すると、同様な感想をすでに開催前の案内状から読取っているぐらいでした。

 それは電子出版EXPOの方も大差はなく、ePUBのに沸いていた昨年に対して、今年度は大きな変化もなく、各社がそれぞれのプラットフォームやサービスをブラッシュアップして売り込みをかけているといったところ。

 AppleのiBook Store日本参入という変化も、この会場においては特に目立った話題にはされておらず、淡々とした雰囲気でした。むしろ老舗のボイジャー社が、かつて技術的には未成熟だった試みを再度今日の技術でチャレンジしたりと元気でした。

 他に印象に残ったのはBPS社の日本語縦書きビューアエンジン「超縦書」がCSSプロパティを豊富にサポートしているという点を売りにして頑張っていたことくらいでしょうか。もっともiOS向けはまだ着手していないため、マルチプラットフォームまではもう少し時間がかかりそうです。

 東芝ではAndroidタブレットのハードウェアとソフトウェアを極力チューンナップした手書き入力「TruNote」を展示していましたが、Web上のレビュー記事の印象と違って、まだこなれていない感が強かったです。説明員の人が理解不足だったせいなのでしょうか。

 その他にも同時開催中の展示会がいくつかありましたが、コンテンツ配信関連では、新しいビデオ圧縮技術の再生デモなどしていて興味深かったです。

 それから、徳島県がサテライトオフィスなどでクリエイターや制作会社の誘致のために出展しているのにびっくり。しかも昨年、県の事業でご担当いただいた方が声をかけてきてくださって2度びっくり。いやはや東京で再会するとは。

 というわけで、展示会はもちろん、それ以外にも国立国会図書館や古巣に寄ったり、研究会を冷やかしにいったりして東京滞在が終わりました。

3Dプリンターには2種類ある

 先日のNew Education Expoはもちろん、ニコニコ超会議や教育ITソリューションExpoにも展示登場していた3Dプリンター。

 「3D積層造形装置」と呼ばれており、製造業における試作品づくりでの利用はもちろんのこと、教育現場での利活用もその可能性が注目されているところです。

 一方で、様々な物体を生み出せるということから、殺傷能力を持つ拳銃の設計図が公開されて、一時期騒然となったこともあります。また、造形するための設計図データがあれば、いくらでも複製製造できるため、キャラクターグッズのようなものも無断で作れてしまう問題点が指摘されています。

 こうした3Dプリンターの光と影をワールドビジネスサテライトが特集したこともあり、ますます注目を集めているというわけです。

 私自身は、3Dプリンターを操作したこともない素人なのですが、いつも疑問に思っていました。  テレビなどで紹介されているように、プラスティックの樹脂を細かく積み重ねて立体造形していくのは技術的に理解できるのですが、その場合、造形する物体の底辺はいつも平らになってしまうのではないか?

 だから、つい最近まで、球のような立体物や複雑にデザインされた立体物は、複数の物体を組み合わせて出来上がっているのだろうと思っていたのです。

 たとえば、ボルトを締める「レンチ」を造形したという話を聞いても、あのクルクル回して稼働させる部分は、バラバラに作って後から組み立てたのだと思っていました。

 しかし、先日の展示会で解説を聞いて驚きました。  3Dプリンターには、2種類あって、単に積み上げて物体を造形するタイプ(これとて精度によってピンからキリまである)と、造形した後に後処理を施す高級タイプがあるというのです。

 この後処理とは、物体を熱して蝋を溶かす工程が含まれるとのこと。

 要するに、造形する際に、プラスティック樹脂などの素材だけでなく、空間の隙間を埋めるための蝋も噴射して造形し、後から溶かすことで内部に空間を生み出すことができるというのです。

 先ほどのレンチに関していえば、バラバラの部品ではなく、最初から完成品をイメージして造形することができるということなのです。

 プリンターという名前と、積み重ねる動作の紹介映像の印象が強くて、まさか最後にオープンで焼くような工程が入るとは想像していなかったので、そういう後処理機能をもった高級モデルがあると聞いて大変びっくりしました。

 そして、3Dプリンターが生み出す可能性にみんなが注目する理由もようやく分かってきたように思います。確かにこれなら何でも作れそうです。

 果たして3Dプリンターが日本の教育現場に入り込んで活躍する日が来るのかどうか分かりませんが、教材研究の過程で実際に立体教材を製作できるというのは興味深い話です。まして、児童生徒が何かを表現する道具としての可能性も今後広がるでしょう。

 まだまだ技術的なものとコストの面、光と影の課題も多い3Dプリンターですが、視覚的なデジタル情報だけではなく実物体の教材でも学ぶ手がかりとして存在感を出してくるかも知れません。

その後の財務省

 学校教育に予算が必要だと主張するとなると、その相手は財務省になるわけで、これがまた昔から文教にとって手ごわい相手であるのはご承知の通り。
 それはいまも変わらないようで、先日(2013年5月27日)に財政制度等審議会が出した「財政健全化に向けた基本的考え方」には文教についてこうまとめられていた。
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5.文教
(1)文教予算について
 平成25年度から始まる第二期教育振興計画の策定に向けて、公財政教育支出について、将来的に恒久的な財源を確保してOECD諸国並みに引き上げることを目指すべきとの議論がある。これは国民に約8.5兆円の負担を求めること(公財政支出は16.8兆円から25.2兆円となる)(*17)を意味するものである。
 過去20年間少子化が進むほど教員数をはじめ公財政支出は低下しておらず、在学者一人当たりの支出額は増加傾向にある中で、教育・教員の質は上がったのか、どのような成果があったのか具体的な検証を行い、国民に示すべきである(*18)。
 教育予算については、このように徒に予算増に走るのではなく、国民の最大の関心事である教育の質向上に向けた施策の明確な成果目標とロードマップを定め、改善サイクルが働くようにすることが重要であり、成果につながる質・手法の改善とあわせて資源を投入する仕組みを構築していく必要がある。
 財政面から見ても、我が国の教育に係る公財政支出(対GDP比)が低いのはこどもの数(在学者の人口に占める割合)が少ないからであり、こども一人当たりでみればOECD諸国と比べて遜色はない。また、そもそも少子化が進行すれば教育に係る公財政支出の総額は減少する構造にあることが考慮されていない[資料II-5-1、2、3参照]。
 現在の我が国の教育に対する財政支出については、他の歳出と同様、国の一般会計ベースで見れば約5割が赤字国債で賄われており、今後、継続的な財政健全化の取組が必要となることを踏まえれば、将来的にも増税による税収増を教育予算の量的拡大に振り向けられる状況にない。
(2)高校無償化について
 平成22年度から実施されている高校無償化制度は、全額国庫負担により、公立高校の授業料は不徴収、私立学校の生徒に対する就学支援金の交付が行われている[資料II-5-4参照]。
 そもそも学校の設置者はその経費負担を含めて学校を管理するのが原則とされている。また、私立学校は大学等を除き都道府県が所管している。こうした原則等を踏まえ、幼稚園から高等学校までの運営費は主として地方が負担し、就学者に対する経済支援も義務教育の授業料不徴収等を除き、地方が支援内容を決める仕組みとなっていた。全額国庫負担の高校無償化制度は高等学校の運営に国はほぼ関与しない中での措置であり、全ての生徒を対象としているとは言え、国・地方の役割分担の観点から再検討の余地がある。
 今後所得制限の導入を含め、見直しの検討が行われることとなっている。しかし、もともと地方がそれぞれの所得の状況等も踏まえ授業料減免措置を講じていた中に国が無償化制度を導入した経緯に鑑みると、所得制限を導入するということであれば、個々の実情に応じたきめ細かい支援を可能とする観点から、国の関与を極力減らし、地方の役割を高める方向で検討するのが大原則である[資料II-5-5参照]。
 すなわち、所得制限の導入は、高所得世帯の授業料を軽減する必要性は相対的に低く効率的な制度とする観点から適切であるが、その際、都道府県毎に所得水準は大きく異なることも踏まえ、都道府県の判断で所得制限の水準等を決める制度とすることを検討すべきである。これに関し、高校無償化は政策目的・効果が明らかでなく、本来廃止すべきであるとの意見もあった[資料II-5-6参照]。
 私立高校等の授業料に対しては、高校無償化(就学支援金)及びその加算措置に加え、地方事業である私学助成の一般補助及び授業料減免支援という4本立ての支援となっている。私学助成における支援手法は全ての生徒を対象とした一般補助を重視するか所得に応じた授業料減免支援を重視するか都道府県に裁量がある現状も踏まえ、高校無償化の加算措置は地方事業である私学助成の授業料減免支援に一本化することを検討すべきである。
 国が基準を定める現行制度を前提に所得制限を導入すると県や学校現場の事務負担や事務コストが膨大になることが懸念される。無駄を排し、効率的な制度とする上でも、地方事業とすることを検討する必要がある[資料II-5-7参照]。
 給付型奨学金を導入し、低所得世帯の高校生に対する支援を強化すべきとの議論があるが、高等学校の進学率は98%となり、経済的理由による中退者は全国の高校生の0.03%(335万人中945人)に留まっている。また、地方が一般財源で無利子奨学金を実施しており、29県で高校卒業後一定の所得を得るまで返済を猶予する所得連動返済型の導入を行うなど、支援の充実が図られている。こうしたデータを前提とすると、地方による現行の無利子奨学金とは別に国として新たな奨学金支援を行う必要性は見出し難い[資料II-5-8、9参照]。
 高校中退事由の多くは学業不適応等によるものであることを踏まえると、所得制限により節減される財源を就学支援に振り向けるのではなく、その一部を活用し、低所得世帯のこどもの小中学校段階からの学力向上をはじめ、国として教育の質向上に真に資する施策への支援を検討すべきである。

*17 2009年の教育機関への公財政支出及びGDPを前提とした数字。
*18 例えば、OECDは、「PISAの結果を見れば、成績が良い国は学級規模よりも教育の質を優先している。日本では教育への追加投資の多くが学級規模の縮小に充てられていることが問題の本質である」「これまで、日本は教員の質への投資よりも学級規模の縮小を優先する傾向があった。この優先順位は修正される必要があり、この報告書はそのための実例を多く提供している」と指摘している(OECD2012 “Lessons from PISA for Japan”)。
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 前段の「将来的にも増税による税収増を教育予算の量的拡大に振り向けられる状況にない」と高らかに宣言するあたり清々しさも漂うが、他国と同水準でよいのかという判断については国民のコンセンサス形成をしなければならないと思う。
 後段も財政的な眺めからはそのように見えるのだなと妙に感心する。
 ただ、「教育の質向上に向けた施策」ならば議論する余地があるといった調子の内容なので、ビタ一文出すつもりはないということではないところが用意された逃げ道か。
 とはいえ、この教育の質向上ほど確信的なものを出しづらいテーマはないわけで、財務省は相変わらず手ごわい相手なのだと分かる文書であった。

教育の情報化 から 教育のICT対応 はどう?

 毎年5月、6月は出来事が多くてただでさえ慌ただしいのですが、自分で電子書籍を出してみようという企ても始めたり、とにかく賑やかです。

 そういえば政府が「『世界最先端IT国家創造』宣言」を準備中で、いまパブリックコメントを募集しているようです。
 自民党政権に代わって、またどんな教育情報化政策を打ち出すのかと注意深く見ていますが、成長戦略絡みで人材育成という観点から教育が語られ、内容的には民主党政権の方向性を静かに引き継ぐ感じのようです。
 「教育環境自体のIT化」といった表現は、「教育の情報化」という全体を包み込むもやっとした言葉よりも明確で良いとは思うのですが、少しずつ「ICT」が定着してきたところにまた「IT」とやられるのは、どうかなぁ…というぐらいです。
 ぼちぼち「教育情報化」というのもやめなきゃいけないなぁ…とおもいつつ電子書籍の執筆をしているのですが、対案はいろいろ難しいなぁとも思います。
 いまのところ「教育のICT対応」ぐらいの言葉が意味合い的には無難かなとも思います。だから宣言文も「教育環境自体のICT化」か「教育環境自体のICT対応」ぐらいが良いのではないかと思うのです。
 しかし一方で、「IT」ではなく「ICT」を使い始めると、今度はIT人材がICT人材へ、IT企業はICT企業へ、ITインフラはICTインフラへと、かなりいろんな言葉がオセロのようにひっくり返らないといけなくなるので、ちょっと難しいかなとも思います。
 ネットワーク時代には「コミュニケーション」が当然なのだから、あえて「C」を入れなくても通ずるともいえますし、いやいやだからこそ「C」は入れねばならないともいえますし、この辺はなかなか難しいです。

EDIX2013 02

 教育ITソリューションEXPO(EDIX)が終わり,来月はNew Education EXPO(NEE)がやってきます。私も大阪会場で登壇する予定です。
 EIDXは文教市場向けの展示商談会なので,基本的には教育委員会や教育企業をターゲットとして展示が構成されています。有料/無料の専門セミナーも教育関係者というよりは関連業者の皆さんが最新動向を知るために参加しているといった感が強く,EDIXで共有されている内容が教育的に妥当なものかどうかは保留すべき部分も少なくありません。
 多くの皆さんは,EDIX関連の報道を見て,驚いたり,首をかしげたり,膝を叩いたり,遠い目になったり,いろいろな反応をされていると思いますが,必ずしもEDIXで見出される方向性が決定事項というわけではなく,その中から教育に携わる人々によって取捨選択され残るものもあれば消えていくものもあるというのが現実です。
 繰り返しますが,EDIXは文教市場の展示商談会です。売り込み側があれこれと提示してくるものを買い手側が吟味し触手を伸ばすか伸ばさないかを決するだけです。
 問題は,そのやり取りがあまりに乏しいものだから,売り込み側に買い手側のニーズが伝わっていないということですし,買い手側も売り込み側の意図を十分把握できていないことが多々あることです。
 来月行なわれるNEEは,その点を汲み取って,数多くのセミナーを主体とした催事となっています。多くの教育委員会に後援をお願いしている点などは,少しでも教育関係者との関係を深めようとする努力の表れだと思います。

 前回も書いたように,文教市場は先の見えないトンネルに入り込んだままです。
 いくつかの自治体がタブレット端末を導入するなど明るいニュースをもたらしているように見えますが,それが日本のメーカーにとって明るいかどうかもハッキリしません。
 ご存知のようにタブレット端末一つでも,Windows 8タブレット,iPad,Androidタブレットといった三大プラットフォームのどれを採用するのか問題です。いずれも海外メーカーが幅を利かし始めていることを考えると,日本メーカーを中心に回り続けていた業界にとっては悩ましい状況にあるといえます。
 そのうえ,一般消費者向けのタブレット端末としてはiPadやNexus7あるいはKindleという特定サービスに紐づいたような端末が普及している事実が,選択をいっそう難しくしているとも言えます。
 今までであれば仕事場にあるのはWindowsパソコンだから学校でもWindowsマシンを選択すればよいというシンプルな理屈で済んだものが,仕事場にも家にもiPadやAndroidタブレットが導入されてきている時代になって,今後もWindowsというプラットフォームの選択が妥当であるとは言い難くなっているといえます。
 そのような混沌とした状況を前提に,1人1台環境を議論すること事態が困難を伴いますし,日本のメーカーにとっての勝機が眠っているとは到底言えないのではないかとも思えます。
 もちろん日本のメーカーのことなど特別扱いして考えず,すべて対等に考えれば,いずれは日本メーカーも盛り返してくるはずとも思います。
 ただ,私には1人1台のタブレット端末という環境云々のもっと手前に,日本メーカーが得意としている商材をどんどん学校にとり入れる段階があってもよいのではないかと思うのです。
 それは,たとえば「テレビ」といったオーディオ/ビジュアル(AV)機器や「デジタルカメラ」といったイメージング機器ではないかと思います。

 このブログ記事「日本の学校に大画面はあるか?」でご紹介したように,日本の学校には「テレビ」あるいは「大画面提示装置」さえも十分行き渡っているとは言えません。
 「デジタルカメラ」「プリンタ」「ビデオカメラ」といった周辺機器に関しても,小中高校合算で計算した場合ですが,普通教室数に満たない台数しか配備されていません。(コンピュータ周辺機器台数のグラフ
 こうした数値を鑑みると,「1人1台タブレット端末」ではなくて,「1学級1台デジタルテレビ/電子黒板/実物投影機/プリンタ/スキャナ」「各学校に学年人数分のデジカメ/デジタルビデオカメラ」といった主張がされるべきではないかと思います。
 その多くが日本のメーカーが得意としているデバイスであり,いまや価格的にも安価で高品質なものを手に出来る成熟した商材です。こうした部分を新たな保守サービスと合わせて確保しにいく方が日本メーカーにとって敷居が低いのではないかと思います。
 もちろん,それは同様に海外メーカーにとっても参入しやすいということになりますが,そこは発想を変えた保守サービスで差別化していくことで攻めていくしかありません。
 確かに,手軽なタブレット端末は内蔵カメラによって,デジカメやビデオカメラのニーズを満たしてしまうかも知れません。実物投影機の代わりにも出来るかも知れませんし,ペーパーレス化でプリンタの必要性をなくすかも知れません。
 タブレット端末と大画面スクリーン/電子黒板があれば,多くのニーズを満たしてしまうという話に逆戻りしてしまうようにも思えますが,やはり,そこへ一足飛びに行くのではなく,多様なデバイスとのハイブリッドな構成を具現化していくことが,日本のメーカーにとっても,また現実的には学校教育にとっても良いのではないかと考えるのです。

 今回,そういう方向性の提案として唯一目新しかったデバイスは,パナソニックブースで展示されていたデジタルハイビジョンビデオカメラ「ぼうけんくん」(HC-BKK1)だけでした。
BKK1.jpg
 参考展示されたものはHDMI受信機とセットでライブ映像配信が可能になっており,また,Windowsパソコンに受信ソフトを入れても同様に動画転送できます。(Windows用だけってのが残念で,これがMac OSXにも対応すればベター。願わくはiOS用アプリで自由に動画転送できると活用が広がります。)
 いまさら単機能デバイスを増やす発想が古いとか,だから日本のメーカーは凋落するのだという批判もあるとは思います。けれども,こういうAVデバイスに存在価値を見出す柔軟性を持つことが大事ではないかと私は思います。
 少なくともタブレット端末を構えて写真や動画を撮影するよりも,虫眼鏡スタイルで対象を捉えるスタイルの方が,指導や学習活動の物語としても味わいがあるように思います。

 EDIXは,大変規模の大きな展示商談会であり,ある種の教育ICTの最新動向を見聞きするには大変有益な場所です。しかし,それが必ずしも私たちの未来ではありませんし,もしかしたら,私たちかたどるべきパスは別の道筋かも知れないことも,受け手として理解しておくべきだと思います。
 私が上に書いたことも,EDIXというのぞき窓に寄り添った場合の一提案や夢想に過ぎません。たとえば他にもEdTechと呼ばれるインターネット技術を基盤とした教育・学習サービスの取り組みからのアプローチもあり得ますし,特別支援教育やユニバーサルデザインにおける取り組みからのアプローチも大変重要だと思います。
 どのようなアプローチでどのようなパスを辿ることが誰にとって良いのか悪いのか。そういった事柄についてもっと知見を広げたり,積み重ねていく必要があると思います。