りんゼミの始動

 私が在籍している大学は連休明けてから後期授業を再開しました。配属が変わって初めての後期授業は,新しく担当する科目もあったり,再構築が必要な授業があったりと,なかなか慌ただしいです。

 新たに担当するものの一つが「専門ゼミナール」です。

 ほぼ10年ぶりにゼミ生を迎えることになり,不安もありますが、楽しみでもあります。担当ゼミ生は3年生3人からスタート。卒業までの1年半の間,りん研究室のゼミ生として過ごしてもらいます。今後,軌道に乗ったら,このブログにも登場してもらおうと思っています。ちなみに毎年新たな3年生が加わる予定なので,規模は少しずつ大きくなると思います。

 そんなわけで「りん研究室」は,私が自分の研究や活動を展開する「りんラボ」部分と,学生たちと共にゼミナール活動を展開する「りんゼミ」部分で構成していくことになります。このブログは,それらを合わせてお伝えしていく場所とします。

 初回のゼミは1人お休みしてしまったので,2人の学生と共に。

 学生たちの意向も大事にしたかったので,特定の方向性は設けずに募集したのですが,2人ともICTに関しては興味関心があるようなので,教育と情報に関連したテーマを扱っても問題なさそうです。個々人の取組みとともに,ゼミとしての取組みもあれこれ考えていきたいと思っています。

 そもそも,りんゼミとしてはICTツールを日常の学習や研究に積極利用してもらうことを通して,テクノロジとの関係を深めて欲しいと考えていたので,各自何かしら情報デバイスを手にしてもらうことに決めていました。

 といっても今回のゼミ1期生は,何をやるのかも不明なゼミに飛び込んできたわけで,そういう心の準備もなければ,道具の用意も大変です。幸い3人だけであることと,立ち上がりは揃いの条件で助け合いながらゼミの文化を作って欲しいというこちらの意向もあったので,3人には卒業までiPad Air 2と付き合ってもらうことにしました。

 大学はGoogle Apps for Educationを契約しているので,クラウドサービス利用の条件は整っています。デバイスの選択肢としてはChromebookやNexusタブレット(Android)もあり得ましたが,やはり最初にiPad抜きでは始められないだろうという私の一存でiPad Air 2にしました。

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 学生は,1人がAndroidスマホ利用者で,もう1人はスマホではない電話派で四六時中携帯するわけではないという非アップルユーザーの2人。そんなゼミ生に開封からiPadのセッティングをやってもらいました。

 大学の無線LANへの登録がまだなので,私の持ってきたWiMAXルーターに接続しながら設定作業。卒業時に後輩へ引き継ぐまでは自分の情報ツールとして利用してもらうためApple IDもiCloudメールアドレスを新規作成するやり方で登録してもらいました。その方が卒業後に自分でデバイス買って移行しやすいでしょうから。

 作業完了確認のため私にメールを送信するところまで行ないました。あとは一緒に渡した解説ムックを手がかりに使ってもらいつつ,ゼミの時間にGoogle関連アプリや大学アカウントとの連携方法などを習得してもらおうと考えています。Microsoft Officeアプリもあるっていう状況は,使うにしても使わないにしても心強いです。

 来週,ゼミ生からの報告が楽しみです。

 来年度以降のゼミ生は,いろいろデバイスを散らばらせようかなと考えています。お古のタブレットやスマートフォンをかき集めたり,ChromebookやAndroidタブレットも混在できるように,今から各種デバイス混成対応のクラウド利用ノウハウを積み上げていきたいと思います。

 というわけで,いろんなことが平行して走り始めている「りん研究室」です。

Scratch 1.4 スキン変更のための作業メモ

Scratch 1.4のスキンを変更するために必要なことを記録していきます。私の作業環境がMacなので,このメモの記載は基本的にMac OS X上のものになります。Windowsの場合は適宜読み替えてください。

[準備するもの]

・「Scratch1.4」「ScratchSource1.4.zip」と「Scratch UI “Skin”(ScratchSkin1.4.zip)」をダウンロード

→ Scratch 1.4(本体) Scratch 1.4 Source Code (ソースコード)のページ

・グラフィックソフト(gifやpngが編集できるもの)

作業に取り掛かるにあたって準備するものはそれほど多くありません。もともとScratchを動作させるパソコン環境があれば,グラフィックソフトを選択入手するのをどうするか悩むくらいで難しくはありません。

グラフィックソフトはgifファイルとpngファイルを編集できるものであればよいと思います。私はFireworks CS6を所有していたので,これを使います。

[ファイルの準備]

Scratch files

参考

ScratchSkinフォルダの内容

[作業手順について]

・作業の基本は,ScratchSkinフォルダの中にある画像素材を編集します。

・画像素材は「9スライス」あるいは「9パッチ」という形式で作られています。(具体的な形式は調べ中)

・gifファイルとpngファイルがあります。(どちらでもいいのかどうかは調べ中)

・編集した画像素材を読み込ませて,実際の表示結果を確認するという手順を取ります。

・しかし,Scratchのブロックの形や色は,画像素材の編集という方法では改変できません。

・また,この一連の作業は,一般的なソフトウェアを改変するのとは仕組みがかなり異なります。

・Scratchが動いているのはSqueakと呼ばれる仮想環境の上で,パソコンの上で直接動いていないからです。

・Scratchを直接動かしているのがパソコンでない以上,それを直接動かしているSqueakというものを操作する必要があります。

・Squeakは,Scratchを動かしているときに隠れて動いてくれている土台システム,つまりOSです。

・Scratchをそのまま起動するとSqueakが隠れたままで,編集した画像素材を読み込ませるとか,表示結果を確認するということが操作できません。

・そこで,ファイルの準備で用意した「ScratchSourceCode1.4.image」を使います。

・「ScratchSourceCode1.4.image」をScratch本体「Scratch.app」(Macの場合)にドラッグアンドドロップします。

・するとSqueakというシステムの中でScratchが中途半端な大きさで表示されて動きます。

・これで作業が始められます。

[Squeak環境の中のScratchの操作方法]

Scratch 1.4のスキンを変えよう計画発動

(関連記事「Scratch 1.4 スキン変更のための作業メモ」)

以下,長い前振り…

ブロックを組み合わせる操作でプログラミングできる「Scratch」というプログラミング環境が,プログラミング教育に対する興味関心と連動して,注目を集めています。昨今では参考図書も新たに刊行されて,夏休みには各地でプログラミングを活動に取り入れたワークショップが開催されました。

プログラミング言語というのは,コンピュータに対して命令するために使われるもので,それは英単語や記号を組み合わせたようなものが多いので,コンピュータの世界だけで使う特殊な「言語」と考えて,そう呼ばれるわけです。

ただ,Scratchでのプログラミングは,命令のための言葉を部品のようにブロックとして用意し,それを視覚的に組み立てることによってプログラムが書けるようにしたものです。なのでScratchをプログラミングの「言語」だと呼ぶのは少し足りなくて,言語をブロックのごとく扱える開発「環境」とか開発「ソフトウェア」だと考えた方がより実際に近いのではないかと思います。

というわけで,Scratchというプログラミングの環境が注目されている…というわけです。

Scratchも歴史を積み重ねてバージョンアップされてきました。

たとえば『小学生からはじめる わくわくプログラミング』(日経BP)の表紙を見てみると「Scratch 1.4 / 2.0 両対応」という文字が見えます。少なくともバージョン1.4と2.0の2つがあるということがわかります。

同じ著者の最新刊『Scratchではじめよう!プログラミング入門』(日経BP)の表紙には「Scratch 2.0対応」とあるので,「はは〜ん,もう新しいバージョンの時代だな」と想像してしまうかも知れません。

Scratchの「1.4」と「2.0」は見た目のデザインが変わりましたが,それ以上に,環境全体がパソコンで動くものからWebサイトで動くものへとお引っ越ししたので,土台部分が変わったという違いがあります。

1.4は,Scratchのソフトウェアをパソコンにダウンロードして使う形でした。わりといろんなパソコンに対応していたので困りはしませんでしたが,バージョンアップがあればいちいちダウンロードし直す必要もあったというのが弱点でしょうか。

2.0は,Webブラウザでインターネット上にあるScratch環境を利用できるように変わりました。Web上のゲームや動画で使われてきたFlash技術を利用して実現しています。これなら,いちいちダウンロードしなくてもWebブラウザでアクセスするだけで最新のScratchが使えますし,作品もその場でシェアできます。

こうしてみると1.4より2.0の新しい方が便利そうだと思うかも知れません。しかし,たとえがずれるかも知れませんが,田舎暮らしの善し悪し,都会暮らしの善し悪し,どちらも生活はできるけどそれぞれに長所短所があるのと似ていて,1.4と2.0にはそれぞれの長所短所があるのです。(参考リンク:What are the differences between Scratch 1.4 and 2.0?

Scratch 1.4はWebでは動かないけれど,パソコンなどで動かすためなら立派に現役です。

そして,1.4はソースコードが公開されているので,新たなパソコンに移植することもできます。その恩恵で実現したのがiPad用のプログラミングアプリ「ピョンキー」です。

ルール上,Scratchの名称やキャラクターをそのまま使えないので名前が変わっていますが,ピョンキーの中身は正真正銘 Scratch 1.4です。その証拠にパソコン用のScratch 1.4と画面デザインが同じです(多くの参考図書でも見ることができるおなじみのデザインです)。

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 というわけで,iPadでもScratch(ピョンキー)が使えるので,iPadファンとしてはめでたしめでたし。ということでもいいのですが,2.0の画面を見たことがある人たちからすれば,1.4の画面,…ちょっと古くさい感じがしなくないでしょうか。しかも他のiPadアプリと比べると,どうしても浮いちゃう感じがします(アイコンはフラットな感じでよいのにね)。

さて,いよいよ長い前振りが終わり,本題です。

iPadでもScratchを使いたい → Tickleなどの類似アプリ登場 → それはそれで楽しい…が,やはりScratchの財産を利用したいしコミュニティにも関わりたい → やった!(Scratch1.4ベースの)「ピョンキー」登場 → 結構しっかり動いていて,シェアされている作品(.sbファイル)も読み込める! → …が,う〜んiPadアプリにしては見た目がなぁ… → 「デザイン変えられないかな?」 → 「Scratch1.4のスキンファイルがあって見た目を変えられるよ」 → 「え?ほんと?」 → 「ファイルが300もあって大変だけどね」 → 「300頑張れば変わるならやるやる!」 → 関連するソースコードとスキンファイルをダウンロード → そして!…

というわけで,ピョンキーの見た目(スキン)を変えるには,もとになったScratch 1.4の見た目を変える必要があり,そのためのファイルが用意されているということをネットを通じて教えていただいたわけです。

もしも素敵なスキンができれば「次期ピョンキーに採用!」なんて夢も叶うかも知れません。

そうでなくても,つくり方がわかるようになれば,他の人たちがデザインしてくれるようになって,もっと素敵なデザインのスキンが出てくる可能性もあります。

その試行錯誤の記録を書き残していこうと思います。

(関連記事「Scratch 1.4 スキン変更のための作業メモ」)

Tickleが日本語対応

教育用プログラミング環境として注目を集める「Scratch」に触発されて生れたiPad・iPhone用プログラミング環境アプリ「Tickle」が2.0となり日本語にも対応しました。

Tickle – Sphero, Dash & Dot, Arduino, Drones, Ollie, Hue, Jumping Sumo, Robots, Smart Homes, Games, などプログラミングできる!

Scratchは,ブロック型プログラミング言語を使って画面中のキャラクターを簡単に動かしたり,環境を拡張することで電子部品の制御さえもできる幅広さを持っています。そのため,子供から大人までプログラミングに挑戦したい人たちの良い入門になっているようです。

もともとScratchは長らくパソコンの上で動かされてきました。昨今はWebベースになったりしていますが,タブレット端末向けとしての実績は始まったばかりです。そのため,なかなか登場しなかったScratchの代わりにScratchと似たような環境を作ろうという動きも出ていたのでした。

その一つが「Tickle」です。

“結果を楽しめる”プログラミング教育でないとだめ、Scratch由来のTickleがKickstarterに登場」(TechCrunch)

開発の経緯は上記のTechCrunch記事に詳しく書いてあります。この記事の当時はアプリ開発中で,現在のものとデザイン的に違っています(開発中は白基調だったものが,正式版は黒を基調としたデザインになっています)が,無事に完成してApp Storeで無償提供されています。

現在では,Scratchをタブレット向けに動作させた「ピョンキー」が登場し,従来のScratchで蓄積してきたノウハウや財産をiPadでも利用することができるようになっています。正統派のScratchをiPad上でも使用したい場合はピョンキーがお勧めです。

Tickleは初めからタブレット端末で使用することを前提として開発されたこともあり,操作性が良いことや,デザインがiPadアプリらしく奇麗であることなどが特徴です。そして,Bluetooth 4.0やWi-Fiなどの無線機能を使って,とても簡単にスマート玩具と接続して,それらを制御することができるというメリットがあります。

また,同じくワイヤレス(無線)で電子ボードArduinoの仲間である「LightBlue Bean」を制御する機能も搭載していますから,このボードが日本でも使えるようになれば電子工作の世界にもちょっとした新風が吹くかも知れません。

Tickle 2.0からは,日本語対応だけでなくiPhoneで動作するようにもなり,スマート玩具と手持ちのiPhoneをさっと繋げて遊んだりすることができます。まさにモバイル時代に合ったプログラミング環境としてこれから注目されそうです。

りん研究室は,Tickleの日本語対応について翻訳などお手伝いしました。

スマートロックと学校

 携帯電話やスマートフォンを常時持ち歩くようになって,いろんなものを代替するようになりました。

 たとえば小額決済や交通機関への支払はおサイフケータイで済ますことも出来るようになりましたし,デジタルカメラを別途持ち歩く必要もなくなりました。スケジュール管理やメモのための手帳も持つことが少なくなりました。

 デジタル情報として扱える物事をスマートフォンに集約して,これ一つを持ち歩けば事足りてしまうという便利さが生まれたわけです。もちろん善し悪しや使い勝手の問題には個別の議論がありますので,あくまでも重宝な選択肢の一つとして考えることが必要なのでしょうけれども,その上で便利に使えるのであれば,こうした変化は歓迎すべきことと思います。

 昨年あたりから注目が高まっているのは「スマートロック」市場です。

 スマートフォンに「鍵」の機能を持たせ,物理的な鍵を持ち歩かなくてすむようになります。すでに自動車には「キーレスシステム」が普及して,一般にも馴染みが出てきているところですが,それは鍵の変わりのキーレスリモコンが用意されているというのはご存知のこと。これをスマートフォンに代替して,家庭やオフィスのドアロックにも使おうというのがスマートロックです。

 今年から国内でも2つの商品が販売を始めました。「Akerun」と「Qrio」という後付け式のドア用スマートロック機器です。

 どちらもこの新たな市場に向けて意欲的な商品を開発し販売しようと立ち上げられたスタートアップ企業(ベンチャー企業)です。海外にも似たような商品が出てきていますが,物理的なものづくりに長けた日本からこのような商品が登場してきたのは頼もしい限りです。

 学校において鍵といえば,それぞれの教室用の鍵がズラッとかけられたキーボックスの光景を思い浮かべる人は多いと思います。つまり「鍵」も学校教育とは無縁ではないのです。

 そして,特別教室やパソコン教室を利用する毎に,職員室まで鍵を取りに行くなんてことが今日でも続けられているわけですが,誰かが鍵を返し忘れたりすると次使う人が大変困ったりすることもよくある出来事です。

 また,休日に催し物で学校施設を使うとなると,責任上,誰か先生が出勤して付き合わなければならないことは当然ありますが,たとえば鍵だけ渡せばいいときでもわざわざ出勤しなければならないとか,鍵の返却が面倒くさいとか,そういう問題が今でも常に付きまとっています。

 学校のキーボックスを思い出すと,いかに鍵というものが大事なもので,その管理に気を遣わなければならないものなのかを,浮かび上がる印象から学ぶことが出来ますが,一方で,学校施設をもっと柔軟に利活用したいさせたい側の人間からすると,物理的な鍵一つひとつに気を遣わなければならないのは面倒です。

 実際,大学には学生カードをかざすことで解錠できる電子ロックドアが設置され,学内関係者であれば自由に利用できるスペースに備わっていることも少なくありません。こうした利便性にも配慮した鍵システムの導入は決して非現実的なものではないのです。

 ちなみにりん研究室にQrioがやってきました。

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 ゼミ生達とデジタル鍵の共有をすることで,資料を閲覧したいときやゼミの研究をしたいときに研究室への入室が出来るようにしたいと思って,実験的に導入してみた次第。

 AkerunとQrioは,基本的には同じような機能を持ちますが,デザインコンセプトの違いから使い勝手が異なっています。それからAkerunは事業者向けの製品も登場して,法人市場への拡大も目指しているようです。Qrioはまだ登場したばかりですが,ドアに2つロックがある場合に2台のQrioを連携させられる機能を持っていたり,家庭用としての使い勝手をこれからブラッシュアップさせていくのだと思います。

 ところで,学校の場合はこんな洒落たものが取り付けられるドアさえない,スライド扉で南京錠がロックだというところもあると思います。

 そんな場合は,スマート南京錠という選択肢でしょうか。「246PADLOCK」や「Noke」といったものがありますので,これはこれで検討してみると面白いかも知れません。

 そして,今は電子工作が注目を集めているご時世ですので,こんな大げさな商品を購入するのではなく,子供達に自作の電子鍵システムを開発してもらうという課題に取り組んでもらうのも面白い勉強になるかも知れません。その場合は,以前取り上げたRaspberry PiやPaSoRiを組み合わせて,生活の中に紛れ込んでいる非接触型ICカードを鍵代わりにするようなシステムを作ってみるのも面白いところです。

 そんなことに学校教育を開いていくことが未来への鍵になるかも知れません。