Osmo 遊びベースのデジタル学習キット

Tangible Play社の「Osmo」(オズモ)は紹介するのが若干難しい商品です。

彼らの日本語サイトは「受賞歴のあるiPad用の教育ゲームシステム」としていて,それはそれで的確ではあるのですが,Osmoの特徴がiPad用であるかのような印象になります。実際にはFire Tablet用もあります。

検索の仕方を変えると「遊びベースの学習」というタイトルをつけた販売ページが出てきます。こちらの方がいくらかOsmoの特徴を表わしている気がします。それから,PR TIMESなどのプレスリリースサイトで紹介されるときには「デジタル学習キット」と書かれたりします。こちらも製品を表現できていると思います。

そんなわけで,組み合わせて「遊びベースのデジタル学習キット」としてみました。

それから,「Osmo」というブランド名をつける他のジャンルの製品も多く,検索しても辿り着き難い問題が残ります。どうしてもアクションカメラとか,スタンプとか,他のものが混ざってしまうのです。

それでも,日本ではトイザらスで販売されているようですし,物理的な玩具教材との組合せという特徴は魅力的なので,もう少し話題にされてよい商品だと思います。

あらためて,Osmoというのは,iPadのカメラを上手に工夫した仕組みを共通の土台とする,様々な玩具やアプリ教材の集まりです。

Osmoサイトより

タブレットを立てる「ベース」(台座)と前面カメラにかぶせる「ミラーヘッド」(反射鏡)の基本セットがあって,これの上に,いくつものゲームや教材が展開しているという製品群となっています。

そのため,販売されているものは,あらかじめ基本的なものを組み合わせたセット商品とか,追加的に購入する個別のゲームや教材といった形であったりします。

どのようなものがあるかは本家サイトをご覧いただきたいのですが,英語圏に関していえば,この仕組みを使った様々なコラボレーション商品が出ていたりします。


少し昔話。

Osmoが登場したのは2014年頃。最初はクラウドファンディング形式の予約販売でスタートしました。

「タングラム」と「ワード」という玩具+アプリ教材と,「ニュートン」というアプリのみの教材という構成で登場し,早期予約者は49ドル(50%OFF)で購入できました。

私は,そこで1セット予約購入し,実際に届いたものを試してみたのです。

当時,2013年ごろにはベネッセコーポレーションもiPadと物理的な玩具を組み合わせた幼児向け教材である「Tangiblock」を登場させていました。

単にタブレット画面とのやりとりで終わるのではなく、画面の外側に実在するものを組み合わせて活動を展開するような発想が注目されていた時期でもありました。「タンジブル」という言葉は「実体があるもの」とか「手触りがある」ということを指す言葉ですが,そういう手に触ることができるものを介してコンピュータと関係するという考え方に関心が集まっていたわけです。

そういうこともあって,Osmo1セット予約購入して好感触を得たことから,その後,追加で3セットほど注文して,機会あるごとに周りに触ってもらうようになってました。

時間の経過とともにiPadのモデルチェンジが進んでいくと,最初に購入したセットのベース(台座)で対応できなくなっていきます。

ベースの初期デザインは,対応するiPadの大きさや厚みにフィットするよう寸法決め打ちでつくられていたため,モデルチェンジによるサイズや厚みの変更に対応できなかったのです。

しばらくなら古いモデルを使い続けることで対処できても,いずれは旧いiPadのサポートが切れたりするため,新しいモデルに対応できないOsmoを披露する機会はどんどん少なくなっていったのでした。OsmoをつくっているTangible Play社も解決策を模索していたとは思うのですが,なかなか新しいベースは登場しませんでした。

かなり時間が経過してから,ようやく幅広いモデルのiPadに対応できるベースとミラーヘッドが登場します。

しかし,そのときにはOsmo登場当初とは製品バリエーションも変わっており,もしも新しいベースやミラーヘッドが欲しければ,新たにセットを購入し直さなければならない状態。すでに基本的なセットを持っている初期ユーザーにとっては,重複購入になってしまうことになり,そのため,しばらく放置状態が続きました。

さらに時間が経過して,ようやく新しいミラーヘッドが単体販売され,その次にようやく新しいベースも単体販売されるようになったのでした。

ところが,日本の場合,Osmo日本正式販売の開始が新しいベースを含んだセット商品登場以降であったため,新しいベースだけの単体販売の必要性が薄いと判断されて,国内で正規購入できるのはミラーヘッドだけ(いま現在,品切れ)。私のような個人輸入の初期ユーザーは,新しいベースも米国Amazonなどから個人輸入する必要があるのです。(日本のAmazonでもベースのみを購入できますが,法外な郵送料を設定されているので,場合によって直接米国Amazonで購入する方がよかったりします。)

左:初期モデル/右:新モデル

しばらく放置していましたが,久し振りに催事で展示する必要が出てきたので,この機会に米国Amazonで新しいベース新しいミラーヘッドを購入することにしました。

9/28に注文して10/6に届きました。発注時は10/18到着予定でしたが、結果的には2週間もあれば届くようです。追加料金を払って,もう少し速く配達してもらうこともできます。

上の写真をご覧いただければ分かるように,旧モデルが横幅を決め打ちして設計し,結果的に当時存在していたiPadのモデルだけ対応するものになっていたのに対し、新モデルは横幅はフリーになっています。おかげで12.9インチのProモデルも世代に関係なく立て掛けられます。さらにminiモデルにも使えます。

ミラーヘッドも再設計されていますが,実はミラーヘッドの方は3世代存在していて,初期モデル,それを新ベース用に合うよう再設計した第2世代,そして狭ベゼルiPadに対応するため再々設計された第3世代に分かれています。

もし狭ベゼルのiPadをお持ちでないなら新しいベースだけを買えばよいのですが,狭ベゼルiPadで使いたいとなると新しいベースだけでなく,新しいミラーヘッドも別途購入しなければなりません。

そもそも新しいミラーヘッドをバンドルしてくれればいいのに,現時点では別売りです(ずるいですね)。

とにかく,揃ってしまえば,ようやくOsmoがもっている魅力を発揮してくれることになります。

2019年にTangible Play社はインドのEdTech企業Byju’sに買収されグループ企業となりました。

スタートアップ企業が大きな企業に買収されることで更なる拡大を目指すのは珍しいことではありません。今後もいろんな教材が登場してOsmoのバリエーションが増えていくのだろうと思います。

文部科学省 教育DX関連会議メモ

随時更新

教育データの利活用に関する有識者会議

教育データの利活用に関する有識者会議
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/index.html
教育データの利活用に関する有識者会議 論点整理(中間まとめ)202103
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/mext_00001.html

議事要旨・議事録・配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/giji_list/index.htm
(第13回)20221011
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/kaisai/mext_00016.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00442.html
https://www.youtube.com/watch?v=Mstu2V2sFMM
(第12回)20220905
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00425.html
https://www.youtube.com/watch?v=Mnf8t2iL4TU
(第11回)20220805
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00416.html
https://www.youtube.com/watch?v=DlX2XeOk10M
(第10回)20220624
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00013.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00398.html
https://www.youtube.com/watch?v=nzuYGBdeMn8
(第9回)20220531
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00012.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00381.html
https://www.youtube.com/watch?v=PYYDCfenVlA
(第8回)20220411
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00011.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00362.html
https://www.youtube.com/watch?v=R07ajQG1nrQ
(第7回)20220221
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00010.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00345.html
https://www.youtube.com/watch?v=BgVYHgzCIwM
(第6回)20211223
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00006.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00313.html
https://www.youtube.com/watch?v=AN7NnIaLo_E
(第5回)20210319
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00005.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00194.html
https://www.youtube.com/watch?v=bToKHaZK-vw
(第4回)20210127
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00004.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00175.html
https://www.youtube.com/watch?v=wer70LP1gik
(第3回)20201124
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00003.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00140.html
https://www.youtube.com/watch?v=E_Onj_qMjhw
(第2回)20201019
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00002.html
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00123.html
https://www.youtube.com/watch?v=iWktP2vCHfk
(第1回)20200707
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/158/gijiroku/mext_00001.htmlhttps://www.mext.go.jp/kaigisiryo/mext_00088.html

教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ

教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキンググループ
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/089/index.html

議事要旨・議事録・配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/089/giji_list/index.htm
(第5回)20220825
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/089/siryo/mext_00007.html
(第4回)20220719
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/089/siryo/mext_00006.html
(第3回)20220526
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/089/siryo/mext_00004.html
(第2回)20220425
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/089/siryo/mext_00002.html
(第1回)20220323
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/089/siryo/mext_00024.html

教育データの国際規格メモ

教育データ標準に関する国際規格について情報収集。

eラーニングからMOOCを経て,規格の世界も目まぐるしく変わったようだ。随時更新。


Initial xAPI/Caliper Comparison
http://www.imsglobal.org/initial-xapicaliper-comparison
ADL Experience API (xAPI) and IMS Caliper Discovery Review
https://adlnet.gov/news/2016/07/25/adl-experience-api-and-ims-caliper-discovery-review/
田村恭久「ラーニングアナリティクスの国際標準規格」(情報処理学会)
https://www.ipsj.or.jp/magazine/9faeag000000vm70-att/5909ewg07.pdf

Experience API (xAPI)

Experience API (xAPI) Standard(ADL Initiative)
https://adlnet.gov/projects/xapi/
adlnet/xAPI-Spec(GitHub)
https://github.com/adlnet/xAPI-Spec
日本語翻訳
(1.02) https://github.com/elc-gh/xAPI-Spec_ja
(1.03) https://github.com/con3office/xAPI-Spec_ja
TinCanプロジェクト
https://www.elc.or.jp/edtech/tincan/

IEEE to Standardize xAPI v2.0 as an International Standard
https://adlnet.gov/news/2021/10/20/IEEE-to-Standardize-xAPI-v2.0-as-an-International-Standard/
P92741.1 xAPI Work Group(IEEE)
https://sagroups.ieee.org/9274-1-1/

xapi.com(Rustici Software)
https://xapi.com
古川雅子「学習履歴データの標準化技法 -Experience API(xAPI)編-」(情報処理学会)
http://doi.org/10.20729/00212207

LRS

Learning Locker Community Overview(Learning Pool)
https://learningpool.com/solutions/learning-locker-community-overview/
Learning Locker - Open Source Documentation
https://learninglocker.atlassian.net/wiki/spaces/DOCS/overview

Profile

xAPI Profile Server
https://profiles.adlnet.gov
xAPI Profiles Viewer
https://torrancelearning.com/xapi/profiles/tools/flattener/

cmi5

cmi5 Specification
https://adlnet.gov/projects/cmi5-specification/
cmi5 CATAPULT!
https://adlnet.gov/projects/cmi5-CATAPULT/
The cmi5 Project(GitHub)
https://github.com/AICC/CMI-5_Spec_Current

Caliper Analytics

Caliper Analytics(1EdTech)
https://www.imsglobal.org/activity/caliper
Caliper Analytics Specification
http://www.imsglobal.org/spec/caliper/v1p2
IMSGlobal/caliper-js(GitHub)
https://github.com/IMSGlobal/caliper-js

IMS Caliperについて(日本IMS協会)
https://www.imsjapan.org/_files/ugd/de775a_78788c49050646079baaaceba7dd282e.pdf
https://www.imsjapan.org/caliper (近日公開)

etc

20220921「教育関連データのデータ連携の実現に向けた実証調査研究における校務支援システム、学習支援システム、教育アプリとの間の教育データ連携の実証研究に参加する事業者を公募します」(デジタル庁)
https://www.digital.go.jp/news/771a28b1-129a-4e80-a4dd-ca9bcbb04db1/

「IMS Japan Conference 2022」の講演動画、発表資料
https://www.imsjapan.org/post/imscj2022bpv
IMS国際標準の初等中等教育への適用と課題
https://www.jepa.or.jp/jepa_cms/wp-content/uploads/2020/01/9065e5ff1f0ae37c6301f418828d390a.pdf

学習eポータル標準モデル(ICT CONNECT21)
https://ictconnect21.jp/ict/wp-content/uploads/2022/02/learning_eportal_standard_V200.pdf

Common Education Data Standards (CEDS)
https://ceds.ed.gov

ed-fi
https://www.ed-fi.org
Ed-Fi Exchange(GitHub)
https://github.com/Ed-Fi-Exchange-OSS

Activity Streams 2.0
https://www.w3.org/TR/activitystreams-core/
The Society for Learning Analytics Research
https://www.solaresearch.org
Learning Analytics Community Exchange
https://www.icde.org/knowledge-hub/2018/11/13/learning-analytics-community-exchange

Student Learning Data Model
https://site.imsglobal.org/standards/sldm
Comprehensive Learner Record Standard
http://www.imsglobal.org/activity/comprehensive-learner-record
1EdTech LTI 1.3 and LTI Advantage
http://www.imsglobal.org/activity/learning-tools-interoperability
OneRoster
http://www.imsglobal.org/activity/onerosterlis
Open Badges
http://www.imsglobal.org/activity/digital-badges

The Data Quality Campaign
https://dataqualitycampaign.org

ADL Initiative
https://adlnet.gov
1EdTech(旧MS Global Learning Consortium)
https://www.1edtech.org
日本IMS協会
https://www.imsjapan.org
日本eラーニングコンソシアム
https://www.elc.or.jp
EDUCAUSE
https://www.educause.edu
Open Assessment Technologies
https://www.taotesting.com

教育データ標準に花束を

「教育データ標準」について考える駄文の続きです。(前回

文部科学省が取り組んでいる「教育データ標準」という取り組みは,サービス提供者や使用者が「相互に交換,蓄積,分析が可能となるように収集するデータの意味を揃えること」を目的としています。

データの意味を揃える」というのは,たとえば,アンケート質問に対する選択肢を統一するような試みのことです。

「職業」の選択肢を用意するとき,「学生/社会人/…」とするか,「小・中学生/高校生/大学生/サラリーマン/自営業/…」とするか。これがバラバラだと調査結果の比較が面倒になるのと同じで,教育データも記録するデータの意味を揃えないと交換,蓄積,分析で面倒が生ずるというわけです。こういうのを「データの桁を揃える」みたいに表現することもあります。

ちなみに,心理学における心理測定(心理アンケート調査)の世界では「尺度集」というものが蓄積されており,これを共有することで,別々に実施された測定結果を比較検討できるような文化があります。いろんなジャンルのものがありますが,子どもの発達に関係するものを集めた『心理測定尺度集IV 子どもの発達を支える〈対人関係・適応〉』(サイエンス社)は有名です。

さて,教育データ標準のお話。この取り組みはいま3年目を迎えています。

これまで「学習指導要領コード」と「学校コード」を公表し,さらに児童生徒と教職員と学校と教育委員会という「主体情報」に関するデータ項目の定義を公表しました。下のリンクが文部科学省「教育データ標準」のWebサイトになります。

前回も見ましたが再度,そこで公開されている「主体情報」のデータ項目の一覧を覗いてみましょう。

画像はExcelファイルにリンクしています。

図の文字が小さくて読めないとは思いますが,児童生徒の主体情報についてずら〜っと項目が羅列されていることが分かります。

「こんなにたくさんのデータ項目をつくって個人の情報を記録するのか!!」と抵抗感を抱きたくなりますが,こういうものはあらかじめ用意しておくことに意味があります。

つまり,データをしまう場所は確保しておくけど,実際にデータをしまうかどうかは別の話。

たとえば「ミドルネーム」という項目は,日本ではミドルネームもっている人がまだ少ないので,実際には使わない空っぽな項目になりがちです。だからといって,この項目定義をけずってしまったら,ミドルネームを持っている人達が自分の名前を記録できなくなってしまいます。

文部科学省の説明では…

(留意点)
・標準化の対象はデータの全てを教育データ項目を網羅しているものではなく、データの相互運用性を図る観点から全国的な定義の統一が必要なものを中心に優先的に整備している。
・ここで定義している情報を各学校等で集めなければならないものではない。(法令等で規定されている情報等は当該規定に従う必要がある。)
・標準項目以外に各学校設置者、学校で必要と考えるデータがあれば独自に定義して活用することは可能。

という留意点が付されています。「これが全部じゃないよ」「全部集めるわけじゃないよ」「新たに項目作っていいよ」というわけです。

児童生徒の名前は「fullName」という定義名にして,一方,教職員の名前は「staffFullName」という定義名にすれば区別がつくでしょ…といった約束事が項目ごとにずら〜っと決められている。そのことがとても大事だということです。

教育データ標準とは,たとえて言えば,種類の豊富なバイキングメニューです

私たちは食べたいだけのメニューをバイキングから選んでトレイ皿の上に盛りつけていくことになりますが,とはいえ栄養バランスにも気をつけたいので定番メニューは押さえつつ選ぶといった調子になるわけです。

教育データの場合,好き勝手な組合せでは具合が悪いこともあります。そこで,おすすめの組合せ「推奨データセット」なるものを用意して,どれを選んだらよいか迷う人達に提示しようというアイデアも出ています。

とはいえ,このおすすめセットの選定は,言うほど簡単ではありません。

「主体情報」(個人情報)といった,特定対象物を表現するためのデータセットを決めることは,ある程度分かりやすい作業です。

しかし,教育データは「主体情報」×「活動情報」×「内容情報」という異なる区分を掛け合わせることが前提となります。これは「個人データ」+「成績データ」といったシンプルな話に留まり得ないということです。

いや,どうも周りの皆さんは,そのシンプルな話にしたがっているようです。

〈教育データセット〉=「個人データ」+「成績データ」という構成で利用されると想定できれば,〈教育データセット〉−「個人データ」によって匿名化された成績データの集合をビッグデータ分析が可能であるともっていけるからです。

これを〈教育データセット〉=「個人データ」+「活動データ」+「成績データ」としても同じような論法で分析の対象に出来るということかも知れません。

確かに,現実的にはそういう教育データの推奨セットを提示することになるのかも知れない。

けれども,それは前回の駄文で書いたように,管理者や開発者には意味があるとしても,利用者にとっての教育データセットとしての意味は生み出せるんだろうか?と疑問符が浮かぶわけです。

もう一度,教育データ標準が描いている情報の区分を見てみましょう。

教育データ標準というバイキングメニューから,データセットを盛りつけるだけの準備は整っていません。用意できたメニューは〈主体情報〉のデータ項目と学校コード,〈内容情報〉の学習指導要領コードだけです。

大きな区分の残りひとつ〈活動情報〉を記録するためのデータ項目も早く定義しなければなりません。

文部科学省としては〈活動情報〉を児童生徒の「生活活動」と「学習活動」,教職員の「指導活動」に区分して検討することを考えているようです。これはこれで検討をしてもよいでしょう。

けれども,いよいよ〈主体情報〉×〈内容情報〉×〈活動情報〉のデータセットを考えるとなると,実はこれらを盛りつけるための「トレイ皿」に注目しなければなりません。

仮に呼ぶなら「教育データコンテナ」という捉え方で教育データを組み合わせる必要があります。

コンテナといっても,別にそれほど大そうなものではありません。

たとえば校務や学習系アプリケーションで利用されている名簿交換の技術標準であるOneRosterワンロースター)では,複数のCSVファイルを束ねる形も採用していて,「manifest.csv」というコントロールファイルで複数のCSVファイルの管理情報を記録するように定めています。これも言ってみればコンテナのようなものです。

〈主体情報〉〈内容情報〉〈活動情報〉を束ねるコントロール情報を含んだ「教育データコンテナ」として扱うようにすれば,今後新たな情報区分が増えたとしても教育データコンテナに加えるだけで対応ができます。

〈主体情報〉〈内容情報〉〈活動情報〉を「〈主体情報〉+〈内容情報〉+〈活動情報〉」して,これを教育データコンテナとして扱うことも可能ですが,繰り返すように「〈主体情報〉×〈内容情報〉×〈活動情報〉」する形で扱うことを考えたいのです。

さっきから,足し算と掛け算で何が表わしたいのか,読者には意味不明かも知れません。

端的には,教育データコンテナ自体にデータ本体を保持するかしないかの違い,といってもよいかも知れません。

たとえば,教育データコンテナに〈主体情報〉そのものは保持されない,あるいは識別子のみ保持されるといった構成です。識別子がある場合も,識別子からAPI等で主体情報にさかのぼれる場合と,主体から一方方向に認証できるだけの場合が考えられます。設定次第で教育データコンテナを分析研究用のビッグデータセットとして直接利用できるかも知れません。

個人的に,教育データコンテナは〈活動情報〉を土台としたものになると考えていて,そこに〈内容情報〉が内包される形をとるのが自然ではないかと考えています。活動を単位とした教育データコンテナが無数に生成されるというイメージです。そして,無数にある教育データコンテナの中から関係するものが〈主体情報〉によって領有されるというわけです。(逆に言えば,手放すこともできる理屈です。)

そうなると,当然のことながら教育データコンテナを格納していく場所が必要になることが見えてきます。

この場合の「格納」は技術的にデータを記録保持する場所という意味もあり得ますが,もう少し抽象的なデザインレベルの議論を続けさせてもらうと,私たちが教育データコンテナ(活動単位)を把握するための枠組みが必要だということです。

それは,もうシンプルに「タイムライン」を考えればよいのではないかと考えています。

この部分は,教育データコンテナを格納するアイデア次第で,いろんな広がりが生まれる部分と考えていて,うまくいけば学習eポートフォリオに再び光が当たるかも知れない領域ですが,技術的な設計をちゃんと組み立てて,それを一般の皆さんにも理解してもらわないと,また個人データが私企業に流れるとかなんとかで誤解を受けてしまいかねないところだと思います。

ただ,少なくとも「学校タイムライン」は教育データ標準の範疇で扱えるのではないかなと考えています。

ここで視点を変えて,学校の教育活動をデータとして整えていくことを考えてみたいのです。

今後,学習者一人ひとりの学習活動のパスウェイ(道筋)はますます多様化していきます。それを学習者タイムラインとして記録していくというアプローチも当然あってよく,自分の学習履歴が教育データコンテナの集積として時系列的に記録されるというのはイメージしやすいと思います。

もう一方で,学校という場はどうなっていくのか。

時間割どおりの授業が展開する昔ながらの風景が続くところもあるでしょうし,チャイムもなく学習活動は個人個人のプランにもとづいて展開していくといった学校も当たり前のように存在するかも知れません。あるいは,もう実空間に集まるといった形ではない遠隔や仮想空間上のコミュニケーションとして学校という場が存在することもあるかも知れない。

いかなる形の学習活動(それを記録する教育データコンテナ)が生成されるとしても,それを学校という場の活動として取り込み位置づけることが必要です。まぁ,そんなに多様な現実になったら,そこまで「学校」という枠組みに固執しなくてよいんじゃないかとは思いますけれど,とにかく学校が存在するというならば,学校として教育データコンテナを格納できるような土台を用意しておきたいわけです。そんな土台が必要ないというならば,逆説的にもはや学校という場もいらないということです。

学校タイムラインは,素朴に表現すれば一番最初に言及した「時間割」をベースにしたものです。

昭和な学校を想定して説明するなら,何年何月何日の月曜日1時間目といった「活動時間枠」毎にどんな集団がどんな活動を行なったのか,時間割の情報をもとに学校タイムラインの土台を整えておくのです。

この学校タイムラインの土台が整うだけで何が可能になるかというと,「このクラスの先週火曜日の3時間目は何の授業だった?」という検索に対して答えられるようになるということです。

たとえば,AlexaとかGoogleアシスタントとかSiriと接続してみたとしましょう。

社会科の先生が,昨日の2時間目に社会科授業をしていて,今日は3時間目に社会科授業の続きをする状況を想像します。いざ授業を始めるときに先生はパソコンにこう呼びかけるのです。

「OK,昨日のスライド表示して」

するとAIアシスタントは,学校タイムラインの情報をもとに,現在が社会科授業であることを察知し,次に昨日の授業から社会科が実施された時間帯を検索し,その時間帯に開かれたスライドファイルをパソコンから呼び出してスクリーンに投影する…なんてことが可能になります。

これは学校タイムラインの情報だけを利用した想像事例ですが,このように学校のカリキュラムを時間割ベースでデータ化した学校タイムラインを土台に,学習集団の名簿データや教育データコンテナとのリレーション(関連)を結んでいくことによって,学習者の学習活動を学校タイムラインに配していくことが可能になります。

もちろん,教育データコンテナを児童生徒の主体情報とセットで学校タイムラインに結びつけていくためには,初めの段階で学習者から学校関係者に対して情報アクセスに関する包括的な許諾を手続きする必要があると思われます。こうした学習者の領有する教育データに対する学校関係者のアクセス権は,在学期間中に限定するなどの時限式であったりもするかも知れません。

いずれにしても,学習者は自身の学習者タイムラインの上に教育データコンテナをプロットすることによって学習履歴をコントロールできるし,学校関係者も許諾にもとづき学校タイムラインのもとで教育データコンテナへのアクセスが可能になるというデザインです。

これとは別に学習eポートフォリオのような形で教育データコンテナをプロットできる仕組みが出来れば,それを転校する際の教育データの受け渡しフォーマットとして利用することができるかも知れません。それはそれで交換用のフォーマットを考える必要があると思いますが…。

今回は,図の作成まで手が回っていないので,まさに駄文の羅列でアイデアを書き連ねることとなり,伝わるものも伝わらない感じになっているかも知れません。

途中,考えるために作図はしていましたが,ラフなもので,完成もしていません。

雰囲気だけ…

実際の「教育データ標準」的には,活動情報についてはオンラインコースの学習履歴を記録する技術標準を土台に考えたがっているようで,果たして私たちの実際の学校の教育活動にどれだけフィットするものになるかは,正直よく分かりません。

途中にも書いたように,単なる学習成果のみならず,学習活動の道筋(パスウェイ)も重視されるようになるとすれば,単なる学習コースの履歴だけでなく,異なる学習活動が組み合わさった道筋自体を表現できるデータ構造が必要になってくるはずです。

今回の妄想は,そのパスウェイをタイムラインとして表現したわけですが,あるいはそれはマップという表現形式かも知れませんし,それはいろいろあり得ると思われます。

そのいろいろ様々あり得るということを考えると,私たちは教育データ標準を決めるというだけでなく,教育データ標準を定期的あるいは継続的にアップデートするプロセスなり体制なりを確立することの方が重要なのではないかとも思えます。

物事は生み出している間は活発にやれていても,ピークに達すると衰退していくのが常。

そのことが分かっているなら,むしろその対処を真剣に考えることの方が重要に思えます。

プログラミング的思考 -4

「プログラミング的思考」について情報収集をしています。連番[1][2][3

文部科学省における「プログラミング的思考」なる言葉の初出に関しては,

荒井陽貴,佐藤守,木下龍
「文部科学省におけるプログラミング的思考に関する議論の過程と内容的特質」(千葉大学教育学部研究紀要)
https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900120468/

が詳しくまとめています。その中で,第2回有識者会議での議論として『磯津政明委員によって,はじめて「プログラミング的思考」という表現が使われた。』と指摘されています。

その磯津氏によって上梓された本に当時の様子が記録されています。プログラミング的思考という表現がもたらされた背景を説明する部分なので,長くなりますが引用します。

 ちなみに、私は「プログラミング的思考」の提唱者です。現在NHKで放送されているEテレのプログラミング番組「テキシコー」のタイトルは、「プログラミング『的思考』から取られたものです。
 小学生のプログラミング教育に関する文科省の有識者会議に招かれたのが2016年初頭で、当時、先駆けた事例となっていたのは英国で2014年に導入されたプログラミング教育でした。週1回の授業で、プログラムやパソコンのしくみ、デジタルリテラシーについて学ぶ、というものです。
 しかし、当時は2020年時点で小学生が一人一台パソコンが使える見通しは立っておらず、さらに既存の授業が多すぎてプログラミングを新たな科目にはできないことが決まっていました。ということは、英国の授業をそのまま流用することは現実的ではありません。
 そこで私が目をつけたのがCT(Computational Thinking・計算論的思考)と呼ばれる、以前から存在していた問題解決手段です。「分解」「バターン認識」「抽象化」「アルゴリズム設計」の4要素を組み合わせて課題を解決するというものです。
 このCTをあらためて分析してみると、日本人が好むパズル的な算数問題に、CTの要素がうまくちりばめられていることに気づきました。仮に学校でコンピューターを直接操る教育ができないとしても,CTを学んでもらうことはできそうです。
 しかし,いかんせん教育研究の世界で使い古された言葉でしたし、日本語直訳の「計算論的思考」という言葉も広まっていました。日本向けにアレンジするのであれば、日本の小学生向けのプログラミング教育を象徴する別のキーワードの方が良さそうです。そこで社内で議論を重ね、有識者会議の数日前に思いついたのが「プログラミング的思考」でした。そのときにGoogle検索をしても一件もヒットしなかったので、会議の場で発表し、意見書として文科省にも提出しました。
 ちなみに、Google検索をしたとき、想定していた内容が検索ページ上位に表示され、見つけやすいことを「ググラビリティが高い」といいますが、「プログラミング的思考」はトップクラスのググラビリティだったことになります。
 あらためてプログラミング的思考を私なりに定義すると「物事のしくみを深く分析・理解し、具体と抽象を行き来しながら、新しい物事を創造的に生み出す思考方法」です。

磯津政明『2040 教育のミライ』(実務教育出版 2022)p246-248より
(太文字やかぎ括弧不足はママ)

上記の内容を整理すれば…

  1. プログラミング的思考はComputational Thinkingを由来としていたこと
  2. Computational Thinkingを「以前から存在していた問題解決手法」と認識していたこと
  3. Computational Thinkingは「教育研究の世界で使い古された言葉」と認識していたこと
  4. 「計算論的思考」という言葉も広がっていたと認識していたこと
  5. プログラミング的思考は「日本向けにアレンジ」する発想のもとで生まれたこと
  6. プログラミング的思考は「日本の小学生向けプログラミング教育を象徴するキーワード」として模索されたこと
  7. プログラミング的思考は一企業の中での議論を経て思いついたもの
  8. プログラミング的思考のググラビリティの高さを評価していること
  9. 有識者会議に対する意見書として文部科学省に提出したこと

以上の事柄を読み取ることができます。

1. は公開済みの有識者会議記録からも確認できます。また,2.も認識として問題はないと思われます。

3.は有識者会議が開かれていた2016年時点で,世界的な文脈であればComputational Thinkingに光を当てたWing論稿が2006年発表なので10年ほど議論された期間がありましたが,日本の文脈ではそもそも言葉自体知られていなかったといえます。4.の「計算論的思考」もWing論稿の日本語翻訳が公表されたのが2015年でしたから広まっていたというよりも広まり始めたぐらいだったと言えます。

つまり,3.と4.に関しては磯津氏の認識の勇み足。世界事情に通じている点は有識者会議に貢献していたことは事実ですが,日本の文脈についてはほぼ現実を見誤っていたと思われます。

そのうえ,5.のような「日本向けにアレンジ」するという発想を取る際には,アレンジの必要性や方向性を明確にすべきところですが,それが6.の「日本の小学生向けプログラミング教育を象徴する」という粒度では,批判検討するには粗すぎます。8.の「ググラビリティの高さ」が「象徴」に値する理由だったと解釈されても仕方ない説明です。

本来であれば,9.で提出されたような言葉は有識者会議や構成メンバーによって吟味されるべきところですが,有識者会議記録では,第3回における他の委員からの質問のやりとりだけで,その他の箇所で「プログラミング的思考」なる言葉の妥当性を検討した形跡はありません。7.にもとづけば,一企業の社内による議論を経て思いついた言葉が,国の政策用語に採用されたことになります。

プログラミング的思考は,結果的に国の政策用語となり,高いググラビリティを推されながらも,なぜか英語表記について考慮されることもなく,提唱者の著書からさえ引用部分以降の本文では注意深く排除されているのです。

次期学習指導要領の準備のための議論が始まろうとしている現在。解説にのみ記載されている「プログラミング的思考」を見直すことは必須になります。これを学習指導要領本体に採用すべきかどうか。あるいは解説からも排除し,コンピュテーショナルシンキングへの理解を深めたうえで適切な言葉を検討するか。真剣に考えなければならない課題です。